バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

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最終章・転生勇者編

第164話 聖火と風圧

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 ユウシの目の前にいる男は情報通りの見た目をしていた。
 伸びた袖に、覇気のない目。そして肩には謎のぬいぐるみを乗せている。
 聞いていた情報から、間違いなくこの男がタローだと確信できた。
 ……いや、見た目の特徴より明確なことが一つある。

『ま、Sランクや魔王みたいな強者なら一目でわかるけどね』

 ユウシの頭の中で、魔王リアム=エリス=アメジストの言葉が思い起こされた。

(なるほどな……魔王リアムが言っていた通りだ)

 Sランクと同等以上の強さを持つユウシには、はっきりと感じられた。
 タローから放たれる圧倒的強者のオーラ。
 それは魔王よりも強烈であり、Sランク冒険者よりも濃密であった。
 あまりに強大な圧に、ユウシの額から汗がにじむ。

(確かにムサシよりも、誰よりも強い……ッ!)

 そう思わざるえなかった。
 ユウシのレベルは現在99。
 今のユウシであるならば、最大解放を発動していないムサシと同等かそれ以上に戦えるだけの実力がある。
 最強クラスの人間と言っていいだろう。
 だが、それを持ってしても、タローの強さは異常に思えたのである。
 ユウシは剣を持つ手に力を入れると、ギリギリと歯を食いしばった。

(ビビるなユウシ! おれはコイツと殺し合いをするんだぞ!)

 自分に言い聞かせるように気合を入れた。
 一つ深呼吸をして精神を整えると、ユウシは刃に炎を纏わせた。
 ムサシ戦でも使用した魔法――聖火の剣ウェスタである。
 だが、ユウシは通じないだろうと考えていた。
 ムサシに使用して通用しなかったのだから、そいつより強いタローも無駄だろうという考えからである。

 ――だから、このままでは使用しない。

 実は、レベルが99になったことで使用できるようになった技があった。
 勇者の盾には、蓄積したダメージを一気に開放できる能力<バーストカウンター>が存在している。
 そして勇者の剣にも盾と同様、能力は備わっているのだ。
 扱いが難しく使用をためらった力だが、レベルが上がり魔力のコントロールが精密になったおかげで扱えるようになった。

「勇者の剣よ――我に力を!」

 ユウシが唱えた呪文のような文言。
 それに反応した剣は、刃に宿った炎をより大きく肥大化させた。

 能力名――<ブーストブラスター>。
 纏わせた魔力、魔法、オーラを倍増させ威力を高める。
 それが、勇者の剣の能力である。

「この聖火で、魔王タイラントと同じようにしてやるよッ!」

 ドラゴンの息吹が如き炎を手に、ユウシはタローへと距離を詰めた。



「――プー、いくぞ」
「(`・ω・´)」
(訳:はい!)

 呼びかけに応えたプーは、形状を棍棒に変える。
 タローはいつもの形状へと変わったプーを――いや、怠惰の魔剣ベルフェゴールを右手で握りしめた。

(あれは……魔剣か?)

 ユウシはぬいぐるみが武器に変化したことに驚く。
 だが関係ない。
 これは戦闘。強い者が勝つ、それだけだ。

(最強と言われる力、試してやる!)

 ユウシは炎の刃で斬りかかろうとした。
 しかし、ユウシが攻撃範囲に入る前に、タローは魔剣を構えた。
 ――すると、まだユウシがいない、何もない空間に向かって、魔剣を横薙ぎに振るった。
 何をしているんだと思った――次の瞬間、ユウシの体を何かが叩いた。

「――ガフぁッ!?」

 骨がきしむ音がする。それも大音量で。
 タローに向かって走っていたユウシは逆方向へと飛ばされると、血反吐を吐きながら地面に転がった。
 咳き込むたびに血が吐き出される。

(あれは……風圧か!?)

 自身を襲ったものの正体に、ユウシはすぐに気付いた。
 ユウシの位置はタローと一直線上に被っていた。
 確かに力いっぱい振れば可能かもしれないが……。

(大砲が直撃した――と、錯覚するほどの威力なんて出せるか、普通……)

 信じられないといった表情のユウシ。
 と、そのときタローがユウシへと剣先を向けた。

「勇者、よく聞け――」

 聞いただけでわかるほど、その声には怒気が孕まれていた。
 そして、次の言葉はユウシの背筋を凍らせる。

 普段のタローを知る者からすれば、おおよそ考えられない――本気の殺害予告である。

「俺はお前を――ブチ殺す……ッ!」
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