子供の姿で転生したパティシエ、異世界で甘くて幸せな生活を送る。〜調味料や料理器具を生み出す力で、食文化を発展させます〜

かむら

文字の大きさ
84 / 86

#83 濃厚なはちみつ

「カスミ、お土産にゃ!」


 ある日の夕方。

 依頼から帰ってきたローニャが、何やら大きな壺をカスミの前まで運んできた。


「えっと、これなんですか?」

「カスミが前に言ってた、はちみつってやつにゃ!」


 ローニャがそう言いつつ、壺の蓋を開けると、中には琥珀色のとろりとした紛れもないはちみつが入っていた。


「わぁ、こんなに沢山どうしたんですか?」

「今日はニードルビーを倒す依頼を受けたんにゃけど、カスミが前に巣からはちみつが採れるって言ってたの思い出して、巣だけ持って帰ろうとしたら、依頼主の村ははちみつのこと知ってて、巣からはちみつを出してくれたにゃ!」


 はちみつはこの世界だとメジャーではないが、どうやら存在を認知している地域もあるようで、今回のローニャが受けた依頼の依頼主の住む村は正しくそうだったようだ。


「その村では食べ物ってより薬みたいに使われてるみたいだったにゃ」

「確かに、はちみつは殺菌効果とかありますからね」


 はちみつはカスミにとってはありがたい食材だが、そのままだと甘過ぎて沢山食べれるようなものでは無いので、この世界だと食べ物扱いはされてこなかったのかなとカスミは内心当たりをつけた。

 しかも、ニードルビーは基本的に巣の周りで群れをなしており、外敵には容赦なく襲いかかるので、危険な魔物だ。

 しかも一匹一匹が大きくて素早く、猛毒がある毒針なんかも持っているので、ローニャのような高位冒険者に依頼が回されるくらい強い。

 そんな危険な魔物の巣を破壊せずにわざわざ持ち帰ろうとする者がこれまでほとんど居なかったのも、はちみつの存在が広まらなかった理由の一つなのかもしれない。


「それじゃあ、ちょうど晩ご飯のあと一品に悩んでたので、使わせてもらいますね」

「甘いものじゃにゃくてご飯に使うにゃ?」

「甘めの味付けのおかずですね」


 ローニャにそんな風に言ったカスミは、早速厨房に入って夕食の準備をすることにした。

 メインとしてはバイソン肉のサイコロステーキを作りつつ、その横の鍋ではちみつを使った一品を作ることにする。

 まずは市場で買ったさつまいもをしっかり洗って皮を縞模様になるように剥き、一口サイズに切ったら水に15分ほどさらす。

 これはさつまいものアク抜きの作業で、これを怠ると加熱した時に変色したりしてしまうのだ

 あとは渋味が取れたり、味が染み込みやすくなったりするという効果もある。

 そうしてしっかり水にさらし終えたら鍋に入れて、水と壺から掬ったはちみつ、あとレモン汁を少量入れ、火にかけて煮込んでいく。

 その鍋の中身が焦げないようちょくちょく様子を見つつ、メインのサイコロステーキや味噌汁も作っておく。


「なんか良い匂いしてきたにゃ~」


 すると、シャワーを浴びていたローニャが甘い匂いに釣られてカウンター席にやってきた。


「その鍋にはちみつ入れたにゃ?」

「はい。 さつまいもの甘露煮です」

「まだあんまり味の想像つかないにゃー」

「ふふ、お楽しみですね」


 それからローニャとのんびり会話をしつつ、サイコロステーキを焼き上げ、レタスを千切ってトマトを添えたサラダに味噌汁、そしてさつまいもの甘露煮を完成させ、それぞれ皿に盛り付けていった。

 そして、出来上がった料理をリビングに運び、いつも通りの夕食の時間がスタートした。


「ん! これ美味しいにゃ!」


 いつもだったらバイソン肉のサイコロステーキに手を伸ばすであろうローニャだったが、今日は自分が持って帰ってきたはちみつが使われたさつまいもの甘露煮から口に運んでいった。

 すると、さつまいも自体の甘さと染み込んだはちみつの甘さが一番に感じられたかと思うと、仄かにレモン汁の酸味も口の中に広がっていく。

 その甘みと酸味のバランスが絶妙で、どんどん次が欲しくなってしまうような食べやすい一品に仕上がっていた。


「砂糖とも違った甘みにゃね」

「そうですね。 香りも良くてとっても質がいいはちみつです」


 カスミも前世でお菓子作りをしていた時に、はちみつは色んな種類を扱ってきたが、そのどれよりもニードルビーのはちみつは濃厚な甘さと花のような良い香りが強く、質の良さが一口で分かった。


「素敵なお土産ありがとうございます、ローニャさん」

「いえいえにゃ! またにゃんかあったら持って帰ってくるにゃ!」


 今回ローニャが持って帰ってきてくれたはちみつはかなりの量があり、しばらくは困らなさそうだったので、はちみつを使った料理やお菓子を色々と作ろうかなと内心思うカスミなのであった。
感想 16

あなたにおすすめの小説

私を欠陥品と呼ぶ執事長が鬱陶しいので、侯爵夫人として排除することにしました

菖蒲月(あやめづき)
ファンタジー
「欠陥品に払う敬意など無い」 結婚後もそう言って嫌がらせを続けるのは、侯爵家の執事長。 どうやら私は、幼少期の病が原因で、未だに“子を産めない欠陥品”扱いされているらしい。 ……でも。 正式に侯爵夫人となった今、その態度は見過ごせませんわね。 証拠も揃ったことですし、そろそろ排除を始めましょうか。 静かに怒る有能侯爵夫人による、理性的ざまぁ短編。 ________________________________ こちらの作品は「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/387029553/episode/10775138 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

婚約破棄された冷遇令嬢は、辺境の台所で幸せを煮込む〜無自覚な精霊の愛し子は極上スープで氷の旦那様を溶かし、激甘に溺愛される〜

黒崎隼人
恋愛
家族から冷遇され、唯一の自己表現である料理を心の拠り所として生きてきた侯爵令嬢ヴィオラ。 彼女はある日、王太子である婚約者から無実の罪を着せられ、婚約破棄と同時に極寒の北方辺境へと追放されてしまう。 嫁ぎ先は、妻を亡くして心を閉ざした「氷の辺境伯」レオンハルト。 愛のない政略結婚、厳しい自然環境。 しかしヴィオラは絶望することなく、持ち込んだ小さな包丁を手に辺境の台所に立つ。 彼女が無自覚に作る温かなスープは、精霊たちを惹きつける「大愛し子」としての奇跡の力が宿っていた。 その極上の味わいは、心を閉ざしていた幼い義娘エルナの笑顔を取り戻し、不器用で無愛想なレオンハルトの凍てついた心を静かに溶かしていく。 一方、ヴィオラの真実に気づき激しく後悔する王太子や、彼女の力を狙う王都の権力者たちが動き出す。 しかし、辺境の大地と精霊たち、そして何より彼女を愛する家族が、ヴィオラを手放すはずがなかった。 「あなたが辺境に来てから、私の止まっていた時間は動き出した」 これは、すべてを諦めていた少女が、辺境の台所から温かな居場所と真実の愛を手に入れるまでの、美味しくて心温まる奇跡の物語。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

男娼を買ったら、かつての婚約者でした

志熊みゅう
恋愛
 王宮魔術師エマ・カバネルは、三十歳独身。十年前に婚約者クロードに裏切られて以来、結婚を捨て、仕事だけを支えに生きてきた。だが強すぎる魔力ゆえに抑えきれない『欲』を抱える彼女は、ある晩女性専用娼館『秘密の園』を訪れる。  そこでかつて自分を傷つけたクロードによく似た男娼エリクと出会う。甘い言葉と抱擁に癒やされ、エマは少しずつ心を許していく。  しかし王宮の政争に巻き込まれ、唯一生きがいになっていた仕事にも裏切られた彼女は、王都からの逃亡を決意する。せめてもの感謝にエリクを身請けし、自由を与えたはずが、彼はエマを追って現れる。  そしてその正体は、十年前に彼女を捨てたクロード本人で――。裏切りと後悔の果て、二人は失った愛と向き合う。