【完結】月と羊 〜その声に恋をしていた〜

西宮裕華

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第8章

宴の後で(2)

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 その後、セイさんが誘ってくれて、打ち上げに参加することになった。

 正直、私が行ってもよかったのかわからなくて不安もあった。けれど、不思議と居心地は悪くなかった。セイさんが上手に場を盛り上げてくれて、気がつけば私もお酒の力を借りて笑っていた。


「今日はすっごく楽しかったです~!皆さん、それぞれ違う魅力があって—— 」

 酔ってくると、語尾が伸びてくる自分が少し恥ずかしかったけど、なんだかそんな自分も面白くて、笑っていられた。

 ぐっちさんの娘さん、みのりちゃんも可愛かったな。
 詳しいことはわからなかったけど、小学生くらいの子が「A連打よ!」ってプロの実況者にアドバイスしてるの、面白すぎる……。


 Renさんこと、齊藤さんとも話をした。ステージに立っていた時も思ったけど、とてもきれいな人だった。
 整った顔立ちと落ち着いた雰囲気、まるで雑誌の中の人みたい。

 日辻さんとの出会いは病院か、と聞かれて、答えながらも、ふと思い出していた。患者家族と医療従事者という関係になる前に、彼に守られたあの電車での出来事を。
 そんなに日数は経ってないはずなのに、なんだか、ずいぶんと前のことのように感じられた。


 視線を向けると、彼——日辻さんは少し離れたところから、こちらを見ていた。
 その目はどこか寂しそうで、けれど優しくて。

 また、胸の奥が痛くなった。



 結局、日辻さんとはほとんど言葉を交わせないまま打ち上げは終わった。
 彼は「送りますよ」と言ってくれたけれど、タクシー呼んでるんで、とやんわりと断ってしまった。どうしてだろう。嬉しかったはずなのに。

 “実は羊さんの大ファンでした”——そんなことを告げたら、今までの日々が、関係が、壊れてしまいそうな気がした。
 ただの一ファンとしてしか見られなくなるのが、すごく怖かった。



 翌日の昼休み中、齊藤さんから丁寧なメッセージと共に、打ち上げの集合写真が送られてきた。マメな人なんだなぁ、と笑みがこぼれる。
 お礼の返事を送った後、もう一通届いた。

「GG4ファンの意見を聞きたいんだけど、時間を作ってもらっても、いいかな?」

 私の意見なんかでいいのかしら……?
 でも、お世話になったし、感謝もある。私はシフトを確認して、来週、会う約束をした。
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