古屋さんバイト辞めるって

四宮 あか

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エピローグ

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 エステ事件のごたごたは、やはり金額が大きいこと。
 実際に契約した子が多くいること。
 エステを紹介した相手が、繋がりが深い人物ということもあり、簡単にどうこうなるものではなさそうだった。

 大学からの注意喚起のメールは、私が通っている大学だけではなく、近隣の大学、専門学校、短大なんかに同時期に学校側からあったらしく。
 大学が注意を促したことを皮切りに、今まで水面下でごたついていたことが。

 学校側が注意をするような事態だと自覚した子が大勢出たようで、問題が一気に表面化してきた。
 大学のいつメンは幸いこのこととは無関係で蚊帳の外で周りの様子を大変だね~と見守るだけだったけれど。

 私のバイト先はちがった。
 実際に紹介した子、紹介されてエステにいって契約をした子がいて、紹介されて契約した子が更に自分の仲いい子に紹介してそっちともトラブルになってと。
 エステの契約をしていない私に、双方が自分は確かに加害者かもしれないが、被害者でもあるみたいなことを主張してものすごくめんどいことになった。

 麗奈が言っていたように、クーリングオフは無理でも解約を……と思っても。
 解約金がかかるそうで。解約したところで戻ってくるお金はかなり少ないものになる。
 二桁万円の金額はあまりにも大学生には大きく。
 かつ仲いい子が紹介したことでしっちゃかめっちゃかで、バイト先の空気はかなりギスギスとしたものに変わるのに時間はかからなかった。



 楽しいバイト先だったけれど、エステトラブルはどういう風に解決するのかの目途はちっともたっていない。
 私は何かを言われたりすることはなかったけれど。
 バイト先の空気は当然悪くなり、かつよくなる見通しのない状況。


 もしかしたら、このバイト先ももしかしたら…… 
 案の定、私の嫌な予感は見事的中した。
 まぁ、前の職場で言うヨッシー先輩のようなムードメーカーの中心人物の能力の高い男の子がバイト先にやめると申し出たのだ。
 まぁ、表向きは資格試験に集中ってことだけど。
 すでに同じパターンを経験していた私は、これは建前だとすぐにわかった。

 男の子が今回やめるんじゃないかってことは予想していた。
 今回のエステのごたごたに巻き込まれたのは女子だからだ。


 エステ契約に巻き込まれなかった私ですら、このバイトの子に紹介してしまった加害者、そして紹介してもらった被害者の両方の立場から、あれこれちょっとした愚痴を聞いたし。
 バイト先の中心人物で気さくで話しやすい男の子ってならば、その子に恋愛的な目的もあって悩みを相談したい子が隙あらば相談っていうテイで悩みや愚痴をぶつけているのだろうなと思っていたから。


 この子が辞めたら、次の話しやすい子、話しかけたい子が次の愚痴の犠牲になるだろう。
 そしたら、しんどくなった子はきっとバイト先をやめるだろう……
 私はこっそり求人を探し出した。


 まぁ、この辺り一帯の20歳以上の大学生がターゲットになっていたみたいだから。
 どこも似たような状況かもしれないけど……と前とは違う状況にちょっとため息がでる。


 そして、私はもうバイト辞めるなら会うこともないだろうと。
 このバイト先での人気者の残念ながらバイトをやめる予定の西君に話かけた。
 私は西君にエステの愚痴を言わないこともあって、最近は西君とちょっと話すことが増えていた。
 だからこそ、西君とこれっきりは惜しいかもと思ったのだ。
「ここだけの話し、実は私もこのバイトやめる予定なの」
 私がそういうと西君のぱっちりとした二重の大きな瞳が驚きでさらに見開かれた。
「石井さんも資格? それとも勉強忙しくなりそうな感じ?」
「うーん、表向きはね。本当はちょっとエステのことかな。もう相談や愚痴を聞きたくなくて……だから別のとこさがそうかなと思って。あっ、これ皆には内緒ね」
 そういって私は愛想笑いして、意図的に西君に本音を漏らした。
「……実は俺も」
 ちょっと間があってから西君はそう言った。


「やっぱり。西君私より大変そうだったから辞めるんじゃないかって思ってたの。今どこもこんな感じかもだし。もしいいバイト先あったらお互い教えあわない?」
「いいよ」

 こうして、私は西君と初めてプライベートの連絡先を交換した。
 リリコちゃんと、ヨッシー先輩のようになるかはわからないけど。


 今度は辞める人を複雑な気持ちで見送ってまったりしない。
 私は合わせてうまく生きていく。
 そして、あわよくばを狙うのだ。
 
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