お人好し転生鍛冶師は異世界で幸せを掴みます! ものづくりチートでらくらく転生ライフ

かむら

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2巻

2-1

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 はじまり


 日本の田舎いなか町で育った、ただの高校生だった僕、剣持匠真けんもちしょうまは今、異世界で猫耳美少女ねこみみびしょうじょ抱擁ほうようされている。
 なぜこんなことになったのかといえば……発端ほったんは、不幸体質ふこうたいしつこうじて命を落としたことだった。


 前世での僕は、花瓶かびんをはじめとした物が落ちてくるなんてことがしょっちゅうあったり、学内でボールが顔面目掛けて飛んでくることが日常茶飯事にちじょうさはんじだったり。
 とかく深刻しんこくな不幸体質だった。
 そんなある日、僕はバイト帰りにトラックにかれそうな少女を見かけてしまう。
 彼女を助けるために僕は身をていして……命を落とした。
 でもそれは――不幸体質は神様の手違いだったんだよね。
 神達を統括する『最高神』フォルティは僕にその事実を教えてくれた上で、『異世界に転生させてあげる』って言ってくれた。
 とはいえ、僕は規格外きかくがいな能力をさずけられてしまうと目立ちすぎてしまうし、自分で開拓していく面白みが減ってしまうかなって思っていた。
 だから、僕は程々にしてほしいとフォルティに伝えていた。
 でも、彼女は加減を知らなくて、物凄ものすごい職業を授けられてしまった。
 まず一つ目は『鍛冶師かじし』。
 様々な素材を使って、武器や防具など、あらゆる物を作ることが出来る能力だ。
 そして『魔導士まどうし』。
 これは、どんな属性の魔法も高水準で使いこなせるというもの。
 最後に『武神ぶしん』。
 これがあればどんな武器や防具もすぐ使いこなせるのだ。
 こんな能力を授かってしまったから、なんだかことあるごとに目立ってしまっている気もするけど……それはもう仕方ないって割り切った。
 そんな矢先、僕は一匹のねこと出会う。
 その子は魔物に追われてズタボロで……
 放っておけなかった僕は、その子を助けてあげたんだ。
 そしたらなんと、その子は猫じゃなくて獣人じゅうじん獣化じゅうかのスキルを使って変身した姿だった。
 その獣人の少女こそが、今僕を抱きしめているノアル。
 聞けば彼女は故郷こきょうである獣人村がおそわれたところを、命からがら逃げ出してきたらしい。
 早く獣人村に戻りたくとも、装備そうびも足もない。
 そのため依頼をこなしていたんだけど、そこで獣人村を襲ったのと似た魔族――ゴブリンジェネラルと遭遇そうぐう
 なんとか倒したんだけど、その魔物がなんと魔道具『隷属れいぞくの輪』によって人間にあやつられていたことを知る。
 人が魔族を操っているのだとしたら、再度獣人村が襲われる可能性がある。
『今すぐにでも村へ帰る』と言い出したノアルに、当然『僕もついていく』と伝えたら、こうして抱きしめられてしまったというわけ。
 相当嬉しかったんだな。


「ノアル、もういいかな?」
「……ん、満足」

 ノアルが抱擁をくのを待って、僕は言う。

「そうしたら、とりあえずゴブリンジェネラルの死骸しがいを回収して、この隷属の輪についてもギルドに報告しよう」
「……ん」
「それが済んだら、今日のところは遠出するための食料とか必要なものを買いに行こう。それで、明日の早朝に出発するって感じでどう?」
「……分かった」

 恐らく、ノアルは今すぐにでも故郷の村へと戻りたいと思っているのだろう。
 でも、流石さすがになんの準備もなく向かうのが自殺行為じさつこういだとは分かっているようで、僕の提案に素直すなおに同意してくれた。
 そうして今後の方針ほうしんを決めた僕達は、とりあえず倒したゴブリンジェネラルの死骸を回収する。
 そして一応周りに他の魔物がいないかを僕は探知魔法で、ノアルはにおいや音で確認。
 結果、問題なさそうだったので、街へと戻った。



 1 ユレーナさんとの戦い


 街に戻ってきた僕達は、解体場にゴブリンの死骸をあずけ、ギルドへ。

「あっ、ショーマさんにノアルさん!」

 依頼の達成報告専用のカウンターには、丁度ギルドの受付嬢うけつけじょうのリムさんがいた。

「達成報告、してもいいですか?」

 僕が聞くと、リムさんはにっこり笑ってうなずく。

「はい、大丈夫ですよ!」
「この依頼を解決してきました」

 僕が依頼の書かれた紙を渡すと、リムさんは言う。

「では、ギルドカードもお出しください」

 そうか、ギルドカードを出す必要があったんだった。
 僕は慌てて懐からギルドカードを取り出して、リムさんに渡した。
 ギルドカードには討伐とうばつした魔物の数や種類が自動的に記録される。
 討伐依頼の時はそれを見せると達成報告が出来る、というシステムになっているらしい。
 この間、異世界で最初に出会ってから世話を焼いてくれているゲイルさんに、どういう仕組みなのか聞いてみた。
 なんでも、倒した魔物からは経験値けいけんち――魔力に近しいエネルギーのような物質が発せられるのだという。
 そしてそれをギルドカードが感知して記録するという仕組みのようだ。
 ……正直ちゃんと理解出来ているかは怪しい。
 ただ、ゲイルさんも『詳しくは知らん! そういうものだと俺は割り切ってる!』と言っていたので、僕もそれ以上考えないことにした。
 リムさんが手続きを進めてくれる。

「えーっと、ゴブリン五匹の討伐ですね……って、二人で十三匹も討伐してるじゃないですか! えっ、しかも、ゴブリンジェネラルも討伐したんですか?」
「はい。ゴブリンを探す中で集落を見つけたので、そこにいたゴブリンを全部倒したんです」
「す、凄いですね……? 青ランクと白ランクが出来ることじゃないですよ?」

 冒険者の中にはランクというものがある。
 ランクは達成した依頼や素行そこうを総合的に評価された上で白、緑、青、黄、赤、むらさきどうぎん、金、黒という順番で上がっていく。
 僕は、ギルドマスターであるユレーナさんにブルーウルフという狼の魔物を四匹討伐した功績を認められ、白から一気に青に上げてもらった。
 でも、ノアルは強いものの、まだ登録したばかりだったから白なんだよね。
 ちなみに、冒険者パーティにもパーティランクというものがある。
 そちらはパーティ内のメンバー個人のランクを平均したものになる。
 僕らのパーティランクは緑。
 そして、受けられる依頼はパーティランクによって決まるんだけど、自分のランクより一段上の依頼までしか受けられないんだよね。
 今回受けた依頼は、青ランクの討伐依頼の中だと難易度なんいど報酬ほうしゅうも中くらいだった。

「ノアルにかなり助けられました。それと、戦っていて不審ふしんな点がいくつかあったので報告してもいいですか?」
「はい! もちろんです!」
「実はですね……」

 僕はリムさんに、倒したゴブリンジェネラルが魔法が付与された装備を着けていたことや、隷属の輪という魔道具を仕掛けられていたことを報告した。
 あと、獣人村についてなど、ノアルの事情については、本人がつたない口振りではあったが報告してくれた。
 それを神妙しんみょうな表情を浮かべながら聞いて、リムさんは口を開く。

「なるほど……ご報告ありがとうございます。実はここだけの話、同様の事例がここ数ヶ月の間にいくつか発生しているんです」
「そうなんですか?」
「はい。中には、魔物と会話をしているような素振そぶりを見せるあやしい者達を見かけた、なんて報告もあって、ギルドでも秘密裏ひみつりに調査をしています」

 魔物と会話をする者達か……
 もしかしたら、隷属の輪を使って何か命令をしていたのだろうか。

「近いうちにギルドでも大規模な調査をする予定ですから、今回提供してもらった情報もギルド内で共有させていただきますね」
「役立ててもらえると、こちらとしても嬉しいです」
「何はともあれ、お疲れ様でした。報酬は上乗せさせてもらって金貨三枚となります。上位種を倒したので、ランクも上がると思いますよ!」
「え、そんなにすぐ上がるんですか?」
「実績は十分ですし、ショーマさんもノアルさんも素行がいいので上がると思いますよ? 強い力を持つ人にはなるべく難しい依頼を解決していただきたいので、ある程度のランクまではすぐに上がるんじゃないですかね」

 もうランクが上がるのか。
 昨日青ランクになったばかりなのに、こんなトントン拍子びょうしでいいのだろうか?
 まぁ、ゲイルさんの所属するパーティのリーダーであるクラウスさんとミリアンヌさんにもランクを早く上げた方がいいと言われたし、ここは素直に喜ぶべきかな。

「あ、それと、僕達明日から獣人国のノアルの村へ向かおうかと」
「えっ、明日ですか?」
「……無茶なのは分かってる。けど、村の皆が心配」

 ノアルは思い詰めた様子でそう口にした。

「そうですか……うちのギルドでも何か出来ればいいんですが、すみません。国をまたいだ問題となると、ギルドは中々動けなくて……」
「……大丈夫。村から近い冒険者ギルドがある街に早馬はやうまを出してたから、そこからきっと助けが来てるはず」
「それならよかったです。あ、でしたら、この街の北門から獣人国へ向かう馬車が出ていますから、途中までそれに乗っていくといいかもしれませんね」
「お、確かにそっちの方が良さそうですね」

 流石さすがに自分達の足だけで向かうのは体力的にもしんどそうなので、馬車で途中まで行った方がいいだろう。
 ちなみに、この世界では基本的に、国への出入りは大きな組織や貴族以外であれば自由で、面倒な手続きなどを挟む必要はない。
 セキュリティ的に大丈夫かと思うかもしれないが、その代わりに大きな街では必ず検問が行われている。
 それゆえに悪いことを考えていてもそう上手くはいかないそうだ。

「何はともあれ、どうかお気を付けて行ってきてくださいね……?」
「はい、もちろんです。何よりも命あっての物種ものだねですから、なるべく無理はしないようにします」

 僕がそう言う横で、ノアルがこぶしにぎる。

「……ショーマはノアルが守る」
「はは、ありがとう。僕もノアルを守るよ」
「……っ。こういう時、私は無力ですね……」

 リムさんがぼそっと何か言った気がしたんだけど……
 首をかしげながら、僕は聞く。

「あれ、何か言いましたか、リムさん?」
「あっ、いえっ……! 無事に帰ってくることをねがってますっ!」
「ありがとうございます」

 それからリムさんに、今日の依頼の報酬である金貨三枚をもらい、ギルドを後にしようとしたのだが――

「お、ショーマじゃないか。丁度いいところに!」

 ギルドの二階からユレーナさんが下りてきて、僕に声をかけてきた。

「あ、ギルドマスター! 仕事は終わったんですか……?」
「ああ! ちゃんと終わらせてるから安心しろ!」

 ユレーナさんはリムさんの問いに笑顔でそう答えると、僕達の方へと歩み寄ってくる。

「お疲れ様です、ユレーナさん」
「ああ、ようやくまった仕事が片付いたよ」
「はは、それは何よりですね。あ、ノアル? この人はユレーナさん。このギルドのギルドマスターだよ」

 僕がギルドマスターと会ったのは、まだノアルとパーティを組む前だったから、軽く紹介しておいた。
 ノアルはそれを聞いて、軽く頭を下げる。

「……ギルドマスター。よろしく」
「おっ、よろしくね。ショーマがパーティーを組んだって話はさっき聞いたが、中々出来そうじゃないか」

 強者は相手の力量を雰囲気とかから測れる……のかな?
 いや、今はそんなことどうでもいいな。
 それより、さっきユレーナさんが口にした『丁度いいところに!』という言葉の方が気になる。

「それで、何か僕に用事があるんでしたっけ……?」
「おお、そうだったそうだった。この前約束したこと、覚えてるか?」
「この前、というと模擬戦もぎせんの話ですかね?」
「そうだ! 今からやらないか?」
「んー、そうですね……僕は構いませんよ。ノアルはどうする?」
「……付いてく」
「よし、決まりだな! それじゃあ訓練場くんれんじょうへ行こう!」
「分かりました。リムさん、ギルドカードは預かってもらっていいですか?」
「はい、もちろんです! ギルドマスター? 程々ほどほどにしておいてくださいよ?」
「分かってる!」


 そんなわけで僕達は、ギルドの地下へと向かうことに。
 訓練場は、地下にあるそうだ。

「いやー、仕事を早く終わらせた甲斐かいがあったよ! 誰か相手がいないかと思って下まで下りてきたんだが、ショーマがいてくれてよかった!」
「僕でよかったんですか? 他にも強い人はいるんじゃ?」
「いるにはいるが、折角なら戦ったことのない奴とやりたいだろ!」

 うーん、ちょっと僕には分からないが……
 ユレーナさん、思ったよりも戦闘好きみたいだ。
 そう思っていると、ユレーナさんはノアルに視線を向ける。

「あんたもやるかい? こちらとしては大歓迎だいかんげいだが」
「……ん、やる」

 お、意外とノアルもやる気だ。

「よし、着いたよ。ここが訓練場だ」
「広いですね」
「……おー」

 訓練場は結構広い。
 まさかギルドの地下にこんな広大こうだいなスペースがあったとは。
 そんなふうに感心していると、ユレーナさんが説明してくれる。

「この訓練場のかべは魔力を通さないから、魔法もてるぞ。物理攻撃でも簡単かんたんにはこわれないから、ある程度全力で戦える」
「なるほど……凄いですね」
「よし、じゃあ早速やろうか? 魔法もありでいいぞ? アタシはほぼ使えないがな」

 ユレーナさんが魔法を使えないとは初耳だ。
 僕だけが魔法を使えるなんて、大分有利に思えてしまう。

「いいんですか?」
「ああ。全力でやらないと面白おもしろくないだろう? 行動不能になるか、降参したら負けっていうルールでいいか?」
「分かりました」

 何気にこの世界に来てから初めての対人戦だな。
 僕は息を吐いて集中力を高めながら、訓練場の端に移動し、対面の端にいるユレーナさんと向かい合う。
 正面に立つユレーナさんは、いわゆるシャムシールと呼ばれるような曲刀きょくとう無造作むぞうさに構えている。
 僕もロングソードを構え、魔法をいつでも放てるよう、準備しておく。
 今回は、ノアルが審判しんぱんつとめてくれることになった。
 僕とユレーナさんがノアルに向かって頷くと――

「……始め」

 ノアルの開始の合図と共に、ユレーナさんが突っ込んでくる……って、速っ!?
 三十メートルくらいは離れていたのに、もうユレーナさんは十五メートルくらいの距離にいる。

「『ロックバレット』!」

 慌てて僕は魔法をとなえ、小さな土の弾丸だんがんをいくつも発射した。
 これでうかつには近づけないはず……
 そう思っていたのに、ユレーナさんは目にも留まらぬスピードで曲刀を振るい、自分に当たりそうな土弾だけを叩き落とす。

「ふっ!!」

 そして、そのままスピードを落とさず突っ込んできて、僕目掛けて剣を振ってきた。
 僕はそれをロングソードでいなそうとしたんだけど……重い!
 バランスを崩しかけてしまう。

「くっ!?」
「ほらほら! めないと勝てないよ!」

 その後もすさまじいスピードで剣を振ってくるユレーナさん。
 このままだと、受け切れない……!
 そう思った僕は、バックステップでユレーナさんの剣を紙一重かみひとえで避けると同時に、その方向に魔法で風を起こす。

「『ウィンド』!」

 その処理にかかずらっているすきに距離を取ろうと考えてのことだった。
 なのに、それすら曲刀を一振りするだけで消え失せた。

「ほー、面白い魔法の使い方だね。いいじゃないか!」

 いや、この人強すぎる!
 どうする!?
 このままだと、何も出来ずに終わる!

遠慮えんりょしてるね? そんなんじゃアタシを止められないよ!」

 遠慮だなんてとんでもない!
 魔法はかない、剣でも勝てない。
 ならどうする?
 本当に手詰まりか?
 他に何か手はないか?
 ……ダメだ、何も思いつかない。
 とりあえずは時間を稼がなくては……!

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