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1st Lap 期待と不安の一年生
平穏崩壊へのカウントダウン
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―2106年 架空の街·結城市
この街では数十年前からセプトと呼ばれる次世代型パワードスーツを使った仕事が増えた事で人々の人件費用などが抑えられ、暮らしは豊かになっていた。
そしてそんなセプトを娯楽用に改修したものを使ったセプトスポーツもいくつか生まれ、平穏の中にも確かに楽しみのある日々が過ぎていた。
しかしそれは、今まさに崩れようとしていた……
「ねぇねぇ、雷人お兄ちゃん!いつもの頭でくるくるーってやつやってー!」
「やってやってー!」
街の中央区のある公園で一人の少年が何人もの子供に何かリクエストされていた。
彼の名は瞬木雷人と言い、ブレイクダンスを得意とするそこらでは有名な少年で小さい子からの人気は凄まじかった。
「お兄ちゃんはちょーっと急いでるからあんまりできないけど……やりますか……ほっ!」
雷人は子供達に少し距離を取ってと伝えると早速ヘッドスピンとドリルを交互に繰り出した。
「おおーっ、やっぱ兄ちゃんカッケー!」
「うんうん、忙しそうなのに呼び止めてごめんなさい」
「……よいしょっと。いいっていいって、皆が笑ってくれればそれだけでもやる意味あるからさ!」
雷人が楽しそうに会話していると、彼の腕のスマートウォッチが激しくバイブした。
『雷人さん、レース開始まで残り三十分だというのに何をしているんですか!早く会場に来なさいとあれほど言いましたよね!』
「あはは……すぐ行きますから。それじゃあ皆、俺はひとっ走りしてくるから良かったら応援してくれよ!」
「うん、頑張ってねお兄ちゃん!」
雷人は子供達に見送られながらレース会場へと向かっていった。
―民間秘密組織ストライカー結城支部
「よぉお前ら、急に招集かけて悪かったな。お前らに集まってもらったのは中央区の警備と、例のセプト……SB-00Hの奪還についてだ」
紫色の髪とそのフランク過ぎる喋り方が特徴の青年ベルム·ヴェノーバは支部の実働部隊を集め、会議を行っていた。
「SB-00Hは現在も行方をくらましてる……急に俺達のもとを離れたと思ったら、まさかこんな事になるなんてな」
黄土色の髪の少年·土田響は肘から下がない左腕を擦りながらどこか落胆したような口調で喋った。
「そういえば、SB-01Aは今どうなんだ?出れそうなのか?」
「それが……早くても今日の正午辺りにようやくロールアウトするらしくて」
「あぁん?マジか……となると、出られるのは……緑里と火室の二人だけか」
ベルムは二人の少女の方を見ながら呆れたようにため息を付いた。
「えぇーん、ウチ行かなきゃいけないのぉ?」
「こーら、そんな事言わないの!だとしても……何処に現れるとか予測は出来ているんですか、ベルム司令?」
「そうだなぁ……何でも今日は、中央区のレース場で新春杯やるらしいからなぁ。俺はそれをマークしてんだが、その通りに事が動くかは分っかんねぇけどな」
「そうですか……では、少しの間は待機せよと?」
「そぉだな……俺も本部からの指示待ちって訳だ……緑里、火室はセプトを装着しスタンバイ、土田と水島は先行してレース場周辺の哨戒に当たれ、以上!」
「了解!」
―結城レーシングスタジアム
『おっしゃああっ、今回もバッチリ一位で決めようぜ、マキシム!』
今回の新春杯は四区ある街の全ての強豪が集っている為、観客の興奮もこれまで以上になっていた。
『さぁ始まりました第三十六回新春セプターズカップ、今年もやはり優勝は雷人選手が持っていくかそれとも他区の選手かぁ?レッツ、デッドヒート……ゴーッ!』
MCの豪快なアナウンスと共にレースが始まった。
それと同時に選手達はが駆るセプトは一斉にブースターを点火させ、スタートダッシュを切ったが、その中でも特に雷人のセプトは頭一つ抜けていた。
そう、初速でまさかのセプト三体分も先に駆け出したのである。
『いいね~……このまま一気に振り切ろうぜ、相棒!』
雷人の声に応えるように専用カスタムのマキシムのセンサーアイが光った。
『あぁっと、雷人選手やはり首位キープ!最下位と何と半周差を付けてきたぁ!』
―その頃、上空浮遊ステルス艦デオーン
近年水面下で活動を開始した謎の組織アンヴェイダーの所有するステルス艦デオーンの中ではある作戦の準備が進められていた。
「なぁメチル、この化け物は一体何に使うんだ?俺らにはアイツがいるじゃねぇか」
「あのねぇデスト……確かに彼は僕らに味方してくれてるけど、彼にだけ手柄を持っていかれるなんて嫌だろう?それにこれは前座、つまりは挨拶さ」
格納庫には異形の化け物が収容されていた。その外見は鮫に四本足を生やしたような感じで、それでいて何処か機械的な造形が目立っていた。
「なぁるほど……それで、コイツはいつ投入すんだ?」
「あのレース場ではレースが行われているそうだ……つまり人間達はレースで盛り上がっているはずだ。もう間もなく投下するさ」
「派手な挨拶、お前らはどう答えてくれるんだぁ?」
格納庫のロックが外され、化け物はそのまま地上に向けて降下していった。
―そして、レーシングスタジアム
『デッドヒートも歴代最大クラスとなった今回のレース、優勝者は今年も雷人選手だぁ!』
「ぃよっしゃあ!一緒にレースしてくれた人も、見て楽しんでくれた人もマジサンキューだよー!」
雷人の一言で会場は歓喜の声に包まれた。他の選手達も彼に祝福の拍手を送った。
『緊急避難速報、緊急避難速報。当施設にいる方は速やかにシェルターへの移動をお願いします。繰り返します……』
喜びに満ちた瞬間、それを壊すようにアラートが鳴り響いた。
そのアラートから間もなくしてスタジアムの近くが大きく揺れ、悍しい鳴き声のような音が響いてきた。
(……まさか、アンノイド!?たった一体だけでも都市一つは楽に壊滅できるっていうあの化け物がどうしてここに!?)
アラートを皮切りに会場は阿鼻叫喚、もといパニックに陥った。
誘導員の指示で次々とスタジアムの地下シェルターへ観客が退避していく中、雷人はその場で立ち尽くし過去の記憶がフラッシュバックしたのか、動けなくなっていた。
この街では数十年前からセプトと呼ばれる次世代型パワードスーツを使った仕事が増えた事で人々の人件費用などが抑えられ、暮らしは豊かになっていた。
そしてそんなセプトを娯楽用に改修したものを使ったセプトスポーツもいくつか生まれ、平穏の中にも確かに楽しみのある日々が過ぎていた。
しかしそれは、今まさに崩れようとしていた……
「ねぇねぇ、雷人お兄ちゃん!いつもの頭でくるくるーってやつやってー!」
「やってやってー!」
街の中央区のある公園で一人の少年が何人もの子供に何かリクエストされていた。
彼の名は瞬木雷人と言い、ブレイクダンスを得意とするそこらでは有名な少年で小さい子からの人気は凄まじかった。
「お兄ちゃんはちょーっと急いでるからあんまりできないけど……やりますか……ほっ!」
雷人は子供達に少し距離を取ってと伝えると早速ヘッドスピンとドリルを交互に繰り出した。
「おおーっ、やっぱ兄ちゃんカッケー!」
「うんうん、忙しそうなのに呼び止めてごめんなさい」
「……よいしょっと。いいっていいって、皆が笑ってくれればそれだけでもやる意味あるからさ!」
雷人が楽しそうに会話していると、彼の腕のスマートウォッチが激しくバイブした。
『雷人さん、レース開始まで残り三十分だというのに何をしているんですか!早く会場に来なさいとあれほど言いましたよね!』
「あはは……すぐ行きますから。それじゃあ皆、俺はひとっ走りしてくるから良かったら応援してくれよ!」
「うん、頑張ってねお兄ちゃん!」
雷人は子供達に見送られながらレース会場へと向かっていった。
―民間秘密組織ストライカー結城支部
「よぉお前ら、急に招集かけて悪かったな。お前らに集まってもらったのは中央区の警備と、例のセプト……SB-00Hの奪還についてだ」
紫色の髪とそのフランク過ぎる喋り方が特徴の青年ベルム·ヴェノーバは支部の実働部隊を集め、会議を行っていた。
「SB-00Hは現在も行方をくらましてる……急に俺達のもとを離れたと思ったら、まさかこんな事になるなんてな」
黄土色の髪の少年·土田響は肘から下がない左腕を擦りながらどこか落胆したような口調で喋った。
「そういえば、SB-01Aは今どうなんだ?出れそうなのか?」
「それが……早くても今日の正午辺りにようやくロールアウトするらしくて」
「あぁん?マジか……となると、出られるのは……緑里と火室の二人だけか」
ベルムは二人の少女の方を見ながら呆れたようにため息を付いた。
「えぇーん、ウチ行かなきゃいけないのぉ?」
「こーら、そんな事言わないの!だとしても……何処に現れるとか予測は出来ているんですか、ベルム司令?」
「そうだなぁ……何でも今日は、中央区のレース場で新春杯やるらしいからなぁ。俺はそれをマークしてんだが、その通りに事が動くかは分っかんねぇけどな」
「そうですか……では、少しの間は待機せよと?」
「そぉだな……俺も本部からの指示待ちって訳だ……緑里、火室はセプトを装着しスタンバイ、土田と水島は先行してレース場周辺の哨戒に当たれ、以上!」
「了解!」
―結城レーシングスタジアム
『おっしゃああっ、今回もバッチリ一位で決めようぜ、マキシム!』
今回の新春杯は四区ある街の全ての強豪が集っている為、観客の興奮もこれまで以上になっていた。
『さぁ始まりました第三十六回新春セプターズカップ、今年もやはり優勝は雷人選手が持っていくかそれとも他区の選手かぁ?レッツ、デッドヒート……ゴーッ!』
MCの豪快なアナウンスと共にレースが始まった。
それと同時に選手達はが駆るセプトは一斉にブースターを点火させ、スタートダッシュを切ったが、その中でも特に雷人のセプトは頭一つ抜けていた。
そう、初速でまさかのセプト三体分も先に駆け出したのである。
『いいね~……このまま一気に振り切ろうぜ、相棒!』
雷人の声に応えるように専用カスタムのマキシムのセンサーアイが光った。
『あぁっと、雷人選手やはり首位キープ!最下位と何と半周差を付けてきたぁ!』
―その頃、上空浮遊ステルス艦デオーン
近年水面下で活動を開始した謎の組織アンヴェイダーの所有するステルス艦デオーンの中ではある作戦の準備が進められていた。
「なぁメチル、この化け物は一体何に使うんだ?俺らにはアイツがいるじゃねぇか」
「あのねぇデスト……確かに彼は僕らに味方してくれてるけど、彼にだけ手柄を持っていかれるなんて嫌だろう?それにこれは前座、つまりは挨拶さ」
格納庫には異形の化け物が収容されていた。その外見は鮫に四本足を生やしたような感じで、それでいて何処か機械的な造形が目立っていた。
「なぁるほど……それで、コイツはいつ投入すんだ?」
「あのレース場ではレースが行われているそうだ……つまり人間達はレースで盛り上がっているはずだ。もう間もなく投下するさ」
「派手な挨拶、お前らはどう答えてくれるんだぁ?」
格納庫のロックが外され、化け物はそのまま地上に向けて降下していった。
―そして、レーシングスタジアム
『デッドヒートも歴代最大クラスとなった今回のレース、優勝者は今年も雷人選手だぁ!』
「ぃよっしゃあ!一緒にレースしてくれた人も、見て楽しんでくれた人もマジサンキューだよー!」
雷人の一言で会場は歓喜の声に包まれた。他の選手達も彼に祝福の拍手を送った。
『緊急避難速報、緊急避難速報。当施設にいる方は速やかにシェルターへの移動をお願いします。繰り返します……』
喜びに満ちた瞬間、それを壊すようにアラートが鳴り響いた。
そのアラートから間もなくしてスタジアムの近くが大きく揺れ、悍しい鳴き声のような音が響いてきた。
(……まさか、アンノイド!?たった一体だけでも都市一つは楽に壊滅できるっていうあの化け物がどうしてここに!?)
アラートを皮切りに会場は阿鼻叫喚、もといパニックに陥った。
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