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頭痛が痛い。5
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「ところで、お嬢さん」
ポーションを漁る少女の動きが止まった隙に、ミナトが静かに問いかけた。
「君の名前を聞いてもいいか?」
少女は、ミナトに視線を合わせることなく、ゴウキの使い古された革のボストンバッグを乱暴に開け、中を漁りながら答えた。
「あぁ? クロエだよ。貧民街でポーション探してる、クズ拾いさ」
その手つきは一切の遠慮がなく、彼女が日頃からこの都市の「裏側」で生きていることを物語っていた。
クロエがカバンの中を引っ掻き回していると、ゴウキは静かに見守っている。
ミナトは眉をひそめたが、昨夜の非礼を考え、口は出さなかった。
やがて、クロエはカバンの底から取り出したポーションの山に目を丸くした。
「おい、アンタらマジで何なんだよ……」
クロエが両手に抱えるのは、通常、重傷の冒険者しか手を出さないような高純度の『ハイポーション』ばかりだ。その数、ゆうに十数本。さらに、鞄の底には鮮やかな青色の『マナポーション』も多数転がっている。
ゴウキが適当に詰め込んだらしく、ポーション同士がぶつかり合う鈍い音が響いた。
「これ、全部本物だろ? こんな高級ポーション、ギルドの受付でも滅多に並ばねぇぞ。もしかして、アンタら有名な冒険者か?」
「んー? そんなもんだな」
ゴウキは頭をかきながら、豪快に笑って返答する。
クロエはミナトに鋭い視線を向けた。
「こんなに持ってるなら、姉ちゃんのポーションと俺にも一本ずつくれよ。なんならもう一本ずつ、姉ちゃんの分も」
ミナトはため息をついた。
「わかったよ。持って行け」
ミナトはそう言って、クロエの要求をあっさり受け入れた。
「俺達にも1本取ってくれ。」とミナトがお願いする。
クロエは、ハイポーションの瓶を一つ掴み、キャップの銀細工を凝視した。
「一つ聞いてもいいか? なぜ、こんなに大量にポーションがいる?やっぱり冒険者はダンジョンにでも潜るから必要なのか?」
「ああ、それか? あんな高級な治療薬を、なぜこんなにも持っているかって話だろ? ふっ」
ゴウキは、まるで自慢するかのように胸を張り、得意げに答えた。
「決まってんだろ! 俺たちは二日酔いに効くから常備してるんだよ!」
「…………は?」
クロエの顔に、驚きと、それに勝る深い呆れの表情が浮かんだ。
「二日酔いだと? 一本銀貨数十枚はするハイポーションを、そんな理由で……! バカじゃねえの!? あんたらの神経、どうかしてるぜ!」
「バカじゃないの? だと? 口が悪いな、うちのメンバーの誰かさんみたいだ」
ミナトは、どこか楽しそうに、そして冷静に話を元に戻した。
「それよりもクロエ。君はポーションが必要だと言ったが、それはなぜだ?」
ミナトの表情が真剣になる。
クロエは先ほどまでの荒々しさが消え、少し寂しげな表情になった。
「……姉ちゃんが、病気なんだ。厄介な病気でな。定期的にポーションを飲まなきゃ、命に関わる。でも、普段はお姉ちゃんの職場の人が安く売ってくれるんだけどな」
「そうか……」
ミナトは、先ほどの二日酔いの話は忘れたかのように、優しく尋ねた。
「君たちはどこに住んでいるんだ?」
クロエは視線を逸らし、ぼそりと答えた。
ポーションを漁る少女の動きが止まった隙に、ミナトが静かに問いかけた。
「君の名前を聞いてもいいか?」
少女は、ミナトに視線を合わせることなく、ゴウキの使い古された革のボストンバッグを乱暴に開け、中を漁りながら答えた。
「あぁ? クロエだよ。貧民街でポーション探してる、クズ拾いさ」
その手つきは一切の遠慮がなく、彼女が日頃からこの都市の「裏側」で生きていることを物語っていた。
クロエがカバンの中を引っ掻き回していると、ゴウキは静かに見守っている。
ミナトは眉をひそめたが、昨夜の非礼を考え、口は出さなかった。
やがて、クロエはカバンの底から取り出したポーションの山に目を丸くした。
「おい、アンタらマジで何なんだよ……」
クロエが両手に抱えるのは、通常、重傷の冒険者しか手を出さないような高純度の『ハイポーション』ばかりだ。その数、ゆうに十数本。さらに、鞄の底には鮮やかな青色の『マナポーション』も多数転がっている。
ゴウキが適当に詰め込んだらしく、ポーション同士がぶつかり合う鈍い音が響いた。
「これ、全部本物だろ? こんな高級ポーション、ギルドの受付でも滅多に並ばねぇぞ。もしかして、アンタら有名な冒険者か?」
「んー? そんなもんだな」
ゴウキは頭をかきながら、豪快に笑って返答する。
クロエはミナトに鋭い視線を向けた。
「こんなに持ってるなら、姉ちゃんのポーションと俺にも一本ずつくれよ。なんならもう一本ずつ、姉ちゃんの分も」
ミナトはため息をついた。
「わかったよ。持って行け」
ミナトはそう言って、クロエの要求をあっさり受け入れた。
「俺達にも1本取ってくれ。」とミナトがお願いする。
クロエは、ハイポーションの瓶を一つ掴み、キャップの銀細工を凝視した。
「一つ聞いてもいいか? なぜ、こんなに大量にポーションがいる?やっぱり冒険者はダンジョンにでも潜るから必要なのか?」
「ああ、それか? あんな高級な治療薬を、なぜこんなにも持っているかって話だろ? ふっ」
ゴウキは、まるで自慢するかのように胸を張り、得意げに答えた。
「決まってんだろ! 俺たちは二日酔いに効くから常備してるんだよ!」
「…………は?」
クロエの顔に、驚きと、それに勝る深い呆れの表情が浮かんだ。
「二日酔いだと? 一本銀貨数十枚はするハイポーションを、そんな理由で……! バカじゃねえの!? あんたらの神経、どうかしてるぜ!」
「バカじゃないの? だと? 口が悪いな、うちのメンバーの誰かさんみたいだ」
ミナトは、どこか楽しそうに、そして冷静に話を元に戻した。
「それよりもクロエ。君はポーションが必要だと言ったが、それはなぜだ?」
ミナトの表情が真剣になる。
クロエは先ほどまでの荒々しさが消え、少し寂しげな表情になった。
「……姉ちゃんが、病気なんだ。厄介な病気でな。定期的にポーションを飲まなきゃ、命に関わる。でも、普段はお姉ちゃんの職場の人が安く売ってくれるんだけどな」
「そうか……」
ミナトは、先ほどの二日酔いの話は忘れたかのように、優しく尋ねた。
「君たちはどこに住んでいるんだ?」
クロエは視線を逸らし、ぼそりと答えた。
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