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2話
治療
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ネオンの光る街の中、手元の時計を見ると時刻は午前3時を回っていた。車の数が増え人の数がだんだんと減るこの頃。夜道に迷えるサラリーマンは目覚め出し帰路につく。怪しい者達はビルに消えてゆく、、、
街はまだ明るいが人の騒がしさは前ほどうるさくはない。ただ、朝にはまだ程遠かった。
あの交差点だってまばらな人々で半端な人数が闊歩している、尚、一台の白タクを除いては…
「はぁ…」
(いつになったら着くんだろう)
あの男に出会ってからとりあえず出せと言われてから指示が一向に来ない。振り返れば殺されそうな雰囲気を出していたものだから話しかけるのも後ろを見ることもままならなかったが流石に何も指示がないのはおかしい、(なんでなんも話さないんだろう…)
今までとは様子が違う。さっきまではものすごい殺気を感じていたものの今となっては後ろにいると言う気配すら皆無だった。
「あ…あの…」
スピードを緩めながら恐る恐るバックミラーの中を覗くと男は後部座席いっぱいに広がり倒れていた。
腹部から出血していた。そして黒いコートを赤い血が流れている。その白い肌がよく映えていた。
「あの…大丈夫ですか?」
返事はない。死んではいないようで所々息はしているもののその息は声になっていない。
「あ…あの…?」
声をかけてみるが聞こえてはいない、出血部分を抑えてはいるが止まる気配はない。
(こ、これって相当まずいんじゃ…)
このまま放っておけば死んでしまうだろう。
(クソ…なんで私がこんなことに巻き込まれなきゃならないんだよ…)
前を向きアクセルを踏み込む…
このまま死なしてしまおう。どうせ自分には関係がない、死なしてどこかに捨てておこう。
どちらにせよ私は夜の人間だ。あの頃の私はもういない。幸いこの道を通れば滅多に人の通らない路地に着く。抵抗できる体では無さそうだし自然に死んでいくだろう。
「あ…」
やっぱ浅いな私、
薬と書かれた大きな看板のある店の方にウィンカーを向けていた。
買ってしまった。
やっぱあまり本格的な医療器具はないなぁ。時間もないし取り敢えず消毒液と包帯とガーゼ、その他使えそうなものを色々買った。
逃げてたらどうしよう。バレて殺されたりしたら…
私の心はいつまで経っても晴れないなぁ。
早足で車に向かう。
(よかった、起きてない)
男は先ほどと変わらず横たわったままだ。
(これより素人のオペが始める)
触ると目が覚めそうなので遠目で状況を見る。どうやら腹部から出血していて何かを刺された後のようだ。
(まずは血を止めなきゃ…)
人のケガ見るなんていつぶりかな…
服を脱がして傷口を見る。深く刺さってはいなかったが傷口が広く、血がいまだに流れている。体は冷たく、人の体温とは思えず無機物を触っている感覚だ。
(これが…ホントに人の体…)
間髪入れずにその透き通るような白い肌に消毒液を流し入れる。が、緊張で手が滑り致死量レベルが流れてしまった。
「やべっ」
思わず声が漏れてしまった。
電流が走る。
「…痛っつえ!!!」
あまりの痛さに反射的に飛び上がる。血が跳ね血管が張り裂けそうになる。
「あぁ!!すみませんすみませんすみません!!!!」
ハッキリした意識の中で緑髪の少女を捉える。
「て、テメェ!!!!何して…っつぇ…!!」
少女は俺の腹部を強く押さえていた。さっきの電流も彼女のせいだろう。
あまりの痛さに次の言葉をなくす。何をしてるんだ、こっちは今死にかけなんだぞ。
覚醒した目で彼女を見ると手には消毒液を持っている。
「お前、まさか…」
「ちょ、ちょっと待ってください…」
そう言って手にしたガーゼと包帯を俺の体に巻き付けていく。
「…つぅ…お前何し…」
片手に握っておいたナイフを取り出して脅そうとする。
「っつあ…」
消毒液が身に染みる。意識が戻ったせいか痛覚も敏感になったようで血の匂いと消毒液の匂いに嗅覚を刺激され気を失った。
午前4時過ぎ、いまだ彼が起きる様子はない。車を走らせてはいるが特に目的地もなく、ただあちこち彷徨っているだけの状態になった。
「まだ…起きない…のか…」
後ろを振り返るが男はまだ気絶中だ。起きる気配はない。
ケガは抑えられたがいまだに血は流れている。定期的に交換をしなくてはならない、
(…にしても…何でケガを…)
脅迫をしてナイフまで突き立てたんだ。それなりの覚悟があったのか。それともただこんなことを繰り返して逆恨みにあったのか。真意は不明だが私を脅し今この場にいることは紛れもない事実だ。
その時、今まで何の反応も示さなかったスマホの黒い画面が、白く光る。
その中には「緊急速報」と書かれた文面が見える。
「鳴家で殺人事件発生。犯人はなおも逃走中、凶器としてナイフを持っている模様。」
不穏な空気が車内に張り詰めた。
「…まさか…」
バックミラーで見つめる。死んでいるかのように微動だにしない彼を。
「嘘…でしょ…」
(い、いや、まだ決まったわけじゃないし、きっと何かの間違いのは…)
スッ
冷たい何かが首筋に触れる。
「お前、俺に何をした…」
「あっ…」
午前6時。彼は、夜明けとともに目を覚ました。
街はまだ明るいが人の騒がしさは前ほどうるさくはない。ただ、朝にはまだ程遠かった。
あの交差点だってまばらな人々で半端な人数が闊歩している、尚、一台の白タクを除いては…
「はぁ…」
(いつになったら着くんだろう)
あの男に出会ってからとりあえず出せと言われてから指示が一向に来ない。振り返れば殺されそうな雰囲気を出していたものだから話しかけるのも後ろを見ることもままならなかったが流石に何も指示がないのはおかしい、(なんでなんも話さないんだろう…)
今までとは様子が違う。さっきまではものすごい殺気を感じていたものの今となっては後ろにいると言う気配すら皆無だった。
「あ…あの…」
スピードを緩めながら恐る恐るバックミラーの中を覗くと男は後部座席いっぱいに広がり倒れていた。
腹部から出血していた。そして黒いコートを赤い血が流れている。その白い肌がよく映えていた。
「あの…大丈夫ですか?」
返事はない。死んではいないようで所々息はしているもののその息は声になっていない。
「あ…あの…?」
声をかけてみるが聞こえてはいない、出血部分を抑えてはいるが止まる気配はない。
(こ、これって相当まずいんじゃ…)
このまま放っておけば死んでしまうだろう。
(クソ…なんで私がこんなことに巻き込まれなきゃならないんだよ…)
前を向きアクセルを踏み込む…
このまま死なしてしまおう。どうせ自分には関係がない、死なしてどこかに捨てておこう。
どちらにせよ私は夜の人間だ。あの頃の私はもういない。幸いこの道を通れば滅多に人の通らない路地に着く。抵抗できる体では無さそうだし自然に死んでいくだろう。
「あ…」
やっぱ浅いな私、
薬と書かれた大きな看板のある店の方にウィンカーを向けていた。
買ってしまった。
やっぱあまり本格的な医療器具はないなぁ。時間もないし取り敢えず消毒液と包帯とガーゼ、その他使えそうなものを色々買った。
逃げてたらどうしよう。バレて殺されたりしたら…
私の心はいつまで経っても晴れないなぁ。
早足で車に向かう。
(よかった、起きてない)
男は先ほどと変わらず横たわったままだ。
(これより素人のオペが始める)
触ると目が覚めそうなので遠目で状況を見る。どうやら腹部から出血していて何かを刺された後のようだ。
(まずは血を止めなきゃ…)
人のケガ見るなんていつぶりかな…
服を脱がして傷口を見る。深く刺さってはいなかったが傷口が広く、血がいまだに流れている。体は冷たく、人の体温とは思えず無機物を触っている感覚だ。
(これが…ホントに人の体…)
間髪入れずにその透き通るような白い肌に消毒液を流し入れる。が、緊張で手が滑り致死量レベルが流れてしまった。
「やべっ」
思わず声が漏れてしまった。
電流が走る。
「…痛っつえ!!!」
あまりの痛さに反射的に飛び上がる。血が跳ね血管が張り裂けそうになる。
「あぁ!!すみませんすみませんすみません!!!!」
ハッキリした意識の中で緑髪の少女を捉える。
「て、テメェ!!!!何して…っつぇ…!!」
少女は俺の腹部を強く押さえていた。さっきの電流も彼女のせいだろう。
あまりの痛さに次の言葉をなくす。何をしてるんだ、こっちは今死にかけなんだぞ。
覚醒した目で彼女を見ると手には消毒液を持っている。
「お前、まさか…」
「ちょ、ちょっと待ってください…」
そう言って手にしたガーゼと包帯を俺の体に巻き付けていく。
「…つぅ…お前何し…」
片手に握っておいたナイフを取り出して脅そうとする。
「っつあ…」
消毒液が身に染みる。意識が戻ったせいか痛覚も敏感になったようで血の匂いと消毒液の匂いに嗅覚を刺激され気を失った。
午前4時過ぎ、いまだ彼が起きる様子はない。車を走らせてはいるが特に目的地もなく、ただあちこち彷徨っているだけの状態になった。
「まだ…起きない…のか…」
後ろを振り返るが男はまだ気絶中だ。起きる気配はない。
ケガは抑えられたがいまだに血は流れている。定期的に交換をしなくてはならない、
(…にしても…何でケガを…)
脅迫をしてナイフまで突き立てたんだ。それなりの覚悟があったのか。それともただこんなことを繰り返して逆恨みにあったのか。真意は不明だが私を脅し今この場にいることは紛れもない事実だ。
その時、今まで何の反応も示さなかったスマホの黒い画面が、白く光る。
その中には「緊急速報」と書かれた文面が見える。
「鳴家で殺人事件発生。犯人はなおも逃走中、凶器としてナイフを持っている模様。」
不穏な空気が車内に張り詰めた。
「…まさか…」
バックミラーで見つめる。死んでいるかのように微動だにしない彼を。
「嘘…でしょ…」
(い、いや、まだ決まったわけじゃないし、きっと何かの間違いのは…)
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冷たい何かが首筋に触れる。
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「あっ…」
午前6時。彼は、夜明けとともに目を覚ました。
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