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#83 濃厚なはちみつ
「カスミ、お土産にゃ!」
ある日の夕方。
依頼から帰ってきたローニャが、何やら大きな壺をカスミの前まで運んできた。
「えっと、これなんですか?」
「カスミが前に言ってた、はちみつってやつにゃ!」
ローニャがそう言いつつ、壺の蓋を開けると、中には琥珀色のとろりとした紛れもないはちみつが入っていた。
「わぁ、こんなに沢山どうしたんですか?」
「今日はニードルビーを倒す依頼を受けたんにゃけど、カスミが前に巣からはちみつが採れるって言ってたの思い出して、巣だけ持って帰ろうとしたら、依頼主の村ははちみつのこと知ってて、巣からはちみつを出してくれたにゃ!」
はちみつはこの世界だとメジャーではないが、どうやら存在を認知している地域もあるようで、今回のローニャが受けた依頼の依頼主の住む村は正しくそうだったようだ。
「その村では食べ物ってより薬みたいに使われてるみたいだったにゃ」
「確かに、はちみつは殺菌効果とかありますからね」
はちみつはカスミにとってはありがたい食材だが、そのままだと甘過ぎて沢山食べれるようなものでは無いので、この世界だと食べ物扱いはされてこなかったのかなとカスミは内心当たりをつけた。
しかも、ニードルビーは基本的に巣の周りで群れをなしており、外敵には容赦なく襲いかかるので、危険な魔物だ。
しかも一匹一匹が大きくて素早く、猛毒がある毒針なんかも持っているので、ローニャのような高位冒険者に依頼が回されるくらい強い。
そんな危険な魔物の巣を破壊せずにわざわざ持ち帰ろうとする者がこれまでほとんど居なかったのも、はちみつの存在が広まらなかった理由の一つなのかもしれない。
「それじゃあ、ちょうど晩ご飯のあと一品に悩んでたので、使わせてもらいますね」
「甘いものじゃにゃくてご飯に使うにゃ?」
「甘めの味付けのおかずですね」
ローニャにそんな風に言ったカスミは、早速厨房に入って夕食の準備をすることにした。
メインとしてはバイソン肉のサイコロステーキを作りつつ、その横の鍋ではちみつを使った一品を作ることにする。
まずは市場で買ったさつまいもをしっかり洗って皮を縞模様になるように剥き、一口サイズに切ったら水に15分ほどさらす。
これはさつまいものアク抜きの作業で、これを怠ると加熱した時に変色したりしてしまうのだ
あとは渋味が取れたり、味が染み込みやすくなったりするという効果もある。
そうしてしっかり水にさらし終えたら鍋に入れて、水と壺から掬ったはちみつ、あとレモン汁を少量入れ、火にかけて煮込んでいく。
その鍋の中身が焦げないようちょくちょく様子を見つつ、メインのサイコロステーキや味噌汁も作っておく。
「なんか良い匂いしてきたにゃ~」
すると、シャワーを浴びていたローニャが甘い匂いに釣られてカウンター席にやってきた。
「その鍋にはちみつ入れたにゃ?」
「はい。 さつまいもの甘露煮です」
「まだあんまり味の想像つかないにゃー」
「ふふ、お楽しみですね」
それからローニャとのんびり会話をしつつ、サイコロステーキを焼き上げ、レタスを千切ってトマトを添えたサラダに味噌汁、そしてさつまいもの甘露煮を完成させ、それぞれ皿に盛り付けていった。
そして、出来上がった料理をリビングに運び、いつも通りの夕食の時間がスタートした。
「ん! これ美味しいにゃ!」
いつもだったらバイソン肉のサイコロステーキに手を伸ばすであろうローニャだったが、今日は自分が持って帰ってきたはちみつが使われたさつまいもの甘露煮から口に運んでいった。
すると、さつまいも自体の甘さと染み込んだはちみつの甘さが一番に感じられたかと思うと、仄かにレモン汁の酸味も口の中に広がっていく。
その甘みと酸味のバランスが絶妙で、どんどん次が欲しくなってしまうような食べやすい一品に仕上がっていた。
「砂糖とも違った甘みにゃね」
「そうですね。 香りも良くてとっても質がいいはちみつです」
カスミも前世でお菓子作りをしていた時に、はちみつは色んな種類を扱ってきたが、そのどれよりもニードルビーのはちみつは濃厚な甘さと花のような良い香りが強く、質の良さが一口で分かった。
「素敵なお土産ありがとうございます、ローニャさん」
「いえいえにゃ! またにゃんかあったら持って帰ってくるにゃ!」
今回ローニャが持って帰ってきてくれたはちみつはかなりの量があり、しばらくは困らなさそうだったので、はちみつを使った料理やお菓子を色々と作ろうかなと内心思うカスミなのであった。
ある日の夕方。
依頼から帰ってきたローニャが、何やら大きな壺をカスミの前まで運んできた。
「えっと、これなんですか?」
「カスミが前に言ってた、はちみつってやつにゃ!」
ローニャがそう言いつつ、壺の蓋を開けると、中には琥珀色のとろりとした紛れもないはちみつが入っていた。
「わぁ、こんなに沢山どうしたんですか?」
「今日はニードルビーを倒す依頼を受けたんにゃけど、カスミが前に巣からはちみつが採れるって言ってたの思い出して、巣だけ持って帰ろうとしたら、依頼主の村ははちみつのこと知ってて、巣からはちみつを出してくれたにゃ!」
はちみつはこの世界だとメジャーではないが、どうやら存在を認知している地域もあるようで、今回のローニャが受けた依頼の依頼主の住む村は正しくそうだったようだ。
「その村では食べ物ってより薬みたいに使われてるみたいだったにゃ」
「確かに、はちみつは殺菌効果とかありますからね」
はちみつはカスミにとってはありがたい食材だが、そのままだと甘過ぎて沢山食べれるようなものでは無いので、この世界だと食べ物扱いはされてこなかったのかなとカスミは内心当たりをつけた。
しかも、ニードルビーは基本的に巣の周りで群れをなしており、外敵には容赦なく襲いかかるので、危険な魔物だ。
しかも一匹一匹が大きくて素早く、猛毒がある毒針なんかも持っているので、ローニャのような高位冒険者に依頼が回されるくらい強い。
そんな危険な魔物の巣を破壊せずにわざわざ持ち帰ろうとする者がこれまでほとんど居なかったのも、はちみつの存在が広まらなかった理由の一つなのかもしれない。
「それじゃあ、ちょうど晩ご飯のあと一品に悩んでたので、使わせてもらいますね」
「甘いものじゃにゃくてご飯に使うにゃ?」
「甘めの味付けのおかずですね」
ローニャにそんな風に言ったカスミは、早速厨房に入って夕食の準備をすることにした。
メインとしてはバイソン肉のサイコロステーキを作りつつ、その横の鍋ではちみつを使った一品を作ることにする。
まずは市場で買ったさつまいもをしっかり洗って皮を縞模様になるように剥き、一口サイズに切ったら水に15分ほどさらす。
これはさつまいものアク抜きの作業で、これを怠ると加熱した時に変色したりしてしまうのだ
あとは渋味が取れたり、味が染み込みやすくなったりするという効果もある。
そうしてしっかり水にさらし終えたら鍋に入れて、水と壺から掬ったはちみつ、あとレモン汁を少量入れ、火にかけて煮込んでいく。
その鍋の中身が焦げないようちょくちょく様子を見つつ、メインのサイコロステーキや味噌汁も作っておく。
「なんか良い匂いしてきたにゃ~」
すると、シャワーを浴びていたローニャが甘い匂いに釣られてカウンター席にやってきた。
「その鍋にはちみつ入れたにゃ?」
「はい。 さつまいもの甘露煮です」
「まだあんまり味の想像つかないにゃー」
「ふふ、お楽しみですね」
それからローニャとのんびり会話をしつつ、サイコロステーキを焼き上げ、レタスを千切ってトマトを添えたサラダに味噌汁、そしてさつまいもの甘露煮を完成させ、それぞれ皿に盛り付けていった。
そして、出来上がった料理をリビングに運び、いつも通りの夕食の時間がスタートした。
「ん! これ美味しいにゃ!」
いつもだったらバイソン肉のサイコロステーキに手を伸ばすであろうローニャだったが、今日は自分が持って帰ってきたはちみつが使われたさつまいもの甘露煮から口に運んでいった。
すると、さつまいも自体の甘さと染み込んだはちみつの甘さが一番に感じられたかと思うと、仄かにレモン汁の酸味も口の中に広がっていく。
その甘みと酸味のバランスが絶妙で、どんどん次が欲しくなってしまうような食べやすい一品に仕上がっていた。
「砂糖とも違った甘みにゃね」
「そうですね。 香りも良くてとっても質がいいはちみつです」
カスミも前世でお菓子作りをしていた時に、はちみつは色んな種類を扱ってきたが、そのどれよりもニードルビーのはちみつは濃厚な甘さと花のような良い香りが強く、質の良さが一口で分かった。
「素敵なお土産ありがとうございます、ローニャさん」
「いえいえにゃ! またにゃんかあったら持って帰ってくるにゃ!」
今回ローニャが持って帰ってきてくれたはちみつはかなりの量があり、しばらくは困らなさそうだったので、はちみつを使った料理やお菓子を色々と作ろうかなと内心思うカスミなのであった。
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