星月の蝶

兎猫

文字の大きさ
上 下
28 / 45
1章 奇跡の魔法

11話 聞き込み

しおりを挟む
「迷子にならなかったんだな」
「なりかけたよ」
「お前フォルと一緒に」
「大丈夫だよ。本物さんには聞かれてないから」

 ミディリシェルはフォルと共にバーの中へ入った。

 ここにはさまざまな施設がある。バーはそのうちの一つだ。

 他にも水族館や動物園遊園地などがある。

 外へ出なくともここだけで楽しく過ごせそうな場所。

 ミディリシェルはそれらの施設に一度も入った事がない。バーへ入るときょろきょろと辺りを見回していた。

「本物さんってどういう事なんだ?」
「フォルはミディ達に会う気がないんじゃないの?エルグにぃは事情知っていそうだけど、話せない内容だよね」
「……」
「迷っているんだよ。ほんとにこれで良いのか。僕らは命じられた事をやるだけ。でも、今回命じられた事だけはなにも感じないなんてなかった」

 ルーツエングの代わりにフォルが答えた。

 本物ではないとしても、自分が作られたきっかけに当たる事は把握しているようだ。

「僕は本物の記憶とミディの記憶の一部から作られた紛い物。だから、奇跡の魔法についても多少は把握している」
「本物の居場所は?ずっと探しても見つからないんだ」
「主様には見つけられないよ。見つけられるのはミディとゼノンだけ」
「……ミディ達の記憶にある?」
「そういう事。みんないるし奇跡の魔法がもたらした影響の事も話しておいた方が良いかな」

 奇跡の魔法。それは禁呪の分類。成功者の報告は無い。

 存在はするが使える術者のいない幻の魔法とも呼ばれている。

 大量の魔力と想い。その魔法に必要なのは二つだけだ。

 想いが見せる奇跡。

 ミディリシェルが読んだ書物に載っていた内容だ。

「奇跡の魔法は夢を見せる。二人の想いがあまりに強かったから、魔法は完璧なものとなった。不完全ならなし得ない未来の干渉する事さえ可能にする程の想い。それが何か覚えてる?」

 ミディリシェルとゼノンは顔を見合わせた。

 互いに持っている記憶は同じだろう。その理由など記憶にない。

 だが、その想いだけは消えていなかった。

「フォルと一緒にいたい」
「その想いが強すぎたんだ。それが夢の中から現実への干渉まで可能にした。こっちは本来あり得ない事だよ」
「私達が会えたのもそれのおかげ?なんだかここに行かないとって思った場所でみんなに会えたから」
「うん。そうだよ」

 ミディリシェルが夢でリーミュナ達に協力をしていた。それが現実にまで影響を及ぼしていたようだ。

「ミディの願いを叶えるため?」
「叶わないよ。御子がいたとしても。他の御子に会いたいとでも思ってたんじゃない?その人の事を全く知らなくて他の御子がリーミュナ達になったって可能性が一番高い」

 ミディリシェルが会いたいと思う相手。それには心当たりがあった。

 どれだけ隠そうと魔法相手には隠す事などできなかったのだろう。ミディリシェルが本当に会いたかった御子の事を。

「そっちに関してはリーミュナ達の協力は必須だろうね。主様でさえ居場所を突き止める事ができてないから時間はかかるだろうけど」
「うん。それでも見つけたいの。どうしていなくなったのかも知りたい」
「先にやる事があるからそっちが済めばになるけど、俺らにとってそっちも大事な事なんだ」
「知ってるよ。そっちの事については直接聞いた方が分かると思う。僕が教えられるのはこれくらいかな」

 他にも知っている事があったとしても、本物の秘密に繋がる事では話す事ができないのだろう。

「ありがと。いっぱい教えてくれて」
「エルグにぃが話せる事もこのくらいか?」
「そうだな。俺もこれ以上は話す事が出来ない」
「あとはミディ達でって事だね」
「けど、過去を見せるくらいならできる。直接は言えなくても、そのくらいはさせて欲しい」
「良いの?主様って立場の事よりもフォルとの関係の方が」
「それなら心配いらない」
「それならお願いして良い?」

 ミディリシェルとゼノンはルーツエングの魔法で過去に起きた事を視る事となった。
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

天使の姫と人間の王女

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:235pt お気に入り:0

夜風の中を共に

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:228pt お気に入り:1

ぜんぶこの男のせい

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

処理中です...