夕日と白球

北条丈太郎

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新たなる野球部

機動力野球に備えろ

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「……おい太陽! 夜空! ちょっと気になるチームがいるから見てくぞ」
 完封勝ちの後、キャプテンのタンピンはバッテリーの二人に指示して居残らせた。三人は試合を見やすい応援席に行き、応援に来ていた美緒も混ぜてあるチームの試合を観察した。
「……あのチームだ。優勝候補とまでは言わねえけどウチとぶつかるかも知れねえ。一見地味なチームだけどよ、あいつらは足が速い。よく見とけよ」
 タンピンに言われた夜空はじっくりと試合を見たが、どうにも特徴を見抜けずにいた。
「夜空くん、あれが機動力野球だよ。兄ちゃんもちゃんと見なよ。バッテリーで対処しなきゃ」
 いつの間にか夜空の横に美緒がちょこんと座り、選手を指さして解説を始めた。試合の展開に合わせて美緒は早口で語り、夜空は聞き逃すまいとしたが多少聞き逃した。
「ほら! あのリードだよ。大きいでしょ。あれでピッチャーを揺さぶってるんだよ」
「そうだ。美緒ちゃんはお前らより野球を知ってる。ああいうのはバッテリーで対応するんだ。お前らで対応できるか? あのキャッチャーは肩が弱いからランナーになめられてるぜ」
「そうだよ夜空くん。ピッチャーも牽制球を投げないから盗塁されるよ。ほら走った!」
 夜空たちが観察したチームはその走力で相手の守備力をかき乱した。その様子を見た夜空は理解できないプレーについて美緒に尋ねた。すると美緒も答えた。
「あのサードランナーはホームを狙ってるでしょ、そうなるとキャッチャーにプレッシャーがかかるのよ。ピッチャーも緊張する。ここでバッテリーエラーが出たら1点取られるからね。あのチームは常に一塁三塁って状況を作ろうとしてる。どう? 分かった? 夜空くん?」
 試合の途中まで見届けたタンピンは夜空と太陽に帰宅するよう指示した。
 その翌日、小船ナインは練習試合の予定を聞いて驚いた。
 小船中学野球部は高校の野球部と練習試合をすることになった。
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