蒼き風の突騎兵

自由の天地を求めて

料理人ユキノ輝く

　地上艦タイソンのブリッジには主な乗組員たちが集合していた。
　ブリッジ正面上部に取り付けられた大型パネルに組み込まれた制御ＡＩに注目が集まった。
「おいマギー！　お前は本当に最新式なのか？　ニコルの紹介で買ったけど大丈夫か？」
　艦長がパネルに話しかけるとパネルがきらりと反応し、電子音声が聞こえてきた。
「はい艦長。私は第三世代人工知能のマギーです。今後ともよろしくお願いします」
　そのころ、ユキノは住居ブロックに配置されたキッチンユニット内で目を輝かせていた。
「ねえねえ、この野菜とかお肉ってどこに運ぶの？　いっぱいあるねえ！」
　一部の乗組員たちが手分けして食料や食材を運ぶのをターナ・フェアルダはじっと見ていた。
「ああ、ユキノに頼まれたんでキッチンユニットに運ぶんだよ。ターナも手伝えよ」
「うん、えっ？　もしかしてユキノがお料理するの？　大丈夫かなあ？」
　頼まれたターナは小さな体で手伝い始めた。すると、ゴーグルをかけたトールが近くに来た。
「……今日の夕食をユキノさんが作るって本当かい？　楽しみだよ僕は」
　ふだん不愛想なトールはゴーグルを外し、ターナに向かって微笑みを見せた。
「そうなんだって、でもトールはユキノの料理食べるの初めてなんだね」
　……数時間後、食堂を兼ねたキッチンユニットに多くの乗組員がやってきた。
　食事が始まってしばらくすると、数人の乗組員が口を押えて洗面所に走った。
「辛い！　辛い！　しょっぱい！　酸っぱい！　ひいい水！　水！」
　トールはユキノの料理を完食したが、やがて泡を吹き、医務室に運び込まれた。
「あれ？　ハルマンは来てないの？　残念ねえ」
　ユキノは自分で作った料理を食べながらため息をついた。