バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

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魔剣争奪戦編

第69話 レオン&アルバートvsクロス(1)

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 ――魔王タイラント=マリア=コバルト――

 あぁ……君に出会ってからというもの、吾輩の頭はキミのことでいっぱいだ――

 だが、こんなに想っているというのに……我が愛は一方通行のまま――

 マリアよ……どうしたらキミは吾輩に振り向いてくれるのだ――

 マリアに愛を伝え、マリアにフラれた。
 それ以降も何かとアタックしているのだが、彼女は全く相手にしてくれない。
 思いを拗らせ数百年経っても、それは変わらなかった。

 だが、そんな魔王ストーカーにも転機が訪れる。

『――傲慢の魔剣ルシファー?』

 マリアのことについて調べている途中で偶然手に入れた情報。
 それは魔剣の情報だ。
 魔剣は魔王が持つ魔王の証。
 全部で7つある魔剣にはそれぞれに固有の能力が宿っている。

 しかし、その全貌は明らかになってはいない。
 そもそも魔王が自分から能力を明らかにするわけもない。加えてその目で能力を見たとしても生きて帰れないのだ。
 明らかになったときといえば、勇者が現れたとき。
 魔王を倒した勇者ならばその能力を後世に伝えることは可能である。
 だが魔王には未だ無敗の者が存在する。

 憤怒の魔剣サタンの所持者、魔王ハザード・ダイヤモンド

 暴食の魔剣ベルゼブブの所持者、魔王アンブレラ・サファイア

 そして、傲慢の魔剣ルシファーの所持者、魔王アルバート・ルビー

 この3柱に関しては、魔剣の名前しか判明しておらず、能力を見たものは全員殺されている。
 そんな誰も知らない開かずの扉であったが、ついにその能力を見た者が現れたのだ。

 ソイツはなんて事のない低級のモンスター。
 どうやら遠目から見たらしい。

 そしてその能力とは――

 曰く、『思考改変』の能力らしい――


 クロスは思った――
『そうだ、それを使ってマリアを改心させればいいのだ!』と。

 クロスは早速アルバート=ルビーを目撃したという場所まで直行した。

 だが、魔王アルバートは住処を転々としているようで、会うことは叶わなかった。

『ヒッヒッヒ……いずれ必ず吾輩が手に入れるぞ……』

 これは、魔剣争奪戦が開始される100年前のことだった。


 ・・・・・・・
 ・・・・・
 ・・・


 どんな因果か、はたまた神の思し召しに叶ったのかはわからない。
 大事なことは、確かにクロスの前に傲慢の魔剣ルシファーが現れたことだ。
 当然、魔王はこの機を逃しはしない。

「ヒッヒッヒ……貴様の魔剣、吾輩が貰うぞ!」

 クロスは強欲の魔剣マモンを持ったままレオンへと強襲――
 ではなく、距離を取った。
 後ろへ跳んでいくと、川の真ん中にある岩へと着地した。

「おや、来ないのですか?」

 レオンはクロスへと挑発の口調で問う。
 だがクロスはレオンの狙いに気付いているのか、至って冷静であった。

「ヒッヒッヒ……傲慢の魔剣ルシファーの能力は思考改変能力。して、その発動条件は――こと、なのだろう?」

 クロスの推理にレオンもは「ほぅ……」と感嘆の声を漏らす。

「確かに傲慢の魔剣ルシファーを発動するには相手の血が必要です……どうやら最低限の情報は用意しているようですね。褒めてあげますよ」

「ヒッヒッヒ……いつまで上からものを言ってられるかな」

 レオンは自分の手の内を一つ知られたにもかかわらず、まだ上からの態度を崩さない。
 それに少しイラついたクロスはおもむろに川の中へ手を入れた。

 すると、突如としてクロスの周りの水が畝り出す。

「これは……」見上げるレオン。

 あっという間に大きくなった水は8本の大きな柱になる。
 しかしこれだけでは終わらない。

「ヒッヒッヒ……この場所に飛ばされた不運を恨むんだなッッ!」

 クロスが手を前に翳すと、柱は鞭のようなしなやかさを帯び、レオンに狙いを定めた。

「弾け飛べーー海物の畝りクラーケン・ウィップ!」

 8本の大波が一直線にレオンへと襲い掛かる。
 未だ動かないレオンに対し、クロスは勝利を確信した。

「心理を読み解く強欲の魔剣マモンと心理を変える傲慢の魔剣ルシファーで、吾輩は必ずマリアを手に入れる!」

 魔王ハンター=クロス=トパーズの魔法は『水』。
 少しの水溜まりさえあれば、その水を増幅させることが可能であり、海のような大波すらも発生させることができる。

 現在の場所は川。
 まさにクロスにとって、ここは絶好の戦場であった。

(マリア……これでキミを――)

 クロスは唇を吊り上げる。

 だが、ここでレオンが動いた。

「アルバート、頼みます」
「オッケー任せて!」

 指示を受けた妖精が手をかざす。
 すると、レオンは俊敏な動き8本全ての水柱を躱した。

「……なんだと?」

 海物の畝りクラーケン・ウィップはそのまま地面へと激突。
 大きな飛沫となって空中に散布する。

 クロスが驚くのも束の間、レオンはその足で一気位距離を詰める。
 クロスもそれに反応していたが、大量の飛沫が邪魔してレオンの姿をうまく捉えられない。
 レオンもそれを利用して動いているためか、すぐに視界から消えてしまった。

「ぬぅ……どこだ?」

 雨のように降り注ぐ飛沫の中で辺りを見回すクロス。


「――やれやれ、女性の心を射止めるのに力技とは芸がありませんね」

「後ろかッ!?」

 クロスが振り返ると、そこには右腕を曲げたレオンが。

「――フッ」

 静かな吐息と共に腕を突き出すと、手首の腕時計の仕掛けが作動。勢いよく何かが飛び出す。
 クロスの顔面目掛けて放たれたのは真っ黒なナイフ型の魔剣――傲慢の魔剣ルシファーだ。

「――チッ」

 体をのけ反り一撃を躱すと、すぐさま別の岩へと移動する。
 クロスは前髪が斬られた程度で、怪我はないようだ。

 クロスが退いた間に、レオンは傲慢の魔剣ルシファーを右手に持ち直した。

「魔剣の最低限の情報を得ているのは良いですが、もう少し他の魔王のことも調べておくべきでしたね」

 レオンの横では魔王アルバートが笑顔でピースをしていた。

(どうやらあの魔王の魔法のようだな……)

 レオンが動く直前、アルバートが何かを施していたのをクロスは見逃していなかった。
 そしてそこから判明したこともある。

(確かに何かの魔法によって強化されたようだが……想像以上に速くなったわけではない――)

 海物の畝りクラーケン・ウィップを避けたのは見事であったが、多少の速さと動体視力があれば出来ない芸当ではない。
 この魔法の真の目的は、相手の実力を観察することだ。

 力で対抗のか。
 防御するのか。
 避けるのか。

 相手の咄嗟に出した行動が、その者が一番得意とするもの――

 レオンの行動は避けるであった。

(コイツの攻撃力と防御力は大したことはなく、おそらく速さがマシだが……強化されてあの程度の速さならば、スピードもそれほど高くは無いのだろうな――)

 クロスはこの戦闘に勝機を見出した。
 分析通りならクロスが負けることはないだろう。

「ヒッヒッヒ……待っていろマリア。すぐにキミの心を掴んでみせるぞ……」

 どこかで一柱の魔王が身震いする。
 自分のことで無いにしても気持ちが悪いのは確かであった。
 もはやクロスの頭の中はお花畑同然である。

 だが、こと戦闘に置いて――


「やれやれーー」

 レオンはこの日何度目かもわからない溜め息をつく。

「全く、私は戦闘向きではないんですがね……」

「あははは! わたしもー!」


 ――自分の勝利を確信した瞬間ときは大抵、敗北のフラグであることをクロスは知らない。


 ***


 レオン・フェルマー
 Sランク冒険者。転移者。
 スキル:???

 ステータス
 攻撃力:3400
 防御力:2700
 速度:3750
 魔力:0
 知力:測定不能


 アルバート=ルビー
 魔法:???

 ステータス
 攻撃力:94
 防御力:58
 速度:9000
 魔力:9700
 知力:9999
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