嘘の私が本物の君についたウソ

四宮 あか

文字の大きさ
15 / 41

第15話 ホントの君とキスをした

しおりを挟む
 後は自然な流れだったのだと思う。
 調子に乗ってギュっと胸に顔を押し付けた私は苦しくなった。
 だから、ショウからホンの少しだけ離れてショウを見上げたのだ。
 ゆっくりと彼の顔が近くなって、いろいろ考える暇などなく、あっ今目を閉じるんだと理解した私は目を閉じた。
 唇にホンの少しだけ触れて離れたのがわかる。


 唇が離れて私は目を開けた。
 私を見下ろすショウは凄く穏やかな顔をしていた。



 その後はひたすらゲームをしたのだと思う。無駄に手も沢山繋いだ気がする。ようは、あの後部屋で何したかふわふわとした気持ちでよく覚えていない。
 ただ、すごく帰るのがさびしかったのだけはよく覚えている。



 隣の駅に行って、変装をといて家までの距離をいろんなことを考えながら歩くことにした。
 ずっと好きで一生隣で友達のフリをしているのだと思ってた。
 あんなに近くにいたのいつぶりだっただろう。
 じゃれあって抱きつけるのは、小学校低学年くらいまでだった。
 背はいつの間にか私よりもかなり高くなっていて、体つきも女の子とは全然違った。
 そんなことより、ショウのヒロインにはなれっこないから、友達でいるとおかしな方向にこじらせていた私が――彼とキス出来る日がくるとは思わなかった。


 それと同時に、さすがに、もうこれ以上は駄目だと思う。
 まっすぐ家に帰らず、私は子供の時よく遊んだ近所の公園へとやってきた。
 熱中症が騒がれるほど猛暑の昨今、いくら日が陰ってきたといっても公園には誰もいなかった。
 これ幸いとブランコに座ってゆらゆらと揺れながらぼんやりと考える。


 もう十分、いい思いはした。
 これ以上はウソの私がホントの君と経験してはいけないことなのだ。
 なにより、私が勘違いしてしまう。
 私は本来ショウのヒロインにはなれないんだもん。
 ショウと恋愛ができるような可愛い女の子じゃない。
 近所をジャージで出歩いちゃうような、思いっきり女捨ててるのがホントの私の姿なのだから。


 さて、ショウになんていって本来ならありえなかったイレギュラーな展開に終止符を打つべきか。
 ぼんやりとそんなことを考えていると頬に冷たいものがあてられた。
「ひょあぁあ!?」
 全然可愛くない反応だ私。
 それはジュースだった。
 こんなこと私にする奴はたった一人。


「お前、スマホあえて無視してただろ。そんで、今日の気温知ってるか? 夕方といえ熱中症になるぞ」
 ムッとした顔でジュース片手に立っていたのはショウだった。
「ゴチー」
 そういって、ショウから素早く飲み物を拝借して一気に飲む、どうやら喉が渇いてたみたい。考えごとのし過ぎて、のどの渇きとか全然わからなかった。


 私が、のどを潤していると、ショウは隣で膝を少し曲げて立ってブランコをこぎ出した。
 あぁ、ちゃんと立ったら頭がぶるかるほど大きい。もうあの頃と全然違うんだね。
 でも、私がこうなっているとき何か聞いてこず、私が話しだすのを待ってくれるのは代わってない。


 どれだけの時間がたったんだろう。もらったジュースの残りがぬるくなるくらいは此処にいる。
 今言ってしまえばいい。そうすれば楽になれる。
 意を決してショウをみた。
 あのさと話しかけようとした時だ。ショウのほうがとうとう話し出してしまった。


「お前もさ、彼氏作ったらいいと思う」
 ショウから出た言葉は喧嘩売ってんのか? という内容だ。
「自分が彼女できたからって、いない私に喧嘩売ってる?」
「そうじゃない。きっとこういう時、俺じゃなくて彼氏がいたらこんなところで座ってないで電話の一本でもしたら解決できたんじゃないかなって思ったんだよ」
 ショウはやっぱり優しかった。
「よけいなお世話です。最近調子乗ってますよね……」

「えっ、ちょっ。なんで敬語」
「地雷踏み抜いたんで、話しかけないでもらえますか?」
 私はいつも通り冗談めかしてから家に帰った。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~

紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。 「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。 だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。 誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。 愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した

あと
BL
「また物が置かれてる!」 最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…? ⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。 攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。 ちょっと怖い場面が含まれています。 ミステリー要素があります。 一応ハピエンです。 主人公:七瀬明 幼馴染:月城颯 ストーカー:不明 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜

咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。 もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。 一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…? ※これはかなり人を選ぶ作品です。 感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。 それでも大丈夫って方は、ぜひ。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

reva
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

処理中です...