44 / 48
秋篇 比翼の鳥
33話 Side 多蔦日和 ――忘れられない私の、私たちの……
この学院に来てから、もう半年が経ったらしい。
移ろいゆく季節はどこか忙しなく、まるでなにかに追われて逃げているみたい。
「多蔦さん、次こっちの撮影もお願いしてもらって良いかしら?」
「うん!今行くね~」
それはあたしもある意味同様で、胸元にぶら下げたカメラと一緒にあちらこちらに駆けていく。
写真展をやるらしい。そんな話を聞いたのは先週のことだった。
部活動の一環でもなんでもなくそれは、学園全体で行う行事らしい。
娯楽の少ないこの学院に突如として現れた「イベント」になんだか、学院全体が浮足立っているような、高揚しているような、どこか落ち着かない表情が溢れていた。
よくわからないけど楽しそう。それが大半の気持ちなの気持ちなのかもしれない。私自身もよくわからない。
各々で思い出となる写真を撮ってみよう。そんな話を聞いていたはずなのになぜ私はこんなにもあちらこちらにも、呼ばれては駆けつけて呼ばれては駆けつけて……
同じ一枚なら良く映ったものが良い。そんな気持ちが根底にあるからなのかもしれない。強制はされていないが雰囲気にそうさせられているような、駆り出されている写真部のみんなは展覧会前以上に忙しそうだ。
「本当は風景専門だったはずなのに……」
写真部だったら誰でも良いのかと言いたくなる。だったら私じゃなくても良いじゃない。なんてことは部員数を目の前にしたら多分、言えなくなってしまうだろう。
今週に入ってからフィルムの大半は人で埋め尽くされていた。一知っている人から知らない人まで、詰め込まれたおもちゃ箱にもよく似ているのかもしれない。けれどそれら一枚一枚は宝石のように輝いているみたいで、もしかしたら宝石箱なのかもしれない。
ただ、それは綺麗だと感じるだけでそれの価値はあまり、よくわからない。フィルムの中のあの子たちにとってそのどれもがかけがえのない一枚なのかもしれない、が。
「日和」
「あぁ綾乃……って、何その甘い匂い」
「月代さんがお菓子教室を開いていてね、暇だから寄ってみたんだ。これ、作ったやつ」
あのお菓子教室も随分といろんな人が来るようになったものね。そのうちお菓子部なんて設立されたりして。
手のひらには熊や猫のアイシングがなされたクッキーが、可愛く包装された袋の中で賑やかに暮らしていた。
「どちらかというとこっちの方がおもちゃ箱だよね」
「おも……なんて?」
写真よりこちらの方が輝いているように見える。当社比三割増しくらい。それは動き回って空腹なせいなのか、写りを考えて回した頭が求めているのか、それとも、彼女が作ったものだからなのだろうか。
「結構上手に焼けてるじゃん、一枚もらうね」
「一枚と言わず二枚でも三枚でもどうぞ。その方がこちらとしても安心できる」
「?」
妙な言葉の意味を飲み込む前にまずは一口。
うん。うん。
……
…
うん?
「なんか……しょっぱくない?」
「……やっぱり?」
「ちょっとやっぱりってどういうことよやっぱりって! あ、いや……つかぬことをお伺いしたいのですが」
「いきなりかしこまった言葉で返ってくると怖いんだけど」
「お・う・か・が・い。したいのですが」
「はい」
「味見は?」
「してないよ?」
「するでしょう!普通!」
私で実験するな!なんて言いたくもなる。
普通は味見するよね?そうだよね?見た目とかけ離れた味と私の中の常識とかけ離れたソレで余計に味もなにもかもがわからなくなってきた。
「さすがに味見はしようとは思ったよ。思ったが……」
「が?」
「その、砂糖と塩をですね。ああでも安心してほしい。途中で気づいたから砂糖もしっかり入れたんだ。だから他のはおいしいかも――」
「先に言いなさいよ!」
漫画か!それもちょっと古い!
それで私に彼女曰く味見、もとい毒見させたことだろうか。
わかった、わかったぞ。わかってきた。
ひとつひとつ謎が解けていくたびに頭の中は淀みのない湖のように澄み渡っていく。けれどそうなる毎に鮮明になっていく塩味がなかなかに辛い。砂糖も入れてくれてはいるらしいけど……風味が微かにくすぐるくらいでよくわからない。
ただ、せっかくいただいたものなのでとりあえずは一枚、食べきれるようすこしずつ、すこしずつ口に運んでいくことにした。
美味しくないわけではない。美味しいわけでもないけれど、うん、うん。噛み締めていくたびに美味しさとは違った、よくわからない感覚が湧いてくる。それはどこか暖かくて、どこか心地良いような。他の人が作ったお菓子では感じたことがないような、嬉しい?幸せ?そんなものにもよく似た不思議が私を支配する。
「そ、それでなんだけど、その……」
最後のひとかけらをちょうど飲み込んだ時に駆けられた言葉の続きを待ってはみるけど、それは一向に返ってこない。
綾乃を見てみるとどうも煮え切らないような、らしくもない彼女の態度がそこにはあった。
視線はあちらこちらに転がるし、手持ち無沙汰そうな指は綺麗に伸びた髪をくるくるといじっていて、まるで告白予行練習をしているみたい。
「塩クッキーっていうのも珍しくてちょっと驚いたけど、悪くはなかった」
「ほ、本当に?」
「本当。お菓子作りは初めて?」
「そう、だね。レシピとかも読んでみたけど結局よくわからなくて、月代さんに手取り足取り面倒を見てもらったよ」
暇で寄った割には気合十分な彼女の本当はどっちなんだろう。頑張って作ったことが知られたら恥ずかしいから?彼女らしいと言えばまあ、彼女らしい。
レシピ本に頭を捻らせる彼女の姿は想像したら笑えてくるし、塩に気づいた綾乃と月代さんの顔を想像したらついには吹き出してしまった。
「あはは。それで、頑張って作ったものを食べてもらいたくて、ここまで来たと」
「そ、そこまでは言ってないけど――」
「もう言ってるようなものでしょ。ありがとね。今度は一緒に作ろう。リトライしても良いし、ケーキなんかでも良いし!」
「あぁ、あぁ!そうだね、日和が居てくれると嬉しいよ。レシピ本は肝心なことを教えてくれないんだ、目分量と書いて責任を放棄する」
嬉しい、嬉しい……ね。助かるとかではなくて、嬉しい。それは自然に彼女の口から出てきたものかもしれないけれど、私の心を動かすにはそれだけで十分だった。
「そうと決まれば早速行こう。鉄は熱いうちにとも言うし」
「ま、口直しにも気分転換にも良いかもしれないわね」
「ねぇ、ケーキ好き?」
「あぁ、大好きだよ」
「そう、それなら私、」
――もっとこれが好きになれるかも。
自然と指を絡め、離さないように繋ぎながら廊下を進んでいく。
――カシャッ
写真展で私は、宝物と出会うことになった。
あの日の私たちはカメラに収められていたみたいで、その時の綾乃の表情をもう一度、この写真展でまた会うことができた。そして初めまして、その時の私。こんな顔して笑ってたんだ。
「ちょっと恥ずかしいけど……ね」
後で聞いた話だと、ベストショットということもあったけれど、撮ってくれた理由はそれだけじゃなかったみたい。
多蔦さんのフィルムにはいろんな笑顔が咲いていたけど多分、そこに多蔦さんの写真は一枚もないと思ったからだって。なにそれ。そんなの当たり前じゃない。
「なんだかこうして欲しい写真にチェックを入れていると、修学旅行を思い出さないかい?」
「言われてみれば。でも撮る側だったから実ははじめてだったりして」
いつもの四人で撮ったやつとあとはこれも、それも……ついでに綾乃とふたりのそれにも、チェックを付けた。
あの笑顔は間違いなく「私」に向けられたものだと、保証もないけれど確信できた。
瞳の先に映る「ファミリア」との一枚は生涯、私にとって忘れられない宝物となるだろう。
移ろいゆく季節はどこか忙しなく、まるでなにかに追われて逃げているみたい。
「多蔦さん、次こっちの撮影もお願いしてもらって良いかしら?」
「うん!今行くね~」
それはあたしもある意味同様で、胸元にぶら下げたカメラと一緒にあちらこちらに駆けていく。
写真展をやるらしい。そんな話を聞いたのは先週のことだった。
部活動の一環でもなんでもなくそれは、学園全体で行う行事らしい。
娯楽の少ないこの学院に突如として現れた「イベント」になんだか、学院全体が浮足立っているような、高揚しているような、どこか落ち着かない表情が溢れていた。
よくわからないけど楽しそう。それが大半の気持ちなの気持ちなのかもしれない。私自身もよくわからない。
各々で思い出となる写真を撮ってみよう。そんな話を聞いていたはずなのになぜ私はこんなにもあちらこちらにも、呼ばれては駆けつけて呼ばれては駆けつけて……
同じ一枚なら良く映ったものが良い。そんな気持ちが根底にあるからなのかもしれない。強制はされていないが雰囲気にそうさせられているような、駆り出されている写真部のみんなは展覧会前以上に忙しそうだ。
「本当は風景専門だったはずなのに……」
写真部だったら誰でも良いのかと言いたくなる。だったら私じゃなくても良いじゃない。なんてことは部員数を目の前にしたら多分、言えなくなってしまうだろう。
今週に入ってからフィルムの大半は人で埋め尽くされていた。一知っている人から知らない人まで、詰め込まれたおもちゃ箱にもよく似ているのかもしれない。けれどそれら一枚一枚は宝石のように輝いているみたいで、もしかしたら宝石箱なのかもしれない。
ただ、それは綺麗だと感じるだけでそれの価値はあまり、よくわからない。フィルムの中のあの子たちにとってそのどれもがかけがえのない一枚なのかもしれない、が。
「日和」
「あぁ綾乃……って、何その甘い匂い」
「月代さんがお菓子教室を開いていてね、暇だから寄ってみたんだ。これ、作ったやつ」
あのお菓子教室も随分といろんな人が来るようになったものね。そのうちお菓子部なんて設立されたりして。
手のひらには熊や猫のアイシングがなされたクッキーが、可愛く包装された袋の中で賑やかに暮らしていた。
「どちらかというとこっちの方がおもちゃ箱だよね」
「おも……なんて?」
写真よりこちらの方が輝いているように見える。当社比三割増しくらい。それは動き回って空腹なせいなのか、写りを考えて回した頭が求めているのか、それとも、彼女が作ったものだからなのだろうか。
「結構上手に焼けてるじゃん、一枚もらうね」
「一枚と言わず二枚でも三枚でもどうぞ。その方がこちらとしても安心できる」
「?」
妙な言葉の意味を飲み込む前にまずは一口。
うん。うん。
……
…
うん?
「なんか……しょっぱくない?」
「……やっぱり?」
「ちょっとやっぱりってどういうことよやっぱりって! あ、いや……つかぬことをお伺いしたいのですが」
「いきなりかしこまった言葉で返ってくると怖いんだけど」
「お・う・か・が・い。したいのですが」
「はい」
「味見は?」
「してないよ?」
「するでしょう!普通!」
私で実験するな!なんて言いたくもなる。
普通は味見するよね?そうだよね?見た目とかけ離れた味と私の中の常識とかけ離れたソレで余計に味もなにもかもがわからなくなってきた。
「さすがに味見はしようとは思ったよ。思ったが……」
「が?」
「その、砂糖と塩をですね。ああでも安心してほしい。途中で気づいたから砂糖もしっかり入れたんだ。だから他のはおいしいかも――」
「先に言いなさいよ!」
漫画か!それもちょっと古い!
それで私に彼女曰く味見、もとい毒見させたことだろうか。
わかった、わかったぞ。わかってきた。
ひとつひとつ謎が解けていくたびに頭の中は淀みのない湖のように澄み渡っていく。けれどそうなる毎に鮮明になっていく塩味がなかなかに辛い。砂糖も入れてくれてはいるらしいけど……風味が微かにくすぐるくらいでよくわからない。
ただ、せっかくいただいたものなのでとりあえずは一枚、食べきれるようすこしずつ、すこしずつ口に運んでいくことにした。
美味しくないわけではない。美味しいわけでもないけれど、うん、うん。噛み締めていくたびに美味しさとは違った、よくわからない感覚が湧いてくる。それはどこか暖かくて、どこか心地良いような。他の人が作ったお菓子では感じたことがないような、嬉しい?幸せ?そんなものにもよく似た不思議が私を支配する。
「そ、それでなんだけど、その……」
最後のひとかけらをちょうど飲み込んだ時に駆けられた言葉の続きを待ってはみるけど、それは一向に返ってこない。
綾乃を見てみるとどうも煮え切らないような、らしくもない彼女の態度がそこにはあった。
視線はあちらこちらに転がるし、手持ち無沙汰そうな指は綺麗に伸びた髪をくるくるといじっていて、まるで告白予行練習をしているみたい。
「塩クッキーっていうのも珍しくてちょっと驚いたけど、悪くはなかった」
「ほ、本当に?」
「本当。お菓子作りは初めて?」
「そう、だね。レシピとかも読んでみたけど結局よくわからなくて、月代さんに手取り足取り面倒を見てもらったよ」
暇で寄った割には気合十分な彼女の本当はどっちなんだろう。頑張って作ったことが知られたら恥ずかしいから?彼女らしいと言えばまあ、彼女らしい。
レシピ本に頭を捻らせる彼女の姿は想像したら笑えてくるし、塩に気づいた綾乃と月代さんの顔を想像したらついには吹き出してしまった。
「あはは。それで、頑張って作ったものを食べてもらいたくて、ここまで来たと」
「そ、そこまでは言ってないけど――」
「もう言ってるようなものでしょ。ありがとね。今度は一緒に作ろう。リトライしても良いし、ケーキなんかでも良いし!」
「あぁ、あぁ!そうだね、日和が居てくれると嬉しいよ。レシピ本は肝心なことを教えてくれないんだ、目分量と書いて責任を放棄する」
嬉しい、嬉しい……ね。助かるとかではなくて、嬉しい。それは自然に彼女の口から出てきたものかもしれないけれど、私の心を動かすにはそれだけで十分だった。
「そうと決まれば早速行こう。鉄は熱いうちにとも言うし」
「ま、口直しにも気分転換にも良いかもしれないわね」
「ねぇ、ケーキ好き?」
「あぁ、大好きだよ」
「そう、それなら私、」
――もっとこれが好きになれるかも。
自然と指を絡め、離さないように繋ぎながら廊下を進んでいく。
――カシャッ
写真展で私は、宝物と出会うことになった。
あの日の私たちはカメラに収められていたみたいで、その時の綾乃の表情をもう一度、この写真展でまた会うことができた。そして初めまして、その時の私。こんな顔して笑ってたんだ。
「ちょっと恥ずかしいけど……ね」
後で聞いた話だと、ベストショットということもあったけれど、撮ってくれた理由はそれだけじゃなかったみたい。
多蔦さんのフィルムにはいろんな笑顔が咲いていたけど多分、そこに多蔦さんの写真は一枚もないと思ったからだって。なにそれ。そんなの当たり前じゃない。
「なんだかこうして欲しい写真にチェックを入れていると、修学旅行を思い出さないかい?」
「言われてみれば。でも撮る側だったから実ははじめてだったりして」
いつもの四人で撮ったやつとあとはこれも、それも……ついでに綾乃とふたりのそれにも、チェックを付けた。
あの笑顔は間違いなく「私」に向けられたものだと、保証もないけれど確信できた。
瞳の先に映る「ファミリア」との一枚は生涯、私にとって忘れられない宝物となるだろう。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【純愛百合】檸檬色に染まる泉【純愛GL】
里見 亮和
キャラ文芸
”世界で一番美しいと思ってしまった憧れの女性”
女子高生の私が、生まれてはじめて我を忘れて好きになったひと。
雑誌で見つけた、たった一枚の写真しか手掛かりがないその女性が……
手なんか届くはずがなかった憧れの女性が……
いま……私の目の前にいる。
奇跡みたいな出会いは、優しいだけじゃ終わらない。
近づくほど切なくて、触れるほど苦しくて、それでも離れられない。
憧れの先にある“本当の答え”に辿り着くまでの、静かな純愛GL。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる
九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。
※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。