70 / 140
導
五
しおりを挟む
今朝は随分と機嫌がよろしいのですね」
王宮に向かう最中、驂乗る従者が神妙な顔で言った。
「気持ちのいい青年と昨晩話した。孟嘗君が去った今、斉は爛熟期に入ったが、中は清廉なる精神を持ち合わせた官吏も育ってきている。あのような若者が、歴史の檜舞台に踊り出る機会があれば、斉は持ち直すかもしれん」
「今の斉王が威王や宣王のように、諫言の士を傍に置くとは思えませんが」
「まぁそれもそうだな」
閔王は諫言した、住民や臣下を悉く処断している。
怨懣関係なしに、清き心を持った者達が、暗愚の手によって消されていくのは嘆かわしいことだ。
かつて、燕を乗っ取った子之が同様の災禍を招いた。
当時の燕には、志を同じくした同胞が数多いた。だが、現今の斉と同様に、友の大分が誅殺され、今は亡い。
燕を想い忠義を尽くし、誅殺された同胞達と田単を重ねてしまったのかもしれない。
(やめよう。田単の未来を按じても詮無きことだ)
いらぬ思惟を振り払い、馬車の揺れに身を任せる。
王宮に向かう最中、驂乗る従者が神妙な顔で言った。
「気持ちのいい青年と昨晩話した。孟嘗君が去った今、斉は爛熟期に入ったが、中は清廉なる精神を持ち合わせた官吏も育ってきている。あのような若者が、歴史の檜舞台に踊り出る機会があれば、斉は持ち直すかもしれん」
「今の斉王が威王や宣王のように、諫言の士を傍に置くとは思えませんが」
「まぁそれもそうだな」
閔王は諫言した、住民や臣下を悉く処断している。
怨懣関係なしに、清き心を持った者達が、暗愚の手によって消されていくのは嘆かわしいことだ。
かつて、燕を乗っ取った子之が同様の災禍を招いた。
当時の燕には、志を同じくした同胞が数多いた。だが、現今の斉と同様に、友の大分が誅殺され、今は亡い。
燕を想い忠義を尽くし、誅殺された同胞達と田単を重ねてしまったのかもしれない。
(やめよう。田単の未来を按じても詮無きことだ)
いらぬ思惟を振り払い、馬車の揺れに身を任せる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
14
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる