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1巻
1-2
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「このギルドには何人いるんですか?」
「20人いないくらいですよ。うちは少数精鋭なんです」
「普通のギルドはもっと多いんですか?」
シュージのイメージだと、こういう組織はかなりの人数がいるものだと思っていたが、そうでもないらしい。
「そうですね。大きな所だと100人を超えたりもします。ギルドによって、どういう活動方針かはまちまちですね」
「なるほど」
「うちのギルドは割と自由な方針なので、各々がするべきことを自分達でする感じです。リック達見習いの3人には、他のメンバーが戦闘技術であったり、座学だったりを教えていますね」
そんな風にギルドのことをしばらく教えてもらっていたが、ジンバもキリカもまだ少し仕事が残っているそうなので、シュージは2人とは一旦別れ、食堂へと向かった。
このギルドの食堂は、1階の鍛冶場とは反対側の場所にある。部屋の中には、いくつかの大きなテーブルと椅子が並べられていた。
そして、併設されている厨房は風通しの良さそうな広いオープンキッチンになっていて、料理している様子を見られるカウンター席もあった。
シュージが食堂のキッチンを覗いてみると、そこにはリック達が既にいた。
「おっ、シュージ!」
厨房に入ってきたシュージを見つけたリックが、声をかけてきた。
「お疲れ様です、3人とも。これから夕食の準備ですかね?」
「そうなんだけど……」
シュージの言葉を聞いたカインが、困った様子を見せる。
「どうしたんですか、カイン?」
「食材があんまりなくて……」
「これは、冷蔵庫ですかね? 見てもいいですか?」
「あ、うん」
シュージが厨房にあったかなり大きな冷蔵庫を開けてみると、そこにはいくつかの食材が入っていた。
「ふむ、僕が知ってる食材に似ているものが結構ありますね。こちらは何ですか?」
「それはポテート……ちゃんとした名前はツインポテートっていう野菜だよ」
カインが示したのは、2つの丸いじゃがいもがくっ付いた、ツインポテートという野菜。
これは余ってると言っていいぐらい、かなりの量が冷蔵庫の中に入っていた。
「この野菜は何でしょう?」
「それはキマグレタスだな」
続けてリックがシュージに教えたのは、地球で言うところのレタスに似た野菜。
形はレタスではあったが、冷蔵庫に入っているキマグレタスはサイズが大小バラバラだ。
シュージが理由を尋ねると、キマグレタスはどれくらいの大きさに成長するかは気まぐれという、その名に相応しい要素のある野菜だと判明した。
「ふむふむ、こちらのちょっとだけある加工肉っぽいものは?」
シュージの質問に、メイが答える。
「それはオーク肉の塩漬けですね」
唯一残っていた肉は、オークという魔物の肉だった。
色や形は違うが、シュージは触ってみた感じ、扱い方は地球の豚肉と同じで大丈夫だと判断した。
調味料に関しては、塩、胡椒、砂糖などの基本的なものから、牛乳、サラダ油、オリーブオイル、酒に酢といったものまで揃っていた。
その他は、卵がそれなりの数あり、果物も少し余っている。
加えて、主食として食パンが大量に残っており、どうやらこれが今ある食材全てのようだった。
「やっぱり月末は食材が尽きるなぁ……」
リックの呟きにメイが反応する。
「リック様がこの前、盛大にお肉とかを焼いちゃうから……」
「だ、だって美味そうだったし……」
「ふむ、3人ならこの状況で何を作りますか?」
シュージの質問にメイが答える。
「うーん、しょうがないからふかしポテートとかですかね……? あとはサラダ……」
「塩漬け肉は使わないんですか?」
「これだけしかないと、全員にはちょっとしか行き渡りませんから、中途半端になってしまいます」
「なるほどなるほど」
そう言いながら、シュージは考え込む。
(うーん、この世界ではあまり料理が発達していないのか? リック達があんまり得意じゃない可能性もあるが)
「シュージ様だったら何を作るんですか?」
メイにそう聞かれたシュージは、少し考える素振りを見せた後、3人に指示を出していく。
「そうですね……そうしたら、手順は僕が教えますから、色々と3人に作ってもらいましょう。まず、僕とカインはポテートの皮剥きを」
「うん、分かった」
「メイは食パンを指に乗るくらいの賽の目状に切り分けてください」
「はいっ」
「リックには少し力仕事をお願いしますね?」
「え、料理なのに力仕事?」
そう言って不思議そうにするリックに、シュージは手頃なサイズのボウルに卵黄と酢と塩を入れて渡した。
「はい。ボウルに入れたこちらのものを、泡立て器で素早くかき混ぜてください」
「よく分かんないけど、分かった!」
「液がもったりとしてきたら教えてくださいね」
とりあえず、シュージが見習い組の3人にそれぞれやることを教え、作業に取り組んでもらう。
(夕食まではまだまだ時間はあるようだから、少し手間がかかっても大丈夫だろう)
カインとシュージは沢山のツインポテートの皮を剥く。
カインはピーラーを使ってるのに対し、シュージは包丁でくるくると凄い速さで剥いていく。
「わぁ……シュージ凄いな……」
カインが驚きの声を上げる。
「はは、慣れですかね、この辺は」
料理人としての経験の違いだろう、とシュージは考えた。
「もしかして、シュージって結構凄い料理人?」
「一応、お店で働いたりはしてましたね」
シュージは日本にいた頃、食堂で出す料理はもちろん、家での食事もほとんど自分で作っていた。
格闘家という側面もあったので、体作りのために栄養バランスを考えてそうしていたのだ。
もっと色々作りたいし食べたい、と常日頃から考え、本やネットでレシピをよく眺めていた。
おかげで、料理の知識に関してはかなり豊富なのだ。
「シュージ様、これくらいでいいですか?」
今度はメイが、賽の目状に切った食パンを見せながらそう言ってきた。
「はい、そのくらいあれば大丈夫です。そうしたら、切った食パンにオリーブオイルを塗って炒めてもらえますか?」
「パンを炒めるんですか?」
「はい。お願いします」
メイが作っているのはクルトンだ。
ただのサラダでも、クルトンが少し載っているだけで、かなりアクセントにはなる。
「うおお……腕が痛い……これくらいでいいのか、シュージ……」
苦しそうな声色でリックがそう聞いてきた。
「うん、いい感じですね。ありがとうございます。まだ混ぜる作業があるんですけど、いけますか?」
「うえっ!? んー、ちょっときついかも……」
無理をさせるのは本意ではないので、シュージはリックと作業を変わることにした。
「はは、全然いいですよ。そうしたら、僕と交代しましょうか。ポテートも粗方剥き終わったので、リックはポテートをフライパンでこまめに転がしながら柔らかくなるまで温めておいてください。カインは塩漬け肉をかなり小さめのサイズに切って、別のフライパンでカリッとするまで焼いてください」
「はーい!」
「分かったよ」
シュージの指示にリックとカインが返事をした。
「シュージ様、私はこの後どうすればいいですか?」
「ああ、そうしたら……」
その後も見習い組の3人に手伝ってもらいつつ、シュージは夕飯を作っていくのであった。
第2話 料理を振る舞う
「なぁ、ギルマスー?」
「何だ?」
「どっかで飯食っていかねー?」
日が沈んだ後、ヤタサの街の大通りを、3人の男女が歩いていた。
1人は若くて活発そうな顔立ちに、狼のような耳と尻尾を生やした獣人の男、ガル。
もう1人は勝気な表情で、狐のような耳と尻尾を生やした獣人の女、シャロ。
そして、その2人の前を歩くのは、綺麗な金髪を携え、腰に剣を差した男。
この男は、シュージが所属することになった冒険者ギルド、蒼天の風のギルドマスター、ジルバートだ。
今はガルがジルバートに夕食をどこかで食べよう、と提案しているところだった。
その提案に対して、ジルバートが口を開く。
「ギルドに戻ればあるだろう」
「いや、だって今日月末だろ? どうせろくなもんじゃねぇしさ」
「……まぁ、そうかもしれないが、お前の責任でもあるだろう」
「そうだけど……」
「そうよそうよ。どちらかと言えばあの子達に教える側なのに、何でアンタが悪いこと教えてるのよ」
ガルを責めるように、シャロがそんなことを言う。
彼らは現在、自らの拠点であるギルド、蒼天の風への帰り道を歩いていた。
朝から、依頼を受けて魔物の討伐に行っており、当然かなり腹が減っている。
だが、先日ここにいるガルが見習いのリックをそそのかし、大量に肉などの食材を消費したのだ。
そのため、ここ数日、ギルドの飯は中々質素なものとなっている。
当然、リックとガルはきついお叱りを受けたが、なくなった食材が返ってくることはない。
加えて、食材を新たに買ったりすることもしなかった。
新たに買ったら、また同じようなことをしても、許されると思うかもしれない。ジルバートはそう考え、ギルドの全員が不満を漏らすような食事にあえてさせている。
それもあってか、リックとガルは物凄く反省していた。
だが、それを決めた当人のジルバートにとっても、きついものはきつい。
今日はガルとシャロの指導が主だったので、ジルバートはそこまで運動をしたわけではないのだが、一日中立ちっぱなしでそこそこ疲れているのは事実だ。
こういう疲れている時こそ美味いものを食べたいのだが、恐らく待っているのは、ふかしポテートと簡単なサラダとパンくらいだろう、とジルバードは考えた。
ジルバートでもそうなのだから、若くて食欲がある上に、今日一日戦い続けたガルとシャロはもっときつい。
そうこうしているうちに、3人はギルドに着いた。
「やっと着いた~……って、なんか騒がしくねぇか?」
「そうね? 食堂に集まってるみたい」
耳のいいガルとシャロは、食堂に人が集まっていることに気が付いた。
ギルドに入り、3人はとりあえず荷物と武器などをエントランスの机に置いて、真っ直ぐ食堂に向かう。
そこには今日いるメンバーが勢揃いしていて、キッチンの方には3人にとっては見慣れないガタイのいい男、シュージが立っていた。
「あ、ギルマス。おかえりなさい」
ジルバートに気付いたキリカが声をかけた。
「ああ、今戻った。キリカ、これは何の騒ぎだ? それと、あそこにいる男は?」
「あの人は今日、用務員として雇うことになったシュージさんです。騒いでたのは、シュージさんが作ったご飯が美味しかったからですかね?」
「……戦闘員ではないのか?」
ジルバートから見ても、シュージは戦闘向きの体つきだった。
「戦える力はありますけど、本人はあまり戦いが好きじゃないそうですよ。まぁ、そういうのは後にして、今はご飯を食べてみてくださいよ」
「……まぁ、そうだな」
それからジルバート達が席に座ると、あれよあれよという間に見習い組達が料理を運んできた。
「おお! なんか美味そう!」
「見た目は焼いたポテートと普通のサラダだけど、何でか美味しそうね」
料理を見たガルとシャロが、嬉しそうにそう言った。
運ばれてきたのは、ツインポテートに刻まれた塩漬け肉が入った一品と、キマグレタスの上に薄茶色の物体と白い液体がかかっているサラダだった。
その料理を見て、ジルバートもガルもシャロもツインポテートの料理から手をつけた。
「ほう、これは……」
「お! これ美味いな! ポテートなのに、肉食ってるみたいだ!」
「胡椒が丁度いい感じにピリッとしてて美味しい!」
すると、ジルバート、ガル、シャロから驚きや賞賛の声が上がった。
ガルとシャロの言う通り、ツインポテートからはしっかりとした肉の風味が感じられ、味付けは塩胡椒だけのシンプルなものだったが、かなり満足感のある一皿になっていた。
3人は続けて、サラダにも手をつけていく。
「ほう……これも美味いな」
「生の野菜食うの苦手だけど、この液体のおかげでめっちゃ食える!」
「このサクサクしたのもいいわね。これだけでも食べられそう」
これまた、ジルバート、ガル、シャロから喜びの声が上がった。
サラダにかかっているシーザードレッシングは、自家製ながらかなり上手く出来ている。
クルトンもオリーブオイルで焼き上げたものに塩が軽く振ってあるので、これだけでもお酒のつまみになりそうな感じに仕上がっていた。
そんな美味しい料理は、腹が空いていたジルバート達の胃袋にあっという間に吸い込まれていった。
しっかりと完食したジルバート達の所へ、シュージがのしのしと歩み寄っていく。
「お気に召しましたか?」
シュージの質問に、ジルバートが笑顔で答える。
「ああ、とても美味かった。シュージと言ったか?」
「はい、シュージと言います。えっと、貴方はギルドマスター様ですよね?」
「様など付けなくていい。俺はジルバートという。ギルマスかジルとでも呼んでくれればいい」
「では、ジルさんとお呼びしますね」
お世話になるギルドのマスターということで、シュージは少し緊張していたのだが、ジルバートは快く対話に応じてくれた。
「この料理はシュージが全部作ったのか?」
「いえ、僕は少し手伝ったのと、指示を出しただけです。ほとんどリックとカインとメイが作ったと言っていいと思います」
「そうなのか?」
話を振られた見習い組のリック、カイン、メイは、ジルバートに元気良く答える。
「おう! 頑張って作ったぜ!」
「まぁ、ほとんどシュージの教えのおかげかな」
「シュージ様はとても優しく丁寧に教えてくださりました」
そんな見習い組の言葉にジルバートは頷くと、改めてシュージの方を向く。
「シュージ、これから用務員として働くそうだな」
「はい」
「キリカのお眼鏡に適ったのなら俺からは文句はない。むしろ、これだけ美味い料理が作れるなら、こちらからお願いしたいくらいだ」
ジルバート的にも、シュージの加入は問題がないようだった。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「恥ずかしいことに、しっかりと料理を作ることのできる者がいなくてな。用務員の仕事をこなしつつ、見習い組……何ならその他の希望する者にも料理を教えてやってくれ」
「分かりました。精一杯努めさせていただきます」
「よろしく頼む」
それからジルバートとシュージはしっかりと握手を交わし、シュージは晴れて正式に蒼天の風の一員となった。
◇ ◇ ◇
「ここがシュージさんのお部屋ですね」
「おお、広いし綺麗ですね」
食事を終えたシュージは、キリカにギルドの3階にあるギルドメンバーの居住スペースに案内されていた。
これからシュージが暮らすことになる部屋は、ちょっといいアパートといった印象だ。
今はベッドとクローゼットくらいしかないが、色々とものを置けそうなスペースもある。
「新しい家具などは自己負担ですけど、好きに置いたりもしていいですよ」
キリカはシュージにそう説明をした。
「何から何までありがたいです」
「いえいえ。皆さん、シュージさんのご飯をとても気に入ってて、これからの食事が楽しみだって言ってましたから、もっと待遇が良くてもいいぐらいですよ」
「十分過ぎますよ。行く当てもなかった僕を拾ってくださって、こちらこそ感謝しかありません。明日からのお仕事、頑張りますね」
「一緒に頑張りましょう! 分からないことがあったら遠慮なく聞いてください」
キリカは頼もしい笑顔を浮かべながらそう言った。
「分かりました、ありがとうございます」
「では、今日はお疲れ様でした。おやすみなさい」
「おやすみなさい、キリカさん」
シュージは案内をしてくれたキリカと別れる。
部屋にはシャワールームが備え付けられていたので、シュージはシャワーをパパッと浴びてベッドに寝転がった。
ベッドは少し硬めだったが、硬めのベッドが好きなシュージからするととても快適だ。
大きな環境の変化によって知らぬ間に疲労が溜まっていたのか、シュージはすぐに眠くなった。
(明日からも頑張ろう)
そう心の中で誓いつつ、眠気に素直に身を任せるシュージだった。
◇ ◇ ◇
シュージが異世界に来て2日目。
早めに目が覚めたシュージは、体を起こし、顔を洗って食堂へと向かった。
基本的にこのギルドでは、朝ご飯は各自適当に食べている。
冒険者として依頼を受けると、早い時間に出発しなければいけなかったりするため、一緒に食べようにも時間が合わないのだ。
だが、人間にとって朝ご飯はとても大事だと思っているシュージは、できればちゃんとしたものを食べてもらいたいと考え、まだ誰もいない食堂で料理を始めた。
使うのは、昨日シーザードレッシングのために作ったマヨネーズの余りと卵だ。
冷蔵庫にはもうほとんど食材がないので、あまり品目は増やせないが、せめてお腹に溜まるようにと、今回はたまごサンドを作ることにした。
食パンはありがたいことにかなり大量に残っている。
(たまごサンドなら冷めてもそれはそれで美味しいので、食事を摂る時間に差があっても大丈夫だろう)
それからシュージは黙々と1人でゆで卵を作り、その間になくなりそうなマヨネーズを追加で作る。
ハンドミキサーのようなものがあれば楽なのだが、生憎ないので、しっかりと泡立て器で作っていく。
シュージのフィジカルがあれば、その作業はそこまで苦でもない。
そして、ゆで卵ができたらボウルに移して粗めに潰し、マヨネーズと軽く塩胡椒を加えて味を調える。あとはそれを食パンの上に載せて挟むだけで完成だ。
それから少しキッチン内を探して、シュージは赤色のジャムを見つけた。
味見してみたところ苺のジャムだったので、シュージはジャムサンドも同じくらい作った。
たまごサンドにジャムサンド。
これぐらいあれば普通の人なら十分な量だろう。食欲のある者達は、どちらかを多めに食べたりすれば満足できるだろう。
作り終えたシュージがそんなことを考えていると、まだ少し眠そうなキリカが食堂に入ってきた。
「ふわぁ……あら、シュージさん?」
「おはようございます、キリカさん。早いですね?」
「おはようございます。受付業務があるので、基本は私が一番なことが多いですね。何をしてるんですか?」
「皆さんの朝ご飯を作ってました」
「えっ、わざわざ作ってくれたんですか?」
キリカは驚きながらそう口にした。
「このギルドに用務員として雇われたなら、皆さんのサポートをできるだけしたいと思いまして」
「そんな無理にしなくても大丈夫ですよ……?」
「はは、無理なんてしてないですから大丈夫ですよ。元々早起きなタチですし、喜んでもらえるのは嬉しいですから」
「シュージさん……ふふ、ありがとうございます。絶対皆んな喜びますよ」
「それなら良かったです。丁度できましたから、どうぞ」
早速シュージは、キリカにたまごサンドとジャムサンドを載せたお皿を手渡す。
「ありがとうございます。……んんっ! これ、美味しいですっ!」
料理を受け取ったキリカは、まずたまごサンドを口に運んだ。
そして、一口食べてすぐに驚きの声を上げた。
「卵だと思いますけど、なんか不思議な風味がしますね?」
「マヨネーズの風味ですね。昨日のサラダにかかっていたシーザードレッシングも、マヨネーズをもとにして作ったんです」
「そう言われてみると味が少し似てますね」
「この辺りでは作られていないんですかね?」
「そうですね、食べたことないです。これだけ美味しいなら、レシピ登録をしてもいいかもしれませんね」
「レシピ登録ですか?」
シュージの質問にキリカが頷く。
「はい。新しくて美味しい料理とか調味料を作った際は、商業ギルドに登録して、レシピとして販売するんです。そうすると、レシピの使用料が登録者に一部支払われます」
「なるほど、そういうものがあるんですね」
「とりあえず、このギルドの皆んなに食べてもらって、誰も知らなかったら登録していいと思いますよ。ジンバさんは遠い国から来ましたし、ギルドマスターも仕事柄、色々な場所に行っていて、食文化にもそこそこ詳しいですから」
「分かりました」
「と、難しい話はこのくらいにして、今はこの美味しい朝ご飯を堪能します!」
「はは、そうですね。遠慮なく召し上がってください」
「20人いないくらいですよ。うちは少数精鋭なんです」
「普通のギルドはもっと多いんですか?」
シュージのイメージだと、こういう組織はかなりの人数がいるものだと思っていたが、そうでもないらしい。
「そうですね。大きな所だと100人を超えたりもします。ギルドによって、どういう活動方針かはまちまちですね」
「なるほど」
「うちのギルドは割と自由な方針なので、各々がするべきことを自分達でする感じです。リック達見習いの3人には、他のメンバーが戦闘技術であったり、座学だったりを教えていますね」
そんな風にギルドのことをしばらく教えてもらっていたが、ジンバもキリカもまだ少し仕事が残っているそうなので、シュージは2人とは一旦別れ、食堂へと向かった。
このギルドの食堂は、1階の鍛冶場とは反対側の場所にある。部屋の中には、いくつかの大きなテーブルと椅子が並べられていた。
そして、併設されている厨房は風通しの良さそうな広いオープンキッチンになっていて、料理している様子を見られるカウンター席もあった。
シュージが食堂のキッチンを覗いてみると、そこにはリック達が既にいた。
「おっ、シュージ!」
厨房に入ってきたシュージを見つけたリックが、声をかけてきた。
「お疲れ様です、3人とも。これから夕食の準備ですかね?」
「そうなんだけど……」
シュージの言葉を聞いたカインが、困った様子を見せる。
「どうしたんですか、カイン?」
「食材があんまりなくて……」
「これは、冷蔵庫ですかね? 見てもいいですか?」
「あ、うん」
シュージが厨房にあったかなり大きな冷蔵庫を開けてみると、そこにはいくつかの食材が入っていた。
「ふむ、僕が知ってる食材に似ているものが結構ありますね。こちらは何ですか?」
「それはポテート……ちゃんとした名前はツインポテートっていう野菜だよ」
カインが示したのは、2つの丸いじゃがいもがくっ付いた、ツインポテートという野菜。
これは余ってると言っていいぐらい、かなりの量が冷蔵庫の中に入っていた。
「この野菜は何でしょう?」
「それはキマグレタスだな」
続けてリックがシュージに教えたのは、地球で言うところのレタスに似た野菜。
形はレタスではあったが、冷蔵庫に入っているキマグレタスはサイズが大小バラバラだ。
シュージが理由を尋ねると、キマグレタスはどれくらいの大きさに成長するかは気まぐれという、その名に相応しい要素のある野菜だと判明した。
「ふむふむ、こちらのちょっとだけある加工肉っぽいものは?」
シュージの質問に、メイが答える。
「それはオーク肉の塩漬けですね」
唯一残っていた肉は、オークという魔物の肉だった。
色や形は違うが、シュージは触ってみた感じ、扱い方は地球の豚肉と同じで大丈夫だと判断した。
調味料に関しては、塩、胡椒、砂糖などの基本的なものから、牛乳、サラダ油、オリーブオイル、酒に酢といったものまで揃っていた。
その他は、卵がそれなりの数あり、果物も少し余っている。
加えて、主食として食パンが大量に残っており、どうやらこれが今ある食材全てのようだった。
「やっぱり月末は食材が尽きるなぁ……」
リックの呟きにメイが反応する。
「リック様がこの前、盛大にお肉とかを焼いちゃうから……」
「だ、だって美味そうだったし……」
「ふむ、3人ならこの状況で何を作りますか?」
シュージの質問にメイが答える。
「うーん、しょうがないからふかしポテートとかですかね……? あとはサラダ……」
「塩漬け肉は使わないんですか?」
「これだけしかないと、全員にはちょっとしか行き渡りませんから、中途半端になってしまいます」
「なるほどなるほど」
そう言いながら、シュージは考え込む。
(うーん、この世界ではあまり料理が発達していないのか? リック達があんまり得意じゃない可能性もあるが)
「シュージ様だったら何を作るんですか?」
メイにそう聞かれたシュージは、少し考える素振りを見せた後、3人に指示を出していく。
「そうですね……そうしたら、手順は僕が教えますから、色々と3人に作ってもらいましょう。まず、僕とカインはポテートの皮剥きを」
「うん、分かった」
「メイは食パンを指に乗るくらいの賽の目状に切り分けてください」
「はいっ」
「リックには少し力仕事をお願いしますね?」
「え、料理なのに力仕事?」
そう言って不思議そうにするリックに、シュージは手頃なサイズのボウルに卵黄と酢と塩を入れて渡した。
「はい。ボウルに入れたこちらのものを、泡立て器で素早くかき混ぜてください」
「よく分かんないけど、分かった!」
「液がもったりとしてきたら教えてくださいね」
とりあえず、シュージが見習い組の3人にそれぞれやることを教え、作業に取り組んでもらう。
(夕食まではまだまだ時間はあるようだから、少し手間がかかっても大丈夫だろう)
カインとシュージは沢山のツインポテートの皮を剥く。
カインはピーラーを使ってるのに対し、シュージは包丁でくるくると凄い速さで剥いていく。
「わぁ……シュージ凄いな……」
カインが驚きの声を上げる。
「はは、慣れですかね、この辺は」
料理人としての経験の違いだろう、とシュージは考えた。
「もしかして、シュージって結構凄い料理人?」
「一応、お店で働いたりはしてましたね」
シュージは日本にいた頃、食堂で出す料理はもちろん、家での食事もほとんど自分で作っていた。
格闘家という側面もあったので、体作りのために栄養バランスを考えてそうしていたのだ。
もっと色々作りたいし食べたい、と常日頃から考え、本やネットでレシピをよく眺めていた。
おかげで、料理の知識に関してはかなり豊富なのだ。
「シュージ様、これくらいでいいですか?」
今度はメイが、賽の目状に切った食パンを見せながらそう言ってきた。
「はい、そのくらいあれば大丈夫です。そうしたら、切った食パンにオリーブオイルを塗って炒めてもらえますか?」
「パンを炒めるんですか?」
「はい。お願いします」
メイが作っているのはクルトンだ。
ただのサラダでも、クルトンが少し載っているだけで、かなりアクセントにはなる。
「うおお……腕が痛い……これくらいでいいのか、シュージ……」
苦しそうな声色でリックがそう聞いてきた。
「うん、いい感じですね。ありがとうございます。まだ混ぜる作業があるんですけど、いけますか?」
「うえっ!? んー、ちょっときついかも……」
無理をさせるのは本意ではないので、シュージはリックと作業を変わることにした。
「はは、全然いいですよ。そうしたら、僕と交代しましょうか。ポテートも粗方剥き終わったので、リックはポテートをフライパンでこまめに転がしながら柔らかくなるまで温めておいてください。カインは塩漬け肉をかなり小さめのサイズに切って、別のフライパンでカリッとするまで焼いてください」
「はーい!」
「分かったよ」
シュージの指示にリックとカインが返事をした。
「シュージ様、私はこの後どうすればいいですか?」
「ああ、そうしたら……」
その後も見習い組の3人に手伝ってもらいつつ、シュージは夕飯を作っていくのであった。
第2話 料理を振る舞う
「なぁ、ギルマスー?」
「何だ?」
「どっかで飯食っていかねー?」
日が沈んだ後、ヤタサの街の大通りを、3人の男女が歩いていた。
1人は若くて活発そうな顔立ちに、狼のような耳と尻尾を生やした獣人の男、ガル。
もう1人は勝気な表情で、狐のような耳と尻尾を生やした獣人の女、シャロ。
そして、その2人の前を歩くのは、綺麗な金髪を携え、腰に剣を差した男。
この男は、シュージが所属することになった冒険者ギルド、蒼天の風のギルドマスター、ジルバートだ。
今はガルがジルバートに夕食をどこかで食べよう、と提案しているところだった。
その提案に対して、ジルバートが口を開く。
「ギルドに戻ればあるだろう」
「いや、だって今日月末だろ? どうせろくなもんじゃねぇしさ」
「……まぁ、そうかもしれないが、お前の責任でもあるだろう」
「そうだけど……」
「そうよそうよ。どちらかと言えばあの子達に教える側なのに、何でアンタが悪いこと教えてるのよ」
ガルを責めるように、シャロがそんなことを言う。
彼らは現在、自らの拠点であるギルド、蒼天の風への帰り道を歩いていた。
朝から、依頼を受けて魔物の討伐に行っており、当然かなり腹が減っている。
だが、先日ここにいるガルが見習いのリックをそそのかし、大量に肉などの食材を消費したのだ。
そのため、ここ数日、ギルドの飯は中々質素なものとなっている。
当然、リックとガルはきついお叱りを受けたが、なくなった食材が返ってくることはない。
加えて、食材を新たに買ったりすることもしなかった。
新たに買ったら、また同じようなことをしても、許されると思うかもしれない。ジルバートはそう考え、ギルドの全員が不満を漏らすような食事にあえてさせている。
それもあってか、リックとガルは物凄く反省していた。
だが、それを決めた当人のジルバートにとっても、きついものはきつい。
今日はガルとシャロの指導が主だったので、ジルバートはそこまで運動をしたわけではないのだが、一日中立ちっぱなしでそこそこ疲れているのは事実だ。
こういう疲れている時こそ美味いものを食べたいのだが、恐らく待っているのは、ふかしポテートと簡単なサラダとパンくらいだろう、とジルバードは考えた。
ジルバートでもそうなのだから、若くて食欲がある上に、今日一日戦い続けたガルとシャロはもっときつい。
そうこうしているうちに、3人はギルドに着いた。
「やっと着いた~……って、なんか騒がしくねぇか?」
「そうね? 食堂に集まってるみたい」
耳のいいガルとシャロは、食堂に人が集まっていることに気が付いた。
ギルドに入り、3人はとりあえず荷物と武器などをエントランスの机に置いて、真っ直ぐ食堂に向かう。
そこには今日いるメンバーが勢揃いしていて、キッチンの方には3人にとっては見慣れないガタイのいい男、シュージが立っていた。
「あ、ギルマス。おかえりなさい」
ジルバートに気付いたキリカが声をかけた。
「ああ、今戻った。キリカ、これは何の騒ぎだ? それと、あそこにいる男は?」
「あの人は今日、用務員として雇うことになったシュージさんです。騒いでたのは、シュージさんが作ったご飯が美味しかったからですかね?」
「……戦闘員ではないのか?」
ジルバートから見ても、シュージは戦闘向きの体つきだった。
「戦える力はありますけど、本人はあまり戦いが好きじゃないそうですよ。まぁ、そういうのは後にして、今はご飯を食べてみてくださいよ」
「……まぁ、そうだな」
それからジルバート達が席に座ると、あれよあれよという間に見習い組達が料理を運んできた。
「おお! なんか美味そう!」
「見た目は焼いたポテートと普通のサラダだけど、何でか美味しそうね」
料理を見たガルとシャロが、嬉しそうにそう言った。
運ばれてきたのは、ツインポテートに刻まれた塩漬け肉が入った一品と、キマグレタスの上に薄茶色の物体と白い液体がかかっているサラダだった。
その料理を見て、ジルバートもガルもシャロもツインポテートの料理から手をつけた。
「ほう、これは……」
「お! これ美味いな! ポテートなのに、肉食ってるみたいだ!」
「胡椒が丁度いい感じにピリッとしてて美味しい!」
すると、ジルバート、ガル、シャロから驚きや賞賛の声が上がった。
ガルとシャロの言う通り、ツインポテートからはしっかりとした肉の風味が感じられ、味付けは塩胡椒だけのシンプルなものだったが、かなり満足感のある一皿になっていた。
3人は続けて、サラダにも手をつけていく。
「ほう……これも美味いな」
「生の野菜食うの苦手だけど、この液体のおかげでめっちゃ食える!」
「このサクサクしたのもいいわね。これだけでも食べられそう」
これまた、ジルバート、ガル、シャロから喜びの声が上がった。
サラダにかかっているシーザードレッシングは、自家製ながらかなり上手く出来ている。
クルトンもオリーブオイルで焼き上げたものに塩が軽く振ってあるので、これだけでもお酒のつまみになりそうな感じに仕上がっていた。
そんな美味しい料理は、腹が空いていたジルバート達の胃袋にあっという間に吸い込まれていった。
しっかりと完食したジルバート達の所へ、シュージがのしのしと歩み寄っていく。
「お気に召しましたか?」
シュージの質問に、ジルバートが笑顔で答える。
「ああ、とても美味かった。シュージと言ったか?」
「はい、シュージと言います。えっと、貴方はギルドマスター様ですよね?」
「様など付けなくていい。俺はジルバートという。ギルマスかジルとでも呼んでくれればいい」
「では、ジルさんとお呼びしますね」
お世話になるギルドのマスターということで、シュージは少し緊張していたのだが、ジルバートは快く対話に応じてくれた。
「この料理はシュージが全部作ったのか?」
「いえ、僕は少し手伝ったのと、指示を出しただけです。ほとんどリックとカインとメイが作ったと言っていいと思います」
「そうなのか?」
話を振られた見習い組のリック、カイン、メイは、ジルバートに元気良く答える。
「おう! 頑張って作ったぜ!」
「まぁ、ほとんどシュージの教えのおかげかな」
「シュージ様はとても優しく丁寧に教えてくださりました」
そんな見習い組の言葉にジルバートは頷くと、改めてシュージの方を向く。
「シュージ、これから用務員として働くそうだな」
「はい」
「キリカのお眼鏡に適ったのなら俺からは文句はない。むしろ、これだけ美味い料理が作れるなら、こちらからお願いしたいくらいだ」
ジルバート的にも、シュージの加入は問題がないようだった。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「恥ずかしいことに、しっかりと料理を作ることのできる者がいなくてな。用務員の仕事をこなしつつ、見習い組……何ならその他の希望する者にも料理を教えてやってくれ」
「分かりました。精一杯努めさせていただきます」
「よろしく頼む」
それからジルバートとシュージはしっかりと握手を交わし、シュージは晴れて正式に蒼天の風の一員となった。
◇ ◇ ◇
「ここがシュージさんのお部屋ですね」
「おお、広いし綺麗ですね」
食事を終えたシュージは、キリカにギルドの3階にあるギルドメンバーの居住スペースに案内されていた。
これからシュージが暮らすことになる部屋は、ちょっといいアパートといった印象だ。
今はベッドとクローゼットくらいしかないが、色々とものを置けそうなスペースもある。
「新しい家具などは自己負担ですけど、好きに置いたりもしていいですよ」
キリカはシュージにそう説明をした。
「何から何までありがたいです」
「いえいえ。皆さん、シュージさんのご飯をとても気に入ってて、これからの食事が楽しみだって言ってましたから、もっと待遇が良くてもいいぐらいですよ」
「十分過ぎますよ。行く当てもなかった僕を拾ってくださって、こちらこそ感謝しかありません。明日からのお仕事、頑張りますね」
「一緒に頑張りましょう! 分からないことがあったら遠慮なく聞いてください」
キリカは頼もしい笑顔を浮かべながらそう言った。
「分かりました、ありがとうございます」
「では、今日はお疲れ様でした。おやすみなさい」
「おやすみなさい、キリカさん」
シュージは案内をしてくれたキリカと別れる。
部屋にはシャワールームが備え付けられていたので、シュージはシャワーをパパッと浴びてベッドに寝転がった。
ベッドは少し硬めだったが、硬めのベッドが好きなシュージからするととても快適だ。
大きな環境の変化によって知らぬ間に疲労が溜まっていたのか、シュージはすぐに眠くなった。
(明日からも頑張ろう)
そう心の中で誓いつつ、眠気に素直に身を任せるシュージだった。
◇ ◇ ◇
シュージが異世界に来て2日目。
早めに目が覚めたシュージは、体を起こし、顔を洗って食堂へと向かった。
基本的にこのギルドでは、朝ご飯は各自適当に食べている。
冒険者として依頼を受けると、早い時間に出発しなければいけなかったりするため、一緒に食べようにも時間が合わないのだ。
だが、人間にとって朝ご飯はとても大事だと思っているシュージは、できればちゃんとしたものを食べてもらいたいと考え、まだ誰もいない食堂で料理を始めた。
使うのは、昨日シーザードレッシングのために作ったマヨネーズの余りと卵だ。
冷蔵庫にはもうほとんど食材がないので、あまり品目は増やせないが、せめてお腹に溜まるようにと、今回はたまごサンドを作ることにした。
食パンはありがたいことにかなり大量に残っている。
(たまごサンドなら冷めてもそれはそれで美味しいので、食事を摂る時間に差があっても大丈夫だろう)
それからシュージは黙々と1人でゆで卵を作り、その間になくなりそうなマヨネーズを追加で作る。
ハンドミキサーのようなものがあれば楽なのだが、生憎ないので、しっかりと泡立て器で作っていく。
シュージのフィジカルがあれば、その作業はそこまで苦でもない。
そして、ゆで卵ができたらボウルに移して粗めに潰し、マヨネーズと軽く塩胡椒を加えて味を調える。あとはそれを食パンの上に載せて挟むだけで完成だ。
それから少しキッチン内を探して、シュージは赤色のジャムを見つけた。
味見してみたところ苺のジャムだったので、シュージはジャムサンドも同じくらい作った。
たまごサンドにジャムサンド。
これぐらいあれば普通の人なら十分な量だろう。食欲のある者達は、どちらかを多めに食べたりすれば満足できるだろう。
作り終えたシュージがそんなことを考えていると、まだ少し眠そうなキリカが食堂に入ってきた。
「ふわぁ……あら、シュージさん?」
「おはようございます、キリカさん。早いですね?」
「おはようございます。受付業務があるので、基本は私が一番なことが多いですね。何をしてるんですか?」
「皆さんの朝ご飯を作ってました」
「えっ、わざわざ作ってくれたんですか?」
キリカは驚きながらそう口にした。
「このギルドに用務員として雇われたなら、皆さんのサポートをできるだけしたいと思いまして」
「そんな無理にしなくても大丈夫ですよ……?」
「はは、無理なんてしてないですから大丈夫ですよ。元々早起きなタチですし、喜んでもらえるのは嬉しいですから」
「シュージさん……ふふ、ありがとうございます。絶対皆んな喜びますよ」
「それなら良かったです。丁度できましたから、どうぞ」
早速シュージは、キリカにたまごサンドとジャムサンドを載せたお皿を手渡す。
「ありがとうございます。……んんっ! これ、美味しいですっ!」
料理を受け取ったキリカは、まずたまごサンドを口に運んだ。
そして、一口食べてすぐに驚きの声を上げた。
「卵だと思いますけど、なんか不思議な風味がしますね?」
「マヨネーズの風味ですね。昨日のサラダにかかっていたシーザードレッシングも、マヨネーズをもとにして作ったんです」
「そう言われてみると味が少し似てますね」
「この辺りでは作られていないんですかね?」
「そうですね、食べたことないです。これだけ美味しいなら、レシピ登録をしてもいいかもしれませんね」
「レシピ登録ですか?」
シュージの質問にキリカが頷く。
「はい。新しくて美味しい料理とか調味料を作った際は、商業ギルドに登録して、レシピとして販売するんです。そうすると、レシピの使用料が登録者に一部支払われます」
「なるほど、そういうものがあるんですね」
「とりあえず、このギルドの皆んなに食べてもらって、誰も知らなかったら登録していいと思いますよ。ジンバさんは遠い国から来ましたし、ギルドマスターも仕事柄、色々な場所に行っていて、食文化にもそこそこ詳しいですから」
「分かりました」
「と、難しい話はこのくらいにして、今はこの美味しい朝ご飯を堪能します!」
「はは、そうですね。遠慮なく召し上がってください」
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