バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

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幕間(2)

第123話 強さの証明(中編)

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 洞窟潜入から5分後。
 暗い洞窟内に一つの怒声が響いた。

「なぜタローあの男が後ろにいないんだ!」

 叫んでいるのは【トップオブ・ザ・ワールド】のリーダーであるワンだ。
 自分大好きな彼はひょんなことからタローを仲間に加えたのだが、そのタローが5分で仲間からはぐれたのである。

「せっかく我が活躍を見せつける計画が無駄になってしまうじゃないか!」

 自身の計画が台無しになってしまったことに頭を抱える。
 そんなリーダーにメンバーのツウとスリイは真逆の態度であった。

「いいじゃないですかワンさん」
「そうですよ。アイツは見るからに三流の冒険者。構うことありません」

 自身らが敬っているワンに対しタローは少々失礼な態度をとったためか、二人からの印象は最悪であった。
 そのため、勝手にはぐれたタローがどうなろうと彼らにとっては「いいざまだ!」としかならないのだ。
 このまま三人での探索を続けようとするメンバーに対しワンはため息をつきながらも二人の意見を却下した。

「ダメだ。彼は一日だけとはいえ、この【トップオブ・ザ・ワールド】の一員なのだ。仲間を見捨てるわけにはいかない。
 たとえ、君たちが嫌っていてもね」
「ワンさん……」
「わ、わかりました」

 渋々だが二人は了承した。
 3人は探索をしつつタローの行方を捜すことにしたのだった。



 ***



 洞窟潜入から10分。タローがはぐれて5分。

 一向にタローは見つからないまま3人は進み続けていた。
 道を引き返してタローを探したものの見つからず、入れ違いになったかもしれないと進むことにしたのだ。
 が、依然としてタローは見つからないままである。

「もしかして作業員が聞いたっていう声の主にられたんじゃ……」
「はははッ! いいざまだ!」
「こらスリイ! 喜ぶんじゃない。ツウも不吉なことを言うな」
「「す、すみません!」」

 やる気もあって素直ないい子たちなのだが、いかんせんワンのことになると少しばかり悪くなる。
 ワンは叱るのが苦手なため強く言えないのだが、今回ばかりはきちんと説教をしなければならないと心に決めた。

 その直後だった。

 突然、三人の耳を奇妙な音が貫いた。

「この音は!」
「どうやらいるっぽいですね」

 作業員が聞いたという場所よりも発生源に近かったのか、その音は大きく聞こえた。
 だがこれは好機だ。今の音を頼りにすれば音の主に辿り着けるかもしれない。

「悪いがタローは後回しだ! 警戒を怠らず前へ進むぞ!」

 ワンの判断にツウとスリイは大きく頷くと、音の鳴る方へと足を進めたのであった。


 ・・・・・・・

 ・・・・・

 ・・・



 暗い洞窟の奥へと足を進めていく三人。
 松明の明かりを頼りに急ぎつつも慎重に進む。
 そして洞窟に入ってから15分後、洞窟内の開けた場所に辿り着いた。
 そこで、ようやく音の主と出会ったのだ。

「こ、コイツは!?」

 ワンはその怪物に驚愕の表情を浮かべた。
 その容姿を見るに、おそらくコイツはダークバットというCランク相当のモンスターだろう。
 暗い洞窟の中を好み、集団で生活する体長30センチほどのモンスターであり、ワンたちにとっては造作もない相手だ。
 しかし、目の前のダークバットは違う。

「ギュルルルル……」

 三人を見るなり威嚇するように喉を鳴らした。
 その声にツウとスリイも思わず唾を飲み込んだ。

「おいおいあり得ないだろ!」
「なんだこのデカさは!?」

 ツウとスリイが言うように、彼らが驚いたのはその大きさであった。
 体長30センチほどのはずのダークバット。だがコイツはどう見ても全長2メートルを超える怪物だった。

(マズイ……コイツは嫌な予感がする!)

 ワンのAランクとしての実力は本物であった。その実力者の勘が、このモンスターの危険を察知していたのである。
 撤退を指示するか否かという場面だったが、その前にツウが動いた。

「このッ!」

 ツウの武器は大型の斧。
 BランクだがパワーだけならAランクにも届きうる力を持ったツウの攻撃。
 鋭い一撃は見事ダークバットの翼に命中した。
 ただ大きいだけのダークバットなら、これで終わっていただろう。
 しかし、このダークバットは少々特殊だった。

「なっ!?」

 刃がぶつかった瞬間に響いたのは金属同士の衝突音。
 翼から激しい火花を一瞬散らすと、ダークバットは何事も無かったかのように無傷のままだった。
 逆にツウの斧は激しく刃こぼれしていた。その結果に目を見開く三人。
 だがダークバットはその隙を逃さない。
 ツウの体勢が崩れた一瞬を狙い、勢い良く噛みつこうとしたのだ。

「ツウ!」

 ワンは持っていた剣を投げつけると、それはダークバットの頭部に直撃した。
 それによりダークバットに一瞬だけ隙が生まれ、ツウはその隙に離脱したのだった。

「ありがとうございますワンさん!」
「礼なら後だ。どうやら今のも効いていないみたいだぞ」

 ワンの言葉通りダークバットはまだピンピンしている。
 喉を鳴らしながらジッとこちらを見つめ続けるが、動こうとはしない。
 こちらを警戒しているのか? と思わなくもない。
 しかしそれは違う。
 ダークバットは、すでにこの三人が自分より弱いことを理解していたのだ。
 後から判明することだが、このダークバットは固い鉱物を食べたことで進化した亜種で、ダークメタルバットという新種だったのだ。
 鉱物を取り込んだことで防御力が飛躍的にアップ。体重が重くなったことで飛べないという欠点はあるものの、防御力1800という驚異的な数値を手に入れていた。
 そしてワンの攻撃力は1200と数値が届いていなかった。

 だが、それは後から判明することであり、この三人が知る由もない。
 だからこそ、彼は無謀に走ってしまった。

(ヤバい気はする……だが、コイツを倒せば僕の名声は更に広がる!)

 ワンは冒険者としての勘よりも、自分の欲望を優先させてしまった。

「ツウ、スリイ……いくぞ!」

「はい!」
「了解です!」

 彼らの、最悪の5分間が始まってしまった瞬間であった。
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