長いタイトル、くそ喰らえ。

mimikan

文字の大きさ
67 / 76

責任の行方1

しおりを挟む
ギルが絶命し、彼の遺体と血の匂いが充満する部屋に、ようやく静寂が訪れた。

クロエの嗚咽は収まり、シズクはポーションの効果か、顔色にわずかに生気を取り戻している。

シズクは、目の前で起きた超常的な出来事――ゴウキの鉄壁の防御、ミナトの空間を切断する一撃、そしてギルの非道な告白――を噛みしめるように、一呼吸置いた。

彼女は、ミナトとゴウキに向かって、まっすぐ尋ねた。

「所で、あなた達は一体何者なの?」

ミナトは、黒い大剣の柄を握りしめたまま、曖昧に答えた。

「まあ……冒険者、かな?」

その時、青白い光を放つアイが、ミナトの横に音もなく滑るように出現した。

「半分正解で、半分は不正解です」

アイは、まるで講演をするかのように、シズクとクロエに顔を向けた。

「現在は冒険者として活動していますが、より広い意味では旅人でしょうか。彼らは現在、『ロストコイン』という名で活動しているメンバーです」
アイは、ギルの遺体と、部屋の惨状を一瞥した。

「ここに来た目的は、ある犯罪組織の解体です」

あまりの大きな目的にシズクは口を開く。

ミナトは、あまりにも早く進む事態、情報が露呈していく展開に、思わず疲れたように大きなため息をついた。

「はぁ……疲れた。展開が早すぎるって!」

ミナトは、目の前のシズクとクロエ、そしてアイを交互に見る。

「昨日こっちについて、いきなり戦闘だぞ。アイがいると助かるが、展開が早すぎる。ご都合主義を疑われてもおかしくないぐらい、早い!肩慣らしにしては、敵が強いだろ」

アイは、その不満を一切の感情を交えず、冷静に尋ね返した。

「それは、『仕事が出来すぎる』と受け取ってもよろしいのですか? それとも、『酔っぱらいの体調』を考慮しろということでしょうか?」

ゴウキは、ミナトの不満を笑い飛ばす。

「ガハハ!まあ、攻略本持ってるみたいなもんだしな、早いのはいいじゃないか!目的が達成できればそれでよし!」

シズクは、ゴウキたちの行動や言動、彼らが普通ではないことは理解していた。

「あなたたちは……どこから来たの?」

シズクは極東の国に伝説と言われる冒険者の話を聞いたことがある。

身なりからしてどこか遠い国の人達ではないかと予測する。

シズクの核心を突く質問に、アイの青白い瞳がわずかに光を増した。

「その質問は難しいですね」

アイは、二人が理解できる表現を選びながら、衝撃の事実を口にする。

「アカシックレコードと呼ばれる場所から来た、と言うのが正しいのか、あるいは別の世界から来たと言ったほうが、あなた方には分かりやすいでしょうか?」

シズクとクロエは、その言葉の意味を処理しきれない。

彼らの表情は完全にポカーンとして固まった。ミナトは、「ほらみろ」という顔でため息をついている。

だが、アイは、相手の混乱など全く構わず、合理的に真実を続けようとしていた。

「私たちがここにいる理由は……」

アイは、シズクとクロエが完全に思考停止していることに気づかず、淡々と、しかし早口で説明を続けた。

「正確に言うと、私と彼らロストコインの目的は別々ですね」

アイは、冷静な声で、世界の危機というスケールの話を展開する。

「私の目的は、『原始の世界』の世界から弾き出された『小さなコイン』を探して回収と『世界のナンバリング』です。
早く回収しないと、『壺割りの勇者』が世界に探しに来てしまうのです」
「『壺割りの勇者』が通った後は2次元化され、そこから世界の2次元化が進み、いずれはアクセス出来なくなってしまいます。

それではアカシックレコードとしての役割が……
彼らは原始的な構造であり、何よりも影響力強いので対策が……

アイは、専門用語と危機感をまくし立て、まだまだ続けそうだ。

シズクとクロエは完全にポカーンとしており、言葉の洪水に全くついて行けない。

「おい、アイ。そこら辺にしておけ」

ミナトは、シズクとクロエを見て、これ以上混乱させるのは得策ではないと判断し、制止した。

ゴウキは、アイよりも分かりやすく説明しようと、腕を組んだ。

「原因は未だに不明だが、アイ達は『シフト』とその現象を呼んでいるみたいだ」

ゴウキは、床に散乱した破片を足で軽く蹴った。

「『原始の世界』のコインが弾けた瞬間、その影響で各世界の人や物が別の世界に飛んでいった。それの被害者が俺達ってわけ。俺達は元の世界に戻るために旅をしている」

クロエは口を閉じるのをやめたようだ。

顔には、「ありえない」という疑問符が浮かんでいる。

シズクは尋ねる「そんな事があるんですか?」

「死後の世界などの概念は、こっちにもあるか?それに近いかな」

ゴウキは、シズクたちの世界に伝わる現象と結びつけて説明を試みた。

「あと、神隠しって言われたりするのも、大体『シフト』に巻き込まれて弾き出されている。謎の遺跡や未確認◯◯なども、大体それだ」

シズクは、そのスケールの大きさに、ただただ圧倒されていた。

「話が大きすぎて訳が分からない……。アイさんが来たのは分かったわ。けど、あなた達は何故この世界に来たの?元の世界には帰らないの?」

ミナトは、言葉に詰まった。

彼は自分の頭の中で情報を整理しようと、「ファイル名だのデータが」などとブツブツ呟き始めた。やがて、自分の中で何かがしっくり来たらしい。

「いいか、よく聞いてくれ、シフトは物や人を弾き出しただけじゃないんだ。」

ミナトは、必死に分かりやすい例えを絞り出す。

「本棚に本がいっぱい詰まっている。そこに何かの衝撃で本棚が崩れたとする。本のカバーも外れた本が床に散らばる」

彼は、手で慌てて本を集めるような仕草をした。

「慌ててカバーと本を戻した。なくしてしまう前に、ひとまず本を積み上げてまとめた後、本棚に戻そうとするが、本の表紙と内容が違うことに気がつく」

ミナトの顔に、真剣な焦りが浮かぶ。

「本の内容を確認してから、本のタイトルを修正する。それを本棚に戻す。次の本が下から出てくる……」

ミナトは、力なく大剣の柄を握りしめ、結論を告げた。

「つまり、帰る世界の名前が分からないから、一つ一つ探している」

「…分かったか?」

ミナトは不安にシズクとクロエを見つめ、説明を終えた。しかし、シズクとクロエの顔には、さらに大きな疑問符が浮かんでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

処理中です...