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月夜の闇に煌めく星②
しおりを挟む思いがけず始まったのは、ダイニングテーブルの上。小さな朔良のカラダがふわりと浮かぶように、そこに横たわった。
先ほどまで座っていた椅子に片足を上げ、その体勢に、無理はない。
キスをしながら、周りをそっと確認する。
映り込んではいけないものは、あるか。
床を流れ行くコーヒーが気になるが、止めが入らないのは、続けろのサイン。
朔良は小さく口を開き、櫂のキスを、受け入れた。
絡みつく舌と共に、流れ込む櫂の吐息。
甘い唾液を、ゆっくりと味わう。
うっすらと目を開けると同じように、うっすらと見える櫂の瞳。
そう、この感覚。
1番近くで、櫂のその瞳を、見ていたい。
痛いくらい真っ直ぐで、なのに、少しだけ怯えたような瞳。
その瞳を見ていたくて目を開けると、同じように櫂もこちらを見ていて、目が合うとその怯えたような瞳が少し、穏やかになる。
そして静かに、微笑む。
「久しぶりやな……」
「ちょっと照れるな……」
「うん……」
キスをしながら、僅かに触れる唇の動きを感じながら、会話をする。
櫂の手が、シャツの裾から朔良の腹をなぞる。
その手のあたたかさに、はぁっと、息を吐く。
「朔の……ココのほくろ、好き」
櫂が、首筋にキスをした。
そしてその場所を、指でなぞる。
「それから、白い肌と……ココ、すぐ勃つよな……」
シャツを捲り上げ、露わになった小さな蕾を、優しく舌で刺激する。
「変わらんなぁ……バキバキすぎない腹筋……」
ひとつひとつ、その場所にキスを落とし、リップ音を鳴らし吸い付く。
「あ、アトついた……」
「え?」
「あかん……?」
「……いいよ……櫂のアト、つけて」
あくまで、仕事。
アトをつけることは、禁止事項。
なぜなら、プライベートがあるから。
引退作にして、初めてのその行為。
白い肌に、櫂の唇のアトが花開く。
促されるように転がり、櫂に背を向けた。
「この、肩甲骨が、なんかエロいんだよな……」
捲り上げたシャツから覗く背にも、無数のアトをつける。
「やらかいケツも、細いのにしっかりした足も……」
「はぁっ……ーー」
たまらず朔良の、吐息が漏れる。
「朔……」
足に手を這わせ腰にキスをした櫂が、朔良を立たせ、向き合い強く、抱きしめた。
「朔……」
耳元で櫂は、小さく囁く。
「好きやで……朔、朔……」
ぎゅぅぎゅぅ強く、櫂は朔良を抱きしめた。
すぅーっと、櫂は息を吸う。
朔良のその香りを、カラダの奥に、染み込ませるように。
「櫂……」
腕の中にすっぽりと収まる朔良が、櫂を見上げる。
「ダメだ櫂……」
「なに?」
「……ベッド……行こ」
「ふふっ……誘い方」
「我慢できないって……」
「プロやのに」
「最後なのにな」
「すげぇストレート」
「ハハッ……全部見したるから」
「朔、相変わらずやな……」
「なに?」
「すぐ……ムキんなる」
その言葉に、思わず目頭が熱くなり、視線を上げた。
『朔ってすぐムキんなるよな』
いつも櫂に言われていた言葉だった。
そしてそれは、櫂以外に、言われたことのない言葉。
ベッドに櫂を組み敷き、キスをする。
「櫂の、ふわふわの髪、仔犬みたい……」
朔良はそっと、その髪を撫でた。
「俺がムキんなるのはな、櫂が相手だと、余裕なくなるんだよな……なんでだろな? それ、櫂にしか言われないんだよ」
その言葉に、「そうなん?」と櫂は、嬉しそうに目を細める。
その顔を見てまた朔良も、口角を上げ、そして唇を重ねる。
ゆっくり、ゆっくりと、静かにその行為は進む。
過ぎゆく時間を、惜しむように。
肌をなぞり、手に伝わる温かさを感じて。
キスを落とし、刺激をして、勃ち上がったモノを口に含む。
「櫂……」
「なに?」
「もうこんなんなってる……」
「朔も……、カラダ熱い」
ふたりの囁くような声が、静かな部屋に響く。
まるで夕刻のような、オレンジの照明に照らされて、ふたりのその行為が染まる。
「あー……朔、気持ちいい……朔……挿れたい」
完全なノーカット。
コンドームをつける行為も、そこにローションを垂らし擦り付ける行為も、その場所を丁寧に解すその行為すらも、カメラに収められる。
「あー……朔……朔んナカ、久しぶりやな……」
「櫂……かたい……」
朔良のナカのあたたかさを、櫂はじんわりと感じる。
目の前にある朔良の目は、すがるように櫂を見上げる。櫂は、朔良の頬に触れ、そっとキスをした。
駆け上がる刺激にひそめる眉。
高い鼻と、ハクハクと相手を求める唇。
刺激に揺れるカラダと、それに合わせるようにゆらゆら揺れるネックレス。
それが、オレンジの光に照らされシルエットとなり、映し出される。
ぶつかる息。
漏れる声。
軋むベッドの、スプリング。
その音だけが、混ざり合う。
もう、言葉はいらなかった。
乱れる髪を撫でる指先
肌に当たる吐息
揺れるカラダの熱
そしてカラダの中心に集まる、刺激。
そこに伝わる温かさに、視界がぼやける。
朔良の手に、櫂が自らの手を重ね、そして指を絡めた。
カメラを向けられ、人に見られ、この行為を行う。
そしてそれを、売る。
そんな普通じゃない世界に飛び込んで
そんな普通じゃない世界に魅了された。
その世界は、結局、陽の当たらない世界だった。
モデルとして、太陽の下に出ることは、ない。
太陽の下で撮った作品を、守られた世界の中でひっそりと売り出して。誰にも知られぬように、ひっそりと人々はそこに集う。
月夜の闇の下でしか、輝くことができないその世界の人たちは、太陽の下では、姿を隠す。
ここから、始めればいい。
今度はふたりで、太陽の下に出ていく。
隠れずに、堂々と、歩いていけばいい。
ふたりならきっと、怖くない。
背を駆け上がる熱に、その手をキュッと握る。
櫂の熱を全身で受けた。
そしてすべての熱を、櫂に注いだ。
伸ばせば手が届く。
触れることができる。
声を届け、肌を感じ、熱を、交換する。
「朔……朔……」
「あーっ……櫂っーー」
最後にふたりは互いの名を呼び、ドクドクと熱を吐き出した。
ずっと、一緒にいような
朔良じゃ、なくなっても……
櫂の柔らかい髪を頬に感じ、キュッと背中に回した手に力を込めて。
朔良の瞳から、一筋の涙が、頬を伝った。
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