二つの世界を彷徨う銀の姫

碧猫 

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十六の世界 クレープ

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 何年振りの再会か分からない。そもそも会った記憶すらない。

 ただただ懐かしさと切なさだけが残った。

「プシェ、もう少しここにいる?」
「……ああ」

 早く帰った方が良いのは分かっている。だが、もう少しだけここにいたい。

「……なぁ、シェフィとジシェンは会った事があるのか?」
「何度か」
「僕は今日が初めて」
「そうか。そうだったんだな」

 会った事を今まで黙っていた事についてはなんとも思わないわけではないが、そこまで気にしてはいない。ただ、会えないとずっと思っていた相手と会う事ができるという事がなんというか、複雑な気分になる。

 なんで今まで会いに来なかったのかとか、会えるならずっと一緒に暮らしたかったとか、会いに来てくれて嬉しいとか。いろんな思いが駆け巡る。

「そろそろ帰ろう」
「うん。プシェ、今日の夜は頑張って豪華にするね」
「ほどほどにしてくれ」

 シェフィの豪華は豪華すぎる。ここで楽しみにしているとでも言おうものなら宮廷料理かと思われるようなものを作りかねない。

「ケーキとか買って帰る?デザートがあった方が良いんじゃない?」
「甘いものはあまり好まない」
「じゃあ、野菜クレープ作るよ。ジシェ、クレープの生地作り手伝って」
「ああ」

 クレープか。久々に食べるな。

 にしてもクレープって生地から作れるものなのだろうか。

 生地は買うんだとずっと思っていた。

「……私も作ってみたい」

 興味本位でだが、どうしても作っているところを見てみたい。

「うん。一緒に作ろ」
「ああ」

 こっちが頼んでいるというのにシェフィは嬉しそうだ。なんだかこっちまで嬉しくなるような笑顔だな。

      ******

 家に帰ってシェフィとジシェンと一緒にクレープの生地を作る。

「こ、焦げないのか?」
「大丈夫だよ。焦げないからやってみて」
「あ、ああ」

 生地を作って焼く段階でシェフィが「やってみる?」と言って私がやる事になった。
 クレープの生地って薄いから焦げそうなんだが。

 だが、やらなければ夕食にありつけない。そう思えば、やれる気がする。

 それに、何かあってもシェフィがいれば作れるだろう。

「こ、こんな感じか?」
「うん。上手上手」

 なんとか一枚焼けた。これは神経をすり減らすな。

 正直もうやりたくない。

「上手にできたな」
「うん。本当にすごい上手だったよ。お疲れ様。疲れてるでしょ。あとは休んでて」
「ああ」

 休みながらシェフィがやっている様子を見ておこう。そうすれば少しは料理スキルが上がるはずだ。

 見て覚えられれば苦労しない気もしなくはないがな。
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