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2巻
2-2
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「『ファイアウォール』!」
炎の壁を作り出した。
火魔法は使わないつもりだった。
土魔法と比べて相手を怪我させる可能性が高いからだ。
でも、ここまで戦って分かった。
恐らくこの人なら歯牙にもかけないだろう、と。
「『ロックウォール』!」
火の壁の後ろに土の壁を作り出した。
流石のユレーナさんも足を止めた。
でもそれだって数秒で打開されてしまうに違いない。
その数秒の時間の中で、どうにかして一矢報いる方法を考えなくては。
魔法も剣も効かないユレーナさんに一撃を入れるためには、どうにかして意表を突かないと……
何か手はないか……!?
「ハァァッ!!」
ユレーナさんの裂帛が聞こえた。
ほぼ同じタイミングで、壁に何かがぶつかる音がする。
なんだなんだ!?
僕が壁の横から少しだけ顔を出し、ユレーナさんの方を見てみると、ファイアウォールが跡形もなく消え去り、ロックウォールにも大きな亀裂が刻まれていた。
ユレーナさんは、さっきの位置から動いていなかった。
ただ、剣を振り抜いた体勢でこちらを見ていた。
もしかして、斬撃を飛ばしたの!?
飛ばした斬撃でファイアウォールを消し去って、ロックウォールにもダメージを与えたのかこの人!?
「降参かい?」
驚いてる僕を見て、ユレーナさんが曲刀で肩をトントンしながらそう聞いてくる。
……確かに、悔しいがこの人には今の僕じゃあ勝てないだろう。
けど、最後までやれることはやるべきだ。
「いえ、まだです!」
「お! いいねぇ、最後まで楽しませておくれよ!」
なんとかして一矢報いてやる!
*
「参りました……」
ユレーナさんと戦い始めてから約十分後。
結局僕は、大した反撃も出来ずに負けてしまった。
途中、風魔法で強化したロックバレットが数発ユレーナさんの服を掠めたくらいで、ユレーナさんはほとんど無傷だ。
「いやぁ、中々楽しかったぞ! 普通に強いじゃないか、ショーマ!」
「いや、ほとんど何も出来なかったんですけど……」
「そんなことないぞ? 大半の奴は最初の立ち合いで降参しちまうから、ここまで長く戦えたってだけでも十分だ! 何発か危ないのもあったしな!」
「僕としては、ユレーナさんが予想を遥かに上回る程に強かったので驚きました。金ランクの冒険者って、皆さん、ユレーナさんくらい強いんですか?」
「んー、人によるんじゃないか? 近距離の攻撃手段しか持たない相手だったらアタシは負けなしだが、たとえばミリーと広い場所でなんでもありの勝負になったら、大規模魔法で吹っ飛ばされるかもな。まぁ、簡単に負ける気はしないがね!」
大規模魔法に対しても、対抗手段があるのか……
とんでもないな。
「それで、ノアル? アンタもやるかい?」
「……ん! お願いする。ショーマ、剣出して」
「分かった。一応怪我には気を付けてね」
「……ん、了解」
僕はアイテムボックスからノアルの双剣を出して手渡した。
抜き身の剣を持ったまま移動するわけにはいかないので、基本的にノアルの双剣は僕のアイテムボックスにしまってある。
ノアルはそれでもいいのかもしれないけど、依頼の時とかはいつ戦闘になるか分からない。
装備出来るように、今度鞘とか作ろうかな?
そんなことを考えつつ、審判を務めるべく、僕は先程ノアルがいた位置に移動する。
全員が所定の位置についたタイミングで、ユレーナさんが言う。
「よし、じゃあやろうか! 遠慮なくかかっておいで!」
「……ん!」
「それじゃあ、いきますよ……始め!」
僕の合図で二人の試合が始まった。
*
「あ、ショーマさん! 大丈夫でしたか?」
模擬戦を終え、僕達は受付にいるリムさんのところへ戻ってきた。
「大丈夫ですよ、リムさん。とてもいい経験が出来ました」
「……負けた」
耳と尻尾をへにゃっとさせながらそう口にしたノアルに、ユレーナさんは笑いながら言う。
「はは、ノアルも強かったぞ! 近接戦闘だけならショーマよりも強いな!」
そう、ノアルもユレーナさんには勝てなかった。
試合時間は僕よりも短かったが、剣戟の回数自体は僕よりもかなり多かった。
とにかく二人共動きが速くて、ちょこちょこ何をしているのか視認出来ない瞬間もあったくらいだ。
それにしても、やはりユレーナさんは凄い。
試合を終えて、『八割くらいは全力を出した』と言っていた。
それだって本当かどうかってところだから、底が見えない。
でも、そんなユレーナさんのお墨付きをもらえたってことは、ノアルの近接戦の戦闘力は相当なものと見ていいだろう。
「じゃあ、僕達はこのあと色々と準備があるので、行きますね」
「準備? どっか行くのかい?」
そう聞いてきたユレーナさんに、ノアルのために獣人国へ行くことをざっくりと説明した。
「ふむ……そうか。とりあえず、気を付けて行くんだよ。最近、森の様子がおかしいからね」
「はい、しっかり準備して行こうと思ってます」
「まぁ、お前さん達ならそうそう負けないとは思うがね。実力はアタシが保証してあげよう」
「はは、ありがとうございます」
2 準備
それからユレーナさんとは、また今度模擬戦をするという約束を交わして解散。
続いて、ギルドの近くにある解体場にゴブリンの素材代をもらいにいくことにした。
そこでは持っていった魔物を解体した上で買い取ってくれるのだ。
解体場の責任者――グラッドさん曰く、普通のゴブリンの素材はそこまでの値段にならず、体内にある魔石が売れるくらいらしい。
魔石とは、魔物の心臓に当たる部位で、魔力を蓄えたり放出したりする性質がある。
魔道具の核に使われることが多いそうだ。
魔石を売るかもらうか……迷ったけど、価値が高いゴブリンジェネラルの魔石はもらっておくことにした。
武器作りに使えるかもしれないしね。
自分で試してみて、ダメだったらまた売りに来ればいいだろう。
その他の素材代は全部で金貨一枚になり、依頼の報酬金と合わせて計金貨四枚を手に入れることが出来た。
冒険者デビューしたてにしては稼げた方なんじゃないだろうか?
「よし、報告も済んだし、色々必要なものを買いに行こうか」
「……んっ」
「お、ショーマ達じゃねぇか」
僕達が解体場を出ようとしたタイミングで、同じように解体を頼みに来たのか、ゲイルさんとバッタリ鉢合わせした。
「ゲイルさん、お疲れ様です」
「おう、ショーマ達もな。依頼はどうだった?」
「依頼自体はつつがなく終わりましたよ。ただ、少しイレギュラーなことがありましたね」
「イレギュラー?」
ゲイルさんも近頃の異常について何か知っているかもしれないので、僕は今回の依頼の中で起きたことをゲイルさんにもざっくりと話してみた。
「ゴブリンの集落か。普通は森の入口近くには作らないはずなんだが、最近多いな」
「そういう異常を最近ちょこちょこ耳にするってリムさんからも聞きました」
それから僕は、獣人村へ行く予定であることも話す。
すると、ゲイルさんは神妙な顔つきで口を開く。
「お前達、獣人国に行くのか」
「そうですね。明日の朝一で馬車に乗っていくつもりです」
「気を付けろよ? 遠出では何が起こるか分からないからな。まぁ、お前は元々旅人だったから、慣れっこかもしれんが」
「え? あ、あぁ、そうですね」
そういえば僕、そんな設定だったな……
『別の世界から転生してきました!』なんて言ったら目立ちすぎること請け合いだと思って、そう言い訳をしたんだよね。
「特に森には用心しろよ。……これはなるべく秘密にしとけって言われたんだが、お前らには言っておいた方がいいな」
「……なんでしょうか?」
ゲイルさんは、周りに聞いている人がいないか確認をしてから話し始めた。
「……森の異変なんだが、どうにも人為的に起こされているみたいだ」
「それは……どういうことですか?」
「一週間前くらいに、近くのダンジョンにこの街を拠点にしてる獣人のパーティーが行ったらしい。その時、森の中で怪しい人間が複数人まとまって、何やら魔物に指示を出していたのを見たそうだ」
「あー、隷属の輪を使って、ですかね?」
「お、知ってるんだな?」
「実は、今日倒したゴブリンジェネラルにも着いてました」
「マジか。……で、そんな怪しい連中を見過ごすわけにもいかんから、獣人のパーティーが接触を試みたら、連中はそれはもう全力で逃げたらしく、捕まえることは出来なかったそうだ。けど、魔物の方はちゃんと倒して、持ち帰ってみたら、その魔物に隷属の輪が着いてて、存在が露見したって話だ」
「なるほど……」
「ギルドも今、色んな手段で出所を探っているらしい。だから、森を抜けるとなるともしかしたらそういうのに遭遇するかもしれないから、気は抜かない方がいいぞ」
「分かりました。ご忠告ありがとうございます」
確かに、獣人村に辿り着くまでにもまた今回のゴブリンジェネラルのような魔物に遭遇する可能性は十分にある。
気を引き締めていかないとな。
「あ、そうだ。ゲイルさん。遠出するために必要なものを売っている店ってありますか?」
「ん? あぁ、それなら道具屋に行けば色々と便利なものを売っていると思うぜ?」
「道具屋ですか?」
「あぁ。向こうの通りにあって、冒険に役立つもんとか、割となんでも置いてあるぜ。……ただ、お前なら自分で作れるんじゃないか?」
ゲイルさんは周りに聞こえないよう、小声で僕にそう言ってきた。
「自分で、ですか?」
「あぁ。道具屋には魔道具も置いてある。たとえば、魔物に見つからないための結界を張る石とか、寝るだけで体力が回復する寝袋とかがある。寝袋はともかく、結界を張る石くらいならお前でも作れるんじゃないか? 確かあれも効果付与されたもんだったと思うぜ」
「なるほど……もしかしたら作れるかもしれませんね。とりあえず、道具屋に行って色々と見てみようと思います」
「それがいいな。あとは食料もしっかり準備していった方がいいぞ。うちのパーティーで遠出する時はミリーが収納魔法を使えるから、あらかじめ作っておいた食べ物を保管しておいてもらって、必要になったらその都度出してもらっている。ショーマも収納魔法、使えるだろ?」
「それはいいですね。教えてくださりありがとうございます」
「相変わらず硬ぇなぁー。気にすんなって! とにかく気を付けて行けよ? 帰ってきたら向こうの様子とか教えてくれや!」
「もちろんです」
快く色々と教えてくれたゲイルさんとは一旦そこで別れ、僕達は教えてもらった道具屋へと向かう。
その道中に、獣人村へ行くに当たっての打ち合わせをする。
「馬車を使ったら、どれくらいで着くだろう?」
「……何事もなく行けば、二日もかからないと思う。私があっちこっち行きながらここまで来るのに、三日くらいかかったから」
ということは、少なくとも確実に一日は野宿することになるのか。
一応、手持ちはそれなりにあるから、十分必要なものは買い揃えられるとは思う。
何があるか分からないし、食材をはじめとした日用品は少し多めに買っておくべきだろう。
「道具屋はあっちか。途中に市場もあるから……先にそっちに行ってもいい?」
「……もちろん」
「ありがとう」
ということで、この前立ち寄った市場に足を向ける。
まず食料を買いたいし、もしこの間行った鉱石屋に酸化鉄があったらもらいたい。
前回は処分費用が浮くからってタダでもらえたんだよね。
普通の人だったら使い道がないような酸化鉄でも、合成・分離スキルを使えば武器作りに使う部分とそれ以外を仕分けられるのだ。
「よし、着いた。とりあえず食材から買おうかな。すぐに食べられるものを作りたいから、それ用の食材を……」
「……ショーマ、料理出来るの?」
「ああ、うん。ララさん程ではないけどね。家庭料理くらいは作れるよ」
「……そうなんだ。ショーマの料理、楽しみ」
そう言うノアルは、耳をピコピコ、尻尾をゆらゆらと揺らして、期待のこもった表情を向けてくる。
あんまり期待されると、好みに合わなかった時に困るんだけど……
まぁ、美味しいって言ってもらえるよう、頑張らなきゃな。
そう密かに決心した僕は店に行き、色々な食材を手に入れた。
改めて見てみると、この市場で売っている食材はどれもかなり安い。
予算いっぱい買ってみたところ……余裕で二週間くらいは持ちそうな量の食材を買うことが出来た。
ちなみに、野菜や果物は見たことのあるものを中心に、少しだけ見たことのないものも買ってみた。
白色のピーマンっぽい奴とか、トゲトゲしたにんじんっぽい奴とか。
それと、肉類は主にお店の人に勧められた、魔物の肉を色々と買ってみた。
なんでも、僕が見たことのあるような家畜の肉よりも、断然魔物の肉の方が美味しいんだそう。
あとは、主食としてパンと乾燥パスタ、他にも牛乳やチーズなどの乳製品や小麦粉と片栗粉も手に入れた。
そして最後に、砂糖、塩、酢、醤油、味噌といった、いわゆる『料理のさしすせそ』と呼ばれる調味料に加えて、油や料理酒、胡椒にハーブなんかも少しずつ買っておいた。
うん、これだけあればなんだって作れそうだな。
久しぶりにこういう買い物をしたから、つい夢中になってしまった。
珍しい食材も沢山あったし、安かったし。
「ごめんね、ノアル。時間かかっちゃって」
「……大丈夫、ノアルも楽しかった」
よかった、退屈はしてなかったみたいだ。
そうして食材を買い終えた僕達は、今度は同じ市場にある、以前鉱石屋があった場所に向かった。
市場の店は入れ替わりが激しいイメージがある。
また店を出していたらいいなと期待しながら足を運んでみたんだけど……そこには以前と全く同じ鉱石屋が店を構えていた。
ノアルは鉱石を見てもよく分からないので、近くの他の店を見て回ってるとのこと。
一旦別行動である。
「おはようございます」
「おう、いらっしゃい……って、この前の兄ちゃんじゃねぇか!」
「ご無沙汰してます。今は営業中ですか?」
「ああ、もちろんだ。なんか買っていくかい? うちの商品は量も質もしっかりしてるぜ!」
そんなふうに言ってくれた店主に感謝をしつつ、僕は店内を見て回る。
ちなみに、この人はジストンさんというそうだ。
今後もお世話になるかもしれないので、名前を聞いてみたのだが、快く教えてくれた。
店主――もといジストンさんに頼んで、まずは鉄鉱石を金貨二枚分用意してもらった。
量で言うと、合成・分離のスキルを使ってよりよい部分だけを抽出したら、僕が使っているロングソードを五本作れるくらいだ。
そういえば、地球では鉄鉱石ってどのくらいの値段なんだろうか?
金貨二枚=二万円と考えると、結構お得な気がするのだが、聞いてみるか。
「僕の感覚だと、このお店の商品はかなり安く感じるんですけど、鉱石ってどこから仕入れてるんですか? ……あ、もちろん言いたくなかったら結構ですよ」
「いや、別に言っても問題はないぞ。鉄鉱石とか銀とか金、あとよく仕入れるもので言うと、ミスリルとかか。そいつらは色んな国の鉱山から採掘されるんだ。それぞれ色んな所から仕入れてるぞ」
「そうなんですね」
「ただ、鉱山だけじゃなくてダンジョンからも鉱石は入手出来るからな。そこでも鉄鉱石とかは取れるし、なんなら面白い効力がある鉱石も手に入る。そういうのが取れるダンジョンは重宝されてるぜ」
「なるほど。このお店だけでもかなりの量と種類がありますけど、枯渇しないんですか?」
「鉱山の鉱物は枯渇することはないでもないが、ダンジョンの鉱石が枯渇したって話は聞いたことないな。それに、そういうダンジョンには、鉄やらミスリルとかで出来たゴーレムって魔物もいるらしいから、この世界から鉱石がなくなるなんてことはないんじゃないか?」
ミスリルで出来たゴーレムなんているのか。
ひょっとしたら、ダイヤモンドで出来たゴーレムとかもいるのだろうか?
地球にいたら争いが起きそうだな。
炎の壁を作り出した。
火魔法は使わないつもりだった。
土魔法と比べて相手を怪我させる可能性が高いからだ。
でも、ここまで戦って分かった。
恐らくこの人なら歯牙にもかけないだろう、と。
「『ロックウォール』!」
火の壁の後ろに土の壁を作り出した。
流石のユレーナさんも足を止めた。
でもそれだって数秒で打開されてしまうに違いない。
その数秒の時間の中で、どうにかして一矢報いる方法を考えなくては。
魔法も剣も効かないユレーナさんに一撃を入れるためには、どうにかして意表を突かないと……
何か手はないか……!?
「ハァァッ!!」
ユレーナさんの裂帛が聞こえた。
ほぼ同じタイミングで、壁に何かがぶつかる音がする。
なんだなんだ!?
僕が壁の横から少しだけ顔を出し、ユレーナさんの方を見てみると、ファイアウォールが跡形もなく消え去り、ロックウォールにも大きな亀裂が刻まれていた。
ユレーナさんは、さっきの位置から動いていなかった。
ただ、剣を振り抜いた体勢でこちらを見ていた。
もしかして、斬撃を飛ばしたの!?
飛ばした斬撃でファイアウォールを消し去って、ロックウォールにもダメージを与えたのかこの人!?
「降参かい?」
驚いてる僕を見て、ユレーナさんが曲刀で肩をトントンしながらそう聞いてくる。
……確かに、悔しいがこの人には今の僕じゃあ勝てないだろう。
けど、最後までやれることはやるべきだ。
「いえ、まだです!」
「お! いいねぇ、最後まで楽しませておくれよ!」
なんとかして一矢報いてやる!
*
「参りました……」
ユレーナさんと戦い始めてから約十分後。
結局僕は、大した反撃も出来ずに負けてしまった。
途中、風魔法で強化したロックバレットが数発ユレーナさんの服を掠めたくらいで、ユレーナさんはほとんど無傷だ。
「いやぁ、中々楽しかったぞ! 普通に強いじゃないか、ショーマ!」
「いや、ほとんど何も出来なかったんですけど……」
「そんなことないぞ? 大半の奴は最初の立ち合いで降参しちまうから、ここまで長く戦えたってだけでも十分だ! 何発か危ないのもあったしな!」
「僕としては、ユレーナさんが予想を遥かに上回る程に強かったので驚きました。金ランクの冒険者って、皆さん、ユレーナさんくらい強いんですか?」
「んー、人によるんじゃないか? 近距離の攻撃手段しか持たない相手だったらアタシは負けなしだが、たとえばミリーと広い場所でなんでもありの勝負になったら、大規模魔法で吹っ飛ばされるかもな。まぁ、簡単に負ける気はしないがね!」
大規模魔法に対しても、対抗手段があるのか……
とんでもないな。
「それで、ノアル? アンタもやるかい?」
「……ん! お願いする。ショーマ、剣出して」
「分かった。一応怪我には気を付けてね」
「……ん、了解」
僕はアイテムボックスからノアルの双剣を出して手渡した。
抜き身の剣を持ったまま移動するわけにはいかないので、基本的にノアルの双剣は僕のアイテムボックスにしまってある。
ノアルはそれでもいいのかもしれないけど、依頼の時とかはいつ戦闘になるか分からない。
装備出来るように、今度鞘とか作ろうかな?
そんなことを考えつつ、審判を務めるべく、僕は先程ノアルがいた位置に移動する。
全員が所定の位置についたタイミングで、ユレーナさんが言う。
「よし、じゃあやろうか! 遠慮なくかかっておいで!」
「……ん!」
「それじゃあ、いきますよ……始め!」
僕の合図で二人の試合が始まった。
*
「あ、ショーマさん! 大丈夫でしたか?」
模擬戦を終え、僕達は受付にいるリムさんのところへ戻ってきた。
「大丈夫ですよ、リムさん。とてもいい経験が出来ました」
「……負けた」
耳と尻尾をへにゃっとさせながらそう口にしたノアルに、ユレーナさんは笑いながら言う。
「はは、ノアルも強かったぞ! 近接戦闘だけならショーマよりも強いな!」
そう、ノアルもユレーナさんには勝てなかった。
試合時間は僕よりも短かったが、剣戟の回数自体は僕よりもかなり多かった。
とにかく二人共動きが速くて、ちょこちょこ何をしているのか視認出来ない瞬間もあったくらいだ。
それにしても、やはりユレーナさんは凄い。
試合を終えて、『八割くらいは全力を出した』と言っていた。
それだって本当かどうかってところだから、底が見えない。
でも、そんなユレーナさんのお墨付きをもらえたってことは、ノアルの近接戦の戦闘力は相当なものと見ていいだろう。
「じゃあ、僕達はこのあと色々と準備があるので、行きますね」
「準備? どっか行くのかい?」
そう聞いてきたユレーナさんに、ノアルのために獣人国へ行くことをざっくりと説明した。
「ふむ……そうか。とりあえず、気を付けて行くんだよ。最近、森の様子がおかしいからね」
「はい、しっかり準備して行こうと思ってます」
「まぁ、お前さん達ならそうそう負けないとは思うがね。実力はアタシが保証してあげよう」
「はは、ありがとうございます」
2 準備
それからユレーナさんとは、また今度模擬戦をするという約束を交わして解散。
続いて、ギルドの近くにある解体場にゴブリンの素材代をもらいにいくことにした。
そこでは持っていった魔物を解体した上で買い取ってくれるのだ。
解体場の責任者――グラッドさん曰く、普通のゴブリンの素材はそこまでの値段にならず、体内にある魔石が売れるくらいらしい。
魔石とは、魔物の心臓に当たる部位で、魔力を蓄えたり放出したりする性質がある。
魔道具の核に使われることが多いそうだ。
魔石を売るかもらうか……迷ったけど、価値が高いゴブリンジェネラルの魔石はもらっておくことにした。
武器作りに使えるかもしれないしね。
自分で試してみて、ダメだったらまた売りに来ればいいだろう。
その他の素材代は全部で金貨一枚になり、依頼の報酬金と合わせて計金貨四枚を手に入れることが出来た。
冒険者デビューしたてにしては稼げた方なんじゃないだろうか?
「よし、報告も済んだし、色々必要なものを買いに行こうか」
「……んっ」
「お、ショーマ達じゃねぇか」
僕達が解体場を出ようとしたタイミングで、同じように解体を頼みに来たのか、ゲイルさんとバッタリ鉢合わせした。
「ゲイルさん、お疲れ様です」
「おう、ショーマ達もな。依頼はどうだった?」
「依頼自体はつつがなく終わりましたよ。ただ、少しイレギュラーなことがありましたね」
「イレギュラー?」
ゲイルさんも近頃の異常について何か知っているかもしれないので、僕は今回の依頼の中で起きたことをゲイルさんにもざっくりと話してみた。
「ゴブリンの集落か。普通は森の入口近くには作らないはずなんだが、最近多いな」
「そういう異常を最近ちょこちょこ耳にするってリムさんからも聞きました」
それから僕は、獣人村へ行く予定であることも話す。
すると、ゲイルさんは神妙な顔つきで口を開く。
「お前達、獣人国に行くのか」
「そうですね。明日の朝一で馬車に乗っていくつもりです」
「気を付けろよ? 遠出では何が起こるか分からないからな。まぁ、お前は元々旅人だったから、慣れっこかもしれんが」
「え? あ、あぁ、そうですね」
そういえば僕、そんな設定だったな……
『別の世界から転生してきました!』なんて言ったら目立ちすぎること請け合いだと思って、そう言い訳をしたんだよね。
「特に森には用心しろよ。……これはなるべく秘密にしとけって言われたんだが、お前らには言っておいた方がいいな」
「……なんでしょうか?」
ゲイルさんは、周りに聞いている人がいないか確認をしてから話し始めた。
「……森の異変なんだが、どうにも人為的に起こされているみたいだ」
「それは……どういうことですか?」
「一週間前くらいに、近くのダンジョンにこの街を拠点にしてる獣人のパーティーが行ったらしい。その時、森の中で怪しい人間が複数人まとまって、何やら魔物に指示を出していたのを見たそうだ」
「あー、隷属の輪を使って、ですかね?」
「お、知ってるんだな?」
「実は、今日倒したゴブリンジェネラルにも着いてました」
「マジか。……で、そんな怪しい連中を見過ごすわけにもいかんから、獣人のパーティーが接触を試みたら、連中はそれはもう全力で逃げたらしく、捕まえることは出来なかったそうだ。けど、魔物の方はちゃんと倒して、持ち帰ってみたら、その魔物に隷属の輪が着いてて、存在が露見したって話だ」
「なるほど……」
「ギルドも今、色んな手段で出所を探っているらしい。だから、森を抜けるとなるともしかしたらそういうのに遭遇するかもしれないから、気は抜かない方がいいぞ」
「分かりました。ご忠告ありがとうございます」
確かに、獣人村に辿り着くまでにもまた今回のゴブリンジェネラルのような魔物に遭遇する可能性は十分にある。
気を引き締めていかないとな。
「あ、そうだ。ゲイルさん。遠出するために必要なものを売っている店ってありますか?」
「ん? あぁ、それなら道具屋に行けば色々と便利なものを売っていると思うぜ?」
「道具屋ですか?」
「あぁ。向こうの通りにあって、冒険に役立つもんとか、割となんでも置いてあるぜ。……ただ、お前なら自分で作れるんじゃないか?」
ゲイルさんは周りに聞こえないよう、小声で僕にそう言ってきた。
「自分で、ですか?」
「あぁ。道具屋には魔道具も置いてある。たとえば、魔物に見つからないための結界を張る石とか、寝るだけで体力が回復する寝袋とかがある。寝袋はともかく、結界を張る石くらいならお前でも作れるんじゃないか? 確かあれも効果付与されたもんだったと思うぜ」
「なるほど……もしかしたら作れるかもしれませんね。とりあえず、道具屋に行って色々と見てみようと思います」
「それがいいな。あとは食料もしっかり準備していった方がいいぞ。うちのパーティーで遠出する時はミリーが収納魔法を使えるから、あらかじめ作っておいた食べ物を保管しておいてもらって、必要になったらその都度出してもらっている。ショーマも収納魔法、使えるだろ?」
「それはいいですね。教えてくださりありがとうございます」
「相変わらず硬ぇなぁー。気にすんなって! とにかく気を付けて行けよ? 帰ってきたら向こうの様子とか教えてくれや!」
「もちろんです」
快く色々と教えてくれたゲイルさんとは一旦そこで別れ、僕達は教えてもらった道具屋へと向かう。
その道中に、獣人村へ行くに当たっての打ち合わせをする。
「馬車を使ったら、どれくらいで着くだろう?」
「……何事もなく行けば、二日もかからないと思う。私があっちこっち行きながらここまで来るのに、三日くらいかかったから」
ということは、少なくとも確実に一日は野宿することになるのか。
一応、手持ちはそれなりにあるから、十分必要なものは買い揃えられるとは思う。
何があるか分からないし、食材をはじめとした日用品は少し多めに買っておくべきだろう。
「道具屋はあっちか。途中に市場もあるから……先にそっちに行ってもいい?」
「……もちろん」
「ありがとう」
ということで、この前立ち寄った市場に足を向ける。
まず食料を買いたいし、もしこの間行った鉱石屋に酸化鉄があったらもらいたい。
前回は処分費用が浮くからってタダでもらえたんだよね。
普通の人だったら使い道がないような酸化鉄でも、合成・分離スキルを使えば武器作りに使う部分とそれ以外を仕分けられるのだ。
「よし、着いた。とりあえず食材から買おうかな。すぐに食べられるものを作りたいから、それ用の食材を……」
「……ショーマ、料理出来るの?」
「ああ、うん。ララさん程ではないけどね。家庭料理くらいは作れるよ」
「……そうなんだ。ショーマの料理、楽しみ」
そう言うノアルは、耳をピコピコ、尻尾をゆらゆらと揺らして、期待のこもった表情を向けてくる。
あんまり期待されると、好みに合わなかった時に困るんだけど……
まぁ、美味しいって言ってもらえるよう、頑張らなきゃな。
そう密かに決心した僕は店に行き、色々な食材を手に入れた。
改めて見てみると、この市場で売っている食材はどれもかなり安い。
予算いっぱい買ってみたところ……余裕で二週間くらいは持ちそうな量の食材を買うことが出来た。
ちなみに、野菜や果物は見たことのあるものを中心に、少しだけ見たことのないものも買ってみた。
白色のピーマンっぽい奴とか、トゲトゲしたにんじんっぽい奴とか。
それと、肉類は主にお店の人に勧められた、魔物の肉を色々と買ってみた。
なんでも、僕が見たことのあるような家畜の肉よりも、断然魔物の肉の方が美味しいんだそう。
あとは、主食としてパンと乾燥パスタ、他にも牛乳やチーズなどの乳製品や小麦粉と片栗粉も手に入れた。
そして最後に、砂糖、塩、酢、醤油、味噌といった、いわゆる『料理のさしすせそ』と呼ばれる調味料に加えて、油や料理酒、胡椒にハーブなんかも少しずつ買っておいた。
うん、これだけあればなんだって作れそうだな。
久しぶりにこういう買い物をしたから、つい夢中になってしまった。
珍しい食材も沢山あったし、安かったし。
「ごめんね、ノアル。時間かかっちゃって」
「……大丈夫、ノアルも楽しかった」
よかった、退屈はしてなかったみたいだ。
そうして食材を買い終えた僕達は、今度は同じ市場にある、以前鉱石屋があった場所に向かった。
市場の店は入れ替わりが激しいイメージがある。
また店を出していたらいいなと期待しながら足を運んでみたんだけど……そこには以前と全く同じ鉱石屋が店を構えていた。
ノアルは鉱石を見てもよく分からないので、近くの他の店を見て回ってるとのこと。
一旦別行動である。
「おはようございます」
「おう、いらっしゃい……って、この前の兄ちゃんじゃねぇか!」
「ご無沙汰してます。今は営業中ですか?」
「ああ、もちろんだ。なんか買っていくかい? うちの商品は量も質もしっかりしてるぜ!」
そんなふうに言ってくれた店主に感謝をしつつ、僕は店内を見て回る。
ちなみに、この人はジストンさんというそうだ。
今後もお世話になるかもしれないので、名前を聞いてみたのだが、快く教えてくれた。
店主――もといジストンさんに頼んで、まずは鉄鉱石を金貨二枚分用意してもらった。
量で言うと、合成・分離のスキルを使ってよりよい部分だけを抽出したら、僕が使っているロングソードを五本作れるくらいだ。
そういえば、地球では鉄鉱石ってどのくらいの値段なんだろうか?
金貨二枚=二万円と考えると、結構お得な気がするのだが、聞いてみるか。
「僕の感覚だと、このお店の商品はかなり安く感じるんですけど、鉱石ってどこから仕入れてるんですか? ……あ、もちろん言いたくなかったら結構ですよ」
「いや、別に言っても問題はないぞ。鉄鉱石とか銀とか金、あとよく仕入れるもので言うと、ミスリルとかか。そいつらは色んな国の鉱山から採掘されるんだ。それぞれ色んな所から仕入れてるぞ」
「そうなんですね」
「ただ、鉱山だけじゃなくてダンジョンからも鉱石は入手出来るからな。そこでも鉄鉱石とかは取れるし、なんなら面白い効力がある鉱石も手に入る。そういうのが取れるダンジョンは重宝されてるぜ」
「なるほど。このお店だけでもかなりの量と種類がありますけど、枯渇しないんですか?」
「鉱山の鉱物は枯渇することはないでもないが、ダンジョンの鉱石が枯渇したって話は聞いたことないな。それに、そういうダンジョンには、鉄やらミスリルとかで出来たゴーレムって魔物もいるらしいから、この世界から鉱石がなくなるなんてことはないんじゃないか?」
ミスリルで出来たゴーレムなんているのか。
ひょっとしたら、ダイヤモンドで出来たゴーレムとかもいるのだろうか?
地球にいたら争いが起きそうだな。
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彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
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☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
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この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
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転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
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前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
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旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
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だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
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これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
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