降る雪は沈む蒼の心を優しく包む〜冴えない根暗な陰キャぼっちの成り上がりリア充化プロジェクト〜

朔月カイト

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第六章 初デートと夏休み旅行

36.怜愛の身に迫る危険


 救いを請うメッセージを送ってきた怜愛の元へと駆け付けるべく走り出したものの、肝心の居場所が分からない。

 ──考えろ。必ず何かしらの手掛かりがあるはずだ。

 一度立ち止まり、頭をフルに働かせて、得られている情報を整理して思索を巡らせる。

 怜愛は来栖にどこかに連れ出された。
 その来栖は、おそらく彼女に告白するつもりでいた。
 となると、人気のない場所──この近くに、公園なんかがあれば──。

 そう思い至り、スマホのマップアプリを開き、『公園』で検索を掛けてみる。
 すると、自動で現在地周辺の公園が表示された。

 ──ここか!

 当たりを付けた俺は、その公園を目指して再び走り出した。


   §


 息を切らしながら辿り着いた、幾つかの遊具と四阿が設けられた公園。
 その中央付近に、怜愛と来栖、それに加えて、他三人の柄の悪い男達の姿があった。
 直感に従って正解だったらしい。
 来栖は地面に倒れていて、頬は赤く腫れ唇からは血が滴っているが、怜愛は未だ手を出されてはいないようだ。


「怜愛!」

 そう呼び掛けつつ、その場へと向かう。

「蒼介君!」

 怜愛が呼び声に答えつつこちらにこようとするが、髪を金に染めた男が、それを遮るように腕を伸ばした。

「未だこっちの話は終わってねぇぞ。そこの兄ちゃんみたいに痛い目に遭いてぇのか?」

 ドスの効いた低い声で凄み、脅しを掛ける。
 他の二人も、立ち止まった怜愛を囲みながら、その身体に舐め回すような下卑た視線を送っている。

「おい、今きたそっちの兄ちゃん。俺達お取り込み中なんだわ。悪い事は言わねぇから、さっさと帰った方が身の為だぞ」
「⋯⋯何が目的だ?」

 金髪の男の顔を睨み付けながら、こちらも低い声で、詰問するように聞く。

「あぁん? そりゃあお前、俺達の縄張りでイチャイチャしてくれた侘び代をもらおうとしたら、その兄ちゃんが抵抗するもんだから、一発入れてやったのよ。で、金の代わりに、そっちのえらく別嬪な姉ちゃんに、身体で払ってもらおうと思ってな」

 あくどい行いを、平然とした顔でのたまう。

「そうか。じゃあ、はい、そうですかって引き返す訳にはいかないな」

 俺が見過ごすとでも思っているのか?

「あぁ? お前中々面白い事言うじゃねぇか。だったら、どうするってんだ? たった一人で俺達三人を相手にするってのか?」

 想像の埒外だったらしく、意外そうな顔で問う。

「ああ、そうだ」

 当然、答えはイエスだ。

「ははっ! 悪いけど、何言ってるのか分からねぇや。もう一度よく聞かせてもらってもいいか?」

 わざとらしい仕草で耳を指で穿ほじりながら、吹き出すように笑う。

「一度で理解出来ないのか? 鳥頭かよ。愚鈍だな。いいから、さっさと掛かってこいよ」

 嘲りを意に介さず、逆に相手を挑発した。

「てめぇ⋯⋯死にたいみてぇだな⋯⋯いいぜ。その透かした面が歪むまでボコボコにしてやるよ」

 そう言い放つと、金髪の男は、彼我ひがの距離を素早く縮め、腕を大きく振り被って殴り掛かってきた。

 だが、俺は冷静に反応し、身体を横にずらしてその攻撃を躱す。
 そんな大振りで、空手の経験がある俺に当たる訳がない。

「なっ⋯⋯! くそっ! 避けんなクソザコのくせに!」

 と焦りを見せながら。

「クソザコはあんただろ?」

 汚く罵りながら再び殴り掛かってきた金髪の男の拳を頭で避けながら、ボクシングで言うカウンターフックをお見舞いしてやった。

「ぐぇっ!」

 モロに強烈なパンチを頬で受けた金髪の男が、カエルが潰れたような声を上げながら、後方に吹っ飛ぶ。
 そのまま白眼を剥いて、ピクリとも動かなくなった。どうやら、失神してしまったようだ。

「どうする? あんたらも俺の相手をしてくれるのか?」

 鋭い視線で睨め付けながら、残された二人に問い掛ける。

「お、おい、こいつヤバくねぇか?」
「あ、あぁ、さっさとずらかろうぜ」

 二人で怯えた顔を見合わせながら言葉を交わすと、

「「すんませんっしたぁ!」」

 大声で謝罪し、気を失って倒れている金髪の男を協力して抱えつつ、泡を食って公園から離れていった。


「きてくれるって、信じてたよ」

 暴漢達が去り、安堵した顔で怜愛が微笑みを向ける。

「あいつらに何か乱暴されなかったか?」
「ううん。触れられてさえいないよ。ただ、来栖君は一発殴られちゃったけどね」

 彼女が一瞥すると、地面に倒れていた来栖がゆっくりと立ち上がり、汚れた浴衣を手で払いながら、ばつが悪そうにした顔を向けた。

「まぁ⋯⋯何というか、とりあえず、助かったよ」

 嫌々といった気持ちが隠せていない、形だけの礼を言われた。

「殴られたところは大丈夫か? 骨に罅が入ってるかもしれないから、この旅行から帰ったら、念の為に病院で検査してもらった方がいい」

 慮りながら、すすめる。その態度を指摘して、無駄にいがみ合いたくはないからな。

「あぁ⋯⋯そうするよ」
「じゃあ、来栖君、もうすぐ花火大会が始まる時間になるから、私達はもういくね」

 と怜愛。

「あ⋯⋯じゃあ、俺も一緒に⋯⋯」

 縋るように来栖が手を伸ばすが、彼女は、

「悪いけど、蒼介君と二人で見たいから、遠慮してくれる?」

 にべもなくその申し出を突っぱねると、「いこっ」と俺と腕を絡ませる。

 失意のままその場に呆然と立ち尽くす来栖を置き去りにして、引っ張るようにしながら俺を公園から連れ出した。


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