白狼 白起伝

松井暁彦

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王星

 十五

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 魏討伐戦に韓が容喙ようかいし、魏の首都大梁たいりょうを包囲した秦軍に韓の名将率いる暴鳶ぼうえんが八万を率いて包囲線の外に陣を布いた。
 
 魏冄は具足を纏い、馬車の上で戦況を見守るのがやっとの状態だった。戦の臭気を吸い、ただ風と共に運ばれてくる血塵を浴びているだけで脂汗が滲んでくる。
 
眼下の隈と土気色の顔色は白粉おしろいで隠しているものの、今にも倒れそうな魏冄の様子に近臣達は気が気ではない。

白起から預かった優秀な指揮官達が巧みに戦場を駆け回り、大梁を布陣して二ヶ月で暴鳶率いる韓軍八万を追い払った。捕えた韓兵は四万にのぼり大梁の城門前に捕虜を並べ、白起の麾下達が四万を斬首にした。

 都を包囲され与力を失った魏王は戦々恐々として、魏冄に領土の割譲を提示して和平を請うた。実際の所、総大将である魏冄の気力も限界に達していたが、長きに亘る包囲戦により兵糧が枯渇している秦にとっても有難い話だった。だが、此方の疲弊を敵方に悟られる訳にもいかず、魏冄は気力を振り絞り会見に望み、魏から三県を取り上げた。陣を引き払う最中、張り詰めていた気が、ぷつりと途切れ視界は暗転した。

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