お人好し転生鍛冶師は異世界で幸せを掴みます! ものづくりチートでらくらく転生ライフ

かむら

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2巻

2-2

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「『ファイアウォール』!」

 炎の壁を作り出した。
 火魔法は使わないつもりだった。
 土魔法と比べて相手を怪我けがさせる可能性が高いからだ。
 でも、ここまで戦って分かった。
 恐らくこの人なら歯牙しがにもかけないだろう、と。

「『ロックウォール』!」

 火の壁の後ろに土の壁を作り出した。
 流石のユレーナさんも足を止めた。
 でもそれだって数秒で打開されてしまうに違いない。
 その数秒の時間の中で、どうにかして一矢報いっしむくいる方法を考えなくては。
 魔法も剣も効かないユレーナさんに一撃を入れるためには、どうにかして意表いひょうを突かないと……
 何か手はないか……!?

「ハァァッ!!」

 ユレーナさんの裂帛れっぱくが聞こえた。
 ほぼ同じタイミングで、壁に何かがぶつかる音がする。
 なんだなんだ!?
 僕が壁の横から少しだけ顔を出し、ユレーナさんの方を見てみると、ファイアウォールが跡形もなく消え去り、ロックウォールにも大きな亀裂きれつきざまれていた。
 ユレーナさんは、さっきの位置から動いていなかった。
 ただ、剣を振り抜いた体勢でこちらを見ていた。
 もしかして、斬撃ざんげきを飛ばしたの!?


 飛ばした斬撃でファイアウォールを消し去って、ロックウォールにもダメージを与えたのかこの人!?

降参こうさんかい?」

 おどろいてる僕を見て、ユレーナさんが曲刀で肩をトントンしながらそう聞いてくる。
 ……確かに、くやしいがこの人には今の僕じゃあ勝てないだろう。
 けど、最後までやれることはやるべきだ。

「いえ、まだです!」
「お! いいねぇ、最後まで楽しませておくれよ!」

 なんとかして一矢報いてやる!


 *


「参りました……」

 ユレーナさんと戦い始めてから約十分後。
 結局僕は、大した反撃も出来ずに負けてしまった。
 途中、風魔法で強化したロックバレットが数発ユレーナさんの服をかすめたくらいで、ユレーナさんはほとんど無傷だ。

「いやぁ、中々楽しかったぞ! 普通に強いじゃないか、ショーマ!」
「いや、ほとんど何も出来なかったんですけど……」
「そんなことないぞ? 大半の奴は最初の立ち合いで降参しちまうから、ここまで長く戦えたってだけでも十分だ! 何発か危ないのもあったしな!」
「僕としては、ユレーナさんが予想をはるかに上回る程に強かったので驚きました。金ランクの冒険者って、皆さん、ユレーナさんくらい強いんですか?」
「んー、人によるんじゃないか? 近距離の攻撃手段しか持たない相手だったらアタシは負けなしだが、たとえばミリーと広い場所でなんでもありの勝負になったら、大規模魔法で吹っ飛ばされるかもな。まぁ、簡単に負ける気はしないがね!」

 大規模魔法に対しても、対抗手段があるのか……
 とんでもないな。

「それで、ノアル? アンタもやるかい?」
「……ん! お願いする。ショーマ、剣出して」
「分かった。一応怪我には気を付けてね」
「……ん、了解」

 僕はアイテムボックスからノアルの双剣そうけんを出して手渡した。
 抜き身の剣を持ったまま移動するわけにはいかないので、基本的にノアルの双剣は僕のアイテムボックスにしまってある。
 ノアルはそれでもいいのかもしれないけど、依頼の時とかはいつ戦闘になるか分からない。
 装備出来るように、今度さやとか作ろうかな?
 そんなことを考えつつ、審判を務めるべく、僕は先程ノアルがいた位置に移動する。
 全員が所定の位置についたタイミングで、ユレーナさんが言う。

「よし、じゃあやろうか! 遠慮なくかかっておいで!」
「……ん!」
「それじゃあ、いきますよ……始め!」

 僕の合図で二人の試合が始まった。


 *


「あ、ショーマさん! 大丈夫でしたか?」

 模擬戦を終え、僕達は受付にいるリムさんのところへ戻ってきた。

「大丈夫ですよ、リムさん。とてもいい経験が出来ました」
「……負けた」

 耳と尻尾しっぽをへにゃっとさせながらそう口にしたノアルに、ユレーナさんは笑いながら言う。

「はは、ノアルも強かったぞ! 近接戦闘だけならショーマよりも強いな!」

 そう、ノアルもユレーナさんには勝てなかった。
 試合時間は僕よりも短かったが、剣戟けんげきの回数自体は僕よりもかなり多かった。
 とにかく二人共動きが速くて、ちょこちょこ何をしているのか視認出来ない瞬間もあったくらいだ。
 それにしても、やはりユレーナさんは凄い。
 試合を終えて、『八割くらいは全力を出した』と言っていた。
 それだって本当かどうかってところだから、底が見えない。
 でも、そんなユレーナさんのお墨付すみつきをもらえたってことは、ノアルの近接戦の戦闘力は相当なものと見ていいだろう。

「じゃあ、僕達はこのあと色々と準備があるので、行きますね」
「準備? どっか行くのかい?」

 そう聞いてきたユレーナさんに、ノアルのために獣人国へ行くことをざっくりと説明した。

「ふむ……そうか。とりあえず、気を付けて行くんだよ。最近、森の様子がおかしいからね」
「はい、しっかり準備して行こうと思ってます」
「まぁ、お前さん達ならそうそう負けないとは思うがね。実力はアタシが保証してあげよう」
「はは、ありがとうございます」




 2 準備


 それからユレーナさんとは、また今度模擬戦をするという約束を交わして解散。
 続いて、ギルドの近くにある解体場にゴブリンの素材代をもらいにいくことにした。
 そこでは持っていった魔物を解体した上で買い取ってくれるのだ。
 解体場の責任者――グラッドさんいわく、普通のゴブリンの素材はそこまでの値段にならず、体内にある魔石が売れるくらいらしい。
 魔石とは、魔物の心臓しんぞうに当たる部位で、魔力をたくわえたり放出したりする性質がある。
 魔道具のかくに使われることが多いそうだ。
 魔石を売るかもらうか……迷ったけど、価値が高いゴブリンジェネラルの魔石はもらっておくことにした。
 武器作りに使えるかもしれないしね。
 自分で試してみて、ダメだったらまた売りに来ればいいだろう。
 その他の素材代は全部で金貨一枚になり、依頼の報酬金と合わせて計金貨四枚を手に入れることが出来た。
 冒険者デビューしたてにしては稼げた方なんじゃないだろうか?

「よし、報告も済んだし、色々必要なものを買いに行こうか」
「……んっ」
「お、ショーマ達じゃねぇか」

 僕達が解体場を出ようとしたタイミングで、同じように解体を頼みに来たのか、ゲイルさんとバッタリ鉢合はちあわせした。

「ゲイルさん、お疲れ様です」
「おう、ショーマ達もな。依頼はどうだった?」
「依頼自体はつつがなく終わりましたよ。ただ、少しイレギュラーなことがありましたね」
「イレギュラー?」

 ゲイルさんも近頃の異常について何か知っているかもしれないので、僕は今回の依頼の中で起きたことをゲイルさんにもざっくりと話してみた。

「ゴブリンの集落か。普通は森の入口近くには作らないはずなんだが、最近多いな」
「そういう異常を最近ちょこちょこ耳にするってリムさんからも聞きました」

 それから僕は、獣人村へ行く予定であることも話す。
 すると、ゲイルさんは神妙な顔つきで口を開く。

「お前達、獣人国に行くのか」
「そうですね。明日の朝一で馬車に乗っていくつもりです」
「気を付けろよ? 遠出では何が起こるか分からないからな。まぁ、お前は元々旅人だったから、慣れっこかもしれんが」
「え? あ、あぁ、そうですね」

 そういえば僕、そんな設定だったな……
『別の世界から転生してきました!』なんて言ったら目立ちすぎること請け合いだと思って、そう言い訳をしたんだよね。

「特に森には用心しろよ。……これはなるべく秘密にしとけって言われたんだが、お前らには言っておいた方がいいな」
「……なんでしょうか?」

 ゲイルさんは、周りに聞いている人がいないか確認をしてから話し始めた。

「……森の異変なんだが、どうにも人為的じんいてきに起こされているみたいだ」
「それは……どういうことですか?」
「一週間前くらいに、近くのダンジョンにこの街を拠点にしてる獣人のパーティーが行ったらしい。その時、森の中で怪しい人間が複数人まとまって、何やら魔物に指示を出していたのを見たそうだ」
「あー、隷属の輪を使って、ですかね?」
「お、知ってるんだな?」
「実は、今日倒したゴブリンジェネラルにも着いてました」
「マジか。……で、そんな怪しい連中を見過ごすわけにもいかんから、獣人のパーティーが接触をこころみたら、連中はそれはもう全力でげたらしく、つかまえることは出来なかったそうだ。けど、魔物の方はちゃんと倒して、持ち帰ってみたら、その魔物に隷属の輪が着いてて、存在が露見ろけんしたって話だ」
「なるほど……」
「ギルドも今、色んな手段で出所でどころさぐっているらしい。だから、森を抜けるとなるともしかしたらそういうのに遭遇するかもしれないから、気は抜かない方がいいぞ」
「分かりました。ご忠告ありがとうございます」

 確かに、獣人村に辿たどり着くまでにもまた今回のゴブリンジェネラルのような魔物に遭遇する可能性は十分にある。
 気を引きめていかないとな。

「あ、そうだ。ゲイルさん。遠出するために必要なものを売っている店ってありますか?」
「ん? あぁ、それなら道具屋に行けば色々と便利べんりなものを売っていると思うぜ?」
「道具屋ですか?」
「あぁ。向こうの通りにあって、冒険に役立つもんとか、割となんでも置いてあるぜ。……ただ、お前なら自分で作れるんじゃないか?」

 ゲイルさんは周りに聞こえないよう、小声で僕にそう言ってきた。

「自分で、ですか?」
「あぁ。道具屋には魔道具も置いてある。たとえば、魔物に見つからないための結界を張る石とか、寝るだけで体力が回復する寝袋ねぶくろとかがある。寝袋はともかく、結界を張る石くらいならお前でも作れるんじゃないか? 確かあれも効果付与されたもんだったと思うぜ」
「なるほど……もしかしたら作れるかもしれませんね。とりあえず、道具屋に行って色々と見てみようと思います」
「それがいいな。あとは食料もしっかり準備していった方がいいぞ。うちのパーティーで遠出する時はミリーが収納魔法を使えるから、あらかじめ作っておいた食べ物を保管しておいてもらって、必要になったらその都度出してもらっている。ショーマも収納魔法、使えるだろ?」
「それはいいですね。教えてくださりありがとうございます」
「相変わらずかてぇなぁー。気にすんなって! とにかく気を付けて行けよ? 帰ってきたら向こうの様子とか教えてくれや!」
「もちろんです」


 こころよく色々と教えてくれたゲイルさんとは一旦そこで別れ、僕達は教えてもらった道具屋へと向かう。
 その道中に、獣人村へ行くに当たっての打ち合わせをする。

「馬車を使ったら、どれくらいで着くだろう?」
「……何事もなく行けば、二日もかからないと思う。私があっちこっち行きながらここまで来るのに、三日くらいかかったから」

 ということは、少なくとも確実に一日は野宿のじゅくすることになるのか。
 一応、手持ちはそれなりにあるから、十分必要なものは買いそろえられるとは思う。
 何があるか分からないし、食材をはじめとした日用品は少し多めに買っておくべきだろう。

「道具屋はあっちか。途中に市場もあるから……先にそっちに行ってもいい?」
「……もちろん」
「ありがとう」

 ということで、この前立ち寄った市場に足を向ける。
 まず食料を買いたいし、もしこの間行った鉱石屋に酸化鉄があったらもらいたい。
 前回は処分費用が浮くからってタダでもらえたんだよね。
 普通の人だったら使い道がないような酸化鉄でも、合成・分離スキルを使えば武器作りに使う部分とそれ以外を仕分けられるのだ。

「よし、着いた。とりあえず食材から買おうかな。すぐに食べられるものを作りたいから、それ用の食材を……」
「……ショーマ、料理出来るの?」
「ああ、うん。ララさん程ではないけどね。家庭料理くらいは作れるよ」
「……そうなんだ。ショーマの料理、楽しみ」

 そう言うノアルは、耳をピコピコ、尻尾をゆらゆらと揺らして、期待のこもった表情を向けてくる。
 あんまり期待されると、好みに合わなかった時に困るんだけど……
 まぁ、美味しいって言ってもらえるよう、頑張らなきゃな。
 そうひそかに決心した僕は店に行き、色々な食材を手に入れた。
 改めて見てみると、この市場で売っている食材はどれもかなり安い。
 予算いっぱい買ってみたところ……余裕で二週間くらいは持ちそうな量の食材を買うことが出来た。
 ちなみに、野菜や果物は見たことのあるものを中心に、少しだけ見たことのないものも買ってみた。
 白色のピーマンっぽい奴とか、トゲトゲしたにんじんっぽい奴とか。
 それと、肉類は主にお店の人に勧められた、魔物の肉を色々と買ってみた。
 なんでも、僕が見たことのあるような家畜かちくの肉よりも、断然魔物の肉の方が美味しいんだそう。
 あとは、主食としてパンと乾燥かんそうパスタ、他にも牛乳ぎゅうにゅうやチーズなどの乳製品や小麦粉こむぎこ片栗粉かたくりこも手に入れた。
 そして最後に、砂糖さとうしお醤油しょうゆ味噌みそといった、いわゆる『料理のさしすせそ』と呼ばれる調味料に加えて、油や料理酒、胡椒こしょうにハーブなんかも少しずつ買っておいた。
 うん、これだけあればなんだって作れそうだな。
 久しぶりにこういう買い物をしたから、つい夢中になってしまった。
 めずらしい食材も沢山あったし、安かったし。

「ごめんね、ノアル。時間かかっちゃって」
「……大丈夫、ノアルも楽しかった」

 よかった、退屈たいくつはしてなかったみたいだ。
 そうして食材を買い終えた僕達は、今度は同じ市場にある、以前鉱石屋があった場所に向かった。
 市場の店は入れ替わりが激しいイメージがある。
 また店を出していたらいいなと期待しながら足を運んでみたんだけど……そこには以前と全く同じ鉱石屋が店を構えていた。
 ノアルは鉱石を見てもよく分からないので、近くの他の店を見て回ってるとのこと。
 一旦別行動である。

「おはようございます」
「おう、いらっしゃい……って、この前の兄ちゃんじゃねぇか!」
「ご無沙汰ぶさたしてます。今は営業中ですか?」
「ああ、もちろんだ。なんか買っていくかい? うちの商品は量も質もしっかりしてるぜ!」

 そんなふうに言ってくれた店主に感謝をしつつ、僕は店内を見て回る。
 ちなみに、この人はジストンさんというそうだ。
 今後もお世話になるかもしれないので、名前を聞いてみたのだが、快く教えてくれた。
 店主――もといジストンさんに頼んで、まずは鉄鉱石を金貨二枚分用意してもらった。
 量で言うと、合成・分離のスキルを使ってよりよい部分だけを抽出したら、僕が使っているロングソードを五本作れるくらいだ。
 そういえば、地球では鉄鉱石ってどのくらいの値段なんだろうか?
 金貨二枚=二万円と考えると、結構お得な気がするのだが、聞いてみるか。

「僕の感覚だと、このお店の商品はかなり安く感じるんですけど、鉱石ってどこから仕入れてるんですか? ……あ、もちろん言いたくなかったら結構ですよ」
「いや、別に言っても問題はないぞ。鉄鉱石とか銀とか金、あとよく仕入れるもので言うと、ミスリルとかか。そいつらは色んな国の鉱山から採掘されるんだ。それぞれ色んな所から仕入れてるぞ」
「そうなんですね」
「ただ、鉱山だけじゃなくてダンジョンからも鉱石は入手出来るからな。そこでも鉄鉱石とかは取れるし、なんなら面白い効力がある鉱石も手に入る。そういうのが取れるダンジョンは重宝ちょうほうされてるぜ」
「なるほど。このお店だけでもかなりの量と種類がありますけど、枯渇こかつしないんですか?」
「鉱山の鉱物は枯渇することはないでもないが、ダンジョンの鉱石が枯渇したって話は聞いたことないな。それに、そういうダンジョンには、鉄やらミスリルとかで出来たゴーレムって魔物もいるらしいから、この世界から鉱石がなくなるなんてことはないんじゃないか?」

 ミスリルで出来たゴーレムなんているのか。
 ひょっとしたら、ダイヤモンドで出来たゴーレムとかもいるのだろうか?
 地球にいたら争いが起きそうだな。

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