古屋さんバイト辞めるって

四宮 あか

文字の大きさ
40 / 41
私と事件

第13話 表ざた

しおりを挟む
「わかっていると思うけど。例のエステのことでちょっと話したくてさ……、最近ようやくおかしいんじゃない? とか。解約するとき解約金がとられるとかトラブルの話がでるようになったの知ってる?」
「私のバイト先でもお盆くらいにエステ500円でいかない? ってやる子がでて。それで実際に契約した子が何人かいたんだけど。ちょっと前から、価格に見合ってないんじゃないか? ってちょっとトラブルが起こっている」
 予想した通り、やはりこのエステは価格に見合ってないってことはとうとう表ざたになったのだ。
 そうなったことで紹介してくれた子と紹介された子でいざこざが起こり始めていた。

 恐ろしいことに、最低でも12万という大きな金額のコースの契約をしている。
 化粧水なんかの話もしていたし、そういったセットまで買った子のことは考えたくもない。
 エステの質がわるいなら、当然売られている化粧水も価格に見合ってないのでは? と当然考え出すからだ。

 しかも自分を誘ってきたのは、それなりに今も交流があるような仲のいい子。
 さらに自分も今も交流している仲いい子を紹介したと考えるとゾッとするほど、とんでもないドロドロで取り返しのつかない大きな自体へと変貌を遂げているのは明らかだった。




「少し前から大学の教室にいても、どこかしらかからそういうトラブルの話を耳にするし。サークルや私のバイト先はもう少し前からごたついてる。私、地元がここだから、大学生になってから知り合った子だけじゃなく小、中、高の繋がりでも大変なことになってる……」

 私は地方からこっちにきて、一人暮らしをしているから。
 麗奈とは違い、こちらにきてから大学やバイト先で知り合った子しか付き合いがないからいいけど。
 麗奈は本当に参っているようだった。

「それは……なんていうか……」
 もう、なんて言えばいいのかわからなかった。
 大学のいつメンのように、まだ皆が被害にあっていなければ、そのエステおかしいよって言えただろうけど。
 すでに契約していて解約できない子がいるような場では、あえていって自分が恨まれ役などなりたくないから言えないし。
 麗奈はおそらく、被害者がどんどん増えていくのを、こうなるとわかっていて知らんふりを続けていたのかもしれない。
 自分に害が及ばないために……



「実来に今更なんだけど――すごく感謝してる。クーリングオフの期間に間に合ったから。私が損したのは、せいぜいはがきと切手代くらいで500円にも満たない。何より、自分の友達を紹介しなかったから。今ごたごたの蚊帳の外にいれる。加害者にならなくてほんとにほんとにホッとしてる」
 麗奈は深く深く頭を下げてた。


「私もあのとき麗奈が希のように話を聞いてくれなかったらどうしようって思ってたし。とにかく私の話に耳を傾けて解約に動いてくれて本当によかったと思う」
 麗奈に電話を切られたときは、希にバイトをやめることを言った時のように、もうこのグループでいられなくなるかも。失言をしたと思っていたのだ。
 イラっとしても、私の話を麗奈がきいてくれたから。私たちのグループは、ごたつく周りの中。安全な位置から見ている第三者としてすんでいる。

「あの時は本当にごめんね。今ホント物騒な感じになってるんだ。詐欺なんじゃないか? って話もでてるし。返金を願いでも途中解約になると、まだ10回とか回数が残っていても、解約金がかかるらしくて2万ほどしか戻ってこないらしいんだよね……」
「10回のこっていて、たったの……2万!?」
「うん、解約金とか話されなかったと思うだけど。契約書みたら、しっかり小さい字で書かれてて。弁護士や親に相談した子もいたみたいだけど。契約書に不備もなく、強要してないって証拠もでてきたとかで泣き寝入りになっててさ」

「うわぁ」
 っと思わず麗奈の話しに声を出してしまった。


 今回の詐欺といっていいかわからない事件は。
 古屋さんと話していた通りのことになっていた。

 そもそも、施術自体は契約の前と後で変わっておらず。
 契約者は、お試しを受けてもらって納得したから契約をしているし。
 エステの人からの強い勧誘は一切なかったし、その様子の証拠があったようだ。

 施術自体は、他のエステと比べると時間も短く、設備などもしょぼいにも関わらず、お金を払ったのに受けられないというわけではないから詐欺として立件はできないそうだ。
 当然企業としてやっている契約書に不備があるはずもなく。


 おまけに、契約者たちは皆20歳を超えていたため、成人者が納得して結んだ契約が途中で無効などなるはずもなかったそうだ。
 
 だって、私の年齢を確認するようなこと施術する際に担当のお姉さんしてたもんなと思い出す。


「落ち着くのは当分かかりそうね」
 麗奈は悲しい顔でそういった。



 結局、今回のエステの問題は詐欺なんじゃと多くの人は思ったようだけど。
 結局今の法律では今回のようなことを取りしまることはできないそうで、これがいわゆる法律で裁けないから、警察は動くことができないんだけど、限りなく黒に近いグレーゾーンってやつらしい。


 結局今回のことは、最終的に私の通っている大学側も生徒にお試し500円のエステでの返金、解約などのトラブル相談が多く大学に寄せられていることについて、在籍するすべての生徒にメールでの注意喚起を促すほどの大ごととなった。

 エステを受けるために実際ローンを組んだ子、効果がどれだけあるかわからない化粧品を沢山買った子など、本当に多くの被害者が私が通っている大学だけではなく、近隣の大学、この辺りのバイト先で働いている同世代の多くがグレーゾーンの被害にあった。
 まだ今の私は知らないが、これだけ大ごととなったエステは、3年半後。おそらく契約者の大半がコースを修了した時期に、しれっと店はなくなったのだった。




 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...