降る雪は沈む蒼の心を優しく包む〜冴えない根暗な陰キャぼっちの成り上がりリア充化プロジェクト〜

朔月カイト

文字の大きさ
22 / 101
第四章 球技大会

20.練習試合と雪代の思い付き


 今日の三、四限目の体育は、A組とB組の合同授業で、近づく球技大会に向けて、バスケとフットサルに分かれての練習試合だ。
 
 バスケはA組との5on5形式で、実際の球技大会での試合と同じ形式の前半十分、後半十分のハーフ制で行われる事になった。

 総勢八人の中からチームリーダーに選ばれた朝倉が、スターティングメンバーを指名していく。
 俺は途中交代での出場だろうと予想していたが、最後の五人目で名前が挙げられた。

「余ってるやつらの中じゃ、お前が一番やれそうなんだよ」

 消去法か。他は皆もやしみたいに線が細いもんな。もやし三兄弟と名付けよう。

 暫くして、試合前の整列となり、相手チームと審判を挟んで向かい合い、互いに挨拶を交わした。

 それぞれのコートにメンバー達が散らばり、試合開始のジャンプボールが審判の手で上方に向かって投げられる。

 それをジャンプして空中でタップしたのは、敵チームのメンバーだった。

「速攻!」

 その掛け声と共に、敵チームが、主にディフェンスに回っている未経験者二人ががオロオロと泡を食っている隙をついて、こちらのコートに飛び込んできた一人にロングパスを投げる。

 ゴール近くでそれを受け取った彼が、難なくドリブルで二人のディフェンスを躱し、レイアップシュートを放った。
 
 それを後ろから追い縋っていた早風がジャンプしてボールに触れたおかげで軌道がずれる。

 シュートはリングに当たって枠外に跳ねた。

「くっ!」

 ゴール下で陣取っていた朝倉がリバウンドを制す。
 だが、一人にしつこくつかれ、中々振り切れない。

「緋本がフリーだ!」

 早風が呼びかける。

 それに応えて朝倉が俺へとパスを投げる。

 俺はそのパスを受け取ると、ドリブルで敵陣へと切り込んでいく。

 途中、一人が立ち塞がるが、上手くチェンジオブペースで相手のタイミングをずらして抜き去る。

 ペイントエリア前まできたところで、またしても、ディフェンスに阻まれる。今度は二人。

 だが、レッグスルーで相手を翻弄しつつ、ジャンプシュートを放つと見せかけて、ノールックで近くにフリーでいた早風にパスを送った。

「ナイス!」

 パスを受け取った早風が、危なげなくジャンプシュートを決め、2点を先制した。

「ナイッシュー!」
「緋本もナイスプレーだったぞ!」

 味方から声援を浴びせられる。

「やるじゃん緋本!」

 朝倉にもディフェンスに戻る際に肩を叩かれた。

 ──試合勘もそれ程衰えちゃいない。これなら相手がバスケ部の三年でも対抗出来そうだな。


 その後、途中で交代したもやし三兄弟のお粗末なプレーのせいで、大量に奪っていたリードを一気に巻き返される事になりはした。

 しかし、スタメン組については、未経験者の二人も運動部所属であり、試合の中で慣れたのか動きは悪くなく、練習を重ねていけば十分通用するように成長するだろう。


   §


「緋本、お前めちゃくちゃバスケ上手いな! いい意味で裏切られたぜ!」

 体育の授業後、更衣室で着替えていると、朝倉が肩に手を回しながら声を掛けてきた。

 ──ちょ、君、ボディタッチが激し過ぎるだろ!

 相変わらず馴れ馴れしいやつだ。
 最近じゃ感覚が麻痺してきていたが、この距離感は近すぎる。
 橘に知られでもしたら、どう妄想の中で処理されてしまうか分かったもんじゃないぞ。

「小、中でバスケ部に入ってたんだよ。それに今でもたまにストリートでやってる」

 暑苦しく密着してくる朝倉を引き剥がしながら答えた。

「それでか。ちょっと齧ったって程度の動きじゃなかったからな」

 ジャージの上着を脱ぎながら早風が落ち着いたバリトンで評した。
 彼には高校生らしからぬ品のいい大人の魅力があるな。
 将来はお洒落な喫茶店のマスターとか似合いそうだ。
 彼とは気負わずに接する事が出来る。

「下手すりゃバスケ部のレギュラーよりもレベルが高いんじゃないか?」
「それ程じゃないよ。ストリートじゃ個人技ばかり磨いてきたから、その分チームプレイが疎かになってる」
「そんな事ねーと思うぜ? しっかりと味方を活かしたパス回しとかしてただろ?」
「そうだな。うちのバスケ部は去年県ベスト4入りした強豪だけど、緋本なら即スタメン入りも難しくなさそうだ」
「持ち上げないでくれよ。俺は一人でストリートやってる方が性に合ってる」
「もったいないねぇなぁ⋯⋯」
「もし気が変わったらいつでも言ってくれ。俺からキャンプテンに取り成すから」
「分かった」

 誘ってくれた早風には悪いが、俺がバスケ部に入る事はないだろうな。
 朝倉は知らん。

「そう言えば、そのキャプテンだけど、『インターハイ前の景気づけに優勝を目指す!』って息巻いてたよな」
「ああ。今年が最後だから、やる気で漲ってる感じだったな」
「緋本が入ってくれたおかげで一気に戦力アップしたけど、キャプテン達のチームに勝てるかって言うと、難しいか?」
「どうだろうな。緋本のおかげで俺達のチームは実質バスケ部が三人もいるのと変わりない状態だ。それに対して、確かキャプテンのチームにはキャプテンを含めてバスケ部は二人──この差がどれだけ影響するかによるだろうな」


   §


「へぇ、じゃあチームメイトとも上手くやれてるんだ。成長したね、緋本君」

 学校帰り。隣を歩く雪代が俺の話に合いの手を入れた。

「早風の人徳によるものが大きいけどな。彼がいない朝倉と二人の状況なんて、考えただけで背中が粟立つよ」

 陽キャ特有のあの距離感で接されるのは、陰キャには厳しいんだ。

「早風君って落ち着いてるもんね。バスケ部でも朝倉君と二人で一年生ながらにベンチ入りしてるみたいだし、彼、女子人気結構高いみたいだよ」
「それ、誰情報?」

 気になって尋ねた。

「萌里が楽しげに話してたよ。『あさ✕はやの薄い本はよ!』とか言って」
「萌里って誰だ? って一瞬思ったけど、後に続いた話で誰だかすぐに分かったよ⋯⋯」

 腐った女子ですね。ええ、知ってます。

「あの子性格つよつよだよね。主にその独特の個性に関して」
「あれを個性の一言で括るのは語弊があるんじゃないか?」
「それより君、球技大会で優勝出来そう? 幾ら君達三人がレベルの高いプレイヤーだといっても、三年を押しのけて──っていうのは、やっぱり難易度ベリーハードだよね」
「そうだな。でも優勝くらいしないと、未だ底辺にいる俺の存在を広く知ってもらう事なんて出来ないだろうからなぁ」
「そうだねぇ⋯⋯あ、そうだ! じゃあ保険をかけておこうよ。もし優勝出来なくても緋本君の好感度と認知度を上げられるように」

 名案が浮かんだとばかりに、雪代が、その黒目がちなアーモンドアイを輝かせながらパチンと指を鳴らす。

「保険? 一体どんな?」

 自慢じゃないが、俺の弾かれ者っぷりは相当なものだぞ。
 それは雪代もよく知っている事だろうに。
 そのトレーシングペーパーみたいに薄い存在の俺が人気者になるために、これまで次々と課されるミッションをクリアしてきたっていうのに、未だその芽が出る気配はない。
 それなのに、そう簡単に成果を上げられる上策があるとは思えないんだが⋯⋯。

「何、簡単な事だよ。その陰キャの象徴みたいに目を覆い隠してる鬱陶しい前髪を、思い切ってばっさり切っちゃえばいいんだよ。そう、陰キャの象徴みたいなやつをね」

 大事な事のように二回繰り返された。

「この前髪は、俺を物理的にも精神的にも守ってくれる障壁なんだけど⋯⋯」

 気乗りしないように渋る。
 
「安心しなよ。今の君はこれまでのミッションを経て素晴らしい成長を遂げたんだ。素顔を晒したところで、なんの問題もないよ」
「ホントかなぁ⋯⋯」

 雪代の事は信用はしているが、信頼という面に於いてはちょっと⋯⋯彼女、時折悪戯っ子な側面が顔を出すし、それに翻弄される事も多い俺としては、その言葉を丸呑みする訳にはいかない。

「それに、今なら私の行きつけの美容院でカットモデルを募集してたから、無料で切ってもらえるよ」

 俺から向けられる疑念をよそに、雪代が思いも寄らない事を宣う。

「カットモデルだって? それってルックスがいいのが前提じゃないのか?」
「大丈夫。私の推薦だって言えば通るはずだから」
「そうは言ってもな⋯⋯何だろう、不安しかない··⋯⋯」

 俺はカットモデルという未知の世界を前に怖気付きながら、失われてしまう事になる前髪を思いつつ、とぼとぼとした足取りで帰宅した。


感想 0

あなたにおすすめの小説

絶交した幼馴染と大学の合コンで再会した。

孤独な蛇
恋愛
中学生の浅野春樹は上級生と喧嘩騒動を起こしたことがあった。 その上、目つきが悪く地毛は茶髪のため不良少年のような扱いを受けて学校では孤立していた。 そんな中、幼馴染の深瀬志穂だけは春樹のことをいつも気遣ってくれていた。 同じ高校に行こうと声を掛けてくれる志穂の言葉に応えたい一心で受験勉強にも力を入れていた。 春樹にとって、学校で孤立していることは問題ではなかった。 昔から志穂が近くにいてくれるから……。 しかし、3年生なってから志穂の態度がよそよそしくなってきた。 登下校も別々になり、学校で話しかけてくることも無くなった。 志穂の心が自分から離れていってしまっている気がした春樹は焦っていた。 彼女と話がしたい。笑った顔が見たい。 志穂と一緒に帰ろうと、彼女が部活動を行っている体育館へ向かったのだが……。 そこで春樹が耳にしたのは、自分の悪口を言って部活の友達と楽しそうにしている志穂の声だった。 その瞬間、春樹の中で志穂に対する想いや信頼は……消滅した。

サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜

野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」   「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」 この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。 半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。 別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。 そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。 学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー ⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。 ⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。 ※表紙絵、挿絵はAI作成です。 ※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ
恋愛
 高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。  あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。  3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。  出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2026.1.21)  ※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。