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最終章・転生勇者編
第147.5話 親心と恋心
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ユウシがアリスに接触した同時刻。
ドラムスは長い長いため息をついていた。
「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~……」
場所はギルドのいつもの部屋だ。
お客用のソファで項垂れているドラムスの前には、もう一人座っている。
言わずもがな、本作の主人公タローである。
「どったのおっさん?」
タローファンであるギルドのお姉さんから渡された茶菓子をボリボリと食いながら尋ねると、ドラムスは俯いたままポツリポツリと話し出した。
「俺さ……最近出番少ないじゃん?」
「否定はできんね」
「で、その間暇だったから婚活をしてみたんだ」
「思い切ったね~48歳で」
ドラムス。48歳独身。恋人がいた経験は皆無である。
別に恋愛に興味がないとか、冒険者はいつ死んでもおかしくないから恋人はいらないとか、そういうのは一切ない。
ただただ、シンプルにモテないのである。
「両親もそろそろ孫の顔が見たいっていうからよ? 俺もそろそろ身を固めようかなって思ったんだけどな……」
「で、その反応ということはつまり――」
「一度も、デートすら約束できなかったよ」
ドラムスが顔を上げると、その瞳には虚無を宿っていた。
すべてに絶望しているような、すべてを諦めてしまった男の顔がそこにはあった。
「自分で言うのも何だが、経歴や収入もそこそこあるんだぜ? ギルドマスターだからな。
……なのに、女性たちは俺に一切寄り付かない!
なんでだ!? どーして俺に誰も寄ってこないんだ!?」
「顔面がキモいからじゃない?」
「ドストレートに言うなよ! わかってるけど傷つくわッ!」
自分でもブサイクだと理解している。
しかし、他人から言われると傷つくし、言われたくないのが男の本音だ。
ともかく、ドラムスはメンタルが傷ついているのだ。
婚活では上手くいかなかったし、今現在タローから暴言も受けたし。
「だからよ、今メンタルボロボロなんだ。
ギルドの職員にこんな相談するのも迷惑だと思って、誰かいないかと思ったら……自然とお前を呼んでいたわけだ」
「たしかに迷惑だな。俺も現在進行形でそう感じてるし」
「なぁ、こういうときって……どうするのが正解なんだろうな……」
「んー……」
なんやかんや言うが、一応考えてくれるのはタローの優しさであった。
だが、必ず解決してくれるとは限らない。
ましてや、相談相手はタローなのだ。
「シコって寝れば?」
「今思いつく限り、最ッッ低のアドバイスしたな」
まともな意見が彼から出るはずなかった。
***
結局、時間が解決してくれるのを待つことにしたドラムス。
相談? も終わったので、たまにはいいかと、タローと世間話でもしていた。
そして話題はタローの恋愛事情へと移り変わる。
「お前は誰かと付き合ったりしないのか?」
「おっさんと恋バナはきつくね?」
「いいじゃねーか。
で、どーなんだ実際のところは?」
「どーもなにも相手がいないし」
淡々と答えるタロー。
ドラムスはてっきり、あの魔王様とデキてるものかと思っていたのだが。
そういえばこの前、ギルドの女性職員たちがこんな噂をしていた。
曰く、『魔王タイラントのタローへの視線が熱い』らしい。
普段は魔王らしい冷徹な雰囲気を醸し出している魔王タイラント。だが時折タローと話していると、頬を赤く染めたり、普通の可愛い女の子のような笑顔を見せると言うのだ。
職員たちが言うには、完全に"ほの字"らしい。
(まーこいつが恋愛感情に気付くわけないわな)
タローのことだ、どうせ「恋愛なんてめんどくさい。一人で寝てたい」なんて言うんだろう。
しかしドラムスはこの歳まで引きずってしまったが、恋愛の一つくらいはしたかったと思っていた。
だから、タローにも選択肢の一つとしては考えて欲しいのである。
「好きなタイプとかいないのか?」
「炎タイプかな」
「いや誰もボールに入るモンスターの話してないんだ。
女性のタイプだよ。こんな女性が好みっていう話」
タローは仕方なく考える。
う~~んとしばらく考えると、何とか一つだけひねり出した。
「一緒にいて、楽しかったら……いーかな?」
どーやらこれ以上は出ないようだ。
無理して考えることでもないだろうし、これ以上の追及はよそう。
けれど、一つだけ助言を授ける。
「タロー」
「なに?」
「運命の相手っていうのはな、意外と近くにいるもんだぜ?」
「……結婚できないやつが言えるの?」
「やかましーわッッ!
とにかくよ。周りをよく見てみろ!
お前が大事にしたい相手が、そして想ってくれる相手がきっと見つかるはずさ」
「おっさん……」
あ、ちょっといいこと言った。
ドラムスは、少しドヤった。
ほら、タローも感銘を受けたのか手が震えてい――
「俺のこと、口説いてるの?」
めっさ勘違いしていた。
***
タローが自分を口説いていると勘違いし、その誤解を解くのに2時間を要した。
ようやく納得してくれはしたが、終始ドラムスを見る目に恐れを抱いていた。
あれ? タローに恐怖を抱かせるなんてスゴくね? まぁいっか。
「一緒にいて楽しい、ね」
タローのプライベートはあまり知らない。
冒険者は命がけの仕事。死ぬ者も少なくない。
だから、極力思い入れはしないようにしている。死んでも悲しくならないように。
けれどタローは、何も知らない状態で冒険者になったのだ、いやでも思い入れはしてしまう。
危なっかしくて才能ある少年に、これまで手を焼かされたのは、きっと何年経っても鮮明に思い出せるだろう。
ドラムスは、タローを息子のように感じているのである。
そして、親というのは子供のかすかな変化も気付くものだ。
様子を見るに、二人は恋人同士というわけではないのだろう。
タローのことはアリスも熱視線を送っているというし。まだこの先どうなるかはわからない。
しかし、ドラムスは気付いていた。
タローはきっと無意識だろうけど……――
(お前は、魔王タイラントといるとき、けっこう楽しそうにしてるぞ)
これからタローがどんな答えを出すのかを、ドラムスは部屋で一人楽しみに待つのだった。
ドラムスは長い長いため息をついていた。
「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~……」
場所はギルドのいつもの部屋だ。
お客用のソファで項垂れているドラムスの前には、もう一人座っている。
言わずもがな、本作の主人公タローである。
「どったのおっさん?」
タローファンであるギルドのお姉さんから渡された茶菓子をボリボリと食いながら尋ねると、ドラムスは俯いたままポツリポツリと話し出した。
「俺さ……最近出番少ないじゃん?」
「否定はできんね」
「で、その間暇だったから婚活をしてみたんだ」
「思い切ったね~48歳で」
ドラムス。48歳独身。恋人がいた経験は皆無である。
別に恋愛に興味がないとか、冒険者はいつ死んでもおかしくないから恋人はいらないとか、そういうのは一切ない。
ただただ、シンプルにモテないのである。
「両親もそろそろ孫の顔が見たいっていうからよ? 俺もそろそろ身を固めようかなって思ったんだけどな……」
「で、その反応ということはつまり――」
「一度も、デートすら約束できなかったよ」
ドラムスが顔を上げると、その瞳には虚無を宿っていた。
すべてに絶望しているような、すべてを諦めてしまった男の顔がそこにはあった。
「自分で言うのも何だが、経歴や収入もそこそこあるんだぜ? ギルドマスターだからな。
……なのに、女性たちは俺に一切寄り付かない!
なんでだ!? どーして俺に誰も寄ってこないんだ!?」
「顔面がキモいからじゃない?」
「ドストレートに言うなよ! わかってるけど傷つくわッ!」
自分でもブサイクだと理解している。
しかし、他人から言われると傷つくし、言われたくないのが男の本音だ。
ともかく、ドラムスはメンタルが傷ついているのだ。
婚活では上手くいかなかったし、今現在タローから暴言も受けたし。
「だからよ、今メンタルボロボロなんだ。
ギルドの職員にこんな相談するのも迷惑だと思って、誰かいないかと思ったら……自然とお前を呼んでいたわけだ」
「たしかに迷惑だな。俺も現在進行形でそう感じてるし」
「なぁ、こういうときって……どうするのが正解なんだろうな……」
「んー……」
なんやかんや言うが、一応考えてくれるのはタローの優しさであった。
だが、必ず解決してくれるとは限らない。
ましてや、相談相手はタローなのだ。
「シコって寝れば?」
「今思いつく限り、最ッッ低のアドバイスしたな」
まともな意見が彼から出るはずなかった。
***
結局、時間が解決してくれるのを待つことにしたドラムス。
相談? も終わったので、たまにはいいかと、タローと世間話でもしていた。
そして話題はタローの恋愛事情へと移り変わる。
「お前は誰かと付き合ったりしないのか?」
「おっさんと恋バナはきつくね?」
「いいじゃねーか。
で、どーなんだ実際のところは?」
「どーもなにも相手がいないし」
淡々と答えるタロー。
ドラムスはてっきり、あの魔王様とデキてるものかと思っていたのだが。
そういえばこの前、ギルドの女性職員たちがこんな噂をしていた。
曰く、『魔王タイラントのタローへの視線が熱い』らしい。
普段は魔王らしい冷徹な雰囲気を醸し出している魔王タイラント。だが時折タローと話していると、頬を赤く染めたり、普通の可愛い女の子のような笑顔を見せると言うのだ。
職員たちが言うには、完全に"ほの字"らしい。
(まーこいつが恋愛感情に気付くわけないわな)
タローのことだ、どうせ「恋愛なんてめんどくさい。一人で寝てたい」なんて言うんだろう。
しかしドラムスはこの歳まで引きずってしまったが、恋愛の一つくらいはしたかったと思っていた。
だから、タローにも選択肢の一つとしては考えて欲しいのである。
「好きなタイプとかいないのか?」
「炎タイプかな」
「いや誰もボールに入るモンスターの話してないんだ。
女性のタイプだよ。こんな女性が好みっていう話」
タローは仕方なく考える。
う~~んとしばらく考えると、何とか一つだけひねり出した。
「一緒にいて、楽しかったら……いーかな?」
どーやらこれ以上は出ないようだ。
無理して考えることでもないだろうし、これ以上の追及はよそう。
けれど、一つだけ助言を授ける。
「タロー」
「なに?」
「運命の相手っていうのはな、意外と近くにいるもんだぜ?」
「……結婚できないやつが言えるの?」
「やかましーわッッ!
とにかくよ。周りをよく見てみろ!
お前が大事にしたい相手が、そして想ってくれる相手がきっと見つかるはずさ」
「おっさん……」
あ、ちょっといいこと言った。
ドラムスは、少しドヤった。
ほら、タローも感銘を受けたのか手が震えてい――
「俺のこと、口説いてるの?」
めっさ勘違いしていた。
***
タローが自分を口説いていると勘違いし、その誤解を解くのに2時間を要した。
ようやく納得してくれはしたが、終始ドラムスを見る目に恐れを抱いていた。
あれ? タローに恐怖を抱かせるなんてスゴくね? まぁいっか。
「一緒にいて楽しい、ね」
タローのプライベートはあまり知らない。
冒険者は命がけの仕事。死ぬ者も少なくない。
だから、極力思い入れはしないようにしている。死んでも悲しくならないように。
けれどタローは、何も知らない状態で冒険者になったのだ、いやでも思い入れはしてしまう。
危なっかしくて才能ある少年に、これまで手を焼かされたのは、きっと何年経っても鮮明に思い出せるだろう。
ドラムスは、タローを息子のように感じているのである。
そして、親というのは子供のかすかな変化も気付くものだ。
様子を見るに、二人は恋人同士というわけではないのだろう。
タローのことはアリスも熱視線を送っているというし。まだこの先どうなるかはわからない。
しかし、ドラムスは気付いていた。
タローはきっと無意識だろうけど……――
(お前は、魔王タイラントといるとき、けっこう楽しそうにしてるぞ)
これからタローがどんな答えを出すのかを、ドラムスは部屋で一人楽しみに待つのだった。
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序章まで一挙公開。
翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
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