マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 強面、筋骨隆々、非常に強い。でもとっても優しい男が異世界でほのぼの暮らすお話

かむら

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#329-1 リリスの思い①

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 とんぼ返りするような形でシュージが再び小屋を目指してのしのしと走っていると、遠目にリリスが小屋に入っていく姿が見えた。

 それから1分程でシュージも小屋に辿りつき、扉を開けようしたのだが、


「パパのパカぁーー!!」

「お、おや?」


 そんな風に叫びながらリリスが小屋から飛び出してきて、どこかへ走り去ってしまった。

 何があったのかと思ったシュージが小屋の中へ入ると、苦笑いしているクリスとライリーがいた。
 

「ごめんなさい、あなた……」

「いや、俺が100%悪いよ。 こちらこそすまない」

「あのー、どうされましたか?」

「あっ、シュージさん」


 小屋に入ってきたシュージに気付いたクリスは、狼狽えたりはしてはいないものの、ちょっと複雑そうな表情を浮かべていた。


「先程リリスが来て、夫と再会した瞬間はとても嬉しそうにしてくれたんです。 けど……」

「俺が記憶を失くしてしまった事をあの子にも話したら、怒られたよ。『ママがどんだけ心配したと思ってるの!?』みたいな感じで」

「そうだったんですか」


 リリスからしても、もちろん父親であるライリーを心配する気持ちはあった。

 だが、自分以上にライリーの事を心配して、さらに自分を育てるために毎日へとへとになるまで働いていたクリスの苦労を知っているので、そんな気も知らないで違う場所で過ごしていたライリーに、リリスは怒ったのだという。


「その通り過ぎて何も言い返せなかったよ。 ……ただ、あの子を見た瞬間、虫が良いように聞こえるかもしれないが、とても愛おしく感じた」

「ふふ、記憶は失っても、絆や縁は消えないんですかね」

「そうかもしれないな」

「おや、お二人は少し吹っ切れたように見えますね?」

「リリスが来る前に少し話したんです。 そうしたら、やっぱりこの人は私の…… えっと、愛した夫だなって……」


 クリスはそう恥ずかしげに口にした。
 

「他でもないクリスがそう言ってくれたから、俺も失ってしまった記憶とこれまでの時間を取り戻す…… いや、それ以上に新しい思い出を作るために、クリス…… そしてリリスと共に過ごしていきたいと思ってる」

「そうですか。 とても良いと思いますよ」


 再会当初は少しギクシャクしていた2人だが、今はまだ親密とまではいかないものの、どこか心が通じ合っているようにシュージからは見えた。
 

「って、リリスにも伝えようと思ってたんですけど、伝える前に出ていってしまって……」

「なるほど」

「おーい、シュージ、クリス、リリスー」


 そんな話をしていると、ガルがそう声を上げながら小屋までやってきた。


「おや、ガルさん」

「そろそろ昼休憩だってよー」

「そうですか。 では、昼食を作らないといけませんね」

「……あれ、ガルさん。 今、リリスの事も呼んでませんでしたか?」


 クリスがそうガルに尋ねた。
 

「ん? ああ、そうだな。 ここにいるんだろ?」

「いや、ついさっきここを出ていってしまって…… 村の方に戻ってるものかと……」

「そうなのか? 真っ直ぐ村の方からここまで歩いてきたけど、リリスは見なかったぜー?」

「えっ……?」


 何やら不穏な空気が流れ始めていた。
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