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ケンタウロスの善行4
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ギルは、外の闇へと逃げ込むように扉に手をかけ、「これで失礼」と声を荒げる。
その刹那、扉に手をかけたままのギルの背中に、低く、しかし感情の読めない声が投げかけられた。
ゴウキが静かに声をかける。
「おい」
ゴウキは一歩踏み出し、大柄な体躯をギルの背中に向けた。ギルの動きがピタリと止まる。
ゴウキは、ベッドに横たわるシズクを一瞥し、冷静に尋問を始めた。
「クロエさんのこの病気について、何が知っているか? 首元に緑の斑点(はんてん)のような物があるんだが」
ゴウキの指摘は正確だった。シズクの首元には、濃い化粧の下からでも分かる、小さな緑色の斑点がわずかに浮き出ている。
ギルは、扉を閉めようとしていた手を止め、困ったように振り返った。
「え、あー……言いにくいんすけど、それは最近流行ってる、性病でしてね。お店の子もよく出てるんですよ」
ギルは芝居がかった様子で、少し言いにくそうに口にした。
「医者には見せました。ポーションを飲めば、問題ないって言ってましたよ」
ゴウキは、ギルが置いていった薬を指差した。
「これはなんだ? これがポーションか?」
ギルはヘラヘラと笑い、シズクの現実を突きつける。
「あー、これはポーションじゃないっすね。避妊薬ですよ。ほら、分かるでしょ? 必要でしょ?俺が良く持って来てあげるんですよ。」
ゴウキの表情は変わらないが、視線がさらに鋭くなる。
「ポーションは、あそこの棚にあるっすよ。特別に、お店側が従業員の為に格安で売ってあげているものなんで。」
ギルはそう言って、部屋の隅にある小さな棚を指さした。
ゴウキは、棚は無視し、シズクの状態を問う。
「病気はいつからだ?」
ギルは頬を掻いた。
「確か、半年くらい前に急にお店で倒れてからですね。そこから俺が定期的に面倒を見てるってわけっす」
ゴウキは、思考を巡らせる。
「なるほどな、ありがとう」
ゴウキは冷静に礼を言ったが、彼の目配せを受けたミナトの体から、静かな気迫が立ち上る。
ゴウキの「ありがとう」という言葉に安心したギルは、背を向け再び扉に手をかけようとした。
その瞬間、大柄なゴウキの全身の筋肉が、一瞬、隆起した。
彼の体内に練り上げられた闘気が、静かに、しかし爆発的に解き放たれる。
『闘気圧(とうきあつ)/スタンディング・ノックダウン』
ゴウキは、一歩も動かず、スキル『闘気圧(スタンディング・ノックダウン)』を発動させた。
鍛え抜かれた規格外の筋力と精神力と魔力が、物理的な圧力となって、ギルの背中に叩きつけられる。
「ぐぁっ……!」
扉の前にいたギルの動きが完全にフリーズした。
彼は扉から手を離し、まるで重力が増したかのように、うめき声を上げながらその場に立ち尽くした。
ゴウキの圧倒的な気迫により、恐怖と内臓の圧迫感から全身の筋肉が硬直し、動けない。
ミナトは、一切の感情を表に出さない表情のまま、ゴウキの行動を見守る。
ゴウキは、ギルの制圧と同時に、ベッド脇の台の上にあった避妊薬の小瓶を、空いている片手で素早く掴んだ。
避妊薬は、下層でよく見られる、色の付いた液体状の薬だ。
ゴウキは、動けなくなったギルの背後に回り込むと、ギルの首を、まるで赤子を扱うかのように、片腕で軽々と固定し、顎を無理やり上向かせた。
「んんっ!」
ギルはうめくが、抵抗できない。
ゴウキは小瓶の蓋を外し、躊躇なく、その液体状の避妊薬をギルの口に一気に流し込んだ。
ごくり、ごくり
ギルの喉が反射的に動き、薬が食道へと流し込まれていく。
ゴウキは確認するように、ギルの首を強く掴んだまま、口から液体が吐き出されないように押さえつけた。
ミナトは、ただ静かにその光景を見つめる。
すべてが一瞬の出来事だった。クロエとシズクは、目の前で起こった暴力的な制圧劇に、恐怖と困惑で見開いたまま、動けずにいる。
その刹那、扉に手をかけたままのギルの背中に、低く、しかし感情の読めない声が投げかけられた。
ゴウキが静かに声をかける。
「おい」
ゴウキは一歩踏み出し、大柄な体躯をギルの背中に向けた。ギルの動きがピタリと止まる。
ゴウキは、ベッドに横たわるシズクを一瞥し、冷静に尋問を始めた。
「クロエさんのこの病気について、何が知っているか? 首元に緑の斑点(はんてん)のような物があるんだが」
ゴウキの指摘は正確だった。シズクの首元には、濃い化粧の下からでも分かる、小さな緑色の斑点がわずかに浮き出ている。
ギルは、扉を閉めようとしていた手を止め、困ったように振り返った。
「え、あー……言いにくいんすけど、それは最近流行ってる、性病でしてね。お店の子もよく出てるんですよ」
ギルは芝居がかった様子で、少し言いにくそうに口にした。
「医者には見せました。ポーションを飲めば、問題ないって言ってましたよ」
ゴウキは、ギルが置いていった薬を指差した。
「これはなんだ? これがポーションか?」
ギルはヘラヘラと笑い、シズクの現実を突きつける。
「あー、これはポーションじゃないっすね。避妊薬ですよ。ほら、分かるでしょ? 必要でしょ?俺が良く持って来てあげるんですよ。」
ゴウキの表情は変わらないが、視線がさらに鋭くなる。
「ポーションは、あそこの棚にあるっすよ。特別に、お店側が従業員の為に格安で売ってあげているものなんで。」
ギルはそう言って、部屋の隅にある小さな棚を指さした。
ゴウキは、棚は無視し、シズクの状態を問う。
「病気はいつからだ?」
ギルは頬を掻いた。
「確か、半年くらい前に急にお店で倒れてからですね。そこから俺が定期的に面倒を見てるってわけっす」
ゴウキは、思考を巡らせる。
「なるほどな、ありがとう」
ゴウキは冷静に礼を言ったが、彼の目配せを受けたミナトの体から、静かな気迫が立ち上る。
ゴウキの「ありがとう」という言葉に安心したギルは、背を向け再び扉に手をかけようとした。
その瞬間、大柄なゴウキの全身の筋肉が、一瞬、隆起した。
彼の体内に練り上げられた闘気が、静かに、しかし爆発的に解き放たれる。
『闘気圧(とうきあつ)/スタンディング・ノックダウン』
ゴウキは、一歩も動かず、スキル『闘気圧(スタンディング・ノックダウン)』を発動させた。
鍛え抜かれた規格外の筋力と精神力と魔力が、物理的な圧力となって、ギルの背中に叩きつけられる。
「ぐぁっ……!」
扉の前にいたギルの動きが完全にフリーズした。
彼は扉から手を離し、まるで重力が増したかのように、うめき声を上げながらその場に立ち尽くした。
ゴウキの圧倒的な気迫により、恐怖と内臓の圧迫感から全身の筋肉が硬直し、動けない。
ミナトは、一切の感情を表に出さない表情のまま、ゴウキの行動を見守る。
ゴウキは、ギルの制圧と同時に、ベッド脇の台の上にあった避妊薬の小瓶を、空いている片手で素早く掴んだ。
避妊薬は、下層でよく見られる、色の付いた液体状の薬だ。
ゴウキは、動けなくなったギルの背後に回り込むと、ギルの首を、まるで赤子を扱うかのように、片腕で軽々と固定し、顎を無理やり上向かせた。
「んんっ!」
ギルはうめくが、抵抗できない。
ゴウキは小瓶の蓋を外し、躊躇なく、その液体状の避妊薬をギルの口に一気に流し込んだ。
ごくり、ごくり
ギルの喉が反射的に動き、薬が食道へと流し込まれていく。
ゴウキは確認するように、ギルの首を強く掴んだまま、口から液体が吐き出されないように押さえつけた。
ミナトは、ただ静かにその光景を見つめる。
すべてが一瞬の出来事だった。クロエとシズクは、目の前で起こった暴力的な制圧劇に、恐怖と困惑で見開いたまま、動けずにいる。
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