54 / 56
#54 誕生日パーティー①
「いよいよ明日ですね!」
「そうですね」
カスミは現在、ついに明日に迫ったミーユイアの誕生日パーティーのリハーサルのため、会場となる王城内にある舞踏場に来ていた。
そこには当然主催であり主役のミーユイアもおり、会場のセッティングや本番の段取りの確認を念入りに行っているところだ。
ちなみに明日のパーティーには、カスミとビフレストのメンバー達も参加することになった。
ビフレストのメンバー達も、カスミが今回のパーティーのために用意した料理やデザートには当然興味があり、どちらにせよ付き添いは必須なので、ならパーティーにも参加させてもらおうということになった。
主催のミーユイアからしても、この国における最大戦力であるビフレストのメンバー達が参加してしてくれることは、王家がビフレストの面々と友好的な関係を築けているというアピールになるということで、二つ返事で了承してくれた。
なお、カスミはパーティーの最初の方は厨房で料理とデザート作りに取り組み、終盤でデザートを振る舞うタイミングになったら、しれっと会場に合流する予定だ。
沢山の貴族が参加するし、その中にはカスミくらいの子供もいるそうなので、変に注目を集めることもないだろう。
「本来はダンスを行うスペースをこの辺りに取るのですが、今回はもうこの辺りにも料理を並べて、立食用のテーブルを沢山置きます!」
そんなミーユイアの言葉通り、会場の真ん中には料理を置くためのテーブルがずらっと並んでおり、そこに王城の料理人達が控えて希望した人に料理を渡していくような形を取るようだ。
そうして料理を受け取ったらすぐ食べられるように、立食用のテーブルも沢山置かれていて、本来ダンスをするための舞踏場は、レストランのような空間になっていた。
「私も挨拶回りとかせずに、カスミ様の料理をひたすら楽しみたいですわ……」
「あはは…… 頑張ってください、ミーユイア様」
「頑張りますわ! それに、デザートはゆっくり食べられますもの!」
主催であるミーユイアは、パーティーが始まったら参加する貴族達に挨拶回りに行かないといけないそうなので、メインの料理に関してはゆっくり食べられないそう。
ただ、デザートの数品やメインであるケーキに関しては、ミーユイアの強い希望もあってゆっくり食べる時間が設けられるとのこと。
「料理のメニューは拝見させてもらいましたけど、デザートに関しては何も聞かされてないので、本当に楽しみですわ!」
「ふふ、腕によりをかけて作りますね」
実は既にカスミはケーキを含め、デザート類も試作済みなのだが、それを試食した王城の料理人達と、ミーユイアの代わりにチェックしに来た第一王妃のアリレインからは、もう大絶賛だった。
王城の料理人の中にはあまりの美味しさに涙を流す者も現れた程で、作ったカスミも自信を持って当日を迎えられそうだった。
「それと、誕生日パーティーが終わったら、お友達としてカスミ様とゆっくりお話したいですわ」
「お望みとあれば、私はいつでも大丈夫ですよ」
「むぅ…… カスミ様は私が望まないとお話したくないですか?」
カスミの少し距離を感じさせる発言に、ミーユイアは少し拗ねたような表情を浮かべながらそんな風に言葉を返す。
(か、可愛いっ……!)
「そ、そんなことないですよっ。 私もミーユイア様とお話したいです」
12歳のお姫様の拗ね顔の破壊力にカスミはノックアウトされそうになったが、なんとか平静を装いながらそう答えた。
「……じゃあ、ユイと」
「えっ?」
「ユイ、って呼んでください。 身内にはそう呼ばれているんです」
「よ、よろしいのですか?」
「嫌ですの……?」
「そ、そんなことないですっ。 じゃあ…… ゆ、ユイ様……」
「様もいらないんですけど……」
「そ、それは流石にっ」
「……まぁいいです。 私も、カスミと呼んでいいですか?」
「もちろんですっ」
カスミがそう答えると、ミーユイアは顔を綻ばせ、カスミの手を取ってきた。
「ふふ、カスミっ」
「は、はい?」
「呼んだだけですの♪」
(ぐはぁっ……!?)
呼び方が親密なものに変わったことで、カスミとの関係に特別感が増したのか、ミーユイアは花咲くような笑顔をカスミに向けながらそんな事を言ってきた。
その言葉と仕草はなんともあざとく可愛らしく、カスミの心に大ダメージを与えてきた。
「ミーユイア様、こちらの飾り付けなのですが……」
「あ、はい、今行きますわ。 では、カスミまたね♪」
「は、はい……! ユイ様も、頑張ってください……!」
それからミーユイアはメイドに呼ばれてパーティーの準備に戻っていった。
カスミはそんなミーユイアを見送りつつ、可愛らしいミーユイアのためにも、明日のデザート作りを頑張ろうと改めて決意するのであった。
*
そして、いよいよやってきたミーユイアの誕生日パーティー当日。
会場となる舞踏場には、続々と貴族達が集まってきていた。
「おお? あれはなんだ?」
「シェフが沢山いる、ということは料理? いやだが、見た目がかなり美しいぞ」
そんな貴族達は、舞踏場の真ん中に設置されたテーブルの上に所狭しと並ぶ料理らしきものに早速興味を示した。
それもそのはず、こういったパーティーでは多くて5種類くらいの料理が並び、見た目も変わり映えがないことがほとんどなのだが、今、貴族達の目の前にある料理は20種類近くあり、しかもどれも見たことのない華やかさをしていた。
「な、なんだ、これは……!?」
そうして貴族達が見たことのない料理に期待を寄せる中、貴族に混ざって会場にやって来たアヴァリス商会の会長、マルズロは盛大に焦っていた。
彼は王家が渋る中、無理を言って今回のパーティーに料理を出させてもらえるよう、話を取り付けた。
そのため、存在感を示せるよう、最高級のワイバーンの肉のステーキを用意をし、それは確かに料理が並ぶテーブルの一角に置かれている。
しかし、その周りにある料理は、ただ焼かれただけのステーキ肉とは違い、一つ一つの料理に何種類もの食材が使われているのか、非常に彩り豊かで、料理をまとめるための楊枝やピックなんかも形や色がこだわられていた。
そのため、完全にただのステーキ肉はそれらの料理に埋もれてしまっている。
当のマルズロでさえ、自分が用意したステーキ肉より、他の料理達の方が魅力的に思えてしまう始末だった。
『皆様、ようこそお越しくださいました』
そんな状況にマルズロがダラダラと冷や汗を流し始めた中、この国の宰相がパーティーの始まりを告げる挨拶を始めるのであった。
「そうですね」
カスミは現在、ついに明日に迫ったミーユイアの誕生日パーティーのリハーサルのため、会場となる王城内にある舞踏場に来ていた。
そこには当然主催であり主役のミーユイアもおり、会場のセッティングや本番の段取りの確認を念入りに行っているところだ。
ちなみに明日のパーティーには、カスミとビフレストのメンバー達も参加することになった。
ビフレストのメンバー達も、カスミが今回のパーティーのために用意した料理やデザートには当然興味があり、どちらにせよ付き添いは必須なので、ならパーティーにも参加させてもらおうということになった。
主催のミーユイアからしても、この国における最大戦力であるビフレストのメンバー達が参加してしてくれることは、王家がビフレストの面々と友好的な関係を築けているというアピールになるということで、二つ返事で了承してくれた。
なお、カスミはパーティーの最初の方は厨房で料理とデザート作りに取り組み、終盤でデザートを振る舞うタイミングになったら、しれっと会場に合流する予定だ。
沢山の貴族が参加するし、その中にはカスミくらいの子供もいるそうなので、変に注目を集めることもないだろう。
「本来はダンスを行うスペースをこの辺りに取るのですが、今回はもうこの辺りにも料理を並べて、立食用のテーブルを沢山置きます!」
そんなミーユイアの言葉通り、会場の真ん中には料理を置くためのテーブルがずらっと並んでおり、そこに王城の料理人達が控えて希望した人に料理を渡していくような形を取るようだ。
そうして料理を受け取ったらすぐ食べられるように、立食用のテーブルも沢山置かれていて、本来ダンスをするための舞踏場は、レストランのような空間になっていた。
「私も挨拶回りとかせずに、カスミ様の料理をひたすら楽しみたいですわ……」
「あはは…… 頑張ってください、ミーユイア様」
「頑張りますわ! それに、デザートはゆっくり食べられますもの!」
主催であるミーユイアは、パーティーが始まったら参加する貴族達に挨拶回りに行かないといけないそうなので、メインの料理に関してはゆっくり食べられないそう。
ただ、デザートの数品やメインであるケーキに関しては、ミーユイアの強い希望もあってゆっくり食べる時間が設けられるとのこと。
「料理のメニューは拝見させてもらいましたけど、デザートに関しては何も聞かされてないので、本当に楽しみですわ!」
「ふふ、腕によりをかけて作りますね」
実は既にカスミはケーキを含め、デザート類も試作済みなのだが、それを試食した王城の料理人達と、ミーユイアの代わりにチェックしに来た第一王妃のアリレインからは、もう大絶賛だった。
王城の料理人の中にはあまりの美味しさに涙を流す者も現れた程で、作ったカスミも自信を持って当日を迎えられそうだった。
「それと、誕生日パーティーが終わったら、お友達としてカスミ様とゆっくりお話したいですわ」
「お望みとあれば、私はいつでも大丈夫ですよ」
「むぅ…… カスミ様は私が望まないとお話したくないですか?」
カスミの少し距離を感じさせる発言に、ミーユイアは少し拗ねたような表情を浮かべながらそんな風に言葉を返す。
(か、可愛いっ……!)
「そ、そんなことないですよっ。 私もミーユイア様とお話したいです」
12歳のお姫様の拗ね顔の破壊力にカスミはノックアウトされそうになったが、なんとか平静を装いながらそう答えた。
「……じゃあ、ユイと」
「えっ?」
「ユイ、って呼んでください。 身内にはそう呼ばれているんです」
「よ、よろしいのですか?」
「嫌ですの……?」
「そ、そんなことないですっ。 じゃあ…… ゆ、ユイ様……」
「様もいらないんですけど……」
「そ、それは流石にっ」
「……まぁいいです。 私も、カスミと呼んでいいですか?」
「もちろんですっ」
カスミがそう答えると、ミーユイアは顔を綻ばせ、カスミの手を取ってきた。
「ふふ、カスミっ」
「は、はい?」
「呼んだだけですの♪」
(ぐはぁっ……!?)
呼び方が親密なものに変わったことで、カスミとの関係に特別感が増したのか、ミーユイアは花咲くような笑顔をカスミに向けながらそんな事を言ってきた。
その言葉と仕草はなんともあざとく可愛らしく、カスミの心に大ダメージを与えてきた。
「ミーユイア様、こちらの飾り付けなのですが……」
「あ、はい、今行きますわ。 では、カスミまたね♪」
「は、はい……! ユイ様も、頑張ってください……!」
それからミーユイアはメイドに呼ばれてパーティーの準備に戻っていった。
カスミはそんなミーユイアを見送りつつ、可愛らしいミーユイアのためにも、明日のデザート作りを頑張ろうと改めて決意するのであった。
*
そして、いよいよやってきたミーユイアの誕生日パーティー当日。
会場となる舞踏場には、続々と貴族達が集まってきていた。
「おお? あれはなんだ?」
「シェフが沢山いる、ということは料理? いやだが、見た目がかなり美しいぞ」
そんな貴族達は、舞踏場の真ん中に設置されたテーブルの上に所狭しと並ぶ料理らしきものに早速興味を示した。
それもそのはず、こういったパーティーでは多くて5種類くらいの料理が並び、見た目も変わり映えがないことがほとんどなのだが、今、貴族達の目の前にある料理は20種類近くあり、しかもどれも見たことのない華やかさをしていた。
「な、なんだ、これは……!?」
そうして貴族達が見たことのない料理に期待を寄せる中、貴族に混ざって会場にやって来たアヴァリス商会の会長、マルズロは盛大に焦っていた。
彼は王家が渋る中、無理を言って今回のパーティーに料理を出させてもらえるよう、話を取り付けた。
そのため、存在感を示せるよう、最高級のワイバーンの肉のステーキを用意をし、それは確かに料理が並ぶテーブルの一角に置かれている。
しかし、その周りにある料理は、ただ焼かれただけのステーキ肉とは違い、一つ一つの料理に何種類もの食材が使われているのか、非常に彩り豊かで、料理をまとめるための楊枝やピックなんかも形や色がこだわられていた。
そのため、完全にただのステーキ肉はそれらの料理に埋もれてしまっている。
当のマルズロでさえ、自分が用意したステーキ肉より、他の料理達の方が魅力的に思えてしまう始末だった。
『皆様、ようこそお越しくださいました』
そんな状況にマルズロがダラダラと冷や汗を流し始めた中、この国の宰相がパーティーの始まりを告げる挨拶を始めるのであった。
あなたにおすすめの小説
妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】
小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」
私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。
退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?
案の定、シャノーラはよく理解していなかった。
聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
「子守係風情が婚約者面をするな」と追い出された令嬢——公爵家の子供たちが全員、家出した
歩人
ファンタジー
「所詮、子守係にすぎない女だった」
公爵嫡男エドワードはそう吐き捨て、華やかな伯爵令嬢との婚約を発表した。
追い出されたフィオナは泣かなかった。前世で保育士だった記憶を持つ彼女は知っていた——子供は見ている。全部、覚えている。
フィオナが去って一週間。公爵家の三人の子供たちが、揃って家を出た。
長男は「フィオナ先生のところに行く」と書き置きを残し、次女は新しい婚約者に「あなたは僕たちの名前すら知らない」と告げた。
「お返しする気はございません——この子たちは、私を選んだのですから」
ポーション必要ですか?作るので10時間待てますか?
chocopoppo
ファンタジー
【毎日12:10更新!】
松本(35)は会社でうたた寝をした瞬間に異世界転移してしまった。
特別な才能を持っているわけでも、与えられたわけでもない彼は当然戦うことなど出来ないが、彼には持ち前の『単調作業適性』と『社会人適性』のスキル(?)があった。
第二の『社会人』人生を送るため、超資格重視社会で手に職付けようと奮闘する、自称『どこにでもいる』社会人のお話。
似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!