蒼き風の突騎兵

序章

軍艦のような車

「……お前は弱くないなハルマン。でも勝ったのは俺だ。手下にしてやるよ」
　タークは抑え込んでいたハルマンを引き起こし、本当の握手を交わした。
「確かに俺は負けた。でも手下ってことは、お前には仲間がいるんだなターク」
　ハルマンは握手をしている右手にタークの強烈な腕力を感じながら尋ねた。
「ああ、いるぜ。カシアスの仲間たちだ。すぐ近くに来てる。紹介してやるよ」
　タークは言いながら自分のRBに乗る準備を始め、ハルマンもRBに乗るよう指示した。
「よしターク。なら勝負だ。お前は仲間のところへ全力で走れ。最後に俺が抜いてやるよ！」
「おうハルマン。その勝負受けてやる。俺が勝ったらお前のRBは俺のもんだ。いいな？」
「いいぜ。ハンデをやるから先に行けよターク。俺は三分後に発進する」
　ハルマンの言葉を聞いたタークは笑って急発進した。それをハルマンは遅れて追った。ハルマンは先行するタークを追い、タークが減速し始めたところで一気に抜いた。
　するとハルマンの眼前に大きな地上車が現れた。それは軍艦のような車だった。
「……タークか？　違うな。お前は誰だ？　そのVTはどこで手に入れた？　おい小僧！」
　車から出てきた大柄な男がハルマンに近づいて大声で詰問した。その男の頬には傷があった。
「ジャックさん？　ジャックさんですね！　間違いない、その傷は……」
　男の顔を見たハルマンは叫び、VTから飛び降りて男に駆け寄った。
「俺です！　ハルマンです！　師匠！　ジャック・リンゼイ師匠！」
「……ジャック？　知らんな。俺はライアン・ノーマンだ。この地上艦タイソンの艦長だ」
「……お～いハルマン。やっと追いついたぜ。お前速いな。俺の完敗だぜ！」
　ライアンと名乗った男の顔をハルマンが見ていると、タークがそこに追いついた。