バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

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使い魔編

第15話 タローと魔王 (激戦)

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 魔王は魔方陣に手を入れると、中から一振りの剣を取り出した。
 その剣は禍々しいオーラを放っている。

「行くぞっ!」

 一瞬でタローの背後へと高速移動する。

「速いな」

 胴を真っ二つにする一撃だが、タローは身をかがめて攻撃を躱す。
 完全に不意を突いたと思った魔王はその反応速度に少しだけ驚いた。

「ほう……これを躱すか。なら!」

 魔王は身をかがめたタローに剣を振り下ろす。
 だが、それにも反応したタローは飛び退きやり過ごす。
 タローが攻撃を躱したかと思われたが、それは魔王に読まれていた。

 魔王は空中に飛び退いたタローに連続の突きを放つ。

(空中では躱せまい!)

 だがタローは自身の武器で、その突きを全て防御した。
 タローにダメージは無いものの、突きの衝撃は殺せず数メートルほど後退させられた。

「…………」

 タローは何も言わないが、その威力に少なからず驚いていた。
 魔王も自身の高速連撃で掠り傷一つ付けられなかったことに衝撃を受けていた。

「…………」

 互いに睨みあう。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 互いに睨みあう。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………//」

 互いに睨みあう。

「…………」

「…………//」

「…………」

「…………そ、そんなに見つめないで//」

「あ、すんまそん」

 若干甘い空気になるが、今は戦闘中。
 油断は許されない。
 そして彼女が10年以上いない作者もこんな甘酸っぱい空気は許さない。
 魔王は首を横に何度も振り、意識を切り替える。

「貴様が只者ではないことは十分理解した」

 魔王は持っていた剣を魔方陣の中にしまうと、今度はまた別の武器を取り出す。
 それは一振りの刀。
 だが、峰の部分が弦になっていて、まるでバイオリンの弓のようになっている。

「こちらも…………本気で戦わせてもらう」

 そう言うと、左手で空中を引っ掻くような動作を行った。
 すると、引っ掻いた部分に糸が出現する。
 その糸を刀の弦に合わせる。

「――音撃サウンド

 刀を勢いよく滑らせると、途轍もない爆音が空間を叩く。

「っ!」

 タローはとっさに防御の姿勢をとる。
 瞬間――全身を音の衝撃が襲った。
 だが、それは一撃だけではなかった。
 魔王は楽器を奏でるように刀を這わせる。
 そのたびに何度も衝撃がタローを襲ったのだ。

「……やっかいだな」

 防御の姿勢を解けないタロー。
 だが、その顔にはまだ余裕があった。
 そしてそれは、魔王も気が付いている。

「……音撃演奏サウザンド・サウンドで倒れないのは久しぶりじゃな。
 では譜面を変えるとしようかの♪」

 魔王は演奏を止めると、今度は空中に縦に3本の爪を立てた。

眷属召喚ダンサーズ!」

 呪文を唱えると、魔方陣が出現する。
 そこから現れたのはフェンリルとサイクロプスだった。
 そして魔王は、先ほど空中に描いた3本の弦で演奏した。

「さぁ踊れ、暴走曲バイオレンス・ノイズ!」

 今度は不快な音が鳴り響いた。
 その音に耳をふさぐタロー。
 だが、本当の狙いは他にあった。
 曲を聴いたモンスターの眼光が赤くなりだした。
 口からは涎を垂らし、けたたましく叫ぶ。

「暴走曲はモンスターの闘争本能を駆り立てる曲じゃ。
 知能を著しく下げるが、戦闘力は本来の3倍まで引き上げるぞ!」

 行け!と命令すると、2体のモンスターはタローに攻撃する。
 魔王の言うように、タローが戦ったときよりも速く、威力も上がっている。
 だが――

「強くなってるけど――まだそこそこではないかな」

 最初に仕掛けてきたフェンリルの脳天に棍棒を振り下ろす。
 避けきれないフェンリルはそのまま脳震盪を起こして気絶する。
 その間に不意を突こうとしたサイクロプスだったが、タローの回し蹴りにより魔王の後方まで吹き飛ばされ戦線離脱した。
 眷属をやられた魔王。
 だが、その顔には笑みがこぼれていた。

「ふっ……やはり眷属ではだめか」

 最初の遠距離の音撃では仕留めきれないと悟った魔王。
 なので眷属たちによる近距離戦闘を仕掛けても倒されるだけだと言うことはわかっていた。
 だが本当の狙いは確かめるためだ。
 そしてそれは確信へと変わった。

「確かに貴様は強い。その攻撃力もさることながら、反応速度も尋常ではない。
 ――だが、攻撃の仕方はちと単調じゃのぉ。貴様、さては剣も振ったことがないのではないか?」

「……すげぇな。当たってる」

 図星をつかれたタローは見事に言い当てた魔王に拍手をした。

「ま、まぁの♪」と魔王も褒められて嬉しそうだった。

 コホンと一つ息をつくと、魔王はタローに刀の切っ先を向ける。

「貴様の強さは認める。近接戦なら間違いなく分が悪い。
 遠距離からの攻撃もイマイチ決め手に欠ける。
 ――だが、武器が無かったらどうじゃろうなぁ?」

「……え?」

「貴様は攻撃も防御もその<キング・オーガの棍棒>で行っておる。
 ならばそれを破壊すれば、弱体化になると思わんか?」

「それは…………困るね。商売道具だし」

「だろうなぁ!」

 魔王は自身の刀の弦を指ではじいた。
 すると、刃が高速で振動し始める。

振音バイブレーション

 刀を構えると、今度は高速移動で真正面から襲う。
 刀を振る魔王に、タローは棍棒で応じた。

 しかし、棍棒と刀が接触した途端に、棍棒が真っ二つに切断された。
 その結果にタローは驚くが、そんな暇は与えられなかった。
 魔王の二撃目がタローを襲う。
 今度は後ろにのけ反り躱した。

 折れた棍棒を見つめるタロー。
「……おじーちゃんも杖折れたとき、こんな気持ちだったのかな」
 少しだけ寂しそうな顔をする。
 その顔を見て魔王は少しだけ罪悪感を覚えた。
 だがこれは戦闘。
 武器を破壊したことでアドバンテージはこちらにある。

「終わりじゃ。次で決着をつける!」

 魔王はもう一度高速移動の構えをとった。

(奴は躱すときは後ろにのけ反る、または後退することが多い。一撃目を躱した直後を狙えば私の勝ちだ!)

 相手の躱す位置も考えれば確実に攻撃を当てられる。
 今までの戦闘から分析し、タローの動きは完璧に見切れる自信があった。

「行くぞっ!」

 魔王が高速移動をする刹那――いやな声が聞こえた。

「気に入ってたのに…………ちょっとムカついちゃった」

 音の攻撃を使う魔王だからこそ、その声音に敏感に反応した。


 この男は――キレている。
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