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突然の婚約破棄からそれは始まった
あの問題を解決しなければ…
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アーロンと両想いになった日の朝。
「ふ、ふふふ」
昨日の出来事を思い出して、一人でにまにましていると、扉をたたく音が聞こえた。
「おはいりなさい」
そう声をかけると、姿を現したのは上級の召使い。
「エレーヌ様に王妃様からお茶のお誘いをお持ちしました」
銀の盆にのった一枚の手紙。封を開けると、まさしくその通り。
昨晩はよく眠れましたか?とカードに言葉が添えてあり、王妃様の心遣いが、少しうれしかった。
こういう場合は、すぐに返事をしなくてはならない。
私は召使に少し待つように伝え、引き出しを開けると、かわいらしいレターセットを引き出しの中に見つけた。
すぐに返事を書き、召使に王妃様に渡すように伝える。
こういう時、王子の婚約者として色々学んでおいてよかったなと思う。
そして、すぐにお茶の時間がやってきた。
「突然、ご招待してしまいましたが、問題はありませんでしたか?」
にっこりと笑う王妃様(アーロンの母)に連れていかれるがままに移動すると、そこはかわいらしい庭園の中にしつらえられたテーブル席だった。
ハイビスカスのような花に囲まれて、楽し気な雰囲気がテーブルにあふれている。
王妃様から座るように言われて席につくと、すぐにティータイムが始まる。
「アーロンから貴女のことを色々と伺いましてよ」
そういたずらっぽく笑う王妃様は、とてもかわいらしい人だった。
「そうですね。私も思ってもみない展開になってしまいましたわ。人生って本当に予測がつかないものですわね」
私がそう言うと、王妃様は言葉をつづける。
「実はね、アーロンが、その……いささか落ち着きのない子で、わたくしも少し心配でしたの。けれども、今朝、あの子が嬉しそうにわたくしの所にやってきましてね、貴女という大切な人ができたと告白してきたことは、いささか驚きましたけど」
アーロン、早いな! もうご両親に報告なのか。
私が彼の手回しの速さに、心の中で驚いていると、王妃様はさらに言葉をつづける。
「わたくしとしても、貴女が無実の罪で投獄されたと聞いて、心を痛めておりますのよ。けれども、ご存じの通り、あの子は、これから兄と共にこの国を支えていくべき定めをもって生まれてきておりますのは、貴女もご存じでしょう?」
王妃が言いたいことがなんとなく察することができた。私は率直に話をすることに決めた。
「それで、罪人は彼にふさわしくないと、そうおっしゃりたいのでしょうか?」
王妃様は少し驚いたようで、目をほんの少しばかり見開き、ためらいがちに言葉を続ける。
「わたくしの言いたいこととは、少し違いますけれど、まあ、そんなことですわね」
ちょうどその時、侍女がお茶のお替りを注ぎに来た。私たち二人は、上品なティーカップにお茶がなみなみと注がれるのを見ていた。
「このお菓子はとっても美味しくてよ。ほら、召し上がりなさいな」
彼女に促されて、フォークをとり、ケーキを口に運ぶ。腕のいい職人がいるのだろう。素晴らしいお菓子の味に、私はちょっとだけ、微笑みを浮かべる。
「本当に、これは美味しゅうございます。王妃様」
「そうでしょう? わたくしがこちらに輿入れする時に連れてきた料理人なの」
そして、彼女もお菓子を口に運び、満足そうに微笑む。
「貴女も甘いものはお好き?」
「ええ、もちろんです。お菓子は心の栄養ですもの」
そんな風に何気ない会話をしつつ、私たちは侍女が仕事を終えて立ち去るのを待っていた。従者の前ではプライベートな会話はしないものである。
そして、しばらくしてから、王妃様がナプキンで口の端を押さえてから、再び、口を開いた。
「それでね、エレーヌ嬢、私がお話したいのは、わたくしもアーロンはあなたと公式の関係を持ちたいと切に願っているのです。あの子がそのようなことを言い出したのは初めてのことですもの。けれども、あの子の立場もご存じでしょう? あの子は商人だと貴女に偽ってきましたが、この国の第三王子だということは聞いてますわね」
「ええ、もちろんです」
「そう、それなら話が早いわ。私としても、あの子が貴女をそれほど望むのなら、その望みをかなえてやってもかまわないと思っておりますの。けれども、そのいくら隣国の公爵令嬢だとしても、そのね、罪がある女性はやはり、国民の理解が得られないのではと陛下もご心配なされていらっしゃって……」
「身の潔白を証明しさえすれば、アーロンとの関係を認めるということでしょうか?」
「まあ、察しが早くて助かるわ。ねえ、エレーヌ嬢、いえ、エレーヌと呼ばせていただいても構わないかしら?」
私がうなずくと、王妃様は椅子を少しこちらにずらして小声で言う。
「貴女が無実であることを証明できれば、すべて問題が解決する、ということなの。もちろん、陛下が貴女を認めると言えばそれで済むことなのかもしれないわ。けれども、第二王子にとっては、それが恰好の非難の材料になると言えば、わかるかしら?」
「ええ、もちろんですわ。王妃様」
アーロンとこのまま共にいることを望むのなら、あの問題を解決しなければだめよと、王妃様は言う。
その後は、ごく普通に、女同士のお喋りをしながらお茶会はつつがなく終わった。
「では、エレーヌ、結果を楽しみにしていますよ」
王妃はそう言うと、侍女にかしずかれながら去っていった。
無実の罪を晴らす、か……。
王妃様の背中を眺めながら、私はどうしたものかと考えていた。
アーロンの名誉のためにも、えん罪をどうにかして晴らさなければならなさそうだ。
そして、この数日後、あの第二王子のせいで、私とアーロンはのっぴきならない事態へと陥るのである。
◇
気が付いたら、一か月、過ぎてましたー! 5月末までに連載は完了する予定です! クライマックス(壮麗なざまあ)は、多分、次々回くらいの予定(^^)v
「ふ、ふふふ」
昨日の出来事を思い出して、一人でにまにましていると、扉をたたく音が聞こえた。
「おはいりなさい」
そう声をかけると、姿を現したのは上級の召使い。
「エレーヌ様に王妃様からお茶のお誘いをお持ちしました」
銀の盆にのった一枚の手紙。封を開けると、まさしくその通り。
昨晩はよく眠れましたか?とカードに言葉が添えてあり、王妃様の心遣いが、少しうれしかった。
こういう場合は、すぐに返事をしなくてはならない。
私は召使に少し待つように伝え、引き出しを開けると、かわいらしいレターセットを引き出しの中に見つけた。
すぐに返事を書き、召使に王妃様に渡すように伝える。
こういう時、王子の婚約者として色々学んでおいてよかったなと思う。
そして、すぐにお茶の時間がやってきた。
「突然、ご招待してしまいましたが、問題はありませんでしたか?」
にっこりと笑う王妃様(アーロンの母)に連れていかれるがままに移動すると、そこはかわいらしい庭園の中にしつらえられたテーブル席だった。
ハイビスカスのような花に囲まれて、楽し気な雰囲気がテーブルにあふれている。
王妃様から座るように言われて席につくと、すぐにティータイムが始まる。
「アーロンから貴女のことを色々と伺いましてよ」
そういたずらっぽく笑う王妃様は、とてもかわいらしい人だった。
「そうですね。私も思ってもみない展開になってしまいましたわ。人生って本当に予測がつかないものですわね」
私がそう言うと、王妃様は言葉をつづける。
「実はね、アーロンが、その……いささか落ち着きのない子で、わたくしも少し心配でしたの。けれども、今朝、あの子が嬉しそうにわたくしの所にやってきましてね、貴女という大切な人ができたと告白してきたことは、いささか驚きましたけど」
アーロン、早いな! もうご両親に報告なのか。
私が彼の手回しの速さに、心の中で驚いていると、王妃様はさらに言葉をつづける。
「わたくしとしても、貴女が無実の罪で投獄されたと聞いて、心を痛めておりますのよ。けれども、ご存じの通り、あの子は、これから兄と共にこの国を支えていくべき定めをもって生まれてきておりますのは、貴女もご存じでしょう?」
王妃が言いたいことがなんとなく察することができた。私は率直に話をすることに決めた。
「それで、罪人は彼にふさわしくないと、そうおっしゃりたいのでしょうか?」
王妃様は少し驚いたようで、目をほんの少しばかり見開き、ためらいがちに言葉を続ける。
「わたくしの言いたいこととは、少し違いますけれど、まあ、そんなことですわね」
ちょうどその時、侍女がお茶のお替りを注ぎに来た。私たち二人は、上品なティーカップにお茶がなみなみと注がれるのを見ていた。
「このお菓子はとっても美味しくてよ。ほら、召し上がりなさいな」
彼女に促されて、フォークをとり、ケーキを口に運ぶ。腕のいい職人がいるのだろう。素晴らしいお菓子の味に、私はちょっとだけ、微笑みを浮かべる。
「本当に、これは美味しゅうございます。王妃様」
「そうでしょう? わたくしがこちらに輿入れする時に連れてきた料理人なの」
そして、彼女もお菓子を口に運び、満足そうに微笑む。
「貴女も甘いものはお好き?」
「ええ、もちろんです。お菓子は心の栄養ですもの」
そんな風に何気ない会話をしつつ、私たちは侍女が仕事を終えて立ち去るのを待っていた。従者の前ではプライベートな会話はしないものである。
そして、しばらくしてから、王妃様がナプキンで口の端を押さえてから、再び、口を開いた。
「それでね、エレーヌ嬢、私がお話したいのは、わたくしもアーロンはあなたと公式の関係を持ちたいと切に願っているのです。あの子がそのようなことを言い出したのは初めてのことですもの。けれども、あの子の立場もご存じでしょう? あの子は商人だと貴女に偽ってきましたが、この国の第三王子だということは聞いてますわね」
「ええ、もちろんです」
「そう、それなら話が早いわ。私としても、あの子が貴女をそれほど望むのなら、その望みをかなえてやってもかまわないと思っておりますの。けれども、そのいくら隣国の公爵令嬢だとしても、そのね、罪がある女性はやはり、国民の理解が得られないのではと陛下もご心配なされていらっしゃって……」
「身の潔白を証明しさえすれば、アーロンとの関係を認めるということでしょうか?」
「まあ、察しが早くて助かるわ。ねえ、エレーヌ嬢、いえ、エレーヌと呼ばせていただいても構わないかしら?」
私がうなずくと、王妃様は椅子を少しこちらにずらして小声で言う。
「貴女が無実であることを証明できれば、すべて問題が解決する、ということなの。もちろん、陛下が貴女を認めると言えばそれで済むことなのかもしれないわ。けれども、第二王子にとっては、それが恰好の非難の材料になると言えば、わかるかしら?」
「ええ、もちろんですわ。王妃様」
アーロンとこのまま共にいることを望むのなら、あの問題を解決しなければだめよと、王妃様は言う。
その後は、ごく普通に、女同士のお喋りをしながらお茶会はつつがなく終わった。
「では、エレーヌ、結果を楽しみにしていますよ」
王妃はそう言うと、侍女にかしずかれながら去っていった。
無実の罪を晴らす、か……。
王妃様の背中を眺めながら、私はどうしたものかと考えていた。
アーロンの名誉のためにも、えん罪をどうにかして晴らさなければならなさそうだ。
そして、この数日後、あの第二王子のせいで、私とアーロンはのっぴきならない事態へと陥るのである。
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気が付いたら、一か月、過ぎてましたー! 5月末までに連載は完了する予定です! クライマックス(壮麗なざまあ)は、多分、次々回くらいの予定(^^)v
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