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王星
十六
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錆びた大地を粛々と歩く狼の群れを睥睨していた。先頭を行くのは白き狼。
地平線の彼方に視える、天へと伸びる階。だが依然として、群れと階の距離は縮まらない。遠吠えが荒野に虚しく響く。遠吠えは近づいて来る。
なだらかな丘を駆け上がって来る漆黒の狼。彼は眼下を睥睨する魏冄の元に、口に咥えた何かを差し出す。
「くおーん」
足元で尻尾を垂れ吠えたのは、灰色の毛をした子供の狼だった。四肢は未発達で鼻は短い。耳はまだ垂れている。
小さな狼は雲母を宿したような、美しい双の眼で魏冄を仰ぎ見た。純朴な光だ。まるで幼子が尊敬する父を仰ぎ見るような眼。戸惑う子狼を漆黒の狼が鼻先で魏冄に押しやる。猛烈に抱きしめてやりたくなった。
だが、今の己は彼等と同様に狼である。この四肢では抱きしめてやるとも叶わない。ふと思う。何故、この子狼がこれほどに愛おしく思うのだろうか。
群れを成す彼等は、夢寐の中では獣であっても現実では人である。漆黒の狼は、黒狗の長である摎であろう。だとすればこの子狼は。
子狼と視線が重なる。眸の中で乱反射する純粋な光。その光の奥に人影が映る。女子の姿。覚えている。嬴稷から賜った女子。短い期間であったが、確かに愛し合った。後にも先にも女を愛したのは彼女だけだった。だが、彼女は忽然とある日を境に消えた。
(まさか)
姿を消す前に忍び見た彼女は、愛おしそうに腹を撫でていた。
(いや。邪推だ。そんなはずはない。俺には胤が無いのだ)
でもー。一心に視線を注いでくる子狼と触れ合えば何かが分かるかもしれない。鼻先で触れようとした矢先、子狼は駆けた。猛然と丘を駆け下り、粛々と階に向かう狼の群れの中に消えた。
地平線の彼方に視える、天へと伸びる階。だが依然として、群れと階の距離は縮まらない。遠吠えが荒野に虚しく響く。遠吠えは近づいて来る。
なだらかな丘を駆け上がって来る漆黒の狼。彼は眼下を睥睨する魏冄の元に、口に咥えた何かを差し出す。
「くおーん」
足元で尻尾を垂れ吠えたのは、灰色の毛をした子供の狼だった。四肢は未発達で鼻は短い。耳はまだ垂れている。
小さな狼は雲母を宿したような、美しい双の眼で魏冄を仰ぎ見た。純朴な光だ。まるで幼子が尊敬する父を仰ぎ見るような眼。戸惑う子狼を漆黒の狼が鼻先で魏冄に押しやる。猛烈に抱きしめてやりたくなった。
だが、今の己は彼等と同様に狼である。この四肢では抱きしめてやるとも叶わない。ふと思う。何故、この子狼がこれほどに愛おしく思うのだろうか。
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子狼と視線が重なる。眸の中で乱反射する純粋な光。その光の奥に人影が映る。女子の姿。覚えている。嬴稷から賜った女子。短い期間であったが、確かに愛し合った。後にも先にも女を愛したのは彼女だけだった。だが、彼女は忽然とある日を境に消えた。
(まさか)
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でもー。一心に視線を注いでくる子狼と触れ合えば何かが分かるかもしれない。鼻先で触れようとした矢先、子狼は駆けた。猛然と丘を駆け下り、粛々と階に向かう狼の群れの中に消えた。
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