月夜の闇に煌めく星〜ゲイビの世界に愛はあるのか〜

はちこ

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月夜の闇に煌めく星③(完)

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朔良の引退作は、ファンの間で話題を呼び、そして過去最高の売り上げを叩き出した。

その作品を最後に朔良は、その場所を去った。

「お疲れー!」
「お、来たなスタッフ~」
「スタッフじゃねぇし」
「いやスタッフやろ」


今日もまた、弦の守る場所に集う。


「申し込みは今のところ100人くらい」
「おー、まずまずじゃん」
「モデルは何人くらい?」
「出演は13人かな」
「多いなぁー」

もうすぐ、イベントが行われる。
聖也と碧生を筆頭とした、モデルたちが表に出る場所。

その裏で、弦がモデルとスタッフへのケータリングを用意する。そして、櫂が出演モデルのヘアメイクを担当する。

凌空は、イベント全体をプロデュースし、朔良は、後輩たちへの教育指導をする。


引退しても、その場所を去っても、関わり続ける。
ファンの目には触れないその場所で、ひっそりと活動を続ける。


それでも、ファンから聞こえる声には、彼らが存在する。


『聖也くんの髪型、変わったね、櫂くんかな?』
『碧生くんが作品で唇なぞる技は師匠直伝?』
『悠くんて、じっと目見て話すようになったね、朔良くん思い出すな』


見えなくなった姿を、現役モデルを通して、覗き見る。そんなファンの声が、彼らをまた、突き動かす。



「うぉっ! もう開店準備しなきゃじゃねぇか」
「俺も店行かなあかんわ」
「えー俺暇なんだけどー、朔良うち来ねぇ?」
「いいすよー」
「はぁ? お前ら浮気する気か?」
「めっちゃ堂々とするやん」


店を出て、空を見上げる。
そこには高い雲と、ジリジリと焼けるような太陽。


「斗真どうしとるかなぁ」
「あーでもよかったじゃん、ボーナスチャプで電話出演できて」
「あれ泣いたファン多かったらしいなぁ」
「いや泣くだろ斗真は伝説だよ」
「大阪も今日は暑いらしいで」
「斗真ぁー元気かぁー?」

西の空に向かい、凌空が叫ぶ。
その姿に弦はふっと微笑む。

夏が、来た。
この季節に、熱い太陽の下で、恋をした。


隣の櫂を見上げる。
眩しそうに目を細めて、遠くの空を見るその横顔に、朔良は見惚れる。


その視線の先に、何があるのだろう。
櫂が見る未来は、どんな道が待っているのだろう。

その未来に、自分が隣にいればいい。


朔良はそっと、櫂の指先に自らの指を絡めた。

「ん? どした?」

櫂は驚いたように、朔良を見下ろす。

「ううん……なんでもない」

まだ、始まったばかり。


カシャカシャカシャというシャッター音が、突然鳴る。

「え?」
「あんたら4人並ぶと迫力あるなぁ」

KANがカメラを覗き見ながら満足そうに笑う。

「もう1回復活せん? 事務所設立の周年祝いに」
「はぁ?」
「もう全然現役やんそれやったら」
「俺別にいいよ」
「はぁ? やんのかよ!」

嬉しそうにカメラを向けるその先に、道行く人が振り返る。


燃えるような、太陽の下に飛び出した。
太陽の下では輝きを消していたその姿も、今はちゃんと目の前にある。

そして、熱い熱いその陽が落ちれば、訪れる闇。
月夜の闇の中で、輝く光に求めた希望。

いつしかファンにとって、自分たちが、光となっていた。届く声にそれを感じ、そしてそれをまた糧として輝くことができる。


恐ろしい闇ではない。
その闇で輝く。
その世界に光る星は、美しい。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

塚本美佐子
2021.07.01 塚本美佐子

検索からたどり着いて、一気に読ませていただきました。
最高です❗️
最高です❗️
(大事な事なので2回言いました)
こんな素晴らしい作品に、なぜもっと早く辿り着けなかったのか……と激しく後悔するぐらい、最高です。

最終話手前のFUN sideの所で、ファンの方と一緒に泣きました、全身に鳥肌立てて…。

是非他の作品も読ませていただきたい…と思いましたが、他には投稿されていない模様で、とても残念です。

本当に素敵な作品を、ありがとうございました。
感謝しかありません。

2021.07.13 はちこ

感想をいただきありがとうございます。
公開してからだいぶ時間が経っていましたので、とても嬉しくなりました。

fan sideのお話は、別視点から気分転換程度に書き始めたのですが、私自身もそちらにかなり感情移入していました。一緒に泣いていただいたなんて、作者としては嬉しい限りです。

長らく作品公開はしていませんでしたが、執筆活動は細々としていました。実は彼らの続きの話も書いたりしましたが、それは公開できるレベルにはなく。それはまたの機会にいつか出せれば良いなと思っています。

そして、全然違う世界観ですが、新作の連載を始めました。少し重いテーマですが、読んでいただけると嬉しいです。

夕凪

解除

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