夕日と白球

北条丈太郎

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新たなる野球部

友情の合同練習

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 まもなく次の試合となった日、小船ナインはタンピンに連れられて近くの杉田中へ赴いた。
 杉田中の野球部は小船中に勝るとも劣らないほど弱小であった。互いに部員が少なかったため、近隣の中学と練習試合を行う際には部員の貸し借りなどを行っていた。また、実戦的な練習を行う際にも部員の少なさを補うために合同練習を行うのが常であった。
「よう久しぶりだな。お前ら秋の大会は絶好調らしいな。俺らとしてもまあ、嬉しいっちゃあ嬉しいぜ。んで? 今日はどういう練習するんだ? もうすぐ試合だろ? 今さら俺らと練習して意味あんのか? まあ俺らは一回戦負けだったからいいけどよ。そんじゃあやってみるか!」
 杉田中のキャプテンは笑ってタンピンの背中を叩き、小船ナインをグラウンドに招いた。
 タンピンが考えた合同練習の目的は、夜空と太陽のバッテリーによる相手ランナーの牽制練習であった。杉田中ナインはタンピンの要請に応えた。
「おい太陽。セットポジションから目でランナーを牽制しろ。牽制球を投げるふりでいい。目で牽制すればランナーは動きにくい。それとボールを長く持て。それでもランナーが大きくリードするようなら牽制球をさっと投げろ。やってみろ!」
 タンピンに言われた太陽はランナーをくぎ付けにしつつ、時に牽制アウトを取った。
「おい夜空。お前の肩はまあまあだから思い切ってセカンドに投げてみろ。セカンドの足元に投げろ。ファーストランナーが走ったらセカンドがタッチしやすい手元に投げろ!」
 合同練習は日が暮れるまで行われた。そして夜空と太陽のバッテリーは機動力野球に対するけん制プレーの基本をどうにか覚えた。
「こんなんでいいか? そんじゃあ次の試合頑張れよ! 応援には行ってやるからよ!」
 杉田中のキャプテンとタンピンはがっちり握手した。
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