降る雪は沈む蒼の心を優しく包む〜冴えない根暗な陰キャぼっちの成り上がりリア充化プロジェクト〜

朔月カイト

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第六章 初デートと夏休み旅行

28.第五ミッションと海への誘い


 雪代のおかげで過去のトラウマから立ち直り、学校にも何とか通えるようになってから数日後の夜。

 俺は、退院祝いにと、実家から贈られてきたちょっとお高めなドリップ珈琲を淹れて、その芳醇な香りとコクを楽しみながら、雪代とRainでの会議を始めた。

 室内を、その柔らかいピアノの音と、不器用だけど真剣な歌声で満たしている曲の名は、『Your Song』──。
 Elton Johnの 名を世界に広めた記念すべき名曲で、詩が書けなくて苦労していたエルトンが、詩人のバーニーと出会って仕上げた共同作だ。


ねーじゅ『では始めましょう。第五回「緋本蒼介成り上がりリア充化プロジェクト」会議!』
ブルー『初めに断っておくけど、今度の君との誕生日デートとやらに関するミッションなら、断固拒否させてもらうぞ。無理難題をふっかけられそうだからな』
ねーじゅ『成功のメソッドは、失敗を恐れない事だよ。そこから何を学べるかを考える事が大事なんだ』
ブルー『言葉で言いくるめようったって無駄だ。何を言われたところで、俺の意思は変わらない』
ねーじゅ『無駄に強固だね。でも安心して。今回君に課すミッションは、それとは別のものだから』
ブルー『ほぅ。ならば聞こうじゃないか』
ねーじゅ『無駄に尊大だね。まぁいいや。それで、その第五ミッションだけど、「投稿サイトに新作小説を連載して人気を高めよう!」というものになります』
ブルー『そうきたか』
ねーじゅ『夏休みに入り、クラスメイト達にも会えない。いいところを見せる機会がない。となれば、学校以外の私生活に於いて、成果を上げるしかない。よって蒼介君には、今度の夏休み期間中は、創作活動に打ち込んでもらいます。私のサイン会があるお盆ぐらいを目安に、カキヨミで連載を開始出来るようにプロットを練って、出来るだけ多くのエピソードをストックしておいてね』
ブルー『奇遇だな。実は俺もそろそろ新作の構想を練ろうと考えていたところだったんだよ』
ねーじゅ『グッドタイミングだったって訳だ』
ブルー『でも仮に俺の投稿した作品が高い人気を博してWeb上での評価が高まったとしても、それこそねーじゅさんみたいに書籍化でされない限り、リアルでは誰にも知られないままで終わるんじゃないか?』
ねーじゅ『そうだね。だから待っているんじゃなくて、こっちから動こう。夏休み明けに、それとなく自分がカキヨミでWeb作家をしているスカーレット&ブルーという事を周りに明かすんだ』
ブルー『それとなく······ってどうやって?』
ねーじゅ『普通に話し掛けてスマホでアカウントページ見せればいいんじゃない? 姫歌は君の作品のファンみたいだし、絶対に食い付いてくるって』
ブルー『まぁ白鳥なら話し易いか』
ねーじゅ『君は、悠果姉さんっていううちの学校で強い権力を持った人もファンとして味方に付いているからね。彼女にも、その事実を周りに広めてもらうようにしよう。学校のアイドルと生徒会長──これ以上のインフルエンサーはいないよ』
ブルー『分かった。とにかく、まずは新作の構想をじっくりと時間を掛けて練らないとな。生半可な作品じゃ相手にもされないだろうし』
ねーじゅ『うん。連載中の私の作品にも負けないように、頑張って』


   §


 教室のあちこちで、夏休みの予定等を話し合う様子が見受けられるようになってきた。

 昼休み。いつもなら俺のフリースペースの屋上に通じている階段の踊り場で、雪代と二人で昼食を摂るところだが、今日は違った。

 例の一軍グループが、雪代と俺に話があるからと誘ってきたのだ。

 俺はそんな大所帯での食事なんて真っ平御免だと、断ろうとした。
 だが、雪代が、「じゃあ、姫歌が代表して話してくれるならいいよ」と折衷案を出し、それならと心ならずも承諾した。


「それでね、夏休みに、私の親が持ってる伊豆の海辺にある別荘に皆で泊まり掛けで旅行にいかない? みたいな事になっててね!」

 俺は渋い顔をするが、雪代はその黒目がちなアーモンドアイをオニキスみたいにクールに輝かせながら、心惹かれている様子だ。

「そう言えば、姫歌の父親って、大企業の社長やってるって前に言ってたね」
「そうなの! 友達と使わせて欲しいって頼んだら、すぐにOKしてくれたよ!」

 可愛い娘を目に入れても痛くない程に溺愛している子煩悩な父親の姿が目に浮かぶようだ。
 頼まれた時も、さぞ締まりのないデレッとした顔を晒していた事だろう。

「オーシャンビューなんて最高だね。それでそっちはいつものメンバーなんだよね?」
「うん! 私、涼、萌里、理人、大翔、湊の六人だよ! それに、怜愛と緋本君を加えて全部で八人だね! 林間学校の時と同じメンバーだよ! あ、その時は気付かなかったけど、このグループって全部で八人! って事は、末広がりオールスターだね!」

 白鳥が指折り数えながら楽しげに声を弾ませる。何だよそのネーミング。君も雪代と同じレート帯か。

「日程は、八月の二、三、四日の二泊三日! 行き帰りの移動手段は新幹線と在来線ね! 早朝に駅に集まって始発で出発! 朝食は車内で駅弁を食べてもいいね! 旅の醍醐味だよ! 海辺の別荘に着いたら、さっそく海で遊んで、昼食は海の家で! SNSでも話題なんだって! その後はまた海で遊んで、夜にはBBQをしたり、花火をしたりするよ! 二日目は、別荘で朝食を食べた後は、午前中はまた海で遊んで、昼食は海の家で食べて、夕方には、お待ちかねの夏祭りにいくよ! ビーチサイドに浴衣をレンタルできるお店があるから、せっかくだし利用したいよね! 夕食はお祭りの屋台で買えるもので済ませちゃえばいいんじゃないかな? 祭りの最後には花火が上がるから、皆で見ようね! そして翌日は、お店でお土産を見たりしてのんびり昼前まで過ごして、その後はまた新幹線と在来線に乗って駅弁を食べながらこっちに帰ってくる──そんな感じ!」

 テンション高く長広舌を振るい、白鳥は満足げにむふぅと鼻息を荒くした。

「海で遊べるだけじゃなくて、夏祭りに加えてフィナーレに花火大会かぁ。盛り沢山な内容だね」

 雪代が遠くに思いを馳せるようにやや視線を持ち上げながら言う。
 団体行動はあまり好きな方じゃないと思っていたけれど、かなり楽しみにしているみたいだ。

「緋本君も楽しそうだなーって思わない?」
「あ、ああ。海水浴なんて何年かぶりだからな」

 突然水を向けられて戸惑いながら、無難な言葉を返した。
 俺は未だいくとは一言も言っていないんだが、拒否権は与えられていないらしい。

「だよね! 私もプールには毎年いくんだけど、海は久しぶりなんだ!」
「姫歌は泳ぎ得意なの?」
「ううん。浮き輪がないと沈んじゃう。人間の身体は水に浮くようにはできていないんだよ······」

 先程までの明るさが嘘のように、突然白鳥の周囲がどんよりと曇り出す。
 過去に溺れて苦い目に遭うような経験でもしたんだろうか。

「緋本君、今年は夏を目一杯満喫するよ!」

 いつになく雪代が子供のような無邪気さを見せてはしゃいでいる。

 ──俺は君に課されたミッションのおかげで、空いている時間は新作のプロット作りと執筆作業に掛かりっきりで、遊ぶ暇なんかないんじゃないかな──。

 そんな野暮な事は言わないでおいた。



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