バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

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幕間(1)

第31話 余計なことを言うと余計な被害がでる

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 デメテール国での死闘。
 まさか12話もかかるとは思わなかったほど長く続いた戦いを終え、功労者はタイタンへと帰ってきた。
 タローは顔つきが変わっていた。
 やはり男、いや、漢は苦難を乗り越えると男らしい顔つきになるようだ。

「30万体のワイト……3000万Gか(G_G)」

 あ、違ったわ。
 顔つきは変わっているが目がGになっているだけだったみたい。

 そんなこんなで何が言いたいかと言うとやっぱり人を変えるのは大金だということである。

 まぁ人を救ったうえでお金ももらえるのだから良しとしよう。



 ***


 ――ギルド本部・ギルド長室――


「ごめん。報酬、0ゴールドだわ」

「…………………………………………え?」

「だから、報酬0なんだわ」

「…………………………………………そういうギャグ?」

「ギャグじゃない。事実」

「………………………………………………」

「………………………………………………」

「………………なんッ……………………だとッ…………!」

「久しぶりに出たなブ〇ーチ風」

 タローと話すのはこちらも久しぶりに登場ギルドマスターのドラムスである。
 久しぶりに登場しすぎてどういう口調だったか忘れられるほど影が薄くなったこの男は、帰ってきたタローから事の詳細を聴かされた。
 そしてドラムスはそれを聴いたうえで報酬は無いと言っているのである。

「なぜ報酬が無いのじゃ? それ相応の理由があるのじゃろう?」

 お茶をすすりながら唇を開くタマコにタローも「そうだそうだ! 理由を教えろ!」と追従する。
 ため息をつきながらドラムスは淡々と言い放った。


「だってお前――ワイト倒してないだろ」


「「………………………………………………」」


 二人は頭の中でデメテールでの出来事を遡る。

 10万のワイトを倒した。
 だがこれはワイトではなく司教であるカイエンの魔法により作られた人形であった。
 後の20万も同様である。

 蘇生する腐敗竜リバイバル・ドラゴンゾンビを討伐した。
 これはワイトの上位種であるゾンビとドラゴンの血が混ざったモンスターである。
 ワイトの上位種ではあるが、ワイトではない。

 よって、このことから言えるのは

 タローたちはワイトを一体も倒していないのである。
 報告でギルドマスターくらいには本当のこと話してもいいか、というか俺の武勇伝というか自慢を聞かせてやろう。そう思ったが運の尽きだった。
 何も言わなかったら3000万Gが手に入ったのに、真実を話したことで報酬を水の泡にしてしまったのである。

「で、でもさ! ナレーションも言ってるけどゾンビもワイトの上位種なわけじゃん!
 だったら報酬貰ってもよくない!?」

「いや、でもゾンビとワイトは似てるようで違う……っていう設定なんだよこの世界では」

「誰だその設定考えた奴は今すぐ教えろぶっ殺してやる」

「落ち着け! 久しぶりのギャグ回ではしゃぐな。メタ発言やめろ」

 血走った眼で魔剣を持つ姿は主人公というにはあまりにも邪悪すぎた。
 その後怒り狂ったタローを鎮めるのに30分かかった


 ***


「……」

 部屋のソファに座りもせず、隅っこで体育座りしているタロー。
 普段おっとりしている人ほど怒ったときは恐ろしいものである。
 何とか怒りを鎮めると心にぽっかり穴が開いたようになってしまった。

「タローよ……その、なんだ……また次頑張ればいいだろ、な?」

「……頑張るとかめんどくさいし」

「なんか久しぶりにお前の怠惰な部分を見たな」

 体育座りの状態で横に倒れると、そのまま日曜日のお父さんのような寝相になる。

「人ってのは頑張りすぎなんだよ……常に5割以下の力で生きていればいいんだ」

「お前の場合1割出してるかも怪しいけどな」

「本気を出すときは7割でいいの。10割出したら燃え尽きちゃうからね……また燃え上がるように燃え種もえくさは残しておくのが頭のいい生き方だといいな~と思ってる」

「お前の願望じゃねぇか」

 最近あまりサボることをしていなかったタロー。
 怠惰な主人公な割に良く働くなと作者も思っていたら、まさかここで怠惰が爆発するとは思ってもみなかった。

「そう落ち込むこともないじゃろ主殿」

 困り果てているドラムスに助け舟を出したのはタマコである。
 タマコまで報酬をよこせと言われたらギルド本部の金どころか国中の金をかき集める覚悟だったドラムスにとってはこちらの味方になってくれたのは僥倖であった。

「ドラムス。貴様の言うことは最もじゃ。
 しかし、こちらはワイト討伐という依頼を受けたのじゃ。情報を間違えてよこしたギルドにも非はあるのではないか?」

「ま、まあそれは……」

 的確な反論にぐうの音も出ないドラムス。
 だがタマコは意外にも報酬の支払いは願わなかった。
 その代わりに別のことを要求する。

「どうじゃろうか。ここは貴様の権限でタローの冒険者ランクを上げることで手を打たぬか?」

 指をパチンと鳴らしてドラムスに言う。
 確かにタローのランクと強さは明らかに釣り合っていない。
 AAAどころかSに届くのではと思っているドラムスにとって冒険者ランクを上げることでこの件を手打ちにできるのであれば願ってもいないことだ。
 しかし、冒険者の掟があるため、今までランクの飛び級は行われたことがない。
 それをやってしまうと冒険者の間で確実に不満の声が上がってしまう。
 そのことを危惧しタマコに伝える。

「それなら問題ないじゃろ」

「ほ、本当ですか?」

「もし、そのような声を上げる者がいれば――私が消す」

「何もよくねーじゃねぇか!」

「と・に・か・く・じゃ。こちらは大丈夫だから主殿のランクを上げろ。命令じゃ」

 ギルドマスターに命令するDランク冒険者の使い魔という何とも言えない図である。
 ドラムスは「どうなっても知りませんよ……」と注意しつつ、ギルドマスターの権限でタローをBランクに昇格させた。













 次の日、タローがBランクに上がったという情報が冒険者の間で広がった。
 ギルドの受付では苦情が殺到したという。
 中には「ぶっ殺してやる!」と荒ぶる者も出たそうだ。







 そのまた次の日、ギルドに集まった冒険者は全員が満身創痍になっていたという。
 前日に殺してやる宣言をしていた冒険者の話によると、

 金髪の美しい女が現れて、気が付くと冒険者全員死にかけていた

 らしい。
 おそらくタマコである。
 冒険者はよっぽど恐ろしかったのか、目に見えるほど震えていたという。

 その後、タローのことで文句を言う者は現れなかった。
 そしてタイタンには、出会った瞬間に半殺しにする恐ろしい金髪の女がいるという噂ができたのは、また別の話である。
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