バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤

文字の大きさ
99 / 198
魔剣争奪戦編

第94話 その力は希望か、絶望か

しおりを挟む
 強化五感スーパーセンスは五感を最大限まで強化するスキルである。
 レオンはこの能力で相手の動きを分析、予測することで自分より強い敵にも勝利を収めることが出来た。
 パワーやスピードが上がると言った派手な技ではないが、レオンという一人の大天才が使用することにより、このスキルは強力と言って差し支えない実力を発揮している。
 しかし、唯一弱点があるとするならば、レオンはこう答える。

 ――行動に0.3秒の遅れがでてしまう――と。

 相手の動きを予測する。
 聞こえはいいが、予測するための思考にも時間を使う。
 神がかり的頭脳で分析を行うことで0.3秒というスピードを叩き出すレオン。
 だが、ムサシほどの速度で動かれては、この0.3秒というタイムラグが命取りとなってしまうのだ。

 レオンはこの事実をスキル発動直後に察知した。
 予測する前に動かれては、スキルの効果も半減。
 運よく避けられるときもあったが、それも長くは続かない。

 スキルでは対応できない。

 ――ならば、使うしかないだろう

 ――使うのは好きではないが

 ――仕方がない……全てはより良い未来のため、だ……



 ***



「最大解放か――面白い!」

 のど元に突き付けられたナイフを弾き、すぐさま攻撃を仕掛ける。

「その力、見極めさせてもらうよ!」

 右手でナイフを弾き、左手の脇差でレオンを狙おうと――

「――"左で斬ると見せかけ、本命は左足による蹴り"……ですか」
「なに!?」

 レオンはムサシの攻撃前に、攻撃方法を言い当てた。
 すでにキックを繰り出そうとしていた足だったが、ギリギリで攻撃を止める。
 もちろん、狙っていた箇所には傲慢の魔剣ルシファーが待ち構えられていた。

(なんだ……どうやって動きを読んだんだ?)

 ムサシの頬に冷たい雫が流れる。
 奇妙な気配を感じて一歩ずつ距離を取った。
 しかし、そこには――

「ムサシっち……不用意に動くと危ないよ?」
「あ――」

 しまった、とムサシは顔をしかめる。
 レオンに気をとられ、つい頭から存在を消してしまっていた。

(そうだ……アルバートのこと忘れてた!)

 途端、ムサシの足元が爆発を起こす。
 が、ムサシは勘の良さから危機を察知。
 高速移動で回避した。
 ところが、そこでムサシは異変に気付く。

(いや、おかしい! これは爆弾というより――)

 確かに凄まじい爆発だったが、ムサシなら躱せるほどの威力。
 正直言って、時間稼ぎ程度にしかならない。
 だが、本当に凄まじいのは爆発の威力ではなく、その煙の量。
 黒煙がムサシの周囲を包み込み、視界が利かなくなってしまったのだ。

「この程度、憤怒の魔剣サタンで斬ってやる!」

 ムサシは魔剣の力で煙の切断を試みる。
 万物を斬る断罪執行サタナエルなら煙を斬ることは可能である。
 刀を振るおうとする腕に力を込めた――その瞬間
 嫌な気配を背後に感じた。

「うおっ!?」

 身を翻すと、先ほどまでいた所にナイフが突きつけられた。
 もちろん正体は、レオンである。

「――さすがの勘の良さだ!」
「そっちこそ……いやらしい攻撃してくるね!」

 ムサシは二刀を十字に合わせると、そのまま刀を振るう。
 すると、刀に覆われていた黒い魔力が斬撃として放たれた。

(――っ!? まさか!)

 煙を吹き飛ばしながら向かっていく斬撃だったが、レオンはそれを簡単に避けてしまう。
 レオンを睨むムサシの視線と、ムサシを視るレオンの視線がぶつかった。
 だがそれは一瞬のことで、レオンは地面に設置させられた地雷をわざと踏むと、もう一度爆発、煙を発生させた。

(……にわかには信じがたいけど……そういうことなんだね)

 斬撃を躱したレオンに、ムサシは確信した
 ほんの一瞬しか見えなかったが、レオンはあのとき、確かにムサシが斬撃を放つ動き出していた。
 思い返せば最大解放を発動してからそうだ。
 まるで、ムサシの来る位置を知っていたかのように動き出していた。
 極めつけはレオンの視線。
 レオンの視線はムサシに向かっていた。
 けれど、どうしても瞳が此方を見ている感覚がしないのだ。

(つまりレオンさんが見ている……いや、『視ている』のは――)



 ***



 レオン・フェルマーのスキルは強化五感スーパーセンス
 五感を強化する能力である。
 だが、レオンはそれでも、ムサシの動きについていけない。

 強化した五感でついていけない。
 何故なら予測時間が間に合わないから。

 ならば対抗するには、その予測時間を無くすしかない。

 予測時間を無くすにはどうすればいいのか――



 視ればいいのだ……


 ――『未来』を――




 ***




 黒煙の中でも、レオンはムサシの位置を特定できる。
 いや、正確には位置をのだ。


 スキル、強化五感スーパーセンスでついていけない動きをするならば、初めから動きを知っておけばいい。

 それがレオンの最大解放――<六感覚醒シックスセンス>だ

 直近で30秒以内の未来を予知する能力であり、一度視てもタイムラグは発生せず、最大解放の時間制限が来るまで好きな未来を視ることができる。

 この能力により、レオンは視界の利かない場所であっても、ムサシの居場所が正確に特定できるのである。

(私は何としても、ここで君をさせる!)

 アルバートが仕掛けた罠も未来を視れば、どんな罠なのかも、設置場所も知ることが出来る。
 上手く避けながらレオンはムサシへと静かに迫った。


(ムサシくん……未来は視たいですか?)


 ムサシはまだレオンに気付いていない。
 このままレオンが一撃を加え、明之明星ルシフェルを発動させた瞬間、レオンの勝利だ。

(未来を視ることで、救える命がある……けれど――)


 傲慢の魔剣ルシファーが、ムサシに触れようと――




(未来を知ることは――絶望でもあるんですよ)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~

川嶋マサヒロ
ファンタジー
 ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。  かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。  それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。  現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。  引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。  あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。  そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。 イラストは ジュエルセイバーFREE 様です。 URL:http://www.jewel-s.jp/

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

異世界での異生活

なにがし
ファンタジー
役職定年を迎えた男が事故に巻き込まれケガをする。病院に運ばれ治療をしていたはずなのに、なぜか異世界に。しかも、女性の衣服を身に着け、宿屋の一室に。最低な異世界転移を迎えた男が、異世界で生きるために頑張る物語です。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

処理中です...