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魔剣争奪戦編
第71話 レオン&アルバートvsクロス(3)
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「……遅ぇな、タマコのやつ」
「(´・ω・`)」
(訳:そうですね……)
少し離れると言ってから既に5分以上経過しているのに、タマコは一向に戻ってこない。
時間にうるさい彼女にしては珍しいことであった。
「まさかアイツ……」
「(^・ω・^)?」
(訳:?)
タローは何かを予感した。
けれど、口に出すのを躊躇う。
それを声に出したらーー良からぬことが起こると思ったからだ。
(タマコ……)
タローは、ただ彼女の歩いた方向に鋭い視線を向けるのみであった。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
爆音と共に二度目の水柱を上げ、大きな水飛沫が雨のように降り注ぐ。
「イェーイ! やったねレオン!」
面白いほどに作戦が上手くいきテンションが上がる赤髪の妖精。
だが、それに対してレオンの表情は緩んではいなかった。
「それは……どうでしょうね」
「?」
「不意打ちとはいえ爆発は水中です。ダメージは負わせても――」
「――……『決着はつかない』……か?」
レオンとアルバートが振り向くと、そこにはびしょ濡れのクロスが立っていた。
どうやら爆破寸前で水のバリアを張り巡らせたおかげで事なきを得たようだ。
零距離であった右足は完全に守りきれなかったが欠損はしていない。
重度の火傷が見られるため使い物にはならないが、戦闘はまだ続行できる領域だ。
「ヒッヒッヒ……まさか水中に『地雷』を設置するとはな……さすがに面食らったぞ」
不気味な笑い声をあげるクロスであったが、その目は怒りに満ちていた。
殺意がレオンを叩くが、本人は対して気にも留めていない。
「水中なんで『機雷』の方がいいと思ったのですがね……それだと目立つので、地雷型にしてみたんですよ」
良い作戦でしょ? と答えを促すレオンに対し、クロスはイライラを募らせていく。
「……いつの間に罠を仕掛けたッッ!」
語気を荒げて問いかけるクロス。
顎に手をやり考えたレオンは、意外にもその質問に答えた。
「私は”罠系のスキル”でしてね。自分を中心に半径10メートル以内に好きな罠を仕掛けることができるんですよ」
クロスの眉がピクンと跳ねる。
ある程度の予想はできていたが、能力を特定するには材料が少なすぎていた。
会話の中で探るつもりであったが、まさか範囲まで教えるとは予想外。
嬉しい誤算だった。
そして嬉しい誤算はもう一つ続いた。
「ちなみにぼくの魔法は『補助』。ステータスを一定時間2倍にすることだよ!」
腰に手をやり鼻を鳴らす妖精。
レオンはギョッとしてアルバートを見ると、初めて取り乱した。
「あ、アルバート! あなたの能力は言わなくていいんですよ!」
「――あっ! つい調子に乗って!」
「何をしているんですかアナタは!?」
ゴメンと謝るアルバートにレオンは頭を抱えた。
クロスは最初何かの作戦かと怪しんでいたが、レオンとアルバートの反応から純粋なミスだと結論付けた。
(ヒッヒッヒ……これは思わぬ収穫だ!)
真相心理では読めないレオンの思考。
狡猾なレオンのこと、おっちょこちょいなアルバートにも何らかの作戦で読めなくしているのは察しが付く。
おそらく最初に自分のスキルを言ったのはレオンの傲慢さ故。
クロスはレオンより劣っているのだとナメていたのだ。
それにより調子に乗ったアルバートが言わなくていい情報まで漏らした。
過程はどうあれ全てはレオンの油断が招いた失敗である。
「ヒッヒッヒ……自分から能力をバラすとは馬鹿も馬鹿よッッ!」
今度こそ勝機を見出したクロスは今までで一番の大波を起こす。
「調子に乗ったのが運の尽きよ――」
大波は空中に舞い上がり、大きな三叉の槍となった。
「あわわわわ~! これヤバいでしょ!」
その質量にアルバートは目を回し始める。
「落ち着きなさい! どんな攻撃にも必ず隙があります!」
冷静に振る舞うレオンだが、内心では恐怖が渦巻き始めていた。
そしてレオンが攻撃を見極めようとしている最中に、その槍はついに発射された。
「傲慢な人間よ、海の怒りに沈め――大海神の三叉槍!」
荒れ狂う海の如く、その槍は川の水を吸収しながらレオンへと突き進む。
吸収された水は巨大な槍をさらに肥大化させ、川は水嵩を減らしていった。
「ギャアーーーー! レオンやばい、アレはやばいって!」
目玉が飛び出さん勢いで狼狽するアルバート。
レオンも冷や汗が止まらないが、何とか心を落ち着かせ技を見極めることに徹する。
「こういう人は大技を出しがちなんですよ!」
レオンは水の槍――ではなく周りに視線を向けた。
いくら優れた頭脳があるとはいえ、強大な魔法をどうにかする力はない。
ならば自分にできることはただ一つ。
回避行動のみだ。
「――あれだ!」
レオンは後方の地面に罠を設置する。
この罠は踏むと強制的に相手を高く跳ばせるものである。
だが、それは何も相手に踏ませるだけのものではない。
「アルバート! 身体強化を!」
「う、うん! わかった!」
アルバートがレオンに触れ、ステータスを上昇させる。
その状態で設置した罠を強く踏み込むと、レオンは天高く跳び上がった。
「――っギリギリですね!」
跳んだ先には反り立つ岩壁。
レオンは逆手に持った傲慢の魔剣を強く握りしめると、勢いよく壁に突き刺した。
岩壁にぶら下がった瞬間、レオンの身体スレスレで水の三叉槍は通り過ぎて行った。
「――まぁ、こんなものです」
「おおー! スッゲーレオン!」
大海神の三叉槍の巨大さと速さは驚異的だが、真っ直ぐにしか進めないのが幸いであった。
万が一クロスの意思で方向転換した場合のことも考え、ギリギリまで引きつけてから躱したが、追ってこないのを見るに杞憂であったようだ。
「ヨッシャー! ここから反撃開始だー!」
「やれやれ……こちらの苦労も考えて――」
調子のいいアルバートにレオンが頭を悩ませた――その刹那――
「ヒッヒッヒ……掛かった掛かった」
卑しい笑い声が背後から聞こえた。
「――ッッ!?」
レオンが振り返ると、そこに居たのは――狂気の海賊。
「ヒッヒッヒ……死ね、愚者よ――」
迫る強欲の魔剣はレオンの胸を容易く貫いた。
目を見開くレオンを後目に、クロスは刃を引き抜き後方へと下がる。それはレオンがまだ罠を張っている可能性を考慮しての行動だった。
「ぐふっ!」
吐血し、胸から鮮血を散らして落下するレオン。
まともに受け身も取れず、地面に墜落したのが更なるダメージとなり、レオンの意識を奪っていった。
「レオン……レオン!?」
アルバートがレオンを呼ぶが、レオンは倒れ伏したまま動こうとしない。
「ヒッヒッヒ……向かってくる大技に、力のない人間は上へ逃げる。
だがそこには身をかわす所がない。詰めが甘いぞ人間」
レオンが完全に意識を失ったことを確認すると、クロスは足を引きずりながら近付く。
近くには、まるで狙ったかのようにクロスのお目当てである傲慢の魔剣が転がっていた。
「~~~っの!」
魔剣を拾おうとするクロスへアルバートが飛び出す。
しかし、アルバートのステータスではなす術はない。
クロスは片手で受け止めると、そのまま地面へと投げつけた。
「がはっ!」
地面に叩きつけられたアルバートも虚しく意識を失い倒れた。
邪魔が居なくなると、クロスは愉悦に浸りながら傲慢の魔剣を手に取った。
「ヒッヒッヒ……ヒッヒッヒ……ヒィィィィイイイイイヒッッヒッッッッッッヒ!」
眼が血走り、全身に力が入る。
自分でもイカれてると自覚できる声を上げても、クロスの顔は更に歪んでいく。
赤く染まるレオン――
倒れ伏すアルバート――
2人の強者がいたその場所で――
「これで……これで……これでこれでこれでこれで! これでマリアをッッッッッッッッッッッッ!!!!!」
立っていたのは、狂気の魔王ハンター=クロス=トパーズだった。
「(´・ω・`)」
(訳:そうですね……)
少し離れると言ってから既に5分以上経過しているのに、タマコは一向に戻ってこない。
時間にうるさい彼女にしては珍しいことであった。
「まさかアイツ……」
「(^・ω・^)?」
(訳:?)
タローは何かを予感した。
けれど、口に出すのを躊躇う。
それを声に出したらーー良からぬことが起こると思ったからだ。
(タマコ……)
タローは、ただ彼女の歩いた方向に鋭い視線を向けるのみであった。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
爆音と共に二度目の水柱を上げ、大きな水飛沫が雨のように降り注ぐ。
「イェーイ! やったねレオン!」
面白いほどに作戦が上手くいきテンションが上がる赤髪の妖精。
だが、それに対してレオンの表情は緩んではいなかった。
「それは……どうでしょうね」
「?」
「不意打ちとはいえ爆発は水中です。ダメージは負わせても――」
「――……『決着はつかない』……か?」
レオンとアルバートが振り向くと、そこにはびしょ濡れのクロスが立っていた。
どうやら爆破寸前で水のバリアを張り巡らせたおかげで事なきを得たようだ。
零距離であった右足は完全に守りきれなかったが欠損はしていない。
重度の火傷が見られるため使い物にはならないが、戦闘はまだ続行できる領域だ。
「ヒッヒッヒ……まさか水中に『地雷』を設置するとはな……さすがに面食らったぞ」
不気味な笑い声をあげるクロスであったが、その目は怒りに満ちていた。
殺意がレオンを叩くが、本人は対して気にも留めていない。
「水中なんで『機雷』の方がいいと思ったのですがね……それだと目立つので、地雷型にしてみたんですよ」
良い作戦でしょ? と答えを促すレオンに対し、クロスはイライラを募らせていく。
「……いつの間に罠を仕掛けたッッ!」
語気を荒げて問いかけるクロス。
顎に手をやり考えたレオンは、意外にもその質問に答えた。
「私は”罠系のスキル”でしてね。自分を中心に半径10メートル以内に好きな罠を仕掛けることができるんですよ」
クロスの眉がピクンと跳ねる。
ある程度の予想はできていたが、能力を特定するには材料が少なすぎていた。
会話の中で探るつもりであったが、まさか範囲まで教えるとは予想外。
嬉しい誤算だった。
そして嬉しい誤算はもう一つ続いた。
「ちなみにぼくの魔法は『補助』。ステータスを一定時間2倍にすることだよ!」
腰に手をやり鼻を鳴らす妖精。
レオンはギョッとしてアルバートを見ると、初めて取り乱した。
「あ、アルバート! あなたの能力は言わなくていいんですよ!」
「――あっ! つい調子に乗って!」
「何をしているんですかアナタは!?」
ゴメンと謝るアルバートにレオンは頭を抱えた。
クロスは最初何かの作戦かと怪しんでいたが、レオンとアルバートの反応から純粋なミスだと結論付けた。
(ヒッヒッヒ……これは思わぬ収穫だ!)
真相心理では読めないレオンの思考。
狡猾なレオンのこと、おっちょこちょいなアルバートにも何らかの作戦で読めなくしているのは察しが付く。
おそらく最初に自分のスキルを言ったのはレオンの傲慢さ故。
クロスはレオンより劣っているのだとナメていたのだ。
それにより調子に乗ったアルバートが言わなくていい情報まで漏らした。
過程はどうあれ全てはレオンの油断が招いた失敗である。
「ヒッヒッヒ……自分から能力をバラすとは馬鹿も馬鹿よッッ!」
今度こそ勝機を見出したクロスは今までで一番の大波を起こす。
「調子に乗ったのが運の尽きよ――」
大波は空中に舞い上がり、大きな三叉の槍となった。
「あわわわわ~! これヤバいでしょ!」
その質量にアルバートは目を回し始める。
「落ち着きなさい! どんな攻撃にも必ず隙があります!」
冷静に振る舞うレオンだが、内心では恐怖が渦巻き始めていた。
そしてレオンが攻撃を見極めようとしている最中に、その槍はついに発射された。
「傲慢な人間よ、海の怒りに沈め――大海神の三叉槍!」
荒れ狂う海の如く、その槍は川の水を吸収しながらレオンへと突き進む。
吸収された水は巨大な槍をさらに肥大化させ、川は水嵩を減らしていった。
「ギャアーーーー! レオンやばい、アレはやばいって!」
目玉が飛び出さん勢いで狼狽するアルバート。
レオンも冷や汗が止まらないが、何とか心を落ち着かせ技を見極めることに徹する。
「こういう人は大技を出しがちなんですよ!」
レオンは水の槍――ではなく周りに視線を向けた。
いくら優れた頭脳があるとはいえ、強大な魔法をどうにかする力はない。
ならば自分にできることはただ一つ。
回避行動のみだ。
「――あれだ!」
レオンは後方の地面に罠を設置する。
この罠は踏むと強制的に相手を高く跳ばせるものである。
だが、それは何も相手に踏ませるだけのものではない。
「アルバート! 身体強化を!」
「う、うん! わかった!」
アルバートがレオンに触れ、ステータスを上昇させる。
その状態で設置した罠を強く踏み込むと、レオンは天高く跳び上がった。
「――っギリギリですね!」
跳んだ先には反り立つ岩壁。
レオンは逆手に持った傲慢の魔剣を強く握りしめると、勢いよく壁に突き刺した。
岩壁にぶら下がった瞬間、レオンの身体スレスレで水の三叉槍は通り過ぎて行った。
「――まぁ、こんなものです」
「おおー! スッゲーレオン!」
大海神の三叉槍の巨大さと速さは驚異的だが、真っ直ぐにしか進めないのが幸いであった。
万が一クロスの意思で方向転換した場合のことも考え、ギリギリまで引きつけてから躱したが、追ってこないのを見るに杞憂であったようだ。
「ヨッシャー! ここから反撃開始だー!」
「やれやれ……こちらの苦労も考えて――」
調子のいいアルバートにレオンが頭を悩ませた――その刹那――
「ヒッヒッヒ……掛かった掛かった」
卑しい笑い声が背後から聞こえた。
「――ッッ!?」
レオンが振り返ると、そこに居たのは――狂気の海賊。
「ヒッヒッヒ……死ね、愚者よ――」
迫る強欲の魔剣はレオンの胸を容易く貫いた。
目を見開くレオンを後目に、クロスは刃を引き抜き後方へと下がる。それはレオンがまだ罠を張っている可能性を考慮しての行動だった。
「ぐふっ!」
吐血し、胸から鮮血を散らして落下するレオン。
まともに受け身も取れず、地面に墜落したのが更なるダメージとなり、レオンの意識を奪っていった。
「レオン……レオン!?」
アルバートがレオンを呼ぶが、レオンは倒れ伏したまま動こうとしない。
「ヒッヒッヒ……向かってくる大技に、力のない人間は上へ逃げる。
だがそこには身をかわす所がない。詰めが甘いぞ人間」
レオンが完全に意識を失ったことを確認すると、クロスは足を引きずりながら近付く。
近くには、まるで狙ったかのようにクロスのお目当てである傲慢の魔剣が転がっていた。
「~~~っの!」
魔剣を拾おうとするクロスへアルバートが飛び出す。
しかし、アルバートのステータスではなす術はない。
クロスは片手で受け止めると、そのまま地面へと投げつけた。
「がはっ!」
地面に叩きつけられたアルバートも虚しく意識を失い倒れた。
邪魔が居なくなると、クロスは愉悦に浸りながら傲慢の魔剣を手に取った。
「ヒッヒッヒ……ヒッヒッヒ……ヒィィィィイイイイイヒッッヒッッッッッッヒ!」
眼が血走り、全身に力が入る。
自分でもイカれてると自覚できる声を上げても、クロスの顔は更に歪んでいく。
赤く染まるレオン――
倒れ伏すアルバート――
2人の強者がいたその場所で――
「これで……これで……これでこれでこれでこれで! これでマリアをッッッッッッッッッッッッ!!!!!」
立っていたのは、狂気の魔王ハンター=クロス=トパーズだった。
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