【R18】剣と魔法とおみ足と

華菱

文字の大きさ
14 / 45

幼馴染②

しおりを挟む
放課後、クラスメイトに別れを告げ教室をでようとすると、オトハが話かけてきた。



「ねぇ、トーノ、時間ある?」

「ああ、何?」

「あのさ、練習してみない?同調魔法」

「ん、いいぜ、この時間なら第七修練場が空いてたよな、行こうぜ」

「うん!」



二人で第七修練場に行く、何人かの生徒が魔法の練習をしていたが、割りとすいていたので利用することができた。



「それじゃあ、練習をはじめようか」

集中するために、俺たちを囲むように【防音結界】を張る。

二人で向き合って、互いの手のひらを合わせ魔力を流してしていく、目を閉じて魔力に意識をむけると確かに彼女の魔力が流れ込んでくるのを感じた。

「んッ」

彼女も俺の魔力を感じているのだろうか、目を閉じることで鋭敏になった聴覚に彼女の息づかいを感じる。

彼女の魔力が糸のように細く延び、腕から全身へと張り巡らされていくのがわかる。あと少し、ほんの少しで同調が完了するだろうということが自然と理解できた。



しかし、彼女の魔力が俺の内面の心の奥深くに触れようとした時、プツリと糸が切れたような音がして失敗に終わった。

「あっ」

目を開けて、おそるおそるオトハをみると今にも泣き出しそうな顔をしていた。

なんて声をかけたらわからないでいると

「……失敗、しちゃったね、やっぱり私じゃダメなの?」

「そ、そんなことない、せ、先生も言っていたじゃないか、難易度が高いって、練習してできるようにしようぜ、な?」

「ううん、わかるよ、最後の最後、トーノに拒まれた感じがしたもの、私じゃダメなんだ」

そう言ってポロポロと涙を流す彼女に胸が張り裂けそうになる。

「ち、ちがう!そんなことない!」



ホントに違うんだ、オトハのことが嫌いだとか信頼していないとかじゃないんだ!

……ただ俺はずっと君に隠してきたことがあるから、たぶんその後ろめたさが原因で失敗したのだろう、それでも俺は彼女に前世の記憶があることを打ち明けることができないでいた。もし、気持ち悪いって思われたらどうしよう、彼女はそんなこと思わないって頭ではわかっていてもどうしても打ち明ける勇気がもてないでいた。

なにか、なにか言わなきゃそう思って口を開いても喉が乾いて声を出せないでいた。

そんな俺の様子に彼女は

「……な、なんでアルミ様なの!?私じゃダメなの?ずっと、ずっと一緒だったのに!なんで、私の胸がちっちゃいから?女の子っぽくないから?子供の頃、トーノを下僕のように連れ回してたから?」

「なんでアルミ様がでてくるんだよ?オトハはちゃんと女の子だし可愛いよ」

「わかるよ、私、ずっとトーノを見てきたから、それにアルミ様がトーノにむける視線が似ていたから私と……したんだよね?キス、ううん、きっとそれ以上のことも」

その悲痛な言葉に声がだせなくなる。

防音結界のおかげで俺たちの会話は他の生徒には聞かれていないが、それでも涙を流すオトハの姿に何事かと集まってきた。



「オトハ、とりあえず場所かえよう」

そう言って彼女の手をとり修練場をぬけ、学生寮の俺の部屋に向かう。

部屋につくと彼女をベットに座らせる。

「少し、落ち着こう、甘いものでも飲む?ココアいれてくるから待ってて」

「……まって、いかないで」

そう言って俺の手を掴む彼女は震えていた。

彼女は震える声で

「わ、わたし、ずっと好きだったんだよ、トーノのこと、一緒にいたくて勉強もたくさんしたし、すこしでも可愛くなろうとがんばったんだけどな……」

そう言って嗚咽を流す彼女を抱きしめトントンっと背中を叩いて落ち着かせる。

彼女を抱きしめ彼女の嗚咽を聞きながら俺は考えていた。彼女を泣かしてしまったのは俺だ、すべて俺が悪い。この涙はどうやって拭えばいい?二度と彼女に涙を流させないためにはどうすればいい?



……俺はもうひとつだけ、嘘を重ねることを決意した。



オトハが少し落ち着いてきたタイミングを見計らって、彼女の頬に手をあて、目をしっかりと見つめてこう告げる。

「オトハ、俺も好きだよ」

「へ?う、うそだよ、そんなことないよ!」

「嘘じゃないよ、好きなんだ、君のことがずっと」

そう、この気持ちは嘘じゃない。俺はオトハが好きだ。彼女の笑顔をみると心が綻ぶし、二人で歩いているととても居心地がいい。もし彼女が他の男と、なんて考えるだけで吐きそうになる。



「ああ、好きなんだ」

「……じゃ、じゃあなんでアルミ様と?」

「ちゃんと説明する、聞いてほしい」



そしてここからがほんの少しの嘘。

俺は震える声で

「……怖かったんだ、俺、子供の頃からずっと一緒で、オトハと一緒なら何をしていても楽しくて、この関係がとても居心地がよくて、壊れてしまうのが怖かったんだ、告白してもし断られたら今の関係には戻れないって思うと怖くて勇気をだせないでいたんだ。

それに、オトハは歳を重ねる毎にどんどん綺麗になっていって、俺は君でえっちな妄想もしたりした、最低だよね、オトハはそんなつもりで俺と一緒にいるんじゃないってわかっていても俺は……ごめん、俺はいつか君を傷つけてしまう前にこの想いを断ちきらないといけないって思って、ついアルミ様と……」

「ごめんなさい、言い訳だよね、結果的に俺にとって大切な人を傷つけて泣かせてしまった、ごめん、ホントに」



「う、ううん、私こそごめん、トーノの気持ちも考えずに取り乱しちゃって」

「気持ち悪いよな、俺は君でえっちな妄想をしているんだよ?」

「そ、そんなことない!う、うれしかったよ、ちゃんと私のこと異性として見てくれてるんだって!」



俺は感極まったような声で彼女の名前を呼び、瞳を見つめる。

「……オトハ」

「トーノ」

二人の視線が近付いていき、唇を交わした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...