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使い魔編
第12話 魔王の地
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その場所は、タイタンから遠く離れた地。
空にはドラゴンが飛翔し、地上にはフェンリルやバジリスク、サイクロプスが住んでいる。
どことなく空気が重い。
この場所に足を踏み入れようものならBランク以下の冒険者は気絶してしまうだろう。
ここに来るとすれば、魔王の座を狙う新たなモンスターや、実力をはき違えた愚かな冒険者。
もしくは魔王の首を狙う勇者くらいなものだ。
そんな超危険地帯へ足を踏み込む男が一人。
その男は、碌な装備も付けず袖が伸びきったシャツにサンダルという恰好であった。
おおよそ戦う気の無いスタイル
これをモンスターが見たらどう思うだろう。
近くにいたモンスターはその男を視覚や嗅覚、聴覚でそれぞれ捉え始めた。
そして、考えるのは同じこと
――最高の人間が来た―― と。
***
この場所の名前はなかった。
ただ、ここに魔王城を立てた最初の魔王の名前、《タイラント》と人間たちが呼び始めたことで、いつしか自分たちでもその名を呼ぶようになった。
その魔王も今はいない。
魔王タイラントが他のモンスターに敗北し、そのモンスターが魔王を名乗る。
時々、勇者と呼ばれる者たちが現れ魔王を倒す。
そして、悠久の時を経ると、また新たな魔王が現れる。
その歴史の繰り返し。
そして現在、この魔王城の主は寝室で横になっていた。
暑いのか布団は自身にかかっておらず、首から滴る汗が艶めかしい。
「んっ……」
ゆっくりと目を開くと、そこからに覗けるのはコバルトブルーの瞳。
黒の薄いネグリジェに身を包んだその女性こそ。
《魔王:タイラント=マリア=コバルト》であった。
起き上がると、長く美しい金の髪が垂れ下がる。
彼女はそのままベッドから降り、浴室の方へと歩き出した。
歩きながら来ていた服を脱ぎ、生まれたままの姿となる。
浴室へ着くと、シャワーからお湯を出し、髪、体と順番に洗っていく。
だが、そのとき妙な気配を感じた。
「誰か来たようじゃの……」
数は一人。
だが手練れだ。
この地に住む屈強なモンスターの気配が次々と消えていく。
しかも命を奪わず、意識だけを刈り取っている。
(気配からして人間だな。ということは魔王の座を狙うモンスターではないか。勇者……は、モンスターに情けなどかけぬか……)
侵入者の意図はわからない。
だが、そんなことはどうでもいい。
なにせ数十年ぶりに現れた人間である。
魔王はシャワーを止め、魔法で瞬時に体を乾かす。
黒いドレスに身を包むと、《魔王城・王の間》にある玉座へと腰を下ろした。
「久々の客人じゃ。存分にもてなしてやろうではないか♪」
鼻歌を歌いながら、その人間が来るのを楽しみに待つのだった。
***
「……あの山よりは全然マシかな」
一人呟くが、その言葉に反応するものはいない。
それもそのはず、タローがいま座っている場所は気絶したドラゴンの上。
その周りには数多のモンスターが意識を刈り取られ、横たわっていた。
侵入者ことタローは、この地に足を踏み入れた途端にモンスターに襲われた。
しかし、上空から来たドラゴンの炎をスイングの風圧でかき消し。
襲い掛かってくるフェンリルには踵落としを。
サイクロプスは繊細なコントロールで顎を棍棒で狙い、意識のみ刈り取っている。
だが、どれもタローの御眼鏡に適う者は居なかったようだ。
しかも、ここ《タイラント》に住むカースト上位のモンスターを倒したためか、ほとんどのモンスターがタローによってこないという事態に陥っている。
そのことにはタローも気付いていた。
(そこそこ強いって、なんだろうなぁ……)
ドラムスの言葉を守っているからこその行動なのだが。
圧倒的に違うのは今まで倒したモンスターは"そこそこ"どころか"めちゃめちゃ"強い部類ということ。
もう一つは、ドラムスもまさか魔王の地にまで行くとは思っていなかったということだ。
だが、タローも自分の仕事を楽にするために使い魔が欲しい。
働きたいときに働き、遊びたいときに遊びたい。
そのためなら、たとえ火の中だろうと水の中だろうと飛んでいく所存である。
まぁその情熱で仕事をするのが一番いいとは思うが、タローにそんな言葉は通用しない。
なぜなら彼は人知を超えた怠惰の化身なのだから。
だが、そんな怠惰な気持ちも貫き通せば何かが起こるのだ。
「あれは……」
ふと周りを見回すと、遠くに大きな城が見える。
タローは城について、お爺さんから聴いたことを思い出した。
『でっひゃいしおがあうけお、そほにまおおふんでふかはきをふへへは
(デッカイ城があるけど、そこに魔王が住んでるから気を付けてな)』
エロ本の切り抜きが見つかってお婆さんにボコボコにされていたお爺さん。
何を言っているか聞き取れなかったが、なんとなく城に魔王がいる的なことを言っていた気がする。
タローは城を見つめていると、突然呟いた。
「魔王って、モンスターに入るかな?」
空にはドラゴンが飛翔し、地上にはフェンリルやバジリスク、サイクロプスが住んでいる。
どことなく空気が重い。
この場所に足を踏み入れようものならBランク以下の冒険者は気絶してしまうだろう。
ここに来るとすれば、魔王の座を狙う新たなモンスターや、実力をはき違えた愚かな冒険者。
もしくは魔王の首を狙う勇者くらいなものだ。
そんな超危険地帯へ足を踏み込む男が一人。
その男は、碌な装備も付けず袖が伸びきったシャツにサンダルという恰好であった。
おおよそ戦う気の無いスタイル
これをモンスターが見たらどう思うだろう。
近くにいたモンスターはその男を視覚や嗅覚、聴覚でそれぞれ捉え始めた。
そして、考えるのは同じこと
――最高の人間が来た―― と。
***
この場所の名前はなかった。
ただ、ここに魔王城を立てた最初の魔王の名前、《タイラント》と人間たちが呼び始めたことで、いつしか自分たちでもその名を呼ぶようになった。
その魔王も今はいない。
魔王タイラントが他のモンスターに敗北し、そのモンスターが魔王を名乗る。
時々、勇者と呼ばれる者たちが現れ魔王を倒す。
そして、悠久の時を経ると、また新たな魔王が現れる。
その歴史の繰り返し。
そして現在、この魔王城の主は寝室で横になっていた。
暑いのか布団は自身にかかっておらず、首から滴る汗が艶めかしい。
「んっ……」
ゆっくりと目を開くと、そこからに覗けるのはコバルトブルーの瞳。
黒の薄いネグリジェに身を包んだその女性こそ。
《魔王:タイラント=マリア=コバルト》であった。
起き上がると、長く美しい金の髪が垂れ下がる。
彼女はそのままベッドから降り、浴室の方へと歩き出した。
歩きながら来ていた服を脱ぎ、生まれたままの姿となる。
浴室へ着くと、シャワーからお湯を出し、髪、体と順番に洗っていく。
だが、そのとき妙な気配を感じた。
「誰か来たようじゃの……」
数は一人。
だが手練れだ。
この地に住む屈強なモンスターの気配が次々と消えていく。
しかも命を奪わず、意識だけを刈り取っている。
(気配からして人間だな。ということは魔王の座を狙うモンスターではないか。勇者……は、モンスターに情けなどかけぬか……)
侵入者の意図はわからない。
だが、そんなことはどうでもいい。
なにせ数十年ぶりに現れた人間である。
魔王はシャワーを止め、魔法で瞬時に体を乾かす。
黒いドレスに身を包むと、《魔王城・王の間》にある玉座へと腰を下ろした。
「久々の客人じゃ。存分にもてなしてやろうではないか♪」
鼻歌を歌いながら、その人間が来るのを楽しみに待つのだった。
***
「……あの山よりは全然マシかな」
一人呟くが、その言葉に反応するものはいない。
それもそのはず、タローがいま座っている場所は気絶したドラゴンの上。
その周りには数多のモンスターが意識を刈り取られ、横たわっていた。
侵入者ことタローは、この地に足を踏み入れた途端にモンスターに襲われた。
しかし、上空から来たドラゴンの炎をスイングの風圧でかき消し。
襲い掛かってくるフェンリルには踵落としを。
サイクロプスは繊細なコントロールで顎を棍棒で狙い、意識のみ刈り取っている。
だが、どれもタローの御眼鏡に適う者は居なかったようだ。
しかも、ここ《タイラント》に住むカースト上位のモンスターを倒したためか、ほとんどのモンスターがタローによってこないという事態に陥っている。
そのことにはタローも気付いていた。
(そこそこ強いって、なんだろうなぁ……)
ドラムスの言葉を守っているからこその行動なのだが。
圧倒的に違うのは今まで倒したモンスターは"そこそこ"どころか"めちゃめちゃ"強い部類ということ。
もう一つは、ドラムスもまさか魔王の地にまで行くとは思っていなかったということだ。
だが、タローも自分の仕事を楽にするために使い魔が欲しい。
働きたいときに働き、遊びたいときに遊びたい。
そのためなら、たとえ火の中だろうと水の中だろうと飛んでいく所存である。
まぁその情熱で仕事をするのが一番いいとは思うが、タローにそんな言葉は通用しない。
なぜなら彼は人知を超えた怠惰の化身なのだから。
だが、そんな怠惰な気持ちも貫き通せば何かが起こるのだ。
「あれは……」
ふと周りを見回すと、遠くに大きな城が見える。
タローは城について、お爺さんから聴いたことを思い出した。
『でっひゃいしおがあうけお、そほにまおおふんでふかはきをふへへは
(デッカイ城があるけど、そこに魔王が住んでるから気を付けてな)』
エロ本の切り抜きが見つかってお婆さんにボコボコにされていたお爺さん。
何を言っているか聞き取れなかったが、なんとなく城に魔王がいる的なことを言っていた気がする。
タローは城を見つめていると、突然呟いた。
「魔王って、モンスターに入るかな?」
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