降る雪は沈む蒼の心を優しく包む〜冴えない根暗な陰キャぼっちの成り上がりリア充化プロジェクト〜

朔月カイト

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第十一章 欺瞞

79.怜愛への感謝と三者面談


 来栖の仕掛けた罠を、怜愛達のおかげで辛くもかわす事が出来た後、クラスメイト達から、少しでも疑って悪かったと謝られた。

 あの状況では、そうなってしまうのも仕方ない事だ。
 なので、彼等とは今後もいい関係でいたいし、「気にしないでくれ、最終的に俺を信じてくれたんだからそれでいい」と取り成しておいた。

 一軍グループは、リーダー的存在の来栖(最近はその風格も損なわれていはしたが)を欠いてしまい、重く沈痛な空気に包まれていた。
 いつも元気一杯な天真爛漫女子白鳥でさえも、そのショックは大きかったようで、口数少なく顔を俯かせていた。

 その来栖と、彼の犯行に加担していた和久井だが、あの騒ぎはすぐに先生達に知られるところとなり、学校側が判断を下すまでは、自宅謹慎という事になったらしい。

 かなり悪質な犯行なので、停学は免れないだろうし、ともすれば、退学という重い処分が下される事も十分にあり得るだろう。

 自業自得とはいえ、少し可哀想な気もする。
 来栖も、怜愛への想いが強過ぎる余りに、つい焦燥に駆られての犯行だったのだろう。
 彼は、修学旅行の夜に橘が話してくれたように、本来、誰にでも分け隔てなく接する心優しい好青年だった筈なのだから。

 ただ、怜愛と涼葉が事前に対策を講じておいてくれなかったら、俺は今頃、どうなっていたか分からない。
 疑いを晴らせずに、冤罪を着せられたまま、俺の方が重い処分を下されていたかもしれないんだ。
 そう考えると、やはり来栖達には、同情する余地はないんだろうな。

ねーじゅ『蒼介君が冤罪で罰せられる──なんて事にならないで本当に良かったよ』
ブルー『全部怜愛のおかげだよ。改めてありがとう。後、涼葉にもちゃんと何か形のあるお礼を返しておきたいな』

 夜になり、俺と怜愛はRainでトークしている。

 バックでミニコンポが鳴らしているのは羊文学の『祈り』──。

 ザラついたギターとは対照的に、伸びやかで透明感のある歌声。
 力強くも優しげに響く旋律は、まるで聴く者の心の痛みを慮っているかのようで、失意に沈んでしまった時に、そっと心に寄り添ってくれる──そんな曲だ。

 これは、罪を犯した来栖達へのはなむけでもある。
 彼等が悔い改めて、心安らかに新たなスタートを切れる事を願いながら。


ねーじゅ『芋男君も馬鹿だよねぇ。私に執着しさえしなければ、順風満帆な高校生活を送れたっていうのにさ』
ブルー『そうだな。君は罪作りな女だよ』
ねーじゅ『君も、そんな私に溺れてみる?』
ブルー『俺は程々でいいよ。君と俺じゃ釣り合っていないし、今の気の置けない友人って距離感が一番居心地がいい』
ねーじゅ『欲がないなぁ。もっと貪欲になってくれてもいいんだよ?』
ブルー『なんとでも言ってくれ。それより、今回件のお礼はなにがいい? 言葉だけじゃ足りない恩を受けてしまったからな』
ねーじゅ『お礼はいいよ。君が傍にいてくれる、それだけで』
ブルー『君の方こそ、欲がないじゃないか。それじゃあ俺の気が収まらないんだが』
ねーじゅ『そう? じゃあ、二十日の『変調愛テロル』三巻の発売日、そして、奇遇な事に君の誕生日でもあるその日に、私に祝わせてくれる事──それでいいよ』
ブルー『そんなの、俺が得するだけだし、何よりその日に二人でお祝いするのは以前から決めていた事じゃないか』
ねーじゅ『それでいいんだよ。私には、これまでがあるからね。余りもらいすぎてると、私の胸に余っちゃう』
ブルー『何だよ、それ⋯⋯君の言葉は把握し切れない事が多くて困る』

 今日も怜愛は、俺を戸惑わせて楽しむ悪戯好きな雪の妖精を体現していた。


   §


 週末の今日は、俺の三者面談がある日だ。
 
 俺は、多忙な中なんとか都合を付けてきてくれた父さんと並んで、廊下に置かれた椅子に座って、面談の順番が回ってくるのを待っていた。

「静音さんに会うのも久しぶりだなぁ。和咲さんも会いたがってはいたけど、面談なんだから、こればっかりは仕方がないね」

 父さんが、嬉しげにしながら、美作先生との再会を待ち侘びる。

 父さんは美作先生と仲が良かったからな。和咲も幼い頃はよく遊んでもらって懐いていたし、残念に思う気持ちも分かる。

「今度、ゆっくり会う機会でも作ればいいんじゃないかな。なんなら俺が食事を用意するよ」
「それはいいね。蒼介君の作る料理は、結月さん譲りで絶品だから、皆喜ぶよ」

 父さんとそんな風に会話していると、俺の次の順番のクラスメイトがやってきた。

 それは、ゆるふわギャルの新居だった。

「ヒモっち、あーしの前だったんだ~。よろ~」
「君が緋本君か。桃子から話は聞いているよ。この子、最近家じゃ君の事ばかり話すんだ」

 渋いイケおじという感じの男性が、にこやかに笑みながら気さくに話し掛けてきた。

「あ、どうも。娘さんにはよろしくしてもらっています」
「ちょ、パパ、恥ずかしい事言わないで~」

 新居(下の名前が桃子だという事が今になって判明した)が父親の胸をぽこぽこと叩く。何だこの可愛い生き物。

「あはは。本当の事じゃないか」
「初めまして。蒼介君の父親の空です。娘さんと蒼介君は親しい友人のようですね」

 父さんが新居の父親に丁寧に挨拶をした。

「どうも。桃子の父親の朝陽です。緋本君のおかげで、桃子は学校いくのが楽しくなったそうで、感謝しているんですよ」
「そう言ってもらえるのは、父親として嬉しい限りですね。お互いにいい影響を与えあってこれからも仲良くして欲しいです」
「ええ、全く。体育祭では、私は仕事で見にいけませんでしたけど、最終種目のリレーでバトンを繋げた関係で、緋本君の活躍もあって、見事に一位の座に輝いたそうですからね。仲もより深まった事でしょう」
「青黎祭でも、演劇で同じ舞台に立っていましたね。二人は何かと縁があるようです」
「そうですね。これは、二人がもう一歩踏み込んだ関係になる日も近いのでは?」
「ぱ、パパ!? 何言ってくれちゃってんの!? あーしとヒモっちはそういうんじゃなくて、ただのズッ友だし」

 動揺し、言葉を詰まらせる新居。今日は普段見れない彼女の素に近い部分が多く見られるな。

「桃子は恥ずかしがり屋さんだなぁ。緋本君の事は、嫌いじゃないんだろう?」
「そ、それは、そう、だけど~⋯⋯」

 新居が頬を赤らめながら、こちらにチラチラと視線を送る。

 俺がどう答えたものかと逡巡していると、教室のドアが開き、「失礼しました」と前の生徒が出ていった。

 折良く自分の番が回ってきた。

 そこで会話が区切られた事で難を逃れた俺は、「それでは、これで」と新居親子と別れ、父さんと一緒に教室に入った。


   §


「久しぶりだね、静音さん」
「ご無沙汰してます、空さん」

 机を挟んで向かい合う父さんと美作先生が、互いに微笑みを浮かべながら挨拶を交わす。

「積もる話もありますが、これは彼の進路を決めるための大事な面談なので、それはまた別の機会に、という事で」
「ええ、そうですね」
「では、早速聞くが、君はどんな進路を思い描いている?」
「そうですね。大学に進むという事は、もう決めています」
「そうか。何かやりたい事はあるのか?」
「いえ、目的は未だ見つかっていません」

 本を読むのはライフワークだし、自分で小説の執筆をしている事もあり、怜愛の担当編集を務めている貴志さんのように、出版社で仕事が出来たら──なんて事を考えたりしないでもない。

 ただ、それはとても狭き門だし、一つの夢として胸の内に秘めているだけであって、この場で口に出して言うような事じゃない

「ふむ。まぁ今の段階で無理に見つける必要はないだろう。大学にいって、そのやりたい事の選択肢を増やすように努めるといい。才能に溢れた努力家である君には、無限の可能性が広がっているからな」
「はい。そうする事にします」
「うむ。それで、その大学についてだが、どこか具体的な候補は挙げられるか?」
「以前進路希望調査票に書いた時よりだいぶ学力も向上したので、GMARCH辺りを目指そうと思っています」

 GMARCHというのは、首都圏を代表する難関私立大学の頭文字を取ってそう呼ばれる総称だ。

「そうか。君は前回の期末考査では総合一位だったからな。学力は申し分ないだろう。これから更に上げていけば、その上の早慶上智も十分狙えると思うが、それについては?」

 早慶上智というのは、より難関な私立大学三校の総称だな。

「いえ、そこまでのレベルは求めていません。無理のない範囲で堅実にいこうと考えています」
「堅実に、か。君らしいな。それもいいだろう。大学だけで人生が決まる訳でもないからな。君がプレッシャーを感じない程度に頑張ればいい」
「はい」
「空さんの方では、彼が今述べた進路についてはどう考えていますか?」
「僕は、どんな進路だろうと受け入れます。蒼介君の望むままにしてもらえれば、それで構いません」
「そうですか。蒼介、理解のある親を持てて、君は幸せ者だな。うちの頭の固い父にも見習って欲しいくらいだ」
「ええ。父さんには、感謝し切りです」
「うむ。将来、しっかりとその恩を返すといい」

 美作先生は、何やら書き込んでいた手元のファイルをパタリと閉じると、

「では、以上で三者面談は終了とする。君は次に待っている新居を呼んできてくれ」
「はい。じゃあ、これで失礼します」
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