蒼き風の突騎兵

北条丈太郎

文字の大きさ
42 / 64
自由の天地を求めて

本物の騎兵戦とハルマン

しおりを挟む
 ハルマンはムバティン王子率いる騎兵部隊の左翼後方から敵陣を眺めた。トリル王が率いる騎兵部隊は草原の斜面からハルマンたちを見下ろせる有利な高地に布陣していた。
「ハルマンよ、わが友の戦士よ。お前たちRB隊はあくまでも決戦兵力だ。まずは騎兵同士の戦いを見守れ。敵もいずれはRB隊を繰り出すだろう。そのときにお前は動け。敵RB隊の後方に回り込んで敵を混乱させろ。そして敵RB隊を一掃してくれ。そうすればわが軍が勝つ。ただし注意しろ。敵騎兵はわが軍と同じくHスピアを装備している。Hスピアが直撃すればRBとてひとたまりもない。だからお前は騎兵戦には関わるな。混戦になるだろうが、お前は敵RBだけを狙え」
 ……ハルマンが敵陣を見ていると、待ちかねたように敵軍が斜面を駆け下り始めた。怒涛の勢いで一直線に駆けてくる敵騎兵は中央のムバティン隊を狙ってきた。ムバティン隊は蹴散らされたように見えたが、ムバティンはタイミングを計り、巧妙に自部隊を左右に展開させていた。
 そこからは乱戦となり、互いに弓矢を撃ち合い、槍を投げ合って草原に血煙を上げた。なかでもHスピアの殺傷力はすさまじく、人馬を一撃で葬り合った。鮮血が飛び散る光景を目にしたハルマンは呆然とした。目の前で行われているのは本物の戦争であった。本当の殺し合いであった。
 ……やがて、ハルマンの耳にRBのかすかなエンジン音が届いた。我を忘れかけていたハルマンは愛車VTのエンジンを始動し、低速で走り出した。そして後ろに控えるオーラたちに指示し、RB十数機によるラインを形成させた。敵のRB隊は高速で迫っていた。ハルマンは一気に加速し、敵の右側面に出てから敵後方に回り込もうと試んだ。だが、そこで思わぬ気配に気付いた。
「赤いRB? ミラノB9? ターク? ピンクRB? ユキノか? そんなバカな!」
 ハルマンが一瞬混乱したとき、敵RB隊も混乱した。敵RB隊は逃走し、ハルマンは追った。
 砂煙の中に消えていくRB隊を追ったハルマンは、気付くと孤立していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。 最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。 本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。 第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。 どうぞ、お楽しみください。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...