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第5話 依頼
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「ねぇ、聞いてる?いつから見てたの?」
ふわふわとした茶髪のセミロング、目が腫れていても尚美人だと思わせる彼女は、どうやら先程の事を『気付けばそこにいた』という具合に自己解釈した様である。割とがっつり目が合った気もするけど...よくよく考えれば魔法なんて発想にはならないか。
「いや、さっき来たんだけど泣いてるしどうしたのかなって思って、声掛けるか迷ってた。それで?何で泣いてたんだ?」
我ながらスラスラとそれっぽい言葉が出てくる。興味は無くとも居合わせた以上聞いておくのが礼儀だろう。
「私一応彼氏いるからナンパはお断りしてるけど...」
「別にそんなつもりじゃねえよ...、まあそういう事なら何があったか知らないけど頑張って」
警戒されているみたいなのでこれ幸いと話を切り上げる。彼氏が居るというのならそちらに頼るのが一番だろう。
しかしその場を去ろうとしたところで腕を掴まれた。
「ちょ、ちょっと待って...!私が悪かったから少しだけ話を聞いて......!彼氏にも相談できないし、困ってて...」
「友達は?居ないのか?」
「居るわよ!でも友達にもちょっと相談し辛いっていうか...むしろ何も知らない人に聞いて欲しくて」
正直聞いてやる義理は無いが随分と切羽詰まった様子だ。このまま放置するのも不憫だと思い、とりあえず仕切りなおす事を提案する。
「別に話を聞くのは良いけど今じゃないとダメか?」
「え?あ、確かに。じゃあ...お昼は?どこで食べてるの?」
「いつもは外で適当に食べてるけど、別にどこでもいいぞ」
「分かった、じゃあ連絡先だけ教えて。後でお店の場所送るから」
スマホを取り出しBOIN交換。彼女のアカウント名欄には『片澤詩織』の文字。アイコンには彼氏らしき男とのツーショットが設定されていた。因みに俺のアイコンは妹の後ろ姿である。妹曰く、こういう所で匂わせるのが重要だとか何とか言っていたけどよくわからない。
「山田大地っていうのね。それじゃ、後で連絡するから返事してよね」
要件を済ませた俺達は一度解散し、その後片澤から送られてきたメッセージには良く知るファミリーレストランの名前があった。
午前の講義が終わってお店を訪ねてみると店内の奥、外からは見えないテーブル席に片澤は座っていた。手を振り出迎えられる。
「時間もらっちゃってごめんね?勿論私が奢るから適当に頼んで」
「まだ何もしてないだろ。そもそも俺が聞いて解決するかも分からないし」
「こーゆうのは聞いてくれるだけで嬉しいものなの。気にしなくていいから!」
そう言われては断るのも野暮かと思い、言われた通りにランチセットとドリンクバーを頼ませてもらう。片澤もドリンクバーを注文していた為二人分の飲み物を手に席へ戻ると片澤は本題には入らず雑談を始めた。
「そういえば大地のアイコンに載ってた子って彼女さん?後ろ姿しか見えないけどスタイルいいねー」
「それは妹だぞ。デフォルトに戻してもいつの間にか変えられるんで放置してるだけ」
「妹!?ナニソレめちゃくちゃ可愛いじゃん。私一人っ子だからそういう話聞かせて欲しい」
隣の芝は青く見える、というやつだろうか。特段良いものとも思えないが煩わしい反面居てくれて良かったと思う事も確かにある。
高校時代に不登校寸前までメンタルが参っていた俺は、献身的に励ましてくれた妹に少なからず救われた。アイツが居なかったらとっくにポッキリと折れていたと思うし、そういう側面を見れば確かに兄妹が居るか居ないかというのは大きい事なのかもしれない。
余談だが妹は俺が自宅に居ない日は掃除と称して部屋をひっくり返す生き物なので、成年誌等の異物があれば即座に問い詰めてくる。懐いてくれてるうちが花なんだろうけどあれ地味にストレスだからやめて欲しい。
等と何故か妹の話で盛り上がっている間に料理が運ばれてきた。俺と片澤は雑談を続けつつ先に食事を済ませる事にした。
時を同じくして大学構内にある喫煙所の一つ、高価なブランド物に身を包んだ男とその友人らしき男が煙草に火をつける。
「権藤先輩、次の土日にプチ旅行行くんでしたっけ、どこ行くんすか?」
「ん?おう、静岡の温泉に行ってくる予定」
「羨ましいなー、俺らは年末までお預けだし。あの新しい彼女と?」
「あー、詩織とは行かねえよ。アイツあの見た目でガード硬いからな、とりあえず藤堂を誘ってる」
権藤仁人…資産家の息子にして大地が通う大学でもとりわけ規模の大きいサークルの部長を務めている男。サークルの実態は権藤の単なる遊び場であり、お気に入りを囲っておく為の場所でもある。
「後は...伊藤でいいか」
「マジすか?あの二人と温泉で3Pとか最高じゃないすか」
「おう、何だったらお前も付いてきていいぞ。あの二人はあんまり酒飲まねえしな」
「マジすか!?俺は荷物持ちでいいんで!」
「じゃあ細々した準備は任せるわ。後あんま言いふらすなよ」
ファミレスで食事を終え、雑談もそこそこに片澤からの相談を受けていた俺は彼女の提案に頭を悩ませていた。
「でさー、仁人が次の土日丸々予定あるって言ってきたんだけど、私と一緒に尾行してくれない?浮気調査って事で!」
ふわふわとした茶髪のセミロング、目が腫れていても尚美人だと思わせる彼女は、どうやら先程の事を『気付けばそこにいた』という具合に自己解釈した様である。割とがっつり目が合った気もするけど...よくよく考えれば魔法なんて発想にはならないか。
「いや、さっき来たんだけど泣いてるしどうしたのかなって思って、声掛けるか迷ってた。それで?何で泣いてたんだ?」
我ながらスラスラとそれっぽい言葉が出てくる。興味は無くとも居合わせた以上聞いておくのが礼儀だろう。
「私一応彼氏いるからナンパはお断りしてるけど...」
「別にそんなつもりじゃねえよ...、まあそういう事なら何があったか知らないけど頑張って」
警戒されているみたいなのでこれ幸いと話を切り上げる。彼氏が居るというのならそちらに頼るのが一番だろう。
しかしその場を去ろうとしたところで腕を掴まれた。
「ちょ、ちょっと待って...!私が悪かったから少しだけ話を聞いて......!彼氏にも相談できないし、困ってて...」
「友達は?居ないのか?」
「居るわよ!でも友達にもちょっと相談し辛いっていうか...むしろ何も知らない人に聞いて欲しくて」
正直聞いてやる義理は無いが随分と切羽詰まった様子だ。このまま放置するのも不憫だと思い、とりあえず仕切りなおす事を提案する。
「別に話を聞くのは良いけど今じゃないとダメか?」
「え?あ、確かに。じゃあ...お昼は?どこで食べてるの?」
「いつもは外で適当に食べてるけど、別にどこでもいいぞ」
「分かった、じゃあ連絡先だけ教えて。後でお店の場所送るから」
スマホを取り出しBOIN交換。彼女のアカウント名欄には『片澤詩織』の文字。アイコンには彼氏らしき男とのツーショットが設定されていた。因みに俺のアイコンは妹の後ろ姿である。妹曰く、こういう所で匂わせるのが重要だとか何とか言っていたけどよくわからない。
「山田大地っていうのね。それじゃ、後で連絡するから返事してよね」
要件を済ませた俺達は一度解散し、その後片澤から送られてきたメッセージには良く知るファミリーレストランの名前があった。
午前の講義が終わってお店を訪ねてみると店内の奥、外からは見えないテーブル席に片澤は座っていた。手を振り出迎えられる。
「時間もらっちゃってごめんね?勿論私が奢るから適当に頼んで」
「まだ何もしてないだろ。そもそも俺が聞いて解決するかも分からないし」
「こーゆうのは聞いてくれるだけで嬉しいものなの。気にしなくていいから!」
そう言われては断るのも野暮かと思い、言われた通りにランチセットとドリンクバーを頼ませてもらう。片澤もドリンクバーを注文していた為二人分の飲み物を手に席へ戻ると片澤は本題には入らず雑談を始めた。
「そういえば大地のアイコンに載ってた子って彼女さん?後ろ姿しか見えないけどスタイルいいねー」
「それは妹だぞ。デフォルトに戻してもいつの間にか変えられるんで放置してるだけ」
「妹!?ナニソレめちゃくちゃ可愛いじゃん。私一人っ子だからそういう話聞かせて欲しい」
隣の芝は青く見える、というやつだろうか。特段良いものとも思えないが煩わしい反面居てくれて良かったと思う事も確かにある。
高校時代に不登校寸前までメンタルが参っていた俺は、献身的に励ましてくれた妹に少なからず救われた。アイツが居なかったらとっくにポッキリと折れていたと思うし、そういう側面を見れば確かに兄妹が居るか居ないかというのは大きい事なのかもしれない。
余談だが妹は俺が自宅に居ない日は掃除と称して部屋をひっくり返す生き物なので、成年誌等の異物があれば即座に問い詰めてくる。懐いてくれてるうちが花なんだろうけどあれ地味にストレスだからやめて欲しい。
等と何故か妹の話で盛り上がっている間に料理が運ばれてきた。俺と片澤は雑談を続けつつ先に食事を済ませる事にした。
時を同じくして大学構内にある喫煙所の一つ、高価なブランド物に身を包んだ男とその友人らしき男が煙草に火をつける。
「権藤先輩、次の土日にプチ旅行行くんでしたっけ、どこ行くんすか?」
「ん?おう、静岡の温泉に行ってくる予定」
「羨ましいなー、俺らは年末までお預けだし。あの新しい彼女と?」
「あー、詩織とは行かねえよ。アイツあの見た目でガード硬いからな、とりあえず藤堂を誘ってる」
権藤仁人…資産家の息子にして大地が通う大学でもとりわけ規模の大きいサークルの部長を務めている男。サークルの実態は権藤の単なる遊び場であり、お気に入りを囲っておく為の場所でもある。
「後は...伊藤でいいか」
「マジすか?あの二人と温泉で3Pとか最高じゃないすか」
「おう、何だったらお前も付いてきていいぞ。あの二人はあんまり酒飲まねえしな」
「マジすか!?俺は荷物持ちでいいんで!」
「じゃあ細々した準備は任せるわ。後あんま言いふらすなよ」
ファミレスで食事を終え、雑談もそこそこに片澤からの相談を受けていた俺は彼女の提案に頭を悩ませていた。
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