16 / 31
十六の世界 クレープ
しおりを挟む
何年振りの再会か分からない。そもそも会った記憶すらない。
ただただ懐かしさと切なさだけが残った。
「プシェ、もう少しここにいる?」
「……ああ」
早く帰った方が良いのは分かっている。だが、もう少しだけここにいたい。
「……なぁ、シェフィとジシェンは会った事があるのか?」
「何度か」
「僕は今日が初めて」
「そうか。そうだったんだな」
会った事を今まで黙っていた事についてはなんとも思わないわけではないが、そこまで気にしてはいない。ただ、会えないとずっと思っていた相手と会う事ができるという事がなんというか、複雑な気分になる。
なんで今まで会いに来なかったのかとか、会えるならずっと一緒に暮らしたかったとか、会いに来てくれて嬉しいとか。いろんな思いが駆け巡る。
「そろそろ帰ろう」
「うん。プシェ、今日の夜は頑張って豪華にするね」
「ほどほどにしてくれ」
シェフィの豪華は豪華すぎる。ここで楽しみにしているとでも言おうものなら宮廷料理かと思われるようなものを作りかねない。
「ケーキとか買って帰る?デザートがあった方が良いんじゃない?」
「甘いものはあまり好まない」
「じゃあ、野菜クレープ作るよ。ジシェ、クレープの生地作り手伝って」
「ああ」
クレープか。久々に食べるな。
にしてもクレープって生地から作れるものなのだろうか。
生地は買うんだとずっと思っていた。
「……私も作ってみたい」
興味本位でだが、どうしても作っているところを見てみたい。
「うん。一緒に作ろ」
「ああ」
こっちが頼んでいるというのにシェフィは嬉しそうだ。なんだかこっちまで嬉しくなるような笑顔だな。
******
家に帰ってシェフィとジシェンと一緒にクレープの生地を作る。
「こ、焦げないのか?」
「大丈夫だよ。焦げないからやってみて」
「あ、ああ」
生地を作って焼く段階でシェフィが「やってみる?」と言って私がやる事になった。
クレープの生地って薄いから焦げそうなんだが。
だが、やらなければ夕食にありつけない。そう思えば、やれる気がする。
それに、何かあってもシェフィがいれば作れるだろう。
「こ、こんな感じか?」
「うん。上手上手」
なんとか一枚焼けた。これは神経をすり減らすな。
正直もうやりたくない。
「上手にできたな」
「うん。本当にすごい上手だったよ。お疲れ様。疲れてるでしょ。あとは休んでて」
「ああ」
休みながらシェフィがやっている様子を見ておこう。そうすれば少しは料理スキルが上がるはずだ。
見て覚えられれば苦労しない気もしなくはないがな。
ただただ懐かしさと切なさだけが残った。
「プシェ、もう少しここにいる?」
「……ああ」
早く帰った方が良いのは分かっている。だが、もう少しだけここにいたい。
「……なぁ、シェフィとジシェンは会った事があるのか?」
「何度か」
「僕は今日が初めて」
「そうか。そうだったんだな」
会った事を今まで黙っていた事についてはなんとも思わないわけではないが、そこまで気にしてはいない。ただ、会えないとずっと思っていた相手と会う事ができるという事がなんというか、複雑な気分になる。
なんで今まで会いに来なかったのかとか、会えるならずっと一緒に暮らしたかったとか、会いに来てくれて嬉しいとか。いろんな思いが駆け巡る。
「そろそろ帰ろう」
「うん。プシェ、今日の夜は頑張って豪華にするね」
「ほどほどにしてくれ」
シェフィの豪華は豪華すぎる。ここで楽しみにしているとでも言おうものなら宮廷料理かと思われるようなものを作りかねない。
「ケーキとか買って帰る?デザートがあった方が良いんじゃない?」
「甘いものはあまり好まない」
「じゃあ、野菜クレープ作るよ。ジシェ、クレープの生地作り手伝って」
「ああ」
クレープか。久々に食べるな。
にしてもクレープって生地から作れるものなのだろうか。
生地は買うんだとずっと思っていた。
「……私も作ってみたい」
興味本位でだが、どうしても作っているところを見てみたい。
「うん。一緒に作ろ」
「ああ」
こっちが頼んでいるというのにシェフィは嬉しそうだ。なんだかこっちまで嬉しくなるような笑顔だな。
******
家に帰ってシェフィとジシェンと一緒にクレープの生地を作る。
「こ、焦げないのか?」
「大丈夫だよ。焦げないからやってみて」
「あ、ああ」
生地を作って焼く段階でシェフィが「やってみる?」と言って私がやる事になった。
クレープの生地って薄いから焦げそうなんだが。
だが、やらなければ夕食にありつけない。そう思えば、やれる気がする。
それに、何かあってもシェフィがいれば作れるだろう。
「こ、こんな感じか?」
「うん。上手上手」
なんとか一枚焼けた。これは神経をすり減らすな。
正直もうやりたくない。
「上手にできたな」
「うん。本当にすごい上手だったよ。お疲れ様。疲れてるでしょ。あとは休んでて」
「ああ」
休みながらシェフィがやっている様子を見ておこう。そうすれば少しは料理スキルが上がるはずだ。
見て覚えられれば苦労しない気もしなくはないがな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる