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責任の行方1
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ギルが絶命し、彼の遺体と血の匂いが充満する部屋に、ようやく静寂が訪れた。
クロエの嗚咽は収まり、シズクはポーションの効果か、顔色にわずかに生気を取り戻している。
シズクは、目の前で起きた超常的な出来事――ゴウキの鉄壁の防御、ミナトの空間を切断する一撃、そしてギルの非道な告白――を噛みしめるように、一呼吸置いた。
彼女は、ミナトとゴウキに向かって、まっすぐ尋ねた。
「所で、あなた達は一体何者なの?」
ミナトは、黒い大剣の柄を握りしめたまま、曖昧に答えた。
「まあ……冒険者、かな?」
その時、青白い光を放つアイが、ミナトの横に音もなく滑るように出現した。
「半分正解で、半分は不正解です」
アイは、まるで講演をするかのように、シズクとクロエに顔を向けた。
「現在は冒険者として活動していますが、より広い意味では旅人でしょうか。彼らは現在、『ロストコイン』という名で活動しているメンバーです」
アイは、ギルの遺体と、部屋の惨状を一瞥した。
「ここに来た目的は、ある犯罪組織の解体です」
あまりの大きな目的にシズクは口を開く。
ミナトは、あまりにも早く進む事態、情報が露呈していく展開に、思わず疲れたように大きなため息をついた。
「はぁ……疲れた。展開が早すぎるって!」
ミナトは、目の前のシズクとクロエ、そしてアイを交互に見る。
「昨日こっちについて、いきなり戦闘だぞ。アイがいると助かるが、展開が早すぎる。ご都合主義を疑われてもおかしくないぐらい、早い!肩慣らしにしては、敵が強いだろ」
アイは、その不満を一切の感情を交えず、冷静に尋ね返した。
「それは、『仕事が出来すぎる』と受け取ってもよろしいのですか? それとも、『酔っぱらいの体調』を考慮しろということでしょうか?」
ゴウキは、ミナトの不満を笑い飛ばす。
「ガハハ!まあ、攻略本持ってるみたいなもんだしな、早いのはいいじゃないか!目的が達成できればそれでよし!」
シズクは、ゴウキたちの行動や言動、彼らが普通ではないことは理解していた。
「あなたたちは……どこから来たの?」
シズクは極東の国に伝説と言われる冒険者の話を聞いたことがある。
身なりからしてどこか遠い国の人達ではないかと予測する。
シズクの核心を突く質問に、アイの青白い瞳がわずかに光を増した。
「その質問は難しいですね」
アイは、二人が理解できる表現を選びながら、衝撃の事実を口にする。
「アカシックレコードと呼ばれる場所から来た、と言うのが正しいのか、あるいは別の世界から来たと言ったほうが、あなた方には分かりやすいでしょうか?」
シズクとクロエは、その言葉の意味を処理しきれない。
彼らの表情は完全にポカーンとして固まった。ミナトは、「ほらみろ」という顔でため息をついている。
だが、アイは、相手の混乱など全く構わず、合理的に真実を続けようとしていた。
「私たちがここにいる理由は……」
アイは、シズクとクロエが完全に思考停止していることに気づかず、淡々と、しかし早口で説明を続けた。
「正確に言うと、私と彼らロストコインの目的は別々ですね」
アイは、冷静な声で、世界の危機というスケールの話を展開する。
「私の目的は、『原始の世界』の世界から弾き出された『小さなコイン』を探して回収と『世界のナンバリング』です。
早く回収しないと、『壺割りの勇者』が世界に探しに来てしまうのです」
「『壺割りの勇者』が通った後は2次元化され、そこから世界の2次元化が進み、いずれはアクセス出来なくなってしまいます。
それではアカシックレコードとしての役割が……
彼らは原始的な構造であり、何よりも影響力強いので対策が……
アイは、専門用語と危機感をまくし立て、まだまだ続けそうだ。
シズクとクロエは完全にポカーンとしており、言葉の洪水に全くついて行けない。
「おい、アイ。そこら辺にしておけ」
ミナトは、シズクとクロエを見て、これ以上混乱させるのは得策ではないと判断し、制止した。
ゴウキは、アイよりも分かりやすく説明しようと、腕を組んだ。
「原因は未だに不明だが、アイ達は『シフト』とその現象を呼んでいるみたいだ」
ゴウキは、床に散乱した破片を足で軽く蹴った。
「『原始の世界』のコインが弾けた瞬間、その影響で各世界の人や物が別の世界に飛んでいった。それの被害者が俺達ってわけ。俺達は元の世界に戻るために旅をしている」
クロエは口を閉じるのをやめたようだ。
顔には、「ありえない」という疑問符が浮かんでいる。
シズクは尋ねる「そんな事があるんですか?」
「死後の世界などの概念は、こっちにもあるか?それに近いかな」
ゴウキは、シズクたちの世界に伝わる現象と結びつけて説明を試みた。
「あと、神隠しって言われたりするのも、大体『シフト』に巻き込まれて弾き出されている。謎の遺跡や未確認◯◯なども、大体それだ」
シズクは、そのスケールの大きさに、ただただ圧倒されていた。
「話が大きすぎて訳が分からない……。アイさんが来たのは分かったわ。けど、あなた達は何故この世界に来たの?元の世界には帰らないの?」
ミナトは、言葉に詰まった。
彼は自分の頭の中で情報を整理しようと、「ファイル名だのデータが」などとブツブツ呟き始めた。やがて、自分の中で何かがしっくり来たらしい。
「いいか、よく聞いてくれ、シフトは物や人を弾き出しただけじゃないんだ。」
ミナトは、必死に分かりやすい例えを絞り出す。
「本棚に本がいっぱい詰まっている。そこに何かの衝撃で本棚が崩れたとする。本のカバーも外れた本が床に散らばる」
彼は、手で慌てて本を集めるような仕草をした。
「慌ててカバーと本を戻した。なくしてしまう前に、ひとまず本を積み上げてまとめた後、本棚に戻そうとするが、本の表紙と内容が違うことに気がつく」
ミナトの顔に、真剣な焦りが浮かぶ。
「本の内容を確認してから、本のタイトルを修正する。それを本棚に戻す。次の本が下から出てくる……」
ミナトは、力なく大剣の柄を握りしめ、結論を告げた。
「つまり、帰る世界の名前が分からないから、一つ一つ探している」
「…分かったか?」
ミナトは不安にシズクとクロエを見つめ、説明を終えた。しかし、シズクとクロエの顔には、さらに大きな疑問符が浮かんでいた。
クロエの嗚咽は収まり、シズクはポーションの効果か、顔色にわずかに生気を取り戻している。
シズクは、目の前で起きた超常的な出来事――ゴウキの鉄壁の防御、ミナトの空間を切断する一撃、そしてギルの非道な告白――を噛みしめるように、一呼吸置いた。
彼女は、ミナトとゴウキに向かって、まっすぐ尋ねた。
「所で、あなた達は一体何者なの?」
ミナトは、黒い大剣の柄を握りしめたまま、曖昧に答えた。
「まあ……冒険者、かな?」
その時、青白い光を放つアイが、ミナトの横に音もなく滑るように出現した。
「半分正解で、半分は不正解です」
アイは、まるで講演をするかのように、シズクとクロエに顔を向けた。
「現在は冒険者として活動していますが、より広い意味では旅人でしょうか。彼らは現在、『ロストコイン』という名で活動しているメンバーです」
アイは、ギルの遺体と、部屋の惨状を一瞥した。
「ここに来た目的は、ある犯罪組織の解体です」
あまりの大きな目的にシズクは口を開く。
ミナトは、あまりにも早く進む事態、情報が露呈していく展開に、思わず疲れたように大きなため息をついた。
「はぁ……疲れた。展開が早すぎるって!」
ミナトは、目の前のシズクとクロエ、そしてアイを交互に見る。
「昨日こっちについて、いきなり戦闘だぞ。アイがいると助かるが、展開が早すぎる。ご都合主義を疑われてもおかしくないぐらい、早い!肩慣らしにしては、敵が強いだろ」
アイは、その不満を一切の感情を交えず、冷静に尋ね返した。
「それは、『仕事が出来すぎる』と受け取ってもよろしいのですか? それとも、『酔っぱらいの体調』を考慮しろということでしょうか?」
ゴウキは、ミナトの不満を笑い飛ばす。
「ガハハ!まあ、攻略本持ってるみたいなもんだしな、早いのはいいじゃないか!目的が達成できればそれでよし!」
シズクは、ゴウキたちの行動や言動、彼らが普通ではないことは理解していた。
「あなたたちは……どこから来たの?」
シズクは極東の国に伝説と言われる冒険者の話を聞いたことがある。
身なりからしてどこか遠い国の人達ではないかと予測する。
シズクの核心を突く質問に、アイの青白い瞳がわずかに光を増した。
「その質問は難しいですね」
アイは、二人が理解できる表現を選びながら、衝撃の事実を口にする。
「アカシックレコードと呼ばれる場所から来た、と言うのが正しいのか、あるいは別の世界から来たと言ったほうが、あなた方には分かりやすいでしょうか?」
シズクとクロエは、その言葉の意味を処理しきれない。
彼らの表情は完全にポカーンとして固まった。ミナトは、「ほらみろ」という顔でため息をついている。
だが、アイは、相手の混乱など全く構わず、合理的に真実を続けようとしていた。
「私たちがここにいる理由は……」
アイは、シズクとクロエが完全に思考停止していることに気づかず、淡々と、しかし早口で説明を続けた。
「正確に言うと、私と彼らロストコインの目的は別々ですね」
アイは、冷静な声で、世界の危機というスケールの話を展開する。
「私の目的は、『原始の世界』の世界から弾き出された『小さなコイン』を探して回収と『世界のナンバリング』です。
早く回収しないと、『壺割りの勇者』が世界に探しに来てしまうのです」
「『壺割りの勇者』が通った後は2次元化され、そこから世界の2次元化が進み、いずれはアクセス出来なくなってしまいます。
それではアカシックレコードとしての役割が……
彼らは原始的な構造であり、何よりも影響力強いので対策が……
アイは、専門用語と危機感をまくし立て、まだまだ続けそうだ。
シズクとクロエは完全にポカーンとしており、言葉の洪水に全くついて行けない。
「おい、アイ。そこら辺にしておけ」
ミナトは、シズクとクロエを見て、これ以上混乱させるのは得策ではないと判断し、制止した。
ゴウキは、アイよりも分かりやすく説明しようと、腕を組んだ。
「原因は未だに不明だが、アイ達は『シフト』とその現象を呼んでいるみたいだ」
ゴウキは、床に散乱した破片を足で軽く蹴った。
「『原始の世界』のコインが弾けた瞬間、その影響で各世界の人や物が別の世界に飛んでいった。それの被害者が俺達ってわけ。俺達は元の世界に戻るために旅をしている」
クロエは口を閉じるのをやめたようだ。
顔には、「ありえない」という疑問符が浮かんでいる。
シズクは尋ねる「そんな事があるんですか?」
「死後の世界などの概念は、こっちにもあるか?それに近いかな」
ゴウキは、シズクたちの世界に伝わる現象と結びつけて説明を試みた。
「あと、神隠しって言われたりするのも、大体『シフト』に巻き込まれて弾き出されている。謎の遺跡や未確認◯◯なども、大体それだ」
シズクは、そのスケールの大きさに、ただただ圧倒されていた。
「話が大きすぎて訳が分からない……。アイさんが来たのは分かったわ。けど、あなた達は何故この世界に来たの?元の世界には帰らないの?」
ミナトは、言葉に詰まった。
彼は自分の頭の中で情報を整理しようと、「ファイル名だのデータが」などとブツブツ呟き始めた。やがて、自分の中で何かがしっくり来たらしい。
「いいか、よく聞いてくれ、シフトは物や人を弾き出しただけじゃないんだ。」
ミナトは、必死に分かりやすい例えを絞り出す。
「本棚に本がいっぱい詰まっている。そこに何かの衝撃で本棚が崩れたとする。本のカバーも外れた本が床に散らばる」
彼は、手で慌てて本を集めるような仕草をした。
「慌ててカバーと本を戻した。なくしてしまう前に、ひとまず本を積み上げてまとめた後、本棚に戻そうとするが、本の表紙と内容が違うことに気がつく」
ミナトの顔に、真剣な焦りが浮かぶ。
「本の内容を確認してから、本のタイトルを修正する。それを本棚に戻す。次の本が下から出てくる……」
ミナトは、力なく大剣の柄を握りしめ、結論を告げた。
「つまり、帰る世界の名前が分からないから、一つ一つ探している」
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