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戦争と少年少女たち
戦乱の草原を走る地上艦タイソン
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地上艦タイソンの指揮席に座るジャック・リンゼイは苦いコーヒーを飲んで眠気を覚ましながらレーダー画面をぼんやりと見ていた。すると通信画面にコールがあり、ワンス防衛軍幹部たちの顔が映った。それは定時連絡の催促であり、またジャックらを監視する通信でもあった。
「……こちら青の戦隊であります。現在ワンス南方のやや東よりを哨戒中であります」
激戦を潜り抜けてきた地上艦タイソンの乗組員たちにとって、哨戒任務は退屈なものであった。彼らが哨戒中のワンス南方は軍事的に自由南方共和国軍の防衛圏内であり、ラシア皇国やタルタス王国の軍事力が及ぶ場所ではなかった。
「……この辺りを縄張りにしていた盗賊団も以前に比べるとずいぶん減ったって話だ。なあトールよ。お前はどう思う?」
「はい艦長。かつては我々も盗賊団でしたが、今は軍隊の一部です。草原で起こる戦いが激化して盗賊団たちは西のインダ連合方面へ逃げたのでしょう。現状を考えると草原で盗賊団が自由に行動できる時代は終わりつつあると僕は考えます」
ゴーグルに指をかけながらトール・クラウゼンは言い、ジャックも大きくうなずいた。
「艦長! レーダーが地上艦らしき反応をキャッチ。武装集団の可能性ありです。データ照合。該当データあり。地上艦ハーンズ。ハグラー団の旗艦です」
通信兵からの報告を聞いたジャックは、思わず首をひねってアーヤの顔を見た。
「なんとも懐かしいなあアーヤ。カシアスのライバルだったハグラー団だとよ」
タイソンに接近する集団をレーダーで確認したジャックは不意に指揮席から立ち上がった。
「おい! ハグラーどころじゃねえ! 後ろに共和国のスイーパー部隊がいるぞ!」
ジャックの大声を聞いたタイソン艦内に緊張が走り、乗組員たちは一斉に身構えた。
「……こちら青の戦隊であります。現在ワンス南方のやや東よりを哨戒中であります」
激戦を潜り抜けてきた地上艦タイソンの乗組員たちにとって、哨戒任務は退屈なものであった。彼らが哨戒中のワンス南方は軍事的に自由南方共和国軍の防衛圏内であり、ラシア皇国やタルタス王国の軍事力が及ぶ場所ではなかった。
「……この辺りを縄張りにしていた盗賊団も以前に比べるとずいぶん減ったって話だ。なあトールよ。お前はどう思う?」
「はい艦長。かつては我々も盗賊団でしたが、今は軍隊の一部です。草原で起こる戦いが激化して盗賊団たちは西のインダ連合方面へ逃げたのでしょう。現状を考えると草原で盗賊団が自由に行動できる時代は終わりつつあると僕は考えます」
ゴーグルに指をかけながらトール・クラウゼンは言い、ジャックも大きくうなずいた。
「艦長! レーダーが地上艦らしき反応をキャッチ。武装集団の可能性ありです。データ照合。該当データあり。地上艦ハーンズ。ハグラー団の旗艦です」
通信兵からの報告を聞いたジャックは、思わず首をひねってアーヤの顔を見た。
「なんとも懐かしいなあアーヤ。カシアスのライバルだったハグラー団だとよ」
タイソンに接近する集団をレーダーで確認したジャックは不意に指揮席から立ち上がった。
「おい! ハグラーどころじゃねえ! 後ろに共和国のスイーパー部隊がいるぞ!」
ジャックの大声を聞いたタイソン艦内に緊張が走り、乗組員たちは一斉に身構えた。
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