栞の魚と人魚姫

月兎もえ

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婚約者

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銃弾は壁を撃ち抜いていて、銃は床に転がっていた。兵士の隣には、鮮やかな赤いドレスを着た、黒髪の女性が立っていた。
「あなた、何をしたか、わかっているの!あの子が命を落とすところだったのよ!!」女性は兵士に向かって言った。兵士は頭を下げ、震える声で言った。
「申し訳ありません!私はあの鳩を撃とうとしたのですが、彼女が前に出てきたのです!」
「まぁ!あの可愛らしい鳩を撃とうとしたですって!何て酷いことを!」
「恐れながら、この城では王子に危害を加える者は罰する決まりになっております。」兵士は声だけでなく、頭から足の指先まで震えていた。
「だからと言って、決まりを丁寧に守って鳩を殺すことないでしょう!鳩が王子を殺すわけでもないのに!」
「申し訳ありません!」兵士は涙を浮かべて必死で謝った。女性は兵士の肩に手を置いた。
「もし、あなたが鳩や、あの子を撃ち抜いていたら、あなたは規則を守った真面目な兵士です。でも、だからと言って誰が幸せになるというの?いい、どんな規則も、従うためにあるのではない。平和を守るためにあるものなの。」
兵隊は顔をあげ、驚きの目で、女性を見つめた。驚いていたのは兵士だけではなかった。その一部始終を見ていた城中の人たちも、女性を見つめた。王子は女性に駆け寄った。
「助けてくれて、ありがとう!君には何度も助けられてしまうね!」
「何度も助けますとも。それより、このお城の方々は皆さん、こう、なのですか?」
「こう?とは?」王子は首を傾げた。
「ずいぶんと、忠実だということです。」
皮肉にも気付かず、王子は嬉しそうに言った。
「そうなんだ!城の皆んなも、国民も父上にとても忠実なんだ!僕の誇りだよ!だから、彼も許してあげてくれないか?僕のためにしてくれたことなんだ。それに、だれも怪我はなかったわけだし!」
王子は兵士の肩を叩いた。女性は溜息をついた。
「許す、許さないの問題ではないかと・・」王子はキョトンとして、何のことかわかっていないようだった。王子だけでなく、兵士や城中の人たちも、同じ顔をしていた。その顔を見て、女性と人魚姫と私は呆気にとられていた。女性は咳払いをし、言った。
「まぁ、取り敢えず、この話は終わりにしましょう。時間をかけて、話し合っていきましょう。ところで、王子がお話されていた少女が彼女ですか?」女性の視線が人魚姫に向いた。王子は嬉しそうにして、人魚姫の手を引っ張って、女性の前に連れてきた。人魚姫は、一歩踏み出す度に痛そうにしていた。そんなに強く引っ張らないであげてよ!!
「彼女が僕の婚約者だよ!」
人魚姫と女性は目を合わせた。女性は優しい笑顔で人魚姫の手を取った。
「王子からお話を聞いてから、ずっとお会いしたかったの!何て可愛いらしいのかしら!」人魚姫は俯いた。
「まぁ、気分でも悪いの?無理もないわよね。さっきは怖かったでしょう?顔色も良くないわ。部屋で休んだ方がいいわね。」
「そうか。気付かなくてごめんね。大丈夫かい?部屋まで運ぼう。」王子は人魚姫を抱えた。
「お願いします。」女性は心配そうに人魚姫を見つめていた。
人魚姫と王子が部屋から出ていくと、女性は私を手に乗せ、窓から逃がしてくれた。
「あなたも怖かったでしょう?さぁ、もう大丈夫よ。」女性は優しい声をかけてくれた。
私は窓から飛び立った。
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