バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤

文字の大きさ
22 / 198
神聖デメテール国編

第20話 神聖デメテール国

しおりを挟む
 神聖デメテール国
 寵愛・慈愛・豊穣の国と呼ばれるデメテールは、国の中心に聳える大聖堂がシンボルとなっており、観光地として訪れる者も少なくない。
 全ての国民が神を信仰しており、皆一様に優しさに満ち溢れていると言われている。
 また、他国の孤児や奴隷などを積極的に保護しており、奴隷制度撤廃を世界へ訴えかけている。
 このことからデメテールは『世界一優しい国』と呼ばれるようになった。


 ***


 タローとタマコはデメテールにの近くにある森へ到着していた。
 というのもタイタンからデメテールまでは徒歩だと10日以上かかるため、タマコの技である音速移動ソニックを使ってほぼ1日で移動したのである。
 音速ゆえに周りの物を破壊しかねないので空中を移動してきたのだが、空から降りると目立つので遠くの方に着地したのだった。

「ほれタロー着いたぞ」

「んあっ…………あ~寝てた」

 タローはタマコに背負われて移動したのだが、移動中には相当なGがかかっているにも関わらず爆睡できるのは彼くらいなものだ。
 背から降りると遠くからデメテールを眺める。
 タイタンのような石壁は無いが、厳重な警備が施されている。

「ホントにワイトってのが10万もいるのか?」

「ワイトは日光に弱いからのぅ。日中は地中にいることが多い」

 歩きながらワイトの情報をタマコは話す。
 タマコの話だと、夜になると地上へ出てきて人を襲うそうだ。
 大体0時ごろに目覚めることが多いらしい。
 ちなみに日に当たらない洞窟に潜んでいることもある。
 そうこうしている間にデメテールの前まで着くと、警備兵が入国検査をしていた。
 順番を待ち自分たちの番になる。

「ここへ来た目的は?」

「依頼を受けに来た。ワイトの討伐」

 タローが依頼書を見せると、警備兵が驚いた。

「この依頼受けてくださったのですね。ありがとうございます!
 我々だけでは手が足りなくて…………」

「いいよ礼なんて」

「ち、ちなみにそちらのお連れの方はパーティーの方ですか?」

「使い魔だ」

「タマコじゃ」

「そ、そうでしたか。申し訳ありません」

 タマコの美貌に少し見とれていた警備兵だが、使い魔とわかると急に顔を青ざめた。
 すると、手早く入国許可書を発行して「依頼頑張ってください!」とエールを送り、次の人の審査を始めた。



 ***


 さて、依頼を達成するのもいいが、ここは観光地としても有名なデメテール。
 仕事の前に観光しておくのも悪くはない。
 まずは腹ごしらえするためにタローとタマコはデメテールでも有名なレストランへと向かうことにした。
 ウキウキで向かうタローであったが、タマコは少し気分が良くなかった。
 というのも先ほどからすれ違うたびに視線を向けられるのだ。
 それでも気にせず歩いていると、一人の男性に声をかけられる。

「そこのお嬢さん。私と食事でもいかがかな?」

 その男はスーツにオールバック。身に着けている金品からしても金持ちであることが伝わった。

「けっこうじゃ」

 すぐに断り歩き去るが、

「お姉さんキレイだねぇ! 俺と遊んでかない?」
「おっほっほ! ワシにケツ触らせてくれんかのぉ?」

 それはそれは酷いナンパの嵐であった。
 横にタローがいるにも関わらず、すれ違う男皆タマコに話しかけるのだ。
 そのせいでレストランへ向かいたいのに先ほどから7歩しか進んでない。

「……タマコ俺腹減ったぞ」

「……私もだ」

 いい加減うんざりした時、タマコが「やれやれ」と言って男たちに向き直った。

「俺とデートでも!」
「私とランチでもいかがかな!」
「ケツ触らせぇ」

 男たちがタマコへ詰め寄る。
 すると、タマコは男たちにしか聞こえない声で囁いた。

「どかねぇとキン〇マ握り潰すぞ」

 それは男たちにとっては未知の殺気であった。
 さすがは魔王。迫力が違う。
 男たちは一目散へと逃げ帰り、他に群がっていた男たちもタマコの怒気にあてられ離れていった。

「美人も疲れるんだな」

 というのはタローの言葉であった。


 ***


「つーかお前の格好が原因じゃね?」

 目的のレストランで食事に舌鼓を打っていると、唐突にタローが言い出した。
 自分の格好を見ても何が悪いかわからないタマコ。

「なにか問題あるか?」

「胸元とか出ててなんかエロいんだよ。そのドレス」

 タマコの格好はタローと戦った時のドレスのままである。
 タローは見慣れてしまったが、他の人が見るとタマコの美しさも相まってその優美さを増していた。
 タマコは「そ、そうなのか。いつもこの格好だったからわからん……」と困惑している。

「心機一転したって言ってたじゃん。髪だけじゃなくて服装も変えれば?」

「確かにそうじゃが……どんなのが良いのかよくわからん」

 タマコは人間の普通の服装がわからなかった。

「安心しろよ。俺が選んでやるからさ!」

 タローは自信満々に言うと、お会計を済ませて服屋へと向かった。


 ・・・・・・・・・



 ・・・・・・・



 ・・・・・



 で、選んだのだが――


「うん。これでいいや」


「…………ジャージやん」


 上下黒のジャージであった。
 タローは普通じゃないので普通の服装など知らなかった。
 もう少しいい服が良かったタマコは不満そうだ。

「もう少し可愛いのはないのか?」

 タマコが訊くと、タローはため息をついた。

「もうちょい自分が美人なこと自覚してもいいと思うぜ? さっきから何回話しかけられてんだよ」

「び、美人// ……た、タローはどう思うのじゃ?」タマコは顔を赤くして訊いた。

「どうって何が?」

「私のこと、美人だと思うか?」

「……何言ってんだよお前?」

 タローは首を傾げた。

(まぁ、タローに女の気持ちはまだ早いか……)

 その反応に少しガッカリしたタマコ。
 だがタローの言葉には続きがあった。

「そんなん――」

「?」

「奇麗に決まってんじゃん」

「…………//」

 最大限に顔を赤くするタマコ。
 だがすぐにハッとなる。

(ま、まずい本能が目覚めそうじゃ!)

 頑張って抑え込んだ本能がまた爆発しそうになるが、強靭な理性で抑え込んだ。
 だが、それも完璧ではなかった。

「タロー」

「ん?」

「これ……買う//」

 こうしてタマコの服装お気に入りはドレスからジャージに変更になった。



 ***



 最後にタローらが訪れたのはこの国のシンボルである『デメテール大聖堂』だ。
 豪勢な扉に、頂上には大鐘楼が目立つ。
 その神秘的な建物は神を信仰していない者でも、一度は祈りを捧げたくなるほどだ。

「デッケェな」

「魔王城も豪勢じゃったが、ここも負けておらんのぉ」

 二人ともそれぞれ感想を述べる。
 外観を見終え、いよいよ中に入った。
 入ると奇跡的にお客さんはいなくて、貸し切り状態であった。

「おぉ……って感じするわ」

「私はわぁ……って感じがしたぞ」

 神を信仰していない者でも、一度は祈りを捧げたくなるほど神秘的なのに二人とも感じることは浅かった。
 所詮芸術なんて見てもフワフワした感想しか出ないもんである。
 だがせっかく来たので、ついでに祈りをささげることにした。

「ところで祈りって何するん?」

「魔王にそれを訊くのか? 私も知らんぞ」

 もう帰れよとでも言いたくなるが、せっかく観光地に来て何もしないのも気が引ける。
 とりあえず目をつぶって祈ってる風でごまかした。
 するとそこへ声をかける者が一人――

「何かお困りですかな?」

「うぇ?」

 突然話しかけられ変な声が出るタロー。
 その人は優しそうな顔の初老の男性だった。
 その男はタローが驚いたのを見て笑いながら挨拶をした。

「失礼しました。私はこの大聖堂の司教をやっております"カイエン"と申します」

「あ、どうもタローです」

 司教のカイエンと名乗る男は手を差し出したので、タローも挨拶をして握手をした。
 お互いに手を離すと、カイエンはタローの横の人物に目が留まった。
 しばらく見つめると、タマコは視線に気づき目を開けた。

「む、なんじゃ?」

 カイエンは何もしゃべらず見つめたままだ。
 またタマコに見とれたのかと思ったが、それは違った。

「――きゅ、吸血鬼か!?」

「っ!」

 タマコは人間ではないことだけでなく自分の種族ごと見破ったことに驚いた。
 しかし、カイエンの声に教会のシスターが一斉に反応した。
 手に聖水と十字架を持ったシスター6人がタマコを取り囲む。


「「「「「「神の名のもとに断罪する!」」」」」」


 どうやらワイトの前に一波乱あるようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~

川嶋マサヒロ
ファンタジー
 ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。  かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。  それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。  現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。  引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。  あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。  そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。 イラストは ジュエルセイバーFREE 様です。 URL:http://www.jewel-s.jp/

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

異世界での異生活

なにがし
ファンタジー
役職定年を迎えた男が事故に巻き込まれケガをする。病院に運ばれ治療をしていたはずなのに、なぜか異世界に。しかも、女性の衣服を身に着け、宿屋の一室に。最低な異世界転移を迎えた男が、異世界で生きるために頑張る物語です。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

処理中です...