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第1部
第12話 エルフ界と精霊、そして辿り着く
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しばらく絡み合ってから二人とも疲れつつも水浴び場に向かい、軽く汗水を流して服を着替えた。他に着替えを持ってなかったアカリはシルメリのおさがりを貰った。そして二人でよろよろソファに腰掛け、肩を寄せ合いながら語らう。
理性が戻ったシルメリは顔を真っ赤に染め上げながらもアカリの肩に頬をスリスリと媚びるように擦りつけ、心底幸せそうに顔を綻ばせている。アカリは愛おしそうに頭を撫でながらも、内心少し戸惑っていた。
「えーと…今後はどう呼んだらいい…ですか?」
「………し、シルちゃんがいい…です………敬語も…い、いらない、です」
「わ、わかった、シルちゃん。シルちゃんも敬語じゃなくていいよ?」
「い、いえ、わ、私はその…恥ずかしいので………だ、駄目です?」
「ううん。シルちゃんの好きにしていいよ。どんなシルちゃんも可愛いからね」
「か、可愛い!?えへへ、ふへへ、いひひ」
こんな感じだけど、シルちゃんは私よりもちょっとだけ背が高くて超絶美人なエルフなんだよ。ホントだよ?
「シルちゃんってこの森の中にずっと住んでるの?」
「う、うーん…ちょ、ちょっと前にエルフ界から脱走して…に、人間の国に行っても、な、なんか怖くて…さ、最近この森の中に逃げて来て…」
「そうなんだ。じゃあこの森には詳しくない?私、ちょっと行きたい所があってさ」
「わ、私は詳しくないけど…こ、コットンなら、し、知ってるかも」
「コットン?」
「は、はいぃ。こ、コットンと言うのは精霊で、エルフは『精霊使役』と言う、す、スキルがあって、そ、その、精霊を従えることができるんですぅ」
「ほえー」
精霊とな。つまり私はシルちゃんの体液を飲んだらその『精霊使役』を習得できて、精霊を従えられるようになるってことなのかな。
「そのスキルがあったら精霊をいっぱい従えられるってこと?」
「い、いえ、その、どれくらい従えられるかとか、どんな精霊を、とかは、そ、その人の生まれ持ったものが影響していて………わ、私は小さい頃からコットンしか仲良くしてくれる精霊がいないおちこぼれで……え、エルフは従えてる精霊の数が全てなので、わ、私はブスでゴミ以下の存在なんですぅ……」
「そこまで卑下しなくても、シルちゃんは私にとってはすっごく美人で可愛いからね」
「え、えへへ…」
なるほど。最初にシルちゃんが言ってた「綺麗って言われたことない」発言も、彼女が従えてる精霊の数が少ないことに由来してたのか。難儀だなエルフ界隈。
ってことは、私が『精霊使役』を覚えたとしても精霊をいっぱい従ることが出来るって訳じゃないのか。ちょっと残念。それはそれとしてシルちゃんのお汁は欲しいんだけど、今は一旦置いといて、
「じゃあコットン聞いてみて欲しいんだけど、この森のどこかにある大蛇の巣に行きたいんだよね。巣にいるイムナーっていう蛇の女の子と話したくってさ」
「だ、大蛇!?………う、うん、聞いてみます」
シルメリはびくびく震えながらもアカリから視線を外し、何もない空間に何やら話し掛け始めた。
やがて話し終えたのか再びアカリに向き直る。
「し、知ってるみたいです。あ、アカリさんだったら、じ、自分が案内するって言ってます……こ、コットンが私以外に懐くなんて、め、珍しい…」
「ホント!?あ、でも私、コットンの姿見えないけど大丈夫かな」
「あ。そ、そうですよね。ちょ、ちょっと聞いてみます」
再び話し始める。
何だか傍から見るとシルちゃんが独り言言ってるみたいでおもろい。
不意に、何もない空間に「ボボッ!」と火の球が浮き上がる。
「なっ、何!?」
「あ、ご、ごめんなさいぃ!こ、コラっ!コットン!魔法出す時は出すって言ってって前から言ってるのに!ご、ごめんなさいこの子、小さい頃からいたずらっ子なんです…」
「そうなんだ。びっくりしたけど、気にしてないよ」
「そ、それで、この火を目印に、あ、案内するそうです」
「なるほど。ありがとうね、コットン」
お礼を言うと、「どういたしまして!」とばかりに火の球がぐるりと空中で円を描いた。
その後、シルちゃんともうちょっとだけいちゃいちゃしてから宿を出た。
「ま、また何かあったら、是非来てください…ま、また、お、お話、したいです」
「うん!私もシルちゃんに会いたいからまた絶対に来るよ!!またね!!」
「や、やった!で、では、またね、ママ…」
シルちゃんは非常に恥ずかしそうに俯きながら手を振ってくれる。
胸の奥がまたキュンキュンして、最後に思い切り抱きしめるとシルちゃんも抱きしめ返してくれた。
コットンがからかうようにシルちゃんの周りを飛び回り、シルちゃんは「か、からかわないでよ!」とぶんぶん腕を振り回している。とても可愛い。
別れを惜しみながらもシルメリ邸を離れたアカリはコットンの火を便りに森の中を進んで行く。途中色々と話し掛けると言葉は通じているようで、ぴょんぴょん跳ねたりくるくる回ったりして反応してくれる。
言葉での返事がないのは少し寂しいけど、一人で森を彷徨うよりはずっと楽しい。いつかコットンとも話せるようになったらいいなと思いつつ歩を進めていくと、段々見たことのある風景に変わってきた。
「あ、このへん通ったことあるかも」
多分、イムナーの背中に乗せられて寝てしまう前に見た景色だ。と言うことはもうすぐのはずだ。
「着いたー!」
ようやく辿り着いたイムナーのお家。
しばしコットンと喜び合う。
コットンは来た道の方へ少しだけ飛んで、アカリの近くで停滞する。
「あ、そっか。シルちゃんの所に帰らないとだよね」
コットンはうんうんとばかりに跳ねる。
「シルちゃん一人じゃ私も不安だし、早く行ってあげて。私はここまでで大丈夫。コットン、ホントにここまで連れて来てくれてありがとうね!!またシルちゃんの所行くから、その時また会おうね!」
コットンはくるくると飛び回った末に、名残惜しそうに森の中へ飛んで行った。
理性が戻ったシルメリは顔を真っ赤に染め上げながらもアカリの肩に頬をスリスリと媚びるように擦りつけ、心底幸せそうに顔を綻ばせている。アカリは愛おしそうに頭を撫でながらも、内心少し戸惑っていた。
「えーと…今後はどう呼んだらいい…ですか?」
「………し、シルちゃんがいい…です………敬語も…い、いらない、です」
「わ、わかった、シルちゃん。シルちゃんも敬語じゃなくていいよ?」
「い、いえ、わ、私はその…恥ずかしいので………だ、駄目です?」
「ううん。シルちゃんの好きにしていいよ。どんなシルちゃんも可愛いからね」
「か、可愛い!?えへへ、ふへへ、いひひ」
こんな感じだけど、シルちゃんは私よりもちょっとだけ背が高くて超絶美人なエルフなんだよ。ホントだよ?
「シルちゃんってこの森の中にずっと住んでるの?」
「う、うーん…ちょ、ちょっと前にエルフ界から脱走して…に、人間の国に行っても、な、なんか怖くて…さ、最近この森の中に逃げて来て…」
「そうなんだ。じゃあこの森には詳しくない?私、ちょっと行きたい所があってさ」
「わ、私は詳しくないけど…こ、コットンなら、し、知ってるかも」
「コットン?」
「は、はいぃ。こ、コットンと言うのは精霊で、エルフは『精霊使役』と言う、す、スキルがあって、そ、その、精霊を従えることができるんですぅ」
「ほえー」
精霊とな。つまり私はシルちゃんの体液を飲んだらその『精霊使役』を習得できて、精霊を従えられるようになるってことなのかな。
「そのスキルがあったら精霊をいっぱい従えられるってこと?」
「い、いえ、その、どれくらい従えられるかとか、どんな精霊を、とかは、そ、その人の生まれ持ったものが影響していて………わ、私は小さい頃からコットンしか仲良くしてくれる精霊がいないおちこぼれで……え、エルフは従えてる精霊の数が全てなので、わ、私はブスでゴミ以下の存在なんですぅ……」
「そこまで卑下しなくても、シルちゃんは私にとってはすっごく美人で可愛いからね」
「え、えへへ…」
なるほど。最初にシルちゃんが言ってた「綺麗って言われたことない」発言も、彼女が従えてる精霊の数が少ないことに由来してたのか。難儀だなエルフ界隈。
ってことは、私が『精霊使役』を覚えたとしても精霊をいっぱい従ることが出来るって訳じゃないのか。ちょっと残念。それはそれとしてシルちゃんのお汁は欲しいんだけど、今は一旦置いといて、
「じゃあコットン聞いてみて欲しいんだけど、この森のどこかにある大蛇の巣に行きたいんだよね。巣にいるイムナーっていう蛇の女の子と話したくってさ」
「だ、大蛇!?………う、うん、聞いてみます」
シルメリはびくびく震えながらもアカリから視線を外し、何もない空間に何やら話し掛け始めた。
やがて話し終えたのか再びアカリに向き直る。
「し、知ってるみたいです。あ、アカリさんだったら、じ、自分が案内するって言ってます……こ、コットンが私以外に懐くなんて、め、珍しい…」
「ホント!?あ、でも私、コットンの姿見えないけど大丈夫かな」
「あ。そ、そうですよね。ちょ、ちょっと聞いてみます」
再び話し始める。
何だか傍から見るとシルちゃんが独り言言ってるみたいでおもろい。
不意に、何もない空間に「ボボッ!」と火の球が浮き上がる。
「なっ、何!?」
「あ、ご、ごめんなさいぃ!こ、コラっ!コットン!魔法出す時は出すって言ってって前から言ってるのに!ご、ごめんなさいこの子、小さい頃からいたずらっ子なんです…」
「そうなんだ。びっくりしたけど、気にしてないよ」
「そ、それで、この火を目印に、あ、案内するそうです」
「なるほど。ありがとうね、コットン」
お礼を言うと、「どういたしまして!」とばかりに火の球がぐるりと空中で円を描いた。
その後、シルちゃんともうちょっとだけいちゃいちゃしてから宿を出た。
「ま、また何かあったら、是非来てください…ま、また、お、お話、したいです」
「うん!私もシルちゃんに会いたいからまた絶対に来るよ!!またね!!」
「や、やった!で、では、またね、ママ…」
シルちゃんは非常に恥ずかしそうに俯きながら手を振ってくれる。
胸の奥がまたキュンキュンして、最後に思い切り抱きしめるとシルちゃんも抱きしめ返してくれた。
コットンがからかうようにシルちゃんの周りを飛び回り、シルちゃんは「か、からかわないでよ!」とぶんぶん腕を振り回している。とても可愛い。
別れを惜しみながらもシルメリ邸を離れたアカリはコットンの火を便りに森の中を進んで行く。途中色々と話し掛けると言葉は通じているようで、ぴょんぴょん跳ねたりくるくる回ったりして反応してくれる。
言葉での返事がないのは少し寂しいけど、一人で森を彷徨うよりはずっと楽しい。いつかコットンとも話せるようになったらいいなと思いつつ歩を進めていくと、段々見たことのある風景に変わってきた。
「あ、このへん通ったことあるかも」
多分、イムナーの背中に乗せられて寝てしまう前に見た景色だ。と言うことはもうすぐのはずだ。
「着いたー!」
ようやく辿り着いたイムナーのお家。
しばしコットンと喜び合う。
コットンは来た道の方へ少しだけ飛んで、アカリの近くで停滞する。
「あ、そっか。シルちゃんの所に帰らないとだよね」
コットンはうんうんとばかりに跳ねる。
「シルちゃん一人じゃ私も不安だし、早く行ってあげて。私はここまでで大丈夫。コットン、ホントにここまで連れて来てくれてありがとうね!!またシルちゃんの所行くから、その時また会おうね!」
コットンはくるくると飛び回った末に、名残惜しそうに森の中へ飛んで行った。
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