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第1部

第17話 がんばったシルちゃん、そして

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「そっか、あの後コットンとイムナーが来てくれたんだ。ありがとね、コットン」

 目の前で火の球がぐるりと喜ぶように跳ねる。

 ベアナルを倒して私も気絶してしまった後、恐らく心配で探しに来てくれたイムナーとコットンが見つけてくれて、コットンが私たちを乗せたイムナーをここ、シルちゃんの宿まで案内してくれたらしい。

 流石にイムナーは結界に弾かれてここまで入れず、しばらく心配気に辺りをうろうろしていたが、それをコットンに伝えられたシルちゃんが勇気を振り絞ってイムナーに私たちの無事を伝えて、イムナーは安堵して巣に帰っていったらしい。

 イムナーには何から何までお世話になってしまってホントに感謝してもし足りない。

 因みに、最初のシルちゃんとイルリたちの邂逅はそれはもう大惨事だったらしい。イルリとコンはわんわん泣くわ、シルちゃんは人見知り爆発して挙動不審になるわ、コットンはけらけら笑ってるわ、フィリアと私は気絶してるわで、結局唯一冷静だったルーミャが頑張って場を収めてくれたらしい。

「イルリ、ルーミャ、コン、最初は連れて行くの躊躇っちゃってごめんね。三人がいなかったら私、今頃フィリアを死なせてた。ホントにありがとう……あと、ルーミャは場を取り持ってくれてありがと。大変だったでしょ?」

 ルーミャは当時の状況を思い出したのか、「うぷっ」と吐きそうになっている。

「…もう、一生、やりたくない」

 どんだけカオスだったんだよ。

「シルちゃんもありがと。魔物怖いって言ってたのに、イムナーにちゃんと伝えてくれて」

「う、うん………が、頑張ったから、よ、よしよしして欲しいです………な、なんて……えへ、えへへへ」

「いいよ。してあげるからこっちおいで」

「………で、でも、ひ、人が見てる時にされるのは、は、恥ずかしいですぅ」

 …さいですか。

「でもとにかく、丸く収まって良かったー………ん?そういえば色々と収まってないものがあるような?」

 全部解決したようで、していないことを思い出す。

「『ベアナルスタル』って結局取れたの?」

 フィリアに話し掛けると、

「うん!イムナーさんがベアナルから取ってくれてたみたいで、さっきアカリが寝てた部屋にあるよ!」

「そっか、良かったー!元々それが目的だったからね」

 あとは、後はなんだっけ。

「そうだ。イルリたちが村に帰れなくなっちゃって…って話、聞いた?フィリア」

「うん、聞いたよ。私のせいで色々迷惑かけちゃったみたいで…でも、それに関してはシルメリさんが、しばらくイルリたちをうちに置いてもいいって言ってくれて」

「え、ホント?シルちゃん」

「う、うん…マ…アカリさんの、お、お友達なら、じ、事情が事情だから置いてもいいって思いまして……そ、それに、あ、アカリさんもいてくれるんですよね?」

「そう、なるね。私もあの村で結構やらかしちゃったから今更戻れないだろうし、シルちゃんが良ければしばらくお邪魔してもいい?」

「う、うん!よ、喜んで!!な、何なら、ず、ずっといてくれても…」

 最後の方は小さすぎて聞き取れなかったが、彼女のことだからどうせ可愛いセリフだろう。

 シルちゃんは満面な笑みを浮かべてくれる。ホントに可愛いよ、シルちゃん。

「後は、リアさんか」

「ママは…お母さんは、私がベアナルスタルを村まで持って帰ってお医者さんに治してもらってくる。話聞いた感じ、今村に戻れるの私だけっぽいから」

「そう、なるか。ごめん、お願いできる?シルちゃん、フィリアのお母さん…リアさんが今病気で、治ったらリアさんもここに連れて来てもいい?」

「う、うん。へ、部屋はいっぱいあるから、こ、怖い人じゃ無かったら、い、いいでしゅ!」

「ありがと、シルちゃん。シルちゃんはホントに優しくて良い子だね」

「え、えへへぇ」

 軽く頭を撫でると、だらしない笑顔を浮かべる愛すべきニートエルフ。

 他に問題はない…よね?
 あるとしたら私の魔力量とかかな。今回で思い知ったけど、私の人のスキルをコピーできるスキルはチート級だけど、なまじ複数使えちゃうからすぐ魔力が足りなくなってしまう。

 どんな大魔法を撃てても一発で倒れてたらとんだお笑いだ。
 とは言っても現状解決策はないし、この問題に関しては一旦保留かな。

 それから私たちは六人でしばし談笑をし、ご飯を食べたり水浴びをしたりしてから、

「じゃあ私、そろそろ行かなきゃ。早く行ってママの病気治さないと」

「うん、私も魔力戻ったみたいだから、村の中までは入れないけど途中まで付いていくね。イルリたちは?」

「私はいいや!アカリにだったらフィリ姉を任せられるし…あまり村に近付きたくないからね」

「お邪魔しちゃうから、ここに、いる」

「わ、私も…イーとルーが行かないなら、の、残ろうかな」

「分かった。それじゃフィリア、行こっか!『身体強化』!」

「うん!……ぬわっ!?ちょっ、ちょっと待って!?」

 私はフィリアの背中と膝窩に手を回して持ち上げ、つまりお姫様抱っこした。
 フィリアは顔を真っ赤に染めてイルリたちの方を見て慌てる。

「なっ、わっ、はっ、恥ずかしいから降ろしてぇ!!」

「えー?でもこうやって走った方が早く着くと思うけどな」

「おんぶでいいでしょ!!なんでわざわざこれなの!?」

「………私がしたいから」

 そう言って微笑むと、フィリアは「ぷしゅー」と煙が上がりそうな程赤面して、諦めたように私の首にしっかりと腕を巻き付ける。

「もう……勝手にすれば?」

「うん!勝手にする!んっ♡」

「んむっ♡………早く行くよ」

 そう言いつつも、表情はしっかりと蕩けていて非常に可愛い。
 私は満足して村に向かって走り出した。
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