二つの世界を彷徨う銀の姫

碧猫 

文字の大きさ
11 / 31

十一の世界 一の世界の学園

しおりを挟む
 午前中のテストはまずまずといったところか。

 今は昼休み。いつものようにジシェンと一緒に過ごしている。

「シェフィルから何か聞いたのか?」
「はい。殿下とシェフィの事を少々」
「そうか。で、今日はシェフィルに弁当を作って貰ったと」

 やはり見れば分かるか。私が作ればもっとぐちゃぐちゃになっているからな。

「はい」
「シェフィルから連絡が来た。「プシェと同棲する事になった。二人っきりで毎日同じ屋根の下過ごすなんて緊張し過ぎて耐えられないよ。ジシェン、どうにかして」と」

 ……そんなに緊張していたのか。まさか、あの豪華な食事は

「何か変な事しなかったか?」
「えっと、昨日の夕食が豪華すぎた事でしょうか」
「緊張だろうな。済まない、俺の幼馴染が」
「いえ、夕食はいつも以上に美味しかったので得しかありませんでした」

 そう。私にとっては得以外はないんだ。だが、シェフィが無理してやっていないのか心配になるだけで。

「そうか……オプシェ、お前にはにはいっておかなければならない事がある」
「なんでしょうか?」
「俺は今日で学園を辞める。もう転校届も出しておいた」
「理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ああ。シェフィルと相談して向こうで暮らすように誘われたんだ」

 ジシェンは王族なのだが離れて大丈夫なのだろうか。こっちの世界の事は気になるが決めた事ならやめる気は無いだろう。

「こっちの事は心配しなくて良い。俺は王位継承権を持っていないからな」
「良いのですか?王族という身分を捨てても」
「その方が気楽だからな」
「そうですか」
「オプシェはどうするんだ?」

 こっちの世界へ行き来するにしても学園を続ける必要はそこまで感じていない。
 学園を辞めて片方だけ学園生活をしながら、時間がある時にこっちの世界へくるくらいがちょうど良いのかもしれない。

「学園は辞めます。その方が時間が取れるので」
「今まで朝から夜までずっと学園で授業受ける生活だからな」
「はい。なので片方だけ学園に通う事にします」
「俺も向こうに編入しようかな。シェフィルと一緒に騎士科で学ぶのも楽しそうだ」

 少し羨ましいな。私も騎士科に行ければ良いのだが、そんな剣の腕なんてない。護身術すらできないからな。

「オプシェ、退学届一人で出し行けるか?」
「えっと、分かりません」
「なら一緒に出しに行くか」
「急なのに大丈夫でしょうか」
「大丈夫だろ。俺も昨日出してきたし」

 それなら良いんだが。だが、用意するものすら何もできていないのに今日中に間に合うだろうか。

「じゃあ、これ」
「えっ」
「シェフィルがオプシェも辞めるかもしれないからって用意していた」

 これは準備が良すぎるだろう。そのおかげで準備に時間が取られずに済むんだが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...